光秀の定理 (単行本)

著者 :
  • 角川書店
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本棚登録 : 984
レビュー : 157
  • Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041105221

作品紹介・あらすじ

永禄3年、京の街角で3人の男が出会った。兵法者・新九郎、謎の坊主・愚息、浪人中の明智光秀。やがて3人は歴史の重い扉を開いていく。戦国の世に一瞬の光芒を遺した男たちの軌跡を描いた新感覚の歴史小説!

感想・レビュー・書評

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  • 「ワイルド・ソウル」や、「君たちに明日はない」シリーズを著した垣根涼介の初の時代小説。
    書評欄等でも高い評価を得ており、期待を持って読み始めたが、期待通り、いやそれ以上の作品。
    本能寺の変には、様々な陰謀説が歴史家、愛好家の間で論じられており、最近は、四国説が有力な歴史資料により浮上してきている。しかし、ここではあくまで光秀の行動原理から、本人自らが起こした必然の行為としている。
    それにしても、進行役と言っていいか、狂言回しと言っていいか、新九郎、愚息両人の痛快な生きざまが、この作品に爽快感を与えている。
    むしろ、主役はこの二人か。

  • 垣根涼介が歴史小説??と驚いて気になっていた作品をやっと手に入れました。

    歴史・時代小説には昨今、新しい風が吹きまくっていますが、この作品も新感覚歴史小説となっている。
    明智光秀の青春が鮮やかに絵が描かれている。
    実直であるが、冗談の一つも言えない堅物である光秀が、良き理解者たる、僧の愚息と剣の使い手である新九郎に支えられながら、織田信長の家臣として上り詰めていく様は爽快だ。
    この物語を一層面白くさせているのが、冒頭に描かれる、愚息による賭け事だ。人から見えないように四つの椀の中に一つだけ石ころを入れ、客にどの椀に石が入っているのかを当てさせるものなのだが、なぜか親である愚息が必ず勝つのだ。そこにはイカサマもないという。この謎解きが前編を通して描かれ、物語のクライマックスで山場を迎えるのだ。
    数学がとくいでない私には、目からうろこが出てくる種明かしだった。

    主君を裏切った悪人として描かれることが一般的な明智光秀だが、なぜ、本能寺に至ったのか?そこには仲間を惹きつける光秀の魅力があったからではないのか?という作者の言葉をどこかで見た。
    物語の中の言葉を借りれば、
    「史書は、あるいは歴史の正当性は、常に勝者の側によって作られる。喧伝される。敗者は、歴史の中で沈黙するのみである」ということだ。
    これはなにも戦国の世のことばかりではなく、これまでの世界史が雄弁に物語っているだろう。

    光秀が己の欲のために主君を裏切ったのではなく、あくまで自身の出自と境遇によって本能寺に至った、ということが強く描かれ、一般的な歴史観に新たな光を当てているところに、とても惹きつけられた。

  • 世間的にはよく思われてない明智光秀。だけど、私は嫌いじゃない。よくぞ書いてくれた!って気持ちで読んだ。

  • 歴史に詳しくないので「なるほど、ふむふむ」というわけにはいかなかったのが残念。
    愚息が魅力的。
    自分の信念をしっかり持っているので考えや行動にブレがない。こんな人に出会ったら、そりゃ影響受けそうだ。

  • 垣根作品では「ワイルドソウル」や「ヒートアイランド」シリーズを読んできたが、時代小説は初めて。そもそもこの作品が著者の初めての時代物なのかな?
    読後は爽やか。史実として光秀の最期がどうなるかは分かっているので、どうなることかと思ったけれど、最後まで爽やかでした。光秀が一応主役だけれど、大半は愚息と新九郎という第三者からの視線で描かれていたからかもしれない。この二人が魅力的過ぎて、途中、光秀が霞んでしまったところもないではないが、知慮に長け、信長から深い寵愛を受けていながらも、何故光秀は本能寺の変という暴挙に至ってしまったのかという考察については妙に得心できるところがあった。ある算術問題が、後半、城攻略に見事ハマっていくのも面白かった。
    これから時代小説も続けて書かれるみたい(?)なので、期待して待ちたい。

  • 数学ガールならぬ戦国数学武将の体で書かれたのが趣向です。人が良くて、生真面目な、教養人として描くところは、一つの類型的な光秀像ですし、本能寺の変を起こした動機にも新味はないので、多分、筆者はこの確率論を戦国時代ものに取り入れるというアイディアが気に入って、実行したんじゃないかな?読みやすい文章で、気軽に読めました。

  • 三浦綾子の「細川ガラシャ」を読んで、光秀のイメージがガラリと変わり、とても魅力的な人だなぁ。と思うようになりました。
    光秀に関する本をいろいろ読んでみたいと思っていたところ、トモダチがこの本のレビューを書いてたので読んでみることに。

    愚息と新九郎を通して光秀が描かれているんだけど、とても繊細で優しくて人間臭く、読むにつれてどんどん光秀が好きになっていきました。
    時代が違えば、きっと光秀の良さが活かされたのかもしれないなぁ。

    最終章はとても興味深い内容で、特に本能寺の変に関する記述は、光秀の人柄を踏まえた上で「なるほどなぁ。」とナットク!
    歴史の授業では光秀=悪、秀吉=善のような描き方になっているけれど、もっといろんな側面で描くようになればいいのにね。

    随所に名言・格言がいっぱいで、じっくりメモしながら読みたいな。とも思いました。

    四つのお椀の問題は、最初、とてもシンプルに考えていたんだけど、あまりにもみんなが悩んでいるのでもっと難しい問題かと思い、別の方法をいろいろ考えてみたり…でも、結局は最初に考えたシンプルな方法でした^^;
    「シンプルイズベスト」ってコトですね。

  • 信長、秀吉、家康は無論のこと、正宗あたりはもう読み飽きた感もある有名武将。「立ち食いうどん屋入ったけど、きつねも天ぷらも月見も食い飽きたし、なに食おうか」って時に「そうや、たまにはかきあげ行ったろ」的な明智光秀(この比喩合うてるか?)にスポットをあてた歴史小説なんだけど、かきあげうどんの味付けもちょっとひねってあって良い。

    4つのお椀やサイコロ賭博の話あたりをちりばめた冒頭から中間までは、なんとも新しい手法で歴史物語を描いてるなぁ、とその変化球っぷりにはまるんだが、意外にも後半、特に本能寺の変を主人公格2人が解読していくあたりは、なんと直球勝負。それも決して剛速球じゃないのに歴史っぷりを感じるのは、前半の変化球があってこそのストレートって配球的なひねりかたなんだと思う。これがバッチリはまって心地よい。歴史小説にしてはちょっと軽い感じもするが、のぼうの城ほどではない。むしろ歴史モノ苦手な人に丁度とっつきやすいぐらいじゃないかと思う。


    意外と読んでなかった垣根作品、これを機にボチボチ読んでいこうかと思う。

  • 新刊チェックをしていて、発見。今まで光秀にスポットを当てて書かれた作品を読んだことがないので読んでみた。そして、最近歴史もの、武士ものにはまっているので読んでみた。

     この作品の面白いところは、光秀視点ではなく、兵法者・新九郎や坊主・愚息の視点でおよその物語が展開していくところ。光秀(物語では、十兵衛と呼ばれる)って、こんな人だったんだぁーと好感が持てる。
     愚息に怒られたり、十兵衛に嫉妬したり、土岐源氏の嫡流として出自の申し分ないプリンスが、こうも振り回されるとは・・・愚息に怒られた時など、「なぜそんなに怒るのだ」と素直に問いただす。素直な人だったんだなあ。光秀。お嫁さんとも仲いいし。

     4つのものから、当たりを引く確率は四分の一。外れる確立は四分の三。4つのうち、外れの2つを見極めたとしても、当たる確立は二分の一になったと見なしてはいけない。当たる確立は、あくまで四分の一。
     ならば、最初に決めたものを変更したほうが、あたる確率が上がる。これの応用が、戦の、歴史の定理(レンマ)。
    ちなみにこれは、ベイズの定理とか、モンティ・ホール問題とかいう、いわゆる条件付確率問題らしいです。なるほど。高校の時に習った。

     変わり行く状況に合わせ、自らを変えていくことができるかどうか。それができなかった、というか、変わることを許されなかった光秀は、滅んだ。
     「生き方を変えられぬ者は生き残れぬ」
     愚息の言葉が重かった。
     肝に銘じておかないと。年取ると、どうしても楽なほうへ落ち着こうとしてしまうし、信念を曲げられなくなる。そんなときこそ、立ち止まって考えるべきなんだと、この作品は教えてくれた。

  • 垣根涼介さんの時代小説、面白かったです。明智光秀の青春を描きながら条件付き確率のベイズの定理などの数学が所々に出てくるところがとても面白かったです。登場人物の光秀、愚息、新九郎がヒートアイランドシリーズのアキと柿沢と桃井と重なりました。垣根さんのハードボイルド歴史小説、また読んでみたいです。

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著者プロフィール

垣根涼介(かきね・りょうすけ)
1966年4月長崎県生まれ。筑波大学筑波大学第二学群人間学類卒。
2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞しデビュー。2004年『ワイルド・ソウル』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞、大藪春彦賞の史上初の三冠に輝き、2005年『君たちに明日はない』で第18回山本周五郎賞を受賞。2013年、初の歴史時代小説『光秀の定理』を発表、歴史時代小説第二弾である本作『室町無頼』は第156回直木賞候補、第7回山田風太郎賞候補となり、第6回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞した。

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