これからお祈りにいきます

著者 :
  • 角川書店
3.49
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本棚登録 : 496
レビュー : 84
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041104699

作品紹介・あらすじ

人型のはりぼてに神様にとられたくない物をめいめいが工作して入れるという奇祭の風習がある町に生まれ育ったシゲル。祭嫌いの彼が、誰かのために祈る――。不器用な私たちのまっすぐな祈りの物語。

感想・レビュー・書評

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  • すばらしくよかった!! 好きすぎて感想が書けないです。
    ユーモアがあってほんとうに笑えて、最高にいい話で、読後感もすばらしくよくて。読んでいて興奮して胸がつまるような。
    本当に好きだ。

    「これからお祈りにいきます」っていうのが本のタイトル。なかに二編、どっちも確かに、祈り、願い、の話。

    津村記久子さんの書く人々が好き。ごく普通というより、普通よりさえない、いろいろうまくいっていない人たちなんだけど、なんというか、人生に謙虚というか。尊敬する。そういう人になりたいとか思う。いろいろヘタレでも、少し心がひらけているという感じもすばらしい。そして、少しずつさらに心が、そして人生もひらけていくというような。
    そういえば、二編とも悪い人がまったく出てこない。

    「サイガサマのウィッカーマン」
    最初、え、SF?とか思ってびびったのだけどそんなことはなく。モチーフは民話みたいな感じなのだけれど。ウィッカーマンってなんだ、と思ったら、ウィキペディアでは「古代ガリアで信仰されていたドルイド教における供犠・人身御供の一種で、巨大な人型の檻の中に犠牲に捧げる家畜や人間を閉じ込めたまま焼き殺す祭儀」だそうで。それに似たお祭りのある町で、なんとなくそのお祭りの手伝いをすることになった高校生男子が主人公の話。

    「バイアブランカの地層と少女」
    これこそ、めちゃくちゃ好きだった。ものすごくおもしろくて読んでいて楽しくて、笑えるとかいう本でもわたしは笑うことってあんまりないんだけど、これは本当に笑ったところがたくさんあった。京都が舞台で、主人公大学生男子は観光ガイドとかしていて英語の勉強をしようとか思って、外国人とメールをやりとりするようになって、とかいうところが個人的にツボだったり。なんかふと、外国の映画にありそうとか思ったり。

    ってどちらもあらすじを書こうとしても書けなかったんだけれど、なんだろう、タイトル見てもどういう話になるのかわからない感じ、ストーリーが妙な展開というかストーリーがあってないようなというか。すごく津村さんぽいというかユニークだと思う。
    っていうのは、わたしがあらすじを書くのが病的に苦手だからかもしれないけど。

    結局、なんの感想にも説明にもなってなくて申しわけないことです……。

  • 例えば受験生だった年の初詣では合格を願った。
    例えば母の体調が悪かった年の初詣では母の回復を願った。
    そしてどちらの願いも無事に叶ったのだけど、その時に私は初詣に行ったから願いが叶ったとは思わなかった。
    叶わなかったら思い出したかもしれないけど(勝手だなぁ)。

    願いが切実であれば出来ることは全てしたくなる。
    思いつくことは何でもかんでも。
    その一つが神頼みなんだと思う。
    受験生だった年は勉強も頑張ったし、インフルエンザの予防接種も受けたし、学業御守りだって買った。
    その全てが合格に向けて出来ることだった。
    母が具合が悪かった時、私に出来ることは多くなかった。
    何も出来なくても会いに行くこと、一緒にいること。そして神頼み。かなり切実だった。

    この小説でも神頼みはその時出来ることの一つだ。
    自分のことでも、大事な誰かのことでも、出来ることは全部やりたいという気持ち。それが祈りなんだな。
    神様に届いたから願いが叶ったのか。
    それとも個人の努力、能力、生命力、etc.のためなのか。
    本当の本当のところは常に曖昧。
    (むしろそこを曖昧にしないサイガサマはすごい。すごい設定ですよ、津村さん。)
    でもだからこそ全力で頑張れるのかもしれない。
    それがこの世界の優しさなのかも。
    このやさしい小説を読んでそんなことを考えた。

  • 「サイガサマのウィッカーマン」、「バイアブランカの地層と少女」の二篇を収録。共通点は、本作のタイトル通り「これからお祈りに行きます」ということと、主人公が10代後半~20代前半の男子学生ということ。(このタイトルの意味は、読了後しみじみとよくわかります。)
    「サイガサマ…」は、神様に「これだけは取られたくない」もの(手とか心臓とか)を工作して申告し祈りを捧げるという、摩訶不思議な奇祭のある町に生まれ育った男子高校生・シゲルが主人公。その祭りを忌み嫌うシゲルだが、何故だかその祭りに携わる羽目に。
    こういう設定は津村さん初めての試みだな~と新鮮ではあったが、なかなかとっつきにくい展開だった。だけど根底に流れる津村イズムは変わらず!何度か読み返すほどに、張られた伏線の意味がわかってくる。父が倒れ、生活を支えるため複数バイトをこなす同級生のセキヅカ。申告物教室に通う、シゲルの隣家の謎の老女。イケメンだったのに、ある出来事をきっかけにつるっぱげになってしまった小学校の恩師。不登校となり、やけにリアルな内臓の申告物を黙々と作る弟・ミツル。それぞれの人生が絡み合い、意外な真実が浮かび上がってくるところに津村さんの構成の巧さが光る。
    それぞれに深刻さは抱えているかもしれないけど、何故だかふふふと笑いたくなってしまう津村さんの作風が好きだな。このサイガサマも、願いを叶えるときは願をかけたものの体の一部を取っていくって…いきなり目だの指だのがぽろっと取れるってのが考えようによってはグロい!って思うんだけど、何だか自然に受け入れられてしまう。この設定がこうつながるのか!と、納得します。
    ひそかに津村さんのフード描写も私は好きで、祭りでふるまわれる「土手焼き豆腐」がめっさうまそうでした。しめのうどんもこれまたうまそう!レシピ知りたいよ!
    「バイアブランカ…」の主人公・作朗も、つつましく不器用な男子学生。とあるコミュニティがきっかけで知り合った、ブエノスアイレスの女子・ファナとのささやかな交流をきっかけに、地球の裏側での彼女の暮らしに思いを馳せる作朗。だけどそんな彼女の日々に翳りが…。彼女の幸せを願うゆえの、作朗の突発的な行動に対し、人によってはもしかしたら「ええ、ありえない!」と思うかもしれない。でも、私はそんな作朗の健気さを好ましく思う。
    シゲルも作朗も地味目で控えめで、真面目に生きているつもりが、要領が悪いのか欲がないからなのか…時に裏目裏目にいってしまうところがトホホなんだけど、それでも誰かの為に祈る彼らに、すごく共感してしまう。
    ぷっと噴きだしたかと思えば、ちょっとしんみりさせられたり、なりふり構わなさに胸が熱くなったり、でもまたぷっと噴いてしまったり…。この、真面目さと滑稽さの同時進行!津村さんならではだよなと。今回もやられましたよ。
    「何事もないように。いやもちろん何事かはあるだろうけど、あらゆる物事ができるだけ早くそこから回復できるように。」
    この一文が心に響くな~。笑いながらも、私はちょっと涙が出そうになりました。

  • 面白かったぁ~~!  不機嫌な高校生男子・シゲルの閉塞感溢れるリアルな日常の話なのだけど、同時にとても優しい&不可思議な町の祈りにすっかりやられてしまいました。

    津村さん、また新境地ですね。(#^.^#).





    よそに女がいるらしい父親、どうにも頓珍漢な母親、不登校の中学生である弟、とどこを向いても楽しい要素がない高校生・シゲル。
    ただ、始まってすぐのページから、何かこの町には奇妙なお決まりがあるらしい、ということがわかります。絶妙に不親切な(#^.^#)語りなので、どこが変わっているのかなかなか実態が見えてこないのだけど、

    どうもサイガサマという神様が土着の信仰対象とされているらしい、
    何かをお願いして叶えてもらうとその人は体の一部を失う、
    だから、ここだけは持って行かれると困るという部位を紙粘土なり、ニットなり、折り紙なりで“申告”する、
    という、なんか怖いんだか、可笑しいんだか、わからないもので、

    でも、その申告のための祭りが毎年当たり前のように執り行われているという…。

    シゲルは公民館でバイトをしている関係から、その祭りのための部位づくりの講座を手伝うことになる。
    シゲルを含む町の人々はサイガサマを本当に信じているのか、どうか微妙な描き方で、そこがまた面白い。(#^.^#)

    シゲルは、
    サイガサマは神さまの中ではとても力が弱いので、そうやってもらい物をしないと力が発揮できない、と漠然と感じてはいるみた。

    体のどこかが無くなってしまう、なんて、どこであろうがとんでもないことだと思うのに、町の人たちが呑気に申告物の準備をしている様が、うん、読ませられてしまうんだよね。


    ネタばれです。







    私はなんだかんだ言って、ただの罪のない風習じゃないの、と思ってたんだけど、

    後半、遠足の際の大雨から小学生たちを無事に学校に連れ帰った先生が次の日には髪の毛全部を失っていた、とか、クラスメートのセキヅカが長い入院をした後、お父さんが長い眠りに入り、セキヅカは元気に退院、なんていう“実例”が出てきたりして、そっか、そうだったのか、なんて。(#^.^#)

    シゲルはずっとヒドいニキビに悩まされていたのに、セキヅカのお父さんの無事を祈り、顔半分だけニキビが無くなる。半分だけかよ、へたくそ、なんてサイガサマをなじるシゲルがまた可笑しいし、願いは自分のため、ではないところがポイントなんだね・・。


    こんな変なお話を考えてしまう津村さんって!! (#^.^#)
    町全体で奇妙な習わしを受け入れてしまっている人たちが好ましく、津村さん、大好きです!と言いたいです。 

  • 津村作品初の男性主人公ということで、どうなってるかと思ったが、すごく良かった。特に「サイガサマのウィッカーマン」は、これまでのものとはひと味違って、作品世界が広がった感じ。
    津村さんの、よくも悪くもだらだらとあまり起伏なく進む感じが大好きだが、さいがさまはストーリーがそれなりにあって、より「文学」っぽい。センター試験の問題にしてもいいような?!

    物語も、奇習といってもよさそうな伝統行事がいい味だしてる。津村さんの筆でなければ、もっとおどろおどろしくなってしまうかもしれないほどに。

    とはいえ、やはり津村作品の、ぼわぼわんと、でも鋭く細部をすくいとる感覚は健在。

    もうひとつの「活断層」の方は、男子大学生が主人公だが、こちらの方がこれまでの作品に通じるものがあった。

    といわけで、津村さんの新境地を垣間見ながら、かつての味わいも堪能できて、楽しい読書となりました。

  • 願いを叶えるためには何かを持って言ってしまうと言う神様サイガサマ、これだけは持って言ってくれるなというものを申告物として制作し、それを冬至の日に燃やすという変わったお祭りのある地域に住む高校生シゲルの話。

    まずはそのサイガサマのお祭りと申告物を作るという習慣におののきながら、なかなか入り込めずにいました。
    お祭りの習慣というのは得てして不可思議なものであるものですが、サイガサマはなんだか頼りなげで思わずクスクスと笑ってしまう感じです。

    今年のお祭りを経て、シゲルの周りにも変化があり、サイガサマは皆の願いを叶えていたようで良かった良かった。

    ウィッカーマンは挿し絵のような感じなのでしょうか。
    それが燃える…さすがに怖い。
    お祭りですから盛り上がるのかな。

    もうひとつの短編、『バイアブランカの地層と少女』はかなり好みの作品。
    津村さん節満載で、所々で吹き出しながら読みました。

    母をたずねて三千里にもフアナという女の子が出てきましたね。
    なので、作朗のメル友のフアナの容姿もある程度想像できました。

    作朗の心の言葉、エンドーとのやり取り、あー楽しかった♪

  • サイガサマという神様を信仰している地域の人達のお話
    神話や神様は
    時として不条理で。
    不思議な読ませる力を持った1冊。
    サイガサマいるのかもしれない。

  • 震災後の作品。「神も仏も信じないけど、祈らずにはいられない」。そこがツムラキクコ。

  • まるで、普通にあるような風景がなんとも不思議であるが、心地よく読める。こういう家庭も地域もあるよね、と。「バイアブランカの~」も、この主人公になぜか応援したくなる。身近にいそうで。

  • すごく好きな世界観だった。

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著者プロフィール

津村 記久子(つむら きくこ)
1978年、大阪府大阪市生まれ。大阪府立今宮高等学校、大谷大学文学部国際文化学科卒業。
2005年「マンイーター」(改題『君は永遠にそいつらより若い』)で太宰治賞を受賞し、小説家デビュー。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、2009年『ポトスライムの舟』で芥川龍之介賞、2011年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、2013年「給水塔と亀」で川端康成賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2017年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞、同年『アレグリアとは仕事はできない』で第13回酒飲み書店員大賞受賞をそれぞれ受賞。
近刊に、『ディス・イズ・ザ・デイ』がある。

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