里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)

  • KADOKAWA/角川書店
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レビュー : 359
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041105122

作品紹介・あらすじ

「社会が高齢化するから日本は衰える」は誤っている! 原価0円からの経済再生、コミュニティ復活を果たし、安全保障と地域経済の自立をもたらす究極のバックアップシステムを、日本経済の新しい原理として示す!!

感想・レビュー・書評

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  • 6年前(2013年)に刊行されベストセラーになった本だが、仕事上の必要があって、いまごろ初読。

    「40万部突破」だそうで、私の手元にあるものは2018年2月の第19刷。
    スタジオジブリの近藤勝也による描き下ろしイラストを用いた、特製の「全面帯(新書の全面を覆う帯)」で飾られている。
    全面帯は通常の帯よりコストがかかるため、よく売れた本や売れるであろう本にしか使われないのだ。

    中国地方限定で放映された、NHKのドキュメンタリー番組がベースになっている。

    「里山資本主義」とは、本のカバーに書かれた定義によれば、「かつて人間が手を入れてきた休眠資産を再利用することで、原価ゼロからの経済再生、コミュニティー復活を果たす現象」のことだという。

    これだと、ちょっとわかりにくい。
    「かつて人間が手を入れてきた休眠資産」とは、具体的には「里山」など〝自然の中の休眠資産〟を指す。
    安い輸入材に駆逐されて無用の長物と化していた里山の木材などを、これまでとは違う形で再利用することで、過疎地域に新しい自立の道を拓くのが「里山資本主義」なのである。

    本書で「里山資本主義」と対置されているのが、「マネー資本主義」。資本主義の爛熟の果てに生まれた、〝マネーゲームを中心に据えた投機的資本主義〟を指している。

    日本の中国地方山間部や、瀬戸内海の島しょ部、さらにはオーストリアの小さな地方都市で展開されている、「里山資本主義」による地域再生の事例が紹介される。

    田舎暮らしをロマンティックに推奨する本だけの本なら、山ほどある。そこから一歩踏み込んで、地方再生の方途としての〝田舎暮らし2.0〟を論じたのが本書なのである。

    リーマンショックと「3・11」によって、「マネー資本主義」の脆弱性が決定的に露呈し、〝経済的価値観のパラダイムシフト〟を求める機運が高まったことが、本書の背景になっている。

    ただし、本書は〝里山資本主義がマネー資本主義に取って代わる〟とか、〝原発に完全に訣別して自然・再生エネルギーだけで暮らす〟などという、「お花畑」な夢物語を述べたものではない。

    著者たちは「里山資本主義」を、「マネー資本主義の生む歪みを補うサブシステムとして、そして非常時にはマネー資本主義に代わって表に立つバックアップシステムとして」捉えているのだ。
    エコロジストにありがちな極端な主張に陥らない、冷静な論調に好感が持てる。

    何より、とかくネガティブに捉えられがちな日本の少子高齢化・地方の限界集落化などがポジティブに捉え直され、日本の未来に希望を抱ける書である。
    だからこそベストセラーになったのだろう。

  • たまには違う分野の本を、と思って読んでみたのですが、本質は自分の分野と同じで、一周まわって戻ってきた感じです。

    里山資本主義。
    おもしろいですね。
    里山で生活しなくても、街にいてもできる、始められるというのがいい。

    豊かさとは何か。

    私たちの不安や、不信や、不満はどこから来ているのか。
    深く、深く、掘り下げてみること。
    その先で、見えたもの。

    その上で、「懐かしい未来」へ。

    読前と読後で世の中が違って見えてくる、そんな一冊でした。

  • 今更感がありますが、ふっと古本屋さんで目に入ったので手に取って読んでみた。興味深いところもあったが、最終章で現代的な資本主義をボロクソに言い、里山資本主義が救うと言うあたりのロジックが少々乱暴に聞こえる。

    自分の理解としては、現状のマネーを基準とした経済とは別の経済網、とくに過疎化した自然が豊かな場所において地元の資源をお金ではない収入(食料や燃料)として入手することによってセーフティネットにするというもの。またその副次的な資産として、自然から”収入を得る”ために他者との協力が不可欠で、つながりも強化されるという事。

    イノベーティブという単語がいくつか出てきた気がするが、近代から現代に移行するにあたって切り捨てられてきた非効率的な自然資産を今の技術を使って、より効率的に使用しようといったところか。

    オーストリアが国をあげて原発を排除し、豊富な森林からエネルギーを得ることを真剣に追求している姿は非常に興味深い。また高知県の収支をベースに、農漁業は黒字にも関わらず、県外から購入する飲食料品が圧倒的に赤字であり、そのギャップを埋めようとするという方法は色々な街でも参考になるのではないか。

    P.129 地元農家はこれまで、マネー資本主義の中では市場価値のない半端な農産物を捨て、地元福祉施設はこれまで、地域外の大産地から運ばれてきた食材を買って加工していた。全国レベルで見れば効率のいいシステムかもしれないが、地域レベルで見れば外へお金が出て行くだけの話だ。ところが捨てていた食材を地元で消費するようになれば、福祉施設が払う食費は安くなり、しかも払った代金は地元農家の収入となって地域に残る。農家の収入が増えるだけでなく、関係者にやる気も出るし、無駄も減る。地域内の人のつながりも強くなる。

    P.134 歌舞伎や文楽、浮世絵といった日本独特の文化が花開いていた江戸時代、オーストリアではワルツや交響楽、オペラといった欧州文化の枠が花開いていた。カフェでコーヒーを飲む習慣も、フランス料理の原形となった料理文化もこの時期のオーストリア発祥だったし、二〇世紀初頭にはクリムトに代表される画壇が華やかだった。時は流れ、日本発のカジュアル文化、たとえばマンガやアニメ、カワイイ洋服、映画に絵画、それに日本食は、引き続き世界に評価され発信されている。
    しかしオーストリア発の現代文化と言われると、女性に人気のスワロフスキーのクリスタルガラス製品以外、ちょっと具体名は思いつかない。チロリアンやチロルチョコは福岡県の産品だし、戦後の一時間日本でも絶大な人気を誇ったトニー・ザイラー以降、有名人も出ていない気がするというと失礼だろうか。
    だが、そのように歴史的に見れば停滞・後退を重ねてきたオーストリアは、にもかかわらず、質的にも金銭的にもとても豊かな生活の営まれる、美しい民主主義の国だ。

    P.142 お金を払って製剤屑を引き取ってもらい、他方で電力を買っていた今までのやり方を、自分で木くずを燃やす事で発電するのに切り替えたということは、結局自社内で木くずを電力に物々交換したわけだ。その結果、億単位の取引が消滅してしまった。その分、貨幣で計算されるGDPmo減ってしまったことになる。だが真庭市の経済がこれで縮小したわけではない。市外に出て行ったお金が内部に留まるようになっただけだ。

  • 読後感は内田樹さんや養老孟司さんの著作を読み終わったときのものに近い。つまり、いまの私が言葉にならずにしまいこんでいた漠然とした不安を目に見える形で提示し、目を啓かせてくれた感じとでも言えばいいだろうか。ただし内田氏や養老氏が何と言うか精神的な論であるのに対し、本書はあくまで経済論なのでより目に見える具体的な形で現在の状況を描写しようとしている。だからこそスッキリ感はあるが、逆に疑問を感じることも多い。ただ、多くの人にとって新しい視野が啓ける内容であることは間違いないと思う。事実、この本を貸した高校3年生の男子がむさぼるように読み切りました(笑)。

  • 木屑で発電し、石油・石炭の値段に左右されない地域経済を営もうとしている地域がある。この秋私は真庭市を訪れ、そこの「バイオマス政策課」で担当者からほんの少しだけ説明を聞いた。その時に彼は「こういうことが出来るのは、この地域にたまたま製材産業があったためや、他の条件が重なったためです」と、わざわざ断りを入れたものである。石油よりもコストが安く、CO2も出さないこのエネルギーが日本の未来を救うのではないかという顔を私がしたためだろうと思う。この本によれば、真庭市のエネルギーは11%を木のエネルギーで賄っていると書いているが、実はこの数字、既に古い。私が見たのは13%だった(と言うことは、約1年で2%増えたということだ)。再来年四月には、市の全世帯の半分の電力がまかなえる発電施設が稼働するという。確かに、それもこれも、豊かな森林とそれだけの木屑を産み出す製材が製品化されなければ、出来ないことなのではある。その意味では、担当者の言うことは正しい。だがしかし‥‥。

    私の住んでいるのは、岡山県なので、この本の元になったNHK広島の「里山資本主義シリーズ」は何本かを観ている。テレビの映像でイメージはわかっていたのであるが、世界経済として自立発展している様子は、やはり活字で読んで初めて知ったことが多かった。

    現在アメリカを中心に世界を覆う「マネー資本主義」。それに盲目的に従う日本政府と財界。この動きに大いなる「不安」を感じているのは、私だけではないだろう。

    著者は里山資本主義をマネー資本主義の歪みを補うサブシステムである、と一概に控えめに書いている。しかし私は、マネー資本主義のカウンターシステムとして、その主張をするべきであると思うし、本を読んで十分にその資格があると思う。もちろん、バイオマスは再生可能エネルギーの一翼でしかないし、直ぐにということではなく、50年後ぐらいが目安だとは思うのではあるが。

    現在、マネー資本主義は弱肉強食がもたらす「奈落の底」へとズルズルズルズルと国民を引き込んで行こうとしている。それは、3.11という究極の黒船でも変わらなかった。結局は国民が自らの手でそのトビラを開けなくてはならないのだ。里山資本主義という、一つのアンチテーゼを携えて。
    2013年11月2日読了

  • この本は都会の近代的な生活を捨てて、山で本来の暮らしをしましょう。と勧めている本ではない。
    しかし、何もかもをお金で買おうとするのではなく、お金に依存しないサブシステムを構築し、いいとこどりをしてリスクヘッジを図る。
    ひいては、その生活が豊かになっていくという考えだ。
    東日本大震災の時に、今までの経済だと全く生活ができなくなる事を知った。
    もし今後、それを上回る南海トラフ地震などが起きれば、大都会で生活する人の大部分が生きていくことはできないだろう。

    内容は目から鱗だった為、いくつかの事例を紹介いたします。
    ・岡山県真庭市の銘建工業は世界でもトップクラスの木質バイオマス発電を行っている。製材で出る木くずを燃料として発電しているのだ。
    24時間フルタイムで稼働し、1時間あたり2000キロワット。100万キロワットという原発に比べると、微々たる量に見えるかも知れないがそういうことではない。
    銘建工業では電力を購入していない。すべてバイオマス発電によって賄っている。それだけで年間1億円の電気代が浮く。
    余った電気を売る。それが年間5000万円の収益。今まで産廃に題していた木くずの処理費用が年間2億4000万円。
    合わせて年間4億円程の利益が出ている。
    ・昔は「シェア」という言葉は市場占有率を表していた。今では「分かち合い」という意味で受け取められるようになっている。
    ・ヨーロッパでは木造高層建築が進んでいる。
    CLTという技術の集成材により、9階建てのビルも木造で建築しているらしい。
    しかし日本は建築基準法により、高層の木造建築を建てることはできない。
    ・日本と同様に資源の無い国オーストリアのギュッシングという町は、木質バイオマスのエネルギー自給率が72%を超えた。日本は0.3%。
    ・高齢者が家庭菜園で作り、自身で食べきれない野菜を施設に譲ってもらう。施設は域外から野菜を買っていた買っていたコストが減る。
    高齢者は自分の作った野菜が役に立っているという生きがいを得られる。
    さらに野菜の対価として地域通貨を渡す。その通貨で近所のレストランに行き食事をする。
    そこには近所の老人が集まる為、みんなで話をし、つながりが得られる。

    今まで自分が正しいと思ってきた、いや、正しいと思い込んでいたマネー資本主義が、「どうやら違った見方もあるぞ。」
    と思わせてくれた一冊です。

  • 可能性はあらゆるところに眠っていると気づかされた。今までうまくいっていたやり方が、これからも通用するとは限らない。時代を見据えながら、今必要なこと、何に価値があるのかを見出せるよう意識していけたらと思う。

  • 当たり前のように浸透しているマネー資本主義に対して、必ずしもそうでない価値観の考え方もあるよ、との気づきを与えてもらいました。
    実際にそれで回り始めている地方の事例が多数紹介されていますが、同じような考え方は、世界的に見た地方、すなわち途上国にも適用できるのかも、と思います。
    あと、これに限らず、○○資本主義という違った価値観の提案がもっと色々とあってもイイのかもしれません。

  • アメリカの「マネー資本主義」に毒された日本。都会では働いても給料は家賃・光熱費などに消え暮らしは一向に豊かにならない。幸い日本は国土の66%が森林で、田舎は豊富な資源の宝庫。「里山資本主義」は人や自然とのつながりを大事にする田舎暮らしの発想。生きるのに必要な水と食料と燃料をお金をかけずに自給自足し続けるシステム。これはマネー資本主義から決別できない都会人にもサブシステムとして併用が可能。でも人口当たりの自然エネルギー量が豊富な過疎地にこそ里山資本主義の可能性がある。

  • マネー資本主義に対する里山資本主義。読み始めは自分の故郷と比較して、本書にあるようなエネルギーを供給してくれそうな里山はなさそうな事例紹介に、読書スピードが上がらなかった。しかし、後半はどのような街でも実践できそうな事例と、日本経済衰退論へのアンチテーゼは読み応えがあり、読むスピードが自然上がった。順番は前後したが、次は藻谷氏の『デフレの正体』を読もう。

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著者プロフィール

1964年、山口県生まれ。㈱日本総合研究所調査部主席研究員。1988年東京大学法学部卒、同年日本開発銀行 (現、㈱日本政策投資銀行)入行。米国コロンビア大学ビジネススクール留学、日本経済研究所出向などを経ながら、2000年頃より地域振興の各分野で精力的に研究・著作・講演を行う。2012年度より現職。政府関係の公職多数。主な著書に『実測!ニッポンの地域力』(日本経済新聞出版社)、『デフレの正体』(角川oneテーマ21)。

「2012年 『藻谷浩介さん、経済成長がなければ僕たちは幸せになれないのでしょうか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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