里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
- KADOKAWA/角川書店 (2013年7月10日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041105122
作品紹介・あらすじ
「社会が高齢化するから日本は衰える」は誤っている! 原価0円からの経済再生、コミュニティ復活を果たし、安全保障と地域経済の自立をもたらす究極のバックアップシステムを、日本経済の新しい原理として示す!!
感想・レビュー・書評
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6年前(2013年)に刊行されベストセラーになった本だが、仕事上の必要があって、いまごろ初読。
「40万部突破」だそうで、私の手元にあるものは2018年2月の第19刷。
スタジオジブリの近藤勝也による描き下ろしイラストを用いた、特製の「全面帯(新書の全面を覆う帯)」で飾られている。
全面帯は通常の帯よりコストがかかるため、よく売れた本や売れるであろう本にしか使われないのだ。
中国地方限定で放映された、NHKのドキュメンタリー番組がベースになっている。
「里山資本主義」とは、本のカバーに書かれた定義によれば、「かつて人間が手を入れてきた休眠資産を再利用することで、原価ゼロからの経済再生、コミュニティー復活を果たす現象」のことだという。
これだと、ちょっとわかりにくい。
「かつて人間が手を入れてきた休眠資産」とは、具体的には「里山」など〝自然の中の休眠資産〟を指す。
安い輸入材に駆逐されて無用の長物と化していた里山の木材などを、これまでとは違う形で再利用することで、過疎地域に新しい自立の道を拓くのが「里山資本主義」なのである。
本書で「里山資本主義」と対置されているのが、「マネー資本主義」。資本主義の爛熟の果てに生まれた、〝マネーゲームを中心に据えた投機的資本主義〟を指している。
日本の中国地方山間部や、瀬戸内海の島しょ部、さらにはオーストリアの小さな地方都市で展開されている、「里山資本主義」による地域再生の事例が紹介される。
田舎暮らしをロマンティックに推奨する本だけの本なら、山ほどある。そこから一歩踏み込んで、地方再生の方途としての〝田舎暮らし2.0〟を論じたのが本書なのである。
リーマンショックと「3・11」によって、「マネー資本主義」の脆弱性が決定的に露呈し、〝経済的価値観のパラダイムシフト〟を求める機運が高まったことが、本書の背景になっている。
ただし、本書は〝里山資本主義がマネー資本主義に取って代わる〟とか、〝原発に完全に訣別して自然・再生エネルギーだけで暮らす〟などという、「お花畑」な夢物語を述べたものではない。
著者たちは「里山資本主義」を、「マネー資本主義の生む歪みを補うサブシステムとして、そして非常時にはマネー資本主義に代わって表に立つバックアップシステムとして」捉えているのだ。
エコロジストにありがちな極端な主張に陥らない、冷静な論調に好感が持てる。
何より、とかくネガティブに捉えられがちな日本の少子高齢化・地方の限界集落化などがポジティブに捉え直され、日本の未来に希望を抱ける書である。
だからこそベストセラーになったのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「マネー資本主義」のシステムの横に、お金に依存しないサブシステム、お金が乏しくなっても水と食料と燃料が手に入り続ける仕組み、ネットワークを構築しておこうという「里山資本主義」。里山には燃料も食料もたんとある。
確かに、これを活用せずに、燃料や食料を輸入に頼って外貨を流出させ続けるのは勿体なすぎる。地に足をつけた安心の生活がしたいと思っている人は多いはずなので、あと必要なのは便利な都会生活を捨てて田舎に行く勇気…だろうか? -
たまには違う分野の本を、と思って読んでみたのですが、本質は自分の分野と同じで、一周まわって戻ってきた感じです。
里山資本主義。
おもしろいですね。
里山で生活しなくても、街にいてもできる、始められるというのがいい。
豊かさとは何か。
私たちの不安や、不信や、不満はどこから来ているのか。
深く、深く、掘り下げてみること。
その先で、見えたもの。
その上で、「懐かしい未来」へ。
読前と読後で世の中が違って見えてくる、そんな一冊でした。 -
アメリカの「マネー資本主義」に毒された日本。都会では働いても給料は家賃・光熱費などに消え暮らしは一向に豊かにならない。幸い日本は国土の66%が森林で、田舎は豊富な資源の宝庫。「里山資本主義」は人や自然とのつながりを大事にする田舎暮らしの発想。生きるのに必要な水と食料と燃料をお金をかけずに自給自足し続けるシステム。これはマネー資本主義から決別できない都会人にもサブシステムとして併用が可能。でも人口当たりの自然エネルギー量が豊富な過疎地にこそ里山資本主義の可能性がある。
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読後感は内田樹さんや養老孟司さんの著作を読み終わったときのものに近い。つまり、いまの私が言葉にならずにしまいこんでいた漠然とした不安を目に見える形で提示し、目を啓かせてくれた感じとでも言えばいいだろうか。ただし内田氏や養老氏が何と言うか精神的な論であるのに対し、本書はあくまで経済論なのでより目に見える具体的な形で現在の状況を描写しようとしている。だからこそスッキリ感はあるが、逆に疑問を感じることも多い。ただ、多くの人にとって新しい視野が啓ける内容であることは間違いないと思う。事実、この本を貸した高校3年生の男子がむさぼるように読み切りました(笑)。
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木屑で発電し、石油・石炭の値段に左右されない地域経済を営もうとしている地域がある。この秋私は真庭市を訪れ、そこの「バイオマス政策課」で担当者からほんの少しだけ説明を聞いた。その時に彼は「こういうことが出来るのは、この地域にたまたま製材産業があったためや、他の条件が重なったためです」と、わざわざ断りを入れたものである。石油よりもコストが安く、CO2も出さないこのエネルギーが日本の未来を救うのではないかという顔を私がしたためだろうと思う。この本によれば、真庭市のエネルギーは11%を木のエネルギーで賄っていると書いているが、実はこの数字、既に古い。私が見たのは13%だった(と言うことは、約1年で2%増えたということだ)。再来年四月には、市の全世帯の半分の電力がまかなえる発電施設が稼働するという。確かに、それもこれも、豊かな森林とそれだけの木屑を産み出す製材が製品化されなければ、出来ないことなのではある。その意味では、担当者の言うことは正しい。だがしかし‥‥。
私の住んでいるのは、岡山県なので、この本の元になったNHK広島の「里山資本主義シリーズ」は何本かを観ている。テレビの映像でイメージはわかっていたのであるが、世界経済として自立発展している様子は、やはり活字で読んで初めて知ったことが多かった。
現在アメリカを中心に世界を覆う「マネー資本主義」。それに盲目的に従う日本政府と財界。この動きに大いなる「不安」を感じているのは、私だけではないだろう。
著者は里山資本主義をマネー資本主義の歪みを補うサブシステムである、と一概に控えめに書いている。しかし私は、マネー資本主義のカウンターシステムとして、その主張をするべきであると思うし、本を読んで十分にその資格があると思う。もちろん、バイオマスは再生可能エネルギーの一翼でしかないし、直ぐにということではなく、50年後ぐらいが目安だとは思うのではあるが。
現在、マネー資本主義は弱肉強食がもたらす「奈落の底」へとズルズルズルズルと国民を引き込んで行こうとしている。それは、3.11という究極の黒船でも変わらなかった。結局は国民が自らの手でそのトビラを開けなくてはならないのだ。里山資本主義という、一つのアンチテーゼを携えて。
2013年11月2日読了 -
マネー資本主義に対する考え方として、地域でマネーを回す形の里山資本主義を提案する。7年前の本だが、まだまだ使える考え方。実際、ハンドメイド作家さんなども地方で活躍していることを最近ではよく目にするようになってきて、この考え方はかなり浸透してきているのではないかと思わせられる。
ただ、NHK広島の取材班と藻谷氏で書いていることが重複したり、繰り返したりしている所がやや残念だった。まだ始まったばかりの取り組みも多いから具体例が少なかったのかもしれない。
最近新たにこの続編が出ているようなので、具体的な取り組みの広がりについてはそちらに期待したい。 -
発想の転換がハンデを強みに変える。
資源や食料を輸入しないと生活できない日本。
その「思い込み」にくさびを打ちこむための本を目指したんだろうなあ。
エネルギーはいくらでもある森林資源から
バイオマス発電できるし、ペレットも生産できる。
そしてそこから外の資本に金が流れず、金が地域を循環する。
中国地方の成功事例を紹介し、さらに進んだオーストリアの事例まで深ぼった。
空き家が多いってときに
足かせと捉えるか、活用できる物件がたくさんあると捉えるかで結果は全く異なるんだろうなあ。
足かせを前に思考停止せず、考え続けることが大事。
個人の問題を、個人間を分断して解決策を講じるのではなく、互いに違う課題を抱える個人を横断させるような解決策を講じた事例も紹介してある。
そういった能力も大事なんだろうなあと実感した。
藻谷さんの文章が読みにくくて疲れた。
著者プロフィール
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