悪いものが、来ませんように (単行本)

著者 :
  • 角川書店
3.30
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本棚登録 : 369
レビュー : 78
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041105245

作品紹介・あらすじ

子供にめぐまれず悶々とした日々を送る紗英、子育て中の奈津子。誰よりも気の合う二人を襲った事件とは−−。『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞、気鋭の第2作!

感想・レビュー・書評

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  • 読み始め...友達!?と思っていた関係性は、母娘でした。すっかり騙されて途中、また読み返しました。
    友達親子ってどうなんだろう?って思うけど娘を思う母の気持ちは、やっぱりかわらないんだなぁと涙が止まりませんでした。
    読み終えてみてタイトルがしっくり来ました!

  • 芦沢さんデビュー二作目。
    個人的にも思い入れがかなり強い作家さんなので4点+1点で5点。
    今作は勢いのある人間ミステリ。全作の流れをついで、作風は湊かなえさんのような、女性同士の複雑な依存確執や善意悪意を描いているけれど、湊さんのようにたんに露悪的なんではなく、冷静にクリアにキャラクタの物語として多面的に語られていくので、湊さん苦手派(という名前をつけてみる)の自分でも絶望的な気持ちにならずに読めました。

    ミステリの軸は、いっけん散漫におもえるふたりの女のありがちなけれど切実な悩み…不妊、子育て、夫の不倫。女の依存と反発。
    そして、彼女らのその生い立ちと、身内との確執(、そして殺人)。
    それらが、みごとに重なりあうところが、圧巻なのでしたが、帯で貫井徳郎さんが「このトリックには身につまされることも多いのでは?」と書いてあるのを
    (…身につまされるトリックって何だよ表現おかしくないか)
    と思っていたらまったくおかしくなかったのが、非常に面白かった。
    この、無知、甘え、そして必死の優しさの独りよがり。
    「悪いものが来ませんように」
    ええつまされるとも。

    個人的にはこのミスとかに載ってみんなが知るといいのに…。面白いよ。
    そして好みの問題だがファンタジー的なものも書いてくれないかなと思って期待を少し。架空の世界での「彼女たち」がみたい。

  • はい、見事に騙されました。

    まさかこんな仕掛けがあったとは…。
    あわてて読み返しです。

    ネタバレになるといけないので少しだけ。

    子育てに悩む奈津子。
    不妊の悩みを抱えながら助産院で働く紗英。
    この二人が気味が悪くなるほど仲良しで。
    そして浮気をしていた紗英の夫が殺される…。

    たとえこんな驚きの仕掛けがなくても、
    十分に読み応えのある内容でした。

    立ち込めるミルクの匂いが痛くせつない一冊。

  • なっちゃんこと奈津子と、紗英という二人の女性。
    「ちょっとおかしいんじゃない?」と思うほどの仲の良さに違和感があったのですが、なるほどそういうトリックでしたか。
    紗英の夫の死の真相が解明される終盤からは、何かに背中を押されるように読み切ってしまいました。
    何でも話せる、親友のような母親。
    そうなろうと無償の愛を注いできたはずなのに、二人の関係はどこでどう食い違っていったのだろう。
    なんだか他人事ではないような気がした。
    私もまだ柔らかくあたたかくてふにゃふにゃの長女を抱いたとき、幸せばかりが待っていますように、悪いものが来ませんようにと、強く祈ったときのことをよく覚えています。
    その切実な想いが分かるだけに、もやもやしたものが消えないラストだった。
    母と娘というのは本当に難しい。

    湊かなえっぽさもあるけれど、こういうミステリ好きです。
    芦沢央さんのほかの作品も読んでみたい。

  • 結婚三年目。助産院で働きながら、夫との子供を待つ紗英。
    彼女が唯一素を見せて愚痴を履ける存在が、なっちゃんこと奈津子。奈津子は未就学の子供を育てている。
    銀行勤めの紗英の夫は子作りに協力的でないばかりか、同僚の女性と不倫している。
    紗英の妹は助産師としてキャリアを積みながら、子供を産んだ。
    自分だけ取り残されるような気がして、焦る紗英。
    そんな中、浮気をしていた紗英の夫が不審な死を遂げる。

    紗英と奈津子の一人語りが多い。紗英が母親との関係にモヤモヤしていることや、奈津子の非協力的な夫の話が時折挟まったりする。
    また、周りの人たちのインタビューのような場面も挟まり、文中での紗英の内情を補足するかのよう。

    一見、紗英と奈津子は親友で、二人で共謀して紗英の夫を殺して埋めた……という話に読める。
    紗英と奈津子は同年代で、奈津子は子育て中のお母さんだと思うわけです。

    だけど、実は奈津子は紗英の母親。
    紗英が文中でモヤモヤしていたのは、母親である奈津子との関係だったりする。
    奈津子が面倒を見ているのは、紗英の妹(奈津子自身の娘でもある)の子供。

    読んでいてちょっとずつ「ん……?」と思ったことが、紗英と奈津子の関係が判明すると腑に落ちる。
    紗英は母親の奈津子に愛されていないのではないかと思っているようなフシがあるけど、最後、奈津子は紗英の罪をすべて被る。
    ミステリー面では、紗英の夫殺しの真相より、紗英と奈津子の関係を曖昧にしている叙述トリックの方がメインと言っていいと思うけど、
    夫殺しの真相が明らかになると、二人の親子の絆のようなものが見えてくる。
    タイトルは、母から娘への想い。

  • 騙されました…
    が、騙す意味はあったのか?

    仲の良い女友達の話かと思いきや、母娘の話。
    娘の夫の死体遺棄
    殺したのは娘?母?
    いつから騙されていたのか、
    周りの人の話におかしなところはないか?
    …そんなことを踏まえて
    もう一度読んでみます。
    普通に母とバラしてのお話じゃダメだったのかなぁ?

  • なっちゃんこと奈津子と、紗英。
    この二人は心底互いを信頼しあっている。
    奈津子は我が子に「悪いものが、来ませんように。」(12頁)と祈り、紗英は子どもができないことを嘆いているという違いはあるけれど。
    紗英は夫が浮気をしているのを知って苦しみ、なっちゃんに頼ることで自分を保っている。
    なっちゃんも同じく、苦しみを分かつことで自分を保っている。

    そう、その認識は良かった。良過ぎた。
    だから騙された。
    これ以上は言えない。全ておじゃんになってしまうから。
    とにかく二人は本当に互いを大切に思っているので、どちらからともなく、紗英を苦しめる紗英の夫、大志を二人で殺害した。
    皆が二人をちょっとおかしい、近すぎるという。
    近過ぎたから、二人は、「一人として」大志を葬った。

    この二人の近すぎる距離は気味の悪さ、居心地の悪さを感じる。
    二人が縛られた、「子は親を選んで生まれてくる」という言葉、これは救いであると同時に呪いの言葉だった。
    このたった一言を支えとしたい母親は、あるいはそうであろうとする人間は、なんてバカなんだろう!
    でも、願わずにはいられない。

    「この子のもとに、幸せばかりが待っていますように。悪いものが来ませんように。」(255頁)

  • 鬼女板とかたまーに見てる心が汚れてる人間はたぶん途中でトリックに気づきます。エピローグは良かったです。

    悪いものが、来ませんように。
    の「悪いもの」っていうのは、我が子に対する祈りみたいな事だろうけど具体的に言うと結婚相手のことかな。

    こういう関係をピーナッツ親子というとか、いわないとか。表紙が個人的に好きな雰囲気です。

  • 途中まですっかり騙されてしまった。
    後半にある一文を読んで「え???」となり、頭が混乱。
    読み間違いじゃないのか?と思ってしまうくらいすっかりある事を思いこまされてしまっていた。

    仲の良い二人の女性、奈津子と紗英。
    読み進めていく内にその内の誰か、または二人共がどうやら何か事件をおこしたらしいと分かる。
    それは二人の周囲の証言から。
    そこから二人の女性の性格や周囲との関係性が見えてくる。
    その周囲の証言と二人のどちらかの目線で描かれたパートが交互に描かれ進んでいくストーリー形式。

    途中、何でこの人はこんな事をしたんだろう?と事件に関する事で思った。
    それが分からないまま読み進めていくので、どうにもしっくりこない。
    それと、二人の女性の内、沙英という女性は周囲の証言から社交的で積極的な女性とあるのに、二人の女性のパートを読むとどうにもそんな風に見えない。
    そこにも違和感を覚えつつ読み進める。
    そして、ある事が分かった時、「ああ、そういう事だったのか・・・」とその二つの違和感が何となく納得できた。

    この話にはたくさんの証言人が出てくるけど、これはいらないんじゃないかな・・・というのがあった。
    その代わりに、沙英の妹の事をもっと書いてほしかったと思う。
    母親との関係性がこの本のテーマになっていて、彼女の心情が大きく関わっていると思うから。

    すっかり騙された~と思う本だったけど、どうにも読んでる時はしっくりこない、もやもや感みたいなのがあって次々読み進めるほど引き込まれる、という本ではなかった。

  • ★3.5

    かわいそうな子。この子は、母親を選べない―。
    ボランティア仲間の輪に入れない、子育て中の奈津子。
    昔から、友達を作る事が出来なかった…。
    助産院の補助の仕事をしながら、不妊と夫の浮気に悩む紗英。
    二人の異常なまでの密着…。
    そして、紗英の夫・大志が殺されて埋められていた…。


    最初のプロローグから不穏な気配が漂っていた。
    主に二人の女性奈津子(なっちゃん)と紗英の視点で進められる。
    なっちゃんは紗英にどうしてそこまで尽くすの…?
    紗英に見付からない様に家を覗くの…?
    大志が死んだと気付いて、遺棄までするの…?
    違和感や沢山の謎が、真実を明かされる迄、全く気付かなかった。
    なっちゃんと紗英は親友だと思ってた。
    母娘だったなんて…。
    母娘だとわかって、あーなる程だからなのねって思えた。
    伏線も至る所に散りばめられていた。
    ラストの大どんでん返しには、気付いてしまっていました。
    私にとっては、大どんでん返しではなかったです(p・Д・;)アセアセ

    奈津子は母の顔色を伺って嫌われない様に生きて来た。
    自分が母親になった時、母を反面教師として
    母の様な母親にならないように、育てたつもりが、
    紗英も結局、母親に認められたかった。
    褒められるのが嬉しくて、気に入られる様に生きて来ただけ…。

    母と娘の関係って本当に難しい…。
    「母」になりきれない母親たち・一卵性母娘・共依存…。
    テーマはとっても、良かったです。

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著者プロフィール

芦沢央(あしざわ よう)
1984年生まれの作家。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。『罪の余白』は2015年に映画化された。その他代表作に、2016年版「週刊文春ミステリーベスト10」第7位、「このミステリーがすごい!」2017年版第5位、第38回吉川英治文学新人賞候補『許されようとは思いません』、そして第32回山本周五郎賞候補および本屋大賞ノミネート作となった『火のないところに煙は』など。2019年8月28日、『カインは言わなかった』を刊行。

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