ノックス・マシン

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041104156

作品紹介・あらすじ

上海大学のユアンは国家科学局からの呼び出しを受ける。彼の論文の内容を確認したいというのだ。そのテーマとはロナルド・ノックスが発表した探偵小説のルール「ノックスの十戒」でだった…。異形の奇想ミステリ集!

感想・レビュー・書評

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  •  まさに「奇想」という言葉が相応しい、傑作ぞろいの中編集。SFとミステリの境界的な作品だが、所謂SFミステリではなく、本作に関しては寧ろ「ミステリSF」というべきだろう。(ブクログでの評価が低くて驚いたが、「このミステリーがすごい! 2014年版」国内編1位を獲得しているらしいので、それでミステリを期待して手に取ったのに中身がSFでガッカリという人が多いのだろうか。)ただ、SFとは言え大風呂敷を広げた後そのままでは終わらずきちんと畳んでいる、いや、広げすぎて若干畳み切れていないので(笑)「畳もうと試みている」と言うべきかもしれないが、作者自身があとがきで書いているように、そこはやはりミステリ作家らしいと言えるか。
     本作はネタバレを読んでしまうと大幅に興を削ぐので詳しい内容については触れないけれど、よくもまぁこんな荒唐無稽な法螺話を捻りだしたな、と感心する。かなり人を選ぶ作品集なのだろうなとは思うが、その分ハマる人にはドツボにハマるはず。普通のミステリやSFから目先を変えて、一風変わった話が読みたいという人には一読の価値ありとお薦めできる。ただし、『論理蒸発-ノックス・マシン2』を読むに当たっては、一般相対論と量子力学を学びブラックホールの情報問題について熟知している必要がある(嘘です)。『引き立て役倶楽部の陰謀』は、古典ミステリに慣れ親しんでいる方が楽しめるだろう(これは本当)。僕も特段古典ミステリの有名どころを網羅し尽しているというわけではないので、実のところ登場してきた「引き立て役」の半分も知らなかったが、分からないところは雰囲気だけ楽しんで、フムフムと言っておけばいいんじゃなかろうか。

  • このミス2014の1位の作品。

    表題でもある「ノックス・マシン」と「ノックス・マシン2」を合わせ、4作品の短篇集。

    ノックス・マシンの2作品は、ミステリー好きとSF好きのツボをくすぐる。(シュタインズゲート好きにもw)

    他の2作品は物語的に面白くない。読者に向き合わず作者自身に向き合っている感じ。

    海外ミステリーやSFに造詣が深い方は本作品を存分に楽しめるのかもしれない。
    私は残念ながら海外ミステリーはあまり読まないので、このミス1位の理由を射抜けない。
    残念ながら。

  • SFミステリー「双方向タイムトラベル」
    読み始めは、壮大なドラマの始まりに心がワクワクする気がします。
    ノックスのいる1929年2月28日の過去へ行くのか。
    もし未来の人類が、本当にタイムマシンを発明したら、誰も探偵小説の謎解きなどには振り向かなくなってしまうだろう。どんな謎めいた犯罪が発生したところで、警察は事件の起こった時間まで逆戻りして犯人を現行犯でとらえることが出来るからだ。
    もし犯人がタイムマシンを使いこなせば、アリバイや密室、どんな不可能犯罪だって思いのままだ。
    探偵が事実の真相を見破った後でも、過去に戻っていくらでも現場状況や手がかりを作り替えることができる。
    そのような万能の道具を用いることが、フェアプレイの名に値するだろうか?
    逆に一見不可能犯罪に見える物語が、不可能であるから探偵小説が面白いのです。

    作家法月倫太郎の妄想小説なのか?
    それとも古典名作探偵小説の書評ともいえる。
    改めて、著者の古典名作小説の造詣の深さが伺える。
    探偵小説マニアの話題作?
    物理学的な要素が含まれているため、僕には難解でした。

  • ミステリ好きのためのSF小説。ミステリではない上に、なかなかマニアックなので、このミス1位だから読んでみようという気持ちで読まない方がよい。

  • 「物語を計算する」というのが好きで,しかもネタがミステリだからニヤニヤしっぱなし.「バベルの牢獄」はNOVA2で読んでいたけど,読んだ後で読み返したくなる作品.

  • 同じ新本格でもどっちかっつーと有栖川とか島田とか派なワタクシ。法月は結構アウェイ。法月ファンってこんなに物理チックなリテラシーが高いのか⁈ビックリ。
    ▪️「ノックスマシン」"ノックス場における中国人ルールの奇妙なふるまい"だって(≧∇≦)物理用語を駆使して大風呂敷広げたオチが、主人公マターの第5戒かよ〜。
    ▪️「引き立て役倶楽部の陰謀」往年のミステリーファンへの大盤振舞い! しかもACが残した未発表原稿の体裁を採るヘイスティングスの手記という、メタメタな構造。
    ▪️「バベルの牢獄」ページの表裏に文字が印刷されている本、という形態って電子書籍に席巻されないでほしい〜
    ▪️「論理蒸発ーノックスマシン2」主人公の元カレがヴェトナム人テロリストが、<マウントオリーヴ>って(≧∇≦)最後は自己犠牲の浪花節にオチちゃうところが法月のトンガリ具合の甘い所か。

  • あとがきによると「本格SF」。
    ミステリのランキングでは高い評価を得るが、ブクログでの評価は低め。作品を読むと、納得!
    海外の古典ミステリ作品が好きな人でないと十分に楽しめない作品でしょう。
    ノックス、クリスティ、クイーンの知識は必要不可欠。
    ある程度分かると、「引き立て役倶楽部の陰謀」とか楽しめるはず。

  • 数理文学解析という学問の発達により紙媒体の書物が消え行こうとしている世界で、ロナルド・ノックスの『ノックスの十戒』の秘密に迫る「ノックス・マシン」
    名作と呼ばれる探偵小説に出てくる探偵の助手たちが構成する会合においてある推理作家の処遇を検討する「引き立て役倶楽部の陰謀」
    あるデータ世界にとらわれた者の脱出劇「バベルの牢獄」
    紙媒体の書物が消え行こうとしている世界において、電子書物が論理的な発火をはじめる「論理蒸発ーノックス・マシン2」

    どれも推理小説ではなくSFですね。
    いわゆるミステリ小説ではなく注意が必要。
    内容はミステリマニアによるミステリマニアのためのお話で、ドマニアの方向けかと思います。
    今では古典と言われている推理小説なら諳んじられるなんてレベルの方は狂喜してお読みになるのでは。
    そこそこかじっている向きも楽しめないことはない。

    一番ドキドキしたのは「バベルの牢獄」でした。
    いろんな視点があるものだなと驚きました。
    どのお話も着想が面白く、物理学には拒絶反応を起こすほどであってもわかんないところは適当に飛ばして(ぇ)受取れるところだけ受取って楽しみました。
    万人向けではないと思われますが、あっと驚くお話をお探しならこれで決まりでしょう。

  • このミス1位の作品だったのでミステリなんだと思って読んだら、あとがきにもあるようSF作品でした。
    古典ミステリファンは楽しめるだろう、オマージュ的な作品集。
    それなりに面白かったけれど、ミステリだと思って読み始めると肩透かしをくったようになるかも。でも世界観は割りと好きだったな。
    クイーンとかクリスティとか読みたいと思いつつまだ読んだことなかったけど、すごく読みたくなりました!

  • 短編なので一編ずつ感想(超単純あらすじ?)を書く。

    『ノックス・マシン』
    ノックスの十戒にの中の不可解なひとつの記述、それは何故記されたのか?
    それを解く鍵は未来の中国人の研究者にあった。
    『引き立て役倶楽部の陰謀』
    呼び寄せられたヘイスティングス大尉刃頭を抱えていた。彼の所属する引き立て役倶楽部で出された議題は彼とポアロの絆を繋ぐアガサ・クリスティを糾弾するものだった。倶楽部の別荘へと向かう間に練った彼の策は…
    かと思いきや最後の締めは?
    『バベルの牢獄』
    サイクロプス人に捕まり、鏡像人格の相棒とも分離させられて精神を隔離させられた主人公は途切れ途切れに送られてくる相棒からの通信に、この空間からの脱出の道筋を導き出していく。
    『論理蒸発ーノックス・マシン2』
    ゴルプレックス社の電子図書事業部のオペレーターのプラティヴァは休暇中にもかかわらず本社の№2から呼び出しを受けた。それは彼女が大学時代に共同執筆した論文のためだった。そこに書かれた理論をもとに今起こっている電子書籍が突然に燃え始める現象を解決するために、彼女が訪ねたのはあの彼のところだった。

  • なんというか、こんなミステリもあるのか、というのがまず第一の感想。すごく分かったような顔して読んでいたけど、理解していたとは言い難い感じ。それでもスゴさは感じる、という謎。SFとミステリとパロディを足して割って何かが余ったような本でした。

  • SF仕立てのミステリ短編集。戦前、戦中、戦後の英米ミステリーへの慈愛に満ち溢れた作品ばかり。
    「ノックス・マシン」
    末尾に続編があるがシリーズものとして面白い。ミステリへの愛情とタイムマシンが程よくブレンドされてて楽しい一遍に仕上がっている。
    「引き立て役倶楽部の陰謀」
    ちょっと英米ミステリに詳しくないと面白くないかな。アガサクリスティとヴァンダインとエラリークイーンを読んでいれば何とか付いていける?
    「バベルの牢獄」
    難しい。実験的試みとしては評価されるべきなのかな?でも鏡文字って読みにくいことおびただしい。
    「論理蒸発ーノックス・マシン2」
    ノックスマシン完結編。面白い!面白いよ!もっと続けてくれたらいいのに。人格をデータ化してコンピュータ内に送り込む。最近よくある話だけれどエラリークイーンの国名シリーズに重ねる処が素晴らしい。国名シリーズ、いっぱいあったな~。

    本読みを自称するなら一度はハマるミステリー。高校時代図書館に創元推理文庫があったので読み漁りました。ただ卒業とともにサッパリ。
    また読まなあかんな~。

  • 「バベルの牢獄」読んで、えっ?おおっ!って思った。とりあえずペラペラ確認して重ねてみたりしますよね。
    「引き立て役倶楽部の陰謀」が好き。海外ミステリを全くと言っていいほど読まないので、ヘイスティングズ大尉のこともよく知らなかったけど、ちょっとポワロのシリーズ読んでみたくなった。

  • ミステリーマニアならニヤニヤしちゃうんだろうな。でもわりと好き。
    私がもっとミステリーに造形が深くなってから、また出直したいです。

  • タイトルに引かれたが、中味はイマイチ。
    メタミステリでもないし、SFにしては中途半端だ。

  • ん~っ。
    面白さはあったし、エンタテイメントだとは思います。
    「世界標準の王道、古典ミステリーを読むべし」という警鐘なのかな?
    「ノックス・マシン」「論理蒸発━━ノックス・マシン2」は続けて読んだ方がイイかも……。
    二晩で読んだが、何だか脳が凝ってしまった感じ。
    次は柔らかいモノ読もうかな?という気にさせられました。

  • 設定はグイグイ惹かれた。ただ自分はSFと推理小説読まないと。面白さの半分にも届いてないんだと思う。

  • ★★☆☆☆
    ミテリーオタク向けのSFミステリー
    【内容】
    上海大学のユアンは国家科学局からの呼び出しを受ける。彼の論文の内容を確認したいというのだ。そのテーマとはロナルド・ノックスが発表した探偵小説のルール「ノックスの十戒」でだった…。異形の奇想ミステリ集!

    【感想】
    「このミステリーがすごい2014」で1位になった作品。

    確かにこの発想はすごいし、奇想天外だ。
    昔からのミステリー通なら楽しいのだろうが、一般人にはムリ。
    (このミス作品は、映画化とかドラマ化も多いのだが、今作はムリだな)

    ミステリーの定番定理の"ノックスの定理"や、古典『そして誰もいなくなった』『シャム双子の謎』、アガサ失踪事件の隙間から着想する点は脅威の一言。
    このへんが分かる人には楽しいのだろう。

    また、非常に科学的で肩がこってきます。そしてよくわかんねー。。。
    わかったことは、小説を書くのは大変だってことだけでしょうか。

  • 2013年このミス1位作品。

    近未来、コンピュータにより小説が自動で執筆されるようになってシェークスピアとかドストエフスキーの新作がどんどん出版されるようになり従来の作家は職を失ってて・・・みたいな世界観は非常に面白かったです。そこに古典ミステリをもってきて融合させるという試みも読んでいてわくわくしました。

    でもなあ・・正直最後の方はわけがわからなかった。作者の頭の中では論理的にストーリーが展開してるのかもしれませんが、読んでいて完全に置いてきぼりになった気分。自分が古典ミステリに造詣が浅いせいで楽しめなかったのだろうか?うーん。。。

  • 「このミス」2013年の1位に選ばれたという本ですが、ミステリー小説というよりも「ミステリーの教養書」だと思って読んだ方が良いかもしれません。

    内容自体は面白いのですが、どこかで白けてしまう部分があるというか…。

    例えるなら、友達の結婚式にいったら意外と共通の友人がおらず、私の知らない仲良しグループが内輪受けするスピーチをやらムービーを延々と流していて、それはそれで面白いとは思うんだけど、だけどどうにも所在なく「とりあえず会費分は飲み食いして帰ろうか」と、切り替えざるを得ない時の、あの感じに似ていると思いました。主観が多くてすみません。

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著者プロフィール

1964年島根県松江市生まれ。京都大学法学部卒業。88年『密閉教室』でデビュー。02年「都市伝説パズル」で第55回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。05年『生首に聞いてみろ』が第5回本格ミステリ大賞を受賞し、「このミステリーがすごい! 2005年版」で国内編第1位に選ばれる。2013年『ノックス・マシン』が「このミステリーがすごい! 2014年版」「ミステリが読みたい! 2014年版」で国内編第1位に選ばれる。

「2023年 『赤い部屋異聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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