- 本 ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041104866
作品紹介・あらすじ
突然、地球の自転が遅くなり始めた。気候や農作物、人々の心にも変化が生じるなか、ロス郊外の町に暮らす少女・ジュリアを取りまく状況も変わっていく。なんとか生きのびようともがく人々の姿を静謐に描く。
感想・レビュー・書評
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地球の自転がどんどん遅くなるという謎の現象、スローイングにより一日が徐々に長くなってゆく世界。目に見える変化は急激にではなく、ゆっくり、しかし確実に進んでゆく。11歳の少女ジュリアの目線でアメリカの日常を描きながら、着実に迫ってくる崩壊の日を待つ人々の生活が妙にリアル。恋、友人関係、両親との関係、全てが不安なことだらけなのに、そこに地球はどうなってしまうのだろうという大きな不安が加わる。思春期の少女と終末の地球、一見ミスマッチだが何故かすばらしい物語になっている。
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文学
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地球の自転が減速しはじめ、人類に生活が影響がではじめた世界を、十一歳の少女ジュリアからの視点で描く。
SFとYAの融合。SFには疎いのでYA視点からだと、オーソドックスな要素。両親の不仲、周囲への融け込めなさ、友人との仲違い、気になる男の子など。
個人的には主人公の年齢が幼すぎて、それゆえ大人から見れば些細なことに悩んだりするのであまり面白くなかったけれど、小説として結への持って生き方は話題書ということもあって、終わりよければすべてよしみたいな印象。 -
静かに終える・・・
少しずつ変化していく毎日
それは奇跡なのか?? -
世界が終わろうとしているのか、それとも新たな世界の始まりなのか。
すぐには気付かなくても、今日は気付かなくても、明日には、明後日には、一週間後には、一年後には変わっている。
地球の自転速度が、低下した。
11歳の主人公、ジュリアにとっては、世界相場の乱高下、鳥たちの突然死、そういったものよりも、「普通の生活」の方が大事だった。
時計がおかしな時を刻んでいることよりも、親友のハナが遠くに行ってしまったことの方が悲しかった。
そして、ハナがある日戻ってきた時、自分よりも仲の良い友達ができていて、自分を疎ましく思っていることに打ちのめされていた。
あるいは、いじめっ子のダリルが服をめくったためにあらわになった胸を、淡い恋心を抱くセスに見られてしまったことに悲しみを覚える。
そして、彼の母がガンに蝕まれ、そこに触れてしまったことで彼と話せなくなってしまったことに。
大人たちは少しずつ理性を失っていく。
それは恐怖から来るものだったり、諦めによるものだったりした。
時計の時間に合わせて暮らす方が幸せなのか、それとも現実の時間に合わせる方が効率的なのか。
それは誰にもわからなかったからだ。
地球は終わりを迎える準備を進めていたのか。
自分自身が大きな箱舟となって、生き物たちをどこか遠いところまで運ぼうとしていたのか。
物語はなんの結末も示さない。
ただ、匂わせるだけだ。
もしかしたら、絶望の中でも人は希望を持ち続け、地球外に移住し、幸せな生活を取り戻すのかもしれない。
もしかしたら、絶望しかない中で人は全てを諦め、地球とともに、最後を見届けたのかもしれない。
どちらも全く同じ世界だとしたら、私はどちらの世界を見るだろうか。
奇跡とは、何を指すのだろうか。 -
ある日突然始まった地球のスローイング。自転速度が遅くなり1日が徐々に長く、昼と夜の時間が長くなる。その結果作物は育たなくなり昼と夜のリズムが乱れることで経済活動にも影響が出る。徐々にスローイングは激しくなり…。このすさまじい環境の変化と人類の死滅を11歳の女の子の目を通して描いている点が斬新。
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地球の自転に異変が起きて以降の日々が描かれている。
未来を託されたヒーローも混乱するだけのその他大勢も出てこない。
苛酷な環境の変化の中過ごした少女時代の思い出が淡々と語られていて、じわじわと切ない。 -
ある日地球の自転がどんどん遅くなって、という地球的な規模の危機の時代に、毎日をたんたんと生きている13歳の少女のタウンライフを、リアルとシュールリアルをシームレスにないまぜにして描いたもの。処女作と思えないくらいに、洗練された描き方をしている。
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地球の自転がだんだん遅くなったら・・・
少女の視点から人類の終末を描いた作品
でも、一貫して物悲しさが背景にある気がした -
自転の速度が変わるなんてありそうでなかった斬新な設定。
かといってパニック小説ではない。
自転の速度が変わったらどうなるのか、その状況の変化に気を取られるかと思ったが、読み進めると、主人公の心の動きが気になって没頭してしまった。
雨海弘美の作品





