- 本 ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041105542
作品紹介・あらすじ
食材と人との出会いを求め、パリの三ツ星レストランの副料理長から転身、出張料理を始めた著者。口コミが広がり顧客は大統領夫人を始め世界のセレブも名を連ねた。仏、米、カナダ、日本…空飛ぶ女性シェフの奮闘記!
感想・レビュー・書評
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とてもワクワクする本だった。
新しい顧客、新しいキッチン、新しい食材。
それらを使った料理たち。
顧客の話を聞き、五感で調理する。
事前準備は怠らないが、当日のトラブルにも顔色を変えず対応する。
顧客にとても喜んでもらうが、自分が納得の行く料理はなかなか難しい。
というか、自分が納得いかないのに、喜んでもらうときにもやもやと矛盾を感じる。
私はこんなに誠実に仕事をしていただろうか。 -
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「出張料理人」というお仕事は、究極の実力主義のビジネスなんだとビックリしました。
読む前は、料理の出来よりも、どちらかというと女性シェフ本人のおしゃれさや美しさ、素材の値段の高さや珍しさが取り柄の、ファッションモデルの亜流のような世界かと勝手に誤解していました。
もしかしたら日本国内の非常に限られたコミュニティの中ではそれでも通用するかもしれませんが、この著者のいる舞台では実力がすべて。ゲストや依頼主に「驚き」と「喜び」を与えて初めて次の仕事が来る、という世界です。
一度でも失敗したら二度と呼ばれないであろうことは読んでいてひしひしと感じられ、実際の仕事の場面では読んでいる私まで緊張しました。
著者がそんな厳しい世界で生き抜いてこられた理由は明らかです。料理のすべてを本当に愛している。とにもかくにもそれがすべての根源にある、という感じでした。
その著者からあふれ出している「愛」が、食材選びや一緒に働く人たちやゲストたちに波及していく様子がすべてのページから感じられて、読んでいる私まで幸せな気分になりました。
仕事と人間の一番理想的な形だよなぁ、としみじみ。
世界各国の大富豪たちの生態(?)もこの本の読みどころの一つです。
「ミロのスープ」の名前にまつわるエピソードなんかは、日本人の国民性とは違うリアクションでおもしろいなぁと思う。
いろんなキッチンや邸宅内の描写もすごく興味深いです。
究極は、カナダの大富豪。息子は飛行機でハーバードまで週末ごとに往復していて、食材はぜんぶ自宅周辺で作られていたり(肉もそのエサも自家製!)。
そんな人たちにも臆することなく、レシピを考えながらわくわくしている著者に、「肝が据わった人だなぁ」と感心します。私ならビビリまくってしまうだろうな。
とにかくおもしろかったです。
著者が出しているフランス料理のレシピ本には、素材の扱い方や料理の手順が非常に丁寧に解説されているそうなので、買って読み込んでみたいと思いました。
きちんとしたフランス料理を自宅で作ろうなんて今まで思ったことなかったですが、この本を読んで、作ってみたくなりました。 -
お客さんの家(たまにお屋敷)に出向いて料理を作っていたころのことをまとめたエッセイ。そんなふうな出張料理に気軽に利用できるサービスって日本でもあったりするけど、このふみこさんはそれの究極をやってのけていた人なんですね。たくさんのお客様とのエピソード、失敗談、慣れないキッチンでの工夫、レシピの話…とても面白かった。一度ぜひ食べてみたい。
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出張で料理を作る・・・それはいつも同じ厨房で作るよりはるかに工夫が必要だろう
それに向かっていく姿勢が好印象 -
こんな職業があるとは、この本を読むまで知りませんでした。フランスを拠点に、ホームパーティなどの料理を
出張してつくっていた女性の手記。
いらっしゃる方にあわせて配慮して、会のコンセプトをふまえてメニューを考える様子がとても面白かった。仕事を大事に、楽しんでいるのも伝わってきました。
明るい前向きな気持ちになれる本。食事を毎回、味わおうと改めて思いました。 -
フランスの名店でスー・シェフまで務めた著者は、友人の家で料理を作ったことから口コミで顧客の輪が広がり、出張料理人となる。「五感を使って食材と対話する」ことを信条に、どこでもどんな時でも創意にあふれた料理を作って喜びと感動を届ける、出張シェフの奮闘記。
タイトルに「世界」と付いているが、基本はフランス国内、依頼さえあればどの国へも飛んでいく、というスタイルのようだ。エッセイもほとんどがフランス国内での話だった。
ホームパーティや自宅での食事会で一流の腕をふるうのが著者の仕事であるが、家での食事会で外から料理人を呼ぶ、ということからわかるように、著者のクライアントは一定以上の生活水準にある人ばかりである。家やインテリア、生活ぶりの描写もなかなか豪華である。著者がカナダに呼ばれたときは、広大な土地の中に野菜やハーブの畑があるだけでなく、牛や羊までも放牧されており、料理を提供する25人のゲストのほとんどが自家用飛行機やヘリでやって来ると言う。様々な美食で舌が肥えたゲストばかりなのだろう。そのような世界で著者は一人奮闘し、高い評価を受け続けてきたのだ。
さらに出張料理では、いつも異なる環境、異なるキッチンで仕事をしなければならず、ゲストの食べ物の好き嫌い、アレルギー、宗教によっても食材や調理法が制限されるという難しさがある。そのような厳しい条件下でも著者は決して手を抜かず、ゲストが楽しいひと時を過ごせるよう、ベストを尽くそうと努力している。その姿はとても格好良く、プロフェッショナルの仕事をしていると感じた。 -
狐野扶実子さんは求道者である。フミコのやわらかな指が子ルドンブルー卒業から、シェフとして認められるまでの話とすると、この本はその後の出張料理人として活躍する時期の話を描く。儲けようや有名になろうという野望や虚栄心とは無縁である。ただ味を調理をとことん追求しているのである。この本を読んで目の前の課題に一生懸命に取り組むことの大切さを学んだ。
狐野扶実子の作品





