黙示録 (単行本)

著者 :
  • 角川書店
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本棚登録 : 221
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (633ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041105627

感想・レビュー・書評

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  • 作者お得意の沖縄歴史ものであり、今までの作品の主役たちも、結構、ぶっ飛んだキャラが多かったが、本作ではとびっきりのアウトローっぷりを発揮しているので、好き嫌いが大きく分かれるであろう。ただし、陰陽の陽たる王のために悲しみをまとって生き、この世の地獄を味わう陰となるべきものが、主役である以上、主役は彼の様な性格と生き方をしなければならない。ただし、作者らしく、ただ単に悲惨な生を描くのではなく、ここでもぶっ飛んだキャラを脇に配し、とびっきりの波乱万丈の展開を用意している。妖怪王子と認識できないかわら版屋等、少々、行き過ぎ感があるものの、これらの脇役が脇をしっかり締めているので、主人公の行いも陰に籠らず、物語も何処か沖縄らしい味わいが残る。全ての登場人物にその意味があり、その物語が最後に神にささげる踊りとして収斂していく様は素晴らしい。最後に物語は最初に還る輪をなす相似形の様な終わり方をするが、神の舞が螺旋の動きである以上、螺旋の様に物語は動いていかなければならない。

  • この小説は琉球舞踊を題材にした小説でした
    踊る時の気持ちについて考えさせてくれる
    素晴らしい本でした
    ちゃんと踊りについての技術的な面からの解釈と
    気持ちの面からの解釈が詳しく描かれていたので
    踊る事に触れた事がある人にはかなりお勧めです
    最後の方になると精神面の事が描かれているので
    苦手な人も出てくるかもしれませんが
    踊る事について真剣に考えることの出来る素晴らしい
    本でした
    主人公は最悪な人格なので毛嫌いする人もいると思いますが
    全部上手く繋がっているので最後まで読んでもらいたいです
    あと、この小説を読んで昔の人たちが一日を生きるのが
    どれだけ大変だったか勉強になります
    みんな貧しくて死体が転がっていたり、お互いだましあい
    混沌としている
    今の僕たちには想像もできない貧困な世の中だった
    それを思うと食べ物も着るものも住むところもある
    今の世の中は楽に生きてける世の中だなと思いました
    そのせいで、感謝の気持ちや自然の恩恵も忘れてしまう
    でも、世の中がいくら発展しても混沌とした人の感情は
    変わらないんだなーと思いました

  • 金庸の小説世界のようでした。荒唐無稽のようで核があり、哲学ともいえる舞踊の中には宇宙があって、めくるめく世界にお腹いっぱいです。

  • とんでもなく面白かったです。男の子版「ガラスの仮面」ですよね。でも『本の旅人』(抜粋版)で大森望さんも仰ってましたがここの北島マヤ(了泉)は黒くて。絶対許されないことをちょいちょいするのだけど、なぜか憎めない少年で。
    ファンタジーでもないのにナチュラルに人外の存在や異能力が出てきて違和感のない沖縄(琉球)という土地への興味がまた盛り上がります。

  • テンペストがあまりに強烈だったのでそれ以上のインパクトのある小説を期待してはいなかった。
    たしかにインパクトは強くはないが、逆に沖縄の芸術を充分に調査して分析された精緻な表現に舌をまいた。
    633ページ。しかも2段組みの超大作。私は就寝前にベッドで読むのを常としているが、琉球の世界に入り込みイメージが浮かび、その情景の中で眠りに良く落ちた。そのため読み始めてから結構時間がかかった。
    琉球語による唄、漢詩、踊りの表現など難しく完璧な理解には、私自身がほど遠かったとは思えるが、当時小さいながらも一つの国家として自立していた琉球の奥深さを知る事が出来る。
    主人公はあまりに不完全な人間ながら、最後は悟るように終末を迎える。人間の本性は身勝手で美しくないが、それでも努力をして美しく魅せる事が出来る。そしてその美しくない本性は、様々な経験を通して神への崇拝を通して浄化されていく。
    そんな小説だった。

  • 池上永一作品はワクワクさせてくれますが、とっかかるまで時間がかかりました。

    が、トータルで感じると前半部の方がグイグイきましたが…。

    後半は時間軸の過ぎ方が早かったかな?と感じ、ラストへ合わせにいった感がありました。

    映像化は難しいか…踊りですか、そこの優れ具合を表すのは厳しいっすかねぇ~。

  • 琉球舞踊の名手の物語。
    池上永一の前回の「トロイメライ」は、軽い感じだったが、これは波瀾万丈の物語。「テンペスト」に引けを取らないおもしろさだ。

    主人公蘇了泉(そりょうせん)と師匠の石羅吾(いしらご)、雲胡(くもこ)と師匠の玉城里之子(たまぐすくさとぬし)、王の家庭教師から国師と呼ばれる蔡温。
    了泉の母:美子麻(みしま)、音地戸(おとちと)、妻:阿麻呼(あまこ)と子:湛瑞(たんずい)
    薩摩の樺山聖之介、チョンダラー、瓦版屋の銀次と、おもしろい登場人物にも事欠かない。

    次から次に息つくヒマも無く話が出てくる。琉球から薩摩へ、そして大坂、江戸へ。その後は、清国からの冊封使(さっぽうし):徐葆光(じょほこう)を迎えての踊り。その後しばらくして北京へ。それらも無理なくつながっている感じだ。

    悪ガキ、了泉がいきいきと活躍。頂点に達して驕り高ぶり失敗して地獄に落ちる。そこから復活して、最後は神の踊りとなる。踊りの描写がすごい。剣の道にも通じるものだ。琉球は確かに芸能で戦をしていたと思える。

    「テンペスト」は映画化されたが、これはどうなるかな。映画化した際には、踊りの部分の映像化がかなり困難となるだろうと感じた。

  • 「テンペスト」や「トロイメラ」も面白かったけれど、これはまた違った感じで本の見た目と同様、重厚感があって読み応えがありました。なにせ上下2段組で600ページ以上。でも面白くて、夢中で読みました。琉球王国時代、太陽しろである首里天加那志 尚敬王の対となる月しろの座を巡って、2人の舞踏家が対立する。主人公の了泉はニンブチャー出身で、ことごとく世間を憎んでいるが、生まれながらに人を引き付ける魅力を持ち、舞踏に関しては天才である。ライバルの雲胡は士族出身で、舞踏の英才教育を受けた秀才。そんな二人は十代の頃からお互いをライバル視し、月しろとなるべく切磋琢磨する。薩摩と清国に挟まれ、微妙な立場にある琉球が独立を保つためには、芸能も大切な力となった。そんな芸能の仕事にかかわる人々の悲喜交々も、物語に奥行き面白さを生み出す。了泉は最後には神に捧げる舞踏の域に達し、琉球の成り立ちにまで話が及ぶ。琉球舞踊を見たことはないのだけれど、おそらく実際に見るよりも舞踏家の息遣いを感じ、緊迫感を感じた。でも琉球舞踊、見てみたいな。あぁ〜、沖縄に行きたい!!

著者プロフィール

1970年沖縄県生まれ。早稲田大学在学中に『バガージマヌパナス』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。96年『風車祭』で直木賞候補に。沖縄の伝承と現代を融合させた世界を確立。圧倒的なスケールのエンタメ作品を次々と発表。著書に『レキオス』『シャングリラ』『テンペスト』『黙示録』などがある。

「2017年 『ヒストリア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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