レモンケーキの独特なさびしさ

制作 : 管 啓次郎 
  • KADOKAWA/角川書店
3.35
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本棚登録 : 234
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041104859

作品紹介・あらすじ

「種明かしをするわけにはいかないので、ここではただ、この本を書いているあいだ、感じやすい(sensitiveである)とはどういうことかについてたくさん考えていた、とだけいっておきましょう」――エイミー・ベンダー

9歳の誕生日、母がはりきって作ってくれたレモンケーキを一切れ食べた瞬間、ローズは説明のつかない奇妙な味を感じた。不在、飢え、渦、空しさ。それは認めたくない母の感情、母の内側にあるもの。
以来、食べるとそれを作った人の感情がたちまち分かる能力を得たローズ。魔法のような、けれど恐ろしくもあるその才能を誰にも言うことなく――中学生の兄ジョゼフとそのただ一人の友人、ジョージを除いて――ローズは成長してゆく。母の秘密に気づき、父の無関心さを知り、兄が世界から遠ざかってゆくような危うさを感じながら。
やがて兄の失踪をきっかけに、ローズは自分の忌々しい才能の秘密を知ることになる。家族を結び付ける、予想外の、世界が揺らいでしまうような秘密を。

生のひりつくような痛みと美しさを描く、愛と喪失と希望の物語。

感想・レビュー・書評

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  • おもしろかった。半分くらいご飯の話していた気がするけど、主人公の能力の影響で、読んでいてもお腹がすいてこなかった。著者のあとがきの「感じやすい人々」という表現はなるほどそうかと思った。どこか発達していると人の感情の機微に気が付きやすくて、生きづらい。うまい呼吸の仕方を見つけられる人もいれば、特定のものごとを避ける人も出てくるし、もちろん生きていけない人もいる。そういう話なんだなあと思った。
    訳のせいか元々の文章のせいか分からないけど若干読みづらい文章だった。

  • 食べ物に敏感でその産地から作り手の気持ちまで感じてしまうローズ,その生きにくさを思うと怖くなるほどだ.9歳からその能力?に目覚め,ただ生きるためにあるいは食べるために払う努力工夫に圧倒される.そしてその兄のジョーのまた変わった性質,違う物の世界へと侵食される様な形に,ローズだけは気がつく.ただ生きて行く事の大変さにおずおずと手探りしているかの様な,そんなローズの人生に幸せが訪れそうな予感で物語が終わって,ほっとした.ところで,お父さんの能力ってなんだったんだろう.それがとても気になる.

  • カフェで見かけて、どうしても読みたくて買った。やっぱ良かった。

  • エイミーベンダー、待望の長編第二作品目。
    訳本が発売されるまでの6年間、ペーパーバックを買って原文に挑戦しようかとも思ったものの、菅さんの訳文も読みたい上にそもそも私の読解力では英文ままなんて無理であったので、文字通りの待望。
    買って直ぐ読もうかと思ったものの、自分のタイミングで読みたかったので、結局随分と間が空いてしまった。

    感じやすい/sensitiveこと、について思って書いたと作家あとがきにあったが、その中でも、過ぎることと足りないことの線引きはどこにあるのか?という疑問が自分のなかのそれとピッタリ寄り添って、長年感じていた疑問がローズという少女の形をとって目の前に現れてくれた感覚に陥った。
    確かに一見、物語のあらましを上澄みだけ文字に起こせばファンタジックということばで簡単に片付けられそうなものなのだろうけれど、作者の微細な心の揺れが突拍子もない出来事を語る節々で現実世界にくっついて離れない。
    それは「レモンケーキの独特なさびしさ」というタイトルに収束する。ローズの生と兄ジョゼフの生と両親の生、欠落と過剰。
    長編第一作目『私自身の見えない徴』にも感じたことだが、短篇作品に在る、息を吸うと満ちるのに手に取ろうとするとすり抜けていくような感覚を内包しながら、ひとつの軸をもって展開されるひとつの生に、読者のわたしはいちいち涙ぐんでしまう。大切な作品のひとつになりました。
    菅啓次郎さんの訳も素晴らしい。「母」「ママ」「彼女」ところころ変わる形容など、細かいところもいちいち気にかかってしまう(いい意味で)。

  • エイミー・ベンダーは、はっとするような言葉で読者を引き寄せたりしない。訥々と単純な言葉を重ねてゆく。けれどもその言葉の組み合わせが穏やかではないので、とても非日常的な物語が展開する。しかしそれもよくよく眺めてみれば、誰にでもある小さな違和感を少しだけ別の出来事のように描いてみせるだけなのだ。決して大袈裟に言ったりしないだけで。

    sensitiveとtoo sensitiveの間のどこに線を引けばよいのか、という問い掛けが日本の読者向けた作家の文章の中に出て来る。恐らくその疑問に対する物語であることが本書の全てであり、結果として、自分を取り巻く世界に対して生まれて初めて抱いた違和感が、実はまだ身体の中に記憶として残っていることを、読み進める内に気付かされることになる。もちろん本書の主人公のように、皆その違和感を、例えばピーマンが食べられるようになるように飲み込み、気にしないようにすることを覚えてゆく。それがsensibleであると、自分を取り巻く社会が要求していることに従うことを受け入れるのだ。たとえそれを善しとしなくとも。

    違和感に共感するという自家撞着。けれども鬼束ちひろの言葉に耳を傾けたり、エイミー・ベンダーの文章に身を寄せたりする人がいるという事は、それが誰にでもある違和感だと言うことを示している。岡崎京子の言葉にあるように『ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね』。あるいは、忘れたフリをしてしまうね。

  • 私はこの翻訳がぴったりだとおもった!

  • 9歳の誕生日、母がはりきって作ってくれたレモンケーキをひと口食べた瞬間、ローズは説明のつかない奇妙な味を感じた。不在、飢え、渦、空しさ。それは認めたくない母の感情、母の内側にあるもの。以来、食べるとそれを作った人の感情がたちまちわかる能力を得たローズ。魔法のような、けれど恐ろしくもあるその才能を誰にも言うことなく―中学生の兄ジョゼフとそのただ一人の友人、ジョージを除いて―ローズは成長してゆく。母の秘密に気づき、父の無関心さを知り、兄が世界から遠ざかってゆくような危うさを感じながら。やがて兄の失踪をきっかけに、ローズは自分の忌々しい才能の秘密を知ることになる。家族を結びつける、予想外の、世界が揺らいでしまうような秘密を。生のひりつくような痛みと美しさを描く、愛と喪失と希望の物語。

    訳が分かりにくいなとは思いましたが、それ以上に内容についていけなかった。ファンタジーがテーマではないよね、これは。ジョゼフは彼の秘密のせいで家族や友人に対して壁を作っていたということ?妹の能力を知った時に打ち明けることは考えなかったのかなと疑問でした。結局超能力の家系ですはい終わりっていう感じで、何が言いたいのか私にはさっぱりな終わり方。ジョージの果たす役割もいまいち謎でした。ローズがパニックになっていたときに支える友人ってことなんだろうか。タイトルがめちゃくちゃセンスいいなと思って読み始めただけに残念な内容。合う人には合うのかもしれない。

  • ローズは、9歳のときレモンケーキを食べた瞬間奇妙な感じを覚えた。それは、ケーキを作った母親の内側にあるもの。空しさや不安だった。それ以来ローズは食べたものから作り手の感情や素材の生産過程などが分かるようになる。
    母は兄のジョゼフを溺愛している。どのジョゼフは、科学において天才的な才能を持ちながらも、他人と打ち解けることがなく、自分の世界に生きている、ただ一人の親友ジョージを除いては。
    ローズは、自分の特殊な才能を誰にも打ち明けられずにいるが、兄とジョージにだけは伝える。兄は、無関心だがジョージはすぐに信じてくれて理解もしてくれる。
    ローズはその才能ゆえに母親の浮気をしってしまう。そして、兄の失踪。
    成長したローズは、無関心であり続けた父親から自分の才能の秘密を知らされ驚きとともに家族の結び付きとかつてない安堵感を抱く。

    その才能にちょっと突飛な設定と思わざるを得ないが、読後はやわらかい感情にひたれて良かった。

  • ただただ憂鬱な話で読み終わったあとも、なんとなく嫌な気持ちでした。
    特にお兄ちゃん、なんでああなっちゃうかなー
    主人公の気持ちの描写など素晴らしいと感じる場面もありましたが、内容は全体的に中途半端でした。
    アマゾンのレビューでよく見かける訳の酷さはあまり感じませんでした。わざと、ああいうリズムにされてるんだろうと思います。( さすがに「へーい」はあんまりですが)

  • 読みづらく、飲み込みづらい。主人公ローズが、レモンケーキを飲み込みづらかったように。

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プロフィール

1969年生まれ。カリフォルニア大学出身。小学校教諭をつとめた後、最初の短篇集『燃えるスカートの少女』(角川文庫)で鮮烈なデビューを果たす。2010年に刊行した長篇第二作目となる本作は全米ベストセラー入りを果たし、新たな代表作に。邦訳に長篇『私自身の見えない徴』、短篇集『わがままなやつら』がある。2013年には三作目の短篇集『The Color Master』を刊行。南カリフォルニア大学で教えながら精力的に執筆活動を続けている。ロス・アンジェルス在住 。

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