- 本 ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041104842
作品紹介・あらすじ
山本監督と梨田ヘッドに「(ダブルスチールを)狙わせますよ」と確認を取った。
山本監督は「おー、行かしてくれ」と言った。
2点負けているのだ。黙っていても成り行きでゲームは動かない。
この場面での重盗は、野球のセオリーからは外れているかのもしれない。
しかしだからこそ、相手は油断している。
相手のスキをみつければ、そこにつけこみ、傷口を広げて止めを刺す。
それが侍ジャパンが目指してきたスモールベースボールの神髄である。
ここで狙わずして、何がスモールベースボールか。(本文より)
感想・レビュー・書評
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昨年の夏に読んだものを再読了.
個人的に,2013年の野球本の中で第二位に入る傑作だと思う.
第三回 World Baseball Classic のメンバー招集から帰国の途につくまでの高代氏の回願録.
これでもかという程の準備と根拠に裏付けられて野球は動いているのか!と驚愕せざるを得ない内容の濃さは野球好きにたまらない.
野球というものは筋書きのないドラマであるが,しかし,かならず伏線は存在するのである.
2014年1月という時間軸からこの本を読み返すと,マウンド上で顔面蒼白になる田中将大や,前田健太の投球術に翻弄されるオランダ代表ウラディミール・バレンティンの姿がある.誰も,彼らが24勝0敗の数字を残す神となり,捕手が中腰になるほどの高めの直球をスタンドに持ってゆくほどの新たな伝説となることは想像できなかっただろう.野球界というものは,半年でこんなにも変わるものなのかということにも驚く.
この本の中でやっぱり印象に残るのは,井端弘和,そして鳥谷敬というふたりの職人の姿だ.
侍ジャパンに集った内野陣は,みな井端に尊敬の念を抱いていた.井端を「真似ぶ」ように守備の上達してゆく本多雄一や坂本勇人がどのような表情をしていたのか,ということには想像力が刺激される.
鳥谷については,2次ラウンド台湾戦での「伝説のスチール」の裏にある数々のエピソードにも唸らされるが,サンフランシスコでも早朝のウエイトトレーニングを欠かさなかったという話もまた印象深い.高代とは広島時代に縁のあった金本知憲が,「阪神で見込みがあるのは鳥谷と赤星だけですわ」と高代に語ったという記述があるが,果たして2014年に阪神の内野守備走塁コーチに就任した高代はどのようにチームを変えてゆくのだろう,ということにも注目したい.
ところどころに書かれる「NPB と WBC のゴタゴタ」もまた,内実を知らないと描けないというところまで言及されていて興味深い.これらの記述を「反省」と捉えて新しい一歩を踏み出せるのか.優勝という結果をのこして「めでたしめでたし」とならなかったからこそ,日本の野球界のポテンシャルが問われているのだなぁと改めて思う.詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
正論の恨み節。
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2013.9.17読了。
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あの激闘の裏側を少しのぞける。当事者の言い分であることを差し引いても、NPB上層部の不甲斐なさで現場にしわ寄せがいっていたことは間違いないだろう。ところどころ書かれている提言は、提言というより悲痛な叫びに聞こえた。
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