歴史認識を問い直す 靖国、慰安婦、領土問題 (角川oneテーマ21)

著者 :
  • 角川書店
3.36
  • (3)
  • (12)
  • (16)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 144
感想 : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041104538

作品紹介・あらすじ

中国・韓国・台湾、戦争か対話か-いま、日本人が選ぶべき外交とは。過去の中に"答え"はある。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日中韓の領土問題も含めた歴史認識問題について論じたもの。中国は村山談話、韓国は河野談話がポイントになっていることがわかる。
    10年前の本なので内容的に古いと感じる部分もあれば、尖閣・慰安婦問題等々現在にまで至る問題がこの時期に発生していたことも再認識できて、この10年間何ら解決がされないどころか、さらに問題が複雑化してしまったようにも思える。
    全体的には元外交官にしてはエモーショナルな内容という印象もあり、立ち位置も少々中途半端というか不可解に思える部分もあるが、東アジアの歴史や情勢を振り返り確認する意味では参考にはなる。

  • 第二次大戦中の東条内閣・鈴木貫太郎内閣で外務大臣を務めた東郷茂徳の孫であり、外務事務次官から駐米大使を務めて日本の戦後外交を担った東郷文彦の息子であり、自らもオランダ大使などを務めた元・外交官による著書。靖国・慰安婦・領土問題など、戦後のマスコミによって日本人に刷り込まれた「誤った歴史」を糺(ただ)し、中国・韓国・台湾と今後どうやって付き合っていくのかを提言する。

  • 日本の歴史認識について、過去にヨーロッパの外交官を歴任した東郷氏が記述した一冊。

    当然ながら尖閣、竹島、北方領土問題は元より、その背景となる相手国の状況にも迫ってるのが、さすがに元外交官という感じだけあって説得力があった。

  • [「棘」と付き合う]近年の日本外交にとって大きな課題の一つとなっているいわゆる「歴史認識問題」。尖閣諸島、竹島、北方領土問題とも絡みながら複雑に展開するこの問題を改めて概説するとともに、その解決に向けた方策が具体的にまとめられた一冊です。著者は、外交官として欧亜局長や駐オランダ大使などを歴任された東郷和彦。


    「歴史認識問題」を、空間的にも時間的にも広い枠組みの中で組み立てようとする著者の視点から得られるものは非常に多いのではないでしょうか。本書を読むと、日本国内における議論と海外(必ずしも歴史認識問題の当事者に限られず)における受け止め方に、愕然とするほどの差異があることがよくわかります。


    東郷氏が提示する解決のための処方箋に賛成できるかは人それぞれかと思いますが、「もう日本のみでどうこうできる問題ではない」という点と「歴史認識問題はそれだけの問題にとどまらない」という2点については、なるほどと多くの方が首肯できるところかと。議論の入口として本書を手に取り、多様な意見を交わすというのも良いかもしれません。

    〜経済・政治・軍事の面で、中国の強大化は続くかもしれない。けれども、帝国主義国家としての目前の勝利を成就したことにより、中国は奇しくも、世界の文化と思想的リーダーとなる資格を失ったのである。ここに、深い意味でのアジアにおける大きな真空が登場したのである。誰がこの真空をうめるべく、宿命づけられているのか。私は、それは、日本だと思う。〜

    本当に難しい問題だと思います☆5つ

  • 概括的によくまとまっている。
    文化的歴史的考察による評論。

  • 示唆に富む本です。じっくりと考え続けていかなければならないポイントが明らかになってきたように感じています。

  • 簡潔な文章で、本質に切り込む論旨が明晰です。難問揃いですが、バランス感覚を持って、果敢に落とし所を探っておられます。しかしながら、置かれている状況が余りに厳しく、読んでいて息が苦しくなりました。偏狭な歴史認識は誤解を招くこと、世界に通じるテーゼを示し、味方する国を増やす努力が要るんですね。アジアや米、世界の共感・尊敬を得るポジションと絆の獲得がバイタルですか。シナリオによっては、再び世界の孤児となる可能性を見てしまいました。

  • 外交を進める側の視点→右からの平和ボケによる強硬路線と、左からの平和ボケによる楽観論ではなく、自国の国益を守るための外交。正論だけでは外交で負けてしまう。世界に認めさせるためにとるべき姿勢→富国有徳。インテリジェンスと徳。

  • これから日本の再興を本当に実現しうるるとしたら、まず思想・哲学・宗教・徳の次元で全世界に深く通ずるものを作り上げなくてはいけない。
    「富国有徳ふじのくに」

  • 著者は、元外交官で、主にロシアに駐在し条約局長などを勤めた人で、
    東京裁判でA級戦犯として断罪された東郷茂徳を祖父にもつ人物である。

    内容は、①領土問題、②歴史認識問題、③新しい日本の国家ビジョンとなっている。
    ①では、中国との尖閣問題、韓国との竹島問題、ロシアとの北方領土問題、②では、靖国神社と村山談話(対中国)、河野談話と慰安婦問題(対韓国)、見落としがちな問題として台湾との関係を取り上げる。

    いずれもタイムリーな政治及び歴史問題で、これらの記事が新聞に載らない日はないといっても過言ではないほど、頻繁にメディアで目にする事柄である。

    最近でいえば、橋本大阪市長の慰安婦を巡る一連の発言(というか失言)などは、その最たるものであろう。
    橋本氏の発言の問題点を要約すると、①戦時下における慰安婦制度の必要性を無条件に認めたこと、②強制連行を示す証拠がないといったこと、最後に、③現在沖縄等に駐留するアメリカ軍に風俗店の活用を進めたことなどが挙げられる。

    橋本氏は、上記のうち、アメリカを最も怒らせた③は撤回したが、残りの①②については、未だ持論を曲げようとはしていない。
    中でも、②などは、安倍首相はじめ右派の論客が繰り返している主張だが、本書では、以前著者が参加した国際的な歴史シンポジウムにおいて、参加者のアメリカ人より、このような主張は国際的には全くナンセンスで、この問題の本質にとって全く無意味だと喝破され、衝撃を受けたと著者は語っている。

    私もこのアメリカ人の見解に賛成で、強制連行や日本軍の関与の有無などは、日本軍兵士達が、性欲のはけ口として戦地の女性達を弄んだという厳然たる事実(この事実を否定する人はそういない)の前では、何の意味も持たないと思う。

    そして、著者は、今後の日本の在り方について、「何よりも必要なことは、日本自身が、他者の痛みを感じ、他者の苦しみを理解する謙虚さのうえに立つことである。(中略)他者の心理を解らず自己の正義を主張する傲慢は、今の日本にとっては、狂気となる」と警告する。

    本書は、2013年2月頃に書かれたもので、その後に勃発する、件の橋本発言を図らずも暗示していることは、皮肉としか言いようがない。

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

静岡県対外関係補佐官、静岡県立大学グローバル地域センター客員教授

「2021年 『一帯一路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

東郷和彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×