- 本 ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041103463
作品紹介・あらすじ
辺鄙な貸別荘地にバイトに来た若者たちは禁じられた廃村に紛れ込み恐怖の体験をしたあげく、次々怪異に襲われる。そこは「弔い村」の異名をもち「のぞきめ」という化物の伝承が残る、曰くつきの村だった。
感想・レビュー・書評
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先日読んだ「黒面の狐」に出てきた『のぞきめ』が気になったので読んでみた。
作中に登場する利倉成留という人物にも記憶があるのだが、「犯罪乱歩幻想」に出てきただろうか。
それはさておき、この作品は『覗き屋敷の怪』と『終い屋敷の凶』という二つの手記から成り立っている。
これはネタバレにはならないと思うので明かしてしまうが、ある同じ場所についての違う時代の体験記という体裁だ。
タイトル通りとにかく覗かれる。視線というものだけで十分に恐怖を感じられる。あからさまな敵意や嫌悪というものではなく、ただ見られる。それが何とも言えず恐ろしい。
刀城言耶シリーズのような、閉鎖的なコミュニティにのみ存在する因習とヒエラルキーが絡まり、ますます陰鬱になっていく。
最後にこの『のぞきめ』にはある一定の結論が下されるのだが、それだけではこの事件の完全な解決には至らない。
ということはやはりホラーでもあるということだろうか。
結果的に言えるのは、「君子危うきに近寄らず」ということか。下手な好奇心や野次馬根性は出さないのが一番。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表紙に描かれた女の子が、読み始める前と後で全然違って見えてきます。
むしろ読み始めたら、もう直視できません。
この目が、あっちで、こっちで、見ているのです。
序章に警告された影響は絶大。実際に覗かれている気がしてきます。
同じ怪奇現象が起こった舞台を、違う時代で二人の人物が体験したこわい話。
のぞきめの描写はゾクッとさせられました。
ただ、これはホラーのままで終わった方が面白かったかな、と。
ミステリとホラーの融合は三津田さんの持ち味で大好きなのですが、
この題材は正体は不明なまま終わらせた方が面白かったと思います。 -
作家・三津田信三が収集した『のぞきめ』による怪異譚の小説二つと、その怪異の正体を論理的に推理した終章からなる。
『覗き屋敷の怪』は別荘管理のバイト学生たちがある廃村に迷い込んだ(呼ばれた?)ために巻き込まれる得体の知れない恐怖。
『終い屋敷の凶』はその廃村がまだ村として存在した時代に訪れた四十澤想一が遭遇する謎めいた因習と不気味な視線。
覗き屋敷も十分怖かったけど、終い屋敷でさらに恐怖のレベルが上がっているような。怖いだけじゃなく村や鞘落家への絶望感のようなものもこみ上げる。
終章では『のぞきめ』の正体を三津田氏が結論づけるわけだけど、本当にそうなの?あくまでも個人の解釈だよね?という不安を残して終わる。 -
中編。
忌館、ついてくるもの、につづいて読みました。
短編は二冊目だったので面白かったけど、少しパターンが解ってきて(好きだけど)刀城シリーズは今読むには長すぎて…
予約していた本書は調度よかった。
(以下ネタバレ含みます)
…会合でしりあった男に、市井の民俗学者の残した「のぞきめ」に関する事柄を書いたノートを売りたいとほのめかされる。
しかしそれが違法な形で入手されたとしり、固辞する。しかし、そのノートは後に件の学者から遺品として届けられる。
内容を読んで驚いた。
その話は以前趣味で収集した怪異話と同じ所に根がある、それ以前の話だった…
最初に語られるのは作者が直接聞いた話、次に語られるのはノートに記してある話。
最初に語られた話の因縁が次の学者のノートに綴られた話、という形だ。
どちらもナニカにじっと見られる怪異に襲われ、不幸に見舞われていく。
最初の話は貸し別荘にバイトにきて、巡礼の親子に会い、行ってはならぬ場所に行き、死者が出てしまう話。
次の話は大学生だった学者が、奇妙で痛ましい境遇にいる友人の死をきっかけにその友人の郷里を尋ね、生前聞いたすさまじいほどの因習の真偽を探って行く話。
根っこは一つだが、学者の経験談がなおおそろしい。
廃村、儀式、贄、祠などなど、こんな雰囲気が好きな人にはこたえられない。
ゲームの「零」思い出しました。
ただ、ちょっと死にすぎ…あのひとたちまでも?
小野不由実の「残え」や
綾辻行人「another」を思い出しました。 -
三津田信三作品3冊目。
タイトル通り覗かれる恐怖。普通に生活をしていても、ふとした時に視線を感じることは誰にでもあることではないだろうか。ただこの作品の覗く側の何者かは、人がいるはずもない冷蔵庫の後ろの隙間など有り得ない場所から覗いてくる。
前半の「覗き屋敷の怪」をゾクゾクしながら味わう。後半の「終い屋敷の凶」でちょっと長さを感じたのだが、ラストの考察は納得というかそこでまた恐怖の正解が分かる。
怪談の夏にはもってこいのひんやりミステリーホラー小説だった。
このレビューを読んで、視線を感じた方は自己責任でお祓いを勧めます。 -
怪談奇談を欲して求めた段階で、その人は責任を負っている。わざわざ耳をそばだて怖いものを目に留める
その行為は自ら怪異を招いているとも言える。その怪異に対する責任が本人にはあるのだ。
読むことによって怖いモノを引き寄せてしまおうと、トラウマになろうと、すべて自己責任なのですよねー。
じっとり純和風ホラー、まさに“怪談”です -
ただただ面白く、そして怖く、私の大好きな作品でした。
物語は前後編で構成されていて村の怪異について現在と過去から語られています。そしてそのどちらもが一つの物語として成立していて、尚且つ、その二つが合わし読み通されホラーミステリーとして世界が完成する。そんなホラーと謎が100%楽しめる文句なしの大満足☆5本でした。
著者プロフィール
三津田信三の作品





