- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041104866
感想・レビュー・書評
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地球の自転がどんどん遅くなるという謎の現象、スローイングにより一日が徐々に長くなってゆく世界。目に見える変化は急激にではなく、ゆっくり、しかし確実に進んでゆく。11歳の少女ジュリアの目線でアメリカの日常を描きながら、着実に迫ってくる崩壊の日を待つ人々の生活が妙にリアル。恋、友人関係、両親との関係、全てが不安なことだらけなのに、そこに地球はどうなってしまうのだろうという大きな不安が加わる。思春期の少女と終末の地球、一見ミスマッチだが何故かすばらしい物語になっている。
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世界が終わろうとしているのか、それとも新たな世界の始まりなのか。
すぐには気付かなくても、今日は気付かなくても、明日には、明後日には、一週間後には、一年後には変わっている。
地球の自転速度が、低下した。
11歳の主人公、ジュリアにとっては、世界相場の乱高下、鳥たちの突然死、そういったものよりも、「普通の生活」の方が大事だった。
時計がおかしな時を刻んでいることよりも、親友のハナが遠くに行ってしまったことの方が悲しかった。
そして、ハナがある日戻ってきた時、自分よりも仲の良い友達ができていて、自分を疎ましく思っていることに打ちのめされていた。
あるいは、いじめっ子のダリルが服をめくったためにあらわになった胸を、淡い恋心を抱くセスに見られてしまったことに悲しみを覚える。
そして、彼の母がガンに蝕まれ、そこに触れてしまったことで彼と話せなくなってしまったことに。
大人たちは少しずつ理性を失っていく。
それは恐怖から来るものだったり、諦めによるものだったりした。
時計の時間に合わせて暮らす方が幸せなのか、それとも現実の時間に合わせる方が効率的なのか。
それは誰にもわからなかったからだ。
地球は終わりを迎える準備を進めていたのか。
自分自身が大きな箱舟となって、生き物たちをどこか遠いところまで運ぼうとしていたのか。
物語はなんの結末も示さない。
ただ、匂わせるだけだ。
もしかしたら、絶望の中でも人は希望を持ち続け、地球外に移住し、幸せな生活を取り戻すのかもしれない。
もしかしたら、絶望しかない中で人は全てを諦め、地球とともに、最後を見届けたのかもしれない。
どちらも全く同じ世界だとしたら、私はどちらの世界を見るだろうか。
奇跡とは、何を指すのだろうか。