なぎさ (単行本)

著者 :
  • 角川書店
3.63
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本棚登録 : 955
レビュー : 149
  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041105788

作品紹介・あらすじ

なぎさは山本文緒さんの書かれた2013年発売の著書です。
三人の登場人物の視点をうまく使いながらストーリーが進んでいき、読者をストーリーの中に引き込んでいきます。なんの変哲もない普通の登場人物達が自分の守りたいものを守ったり、プライドを傷つけられたりしながらも毎日を過ごしていき、人生に向き直っていく物語です。

感想・レビュー・書評

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  • ああ、山本文緒が帰ってきた。
    彼女の長編はもう読めないのかな、と思っていただけに感無量。
    おかえり!!

    20代の頃に読みふけった山本さんの小説。
    表面には現れない心の傷、足元のおぼつかなさ、言いたい事を言えないもどかしさ、そして孤独感。
    この感じ、他の作家じゃ絶対味わえない。

    この物語は以前の山本作品の繊細さを余すことなく堪能させてくれる一方で、もうちょっと現実寄りになっていると思う。
    親の呪縛から逃げるために故郷を捨てた冬乃、そしてその妹の菫がどうやって親と対峙するのか。
    家族とは何なのかがこの小説の核になっている。
    一方で、いかに働くのか。誰のために働くのか。
    ブラック企業で働いている冬乃の夫の佐々井や、後輩の川崎。
    カフェを突然始めると言いだす菫と、それに翻弄される冬乃。
    働き方を模索する小説でもある。

    読んでいる途中は苦しかったり、辛かったり、イライラしたり、悲しかったり。
    けっして楽しい小説ではないけれど、それぞれが一歩一歩前に向かっていく姿が良かった。
    そうだよ、いつだって山本さんの作品は読後感が良い。
    最終的には救ってくれる。
    だからまた読みたくなる。

    久々の山本作品に興奮しなんだかまとまりがなくなってしまった。
    あまり無理せずに執筆活動を続けてほしいと願いつつも、もっともっと読みたい欲求が抑えられない私。
    でも仕方がない。

    私が利用する図書館の予約ランキング上位と言えば、東野圭吾とか今をときめく池井戸潤。
    もしくは文学賞受賞作や村上春樹の新作が並ぶ位で、新作もそう待たずに読むことができる。
    ところがどっこい、「なぎさ」は珍しく3ヶ月以上待った。
    山本文緒の人気ってやはり絶大。
    こんな田舎町でも。

    これからも時折で良いから彼女の作品を読んで、歳を重ねていきたい。
    そんな気分だ。

    • cecilさん
      はじめまして!
      素敵なレビューだったのでフォロー&コメントさせて頂きました。

      実は山本文緒さんの作品をあまり読んだことがなく、
      な...
      はじめまして!
      素敵なレビューだったのでフォロー&コメントさせて頂きました。

      実は山本文緒さんの作品をあまり読んだことがなく、
      なんとなく短編小説のイメージがあったので
      こちらの長編作品がとっても気になりました!

      特に人間模様を繊細に描写している作品が好きなので、
      vilureefさんのレビューを拝見してものすごく読みたくなりました!

      >働き方を模索する小説でもある。

      私も現在、働き方を模索している最中なので、
      これは読まずしてどうする!という気持ちになってますw
      早く読みたい!
      2014/02/19
    • vilureefさん
      cecilさん、はじめまして!

      コメント&フォローありがとうございます♪
      これからもどうぞよろしくお願いしますね。

      cecil...
      cecilさん、はじめまして!

      コメント&フォローありがとうございます♪
      これからもどうぞよろしくお願いしますね。

      cecilさんの本棚もなかなか魅力的な本がたくさん!
      私とかぶる本もかなりあって嬉しいな~。
      レビュー読ませていただきましたが、優しいレビューの割に結構辛口評価!!(笑)
      いいですね~、そう言うの好きです。

      山本文緒をお読みになったことがない!
      おお、やっぱりお若いんですね。
      昔は長編が多かったんですよ。
      ドラマ化されたりと・・・。
      今も褪せることのない名作揃いですので、是非お読みになってみてくださいませ。
      2014/02/19
  • 20代の頃、好きな作家の筆頭だった山本文緒さん15年ぶりの長編!前作の中編集「アカペラ」の刊行のときも嬉しかったけど、今回はまた改めて「お帰り!」という気持ちになり、読む前から感慨無量でありました。
    山本作品だから、ということ以上に気になっていたのが、キーワード「ブラック企業」「カフェ経営」。パっと見、結びつきそうにないこれらの単語が、話が進むにつれ奇妙に絡み出す。故郷の長野を離れ、久里浜に住む佐々井夫婦のもとに転がり込んできた、妻・冬乃の妹の菫。菫の発案で、姉妹でカフェ経営に携わることとなり、専業主婦だった冬乃は戸惑いつつも開店準備に巻き込まれていく。一方夫の佐々井は、元芸人の後輩川崎と仕事の合間に釣り三昧の日々だったが、会社は突如、理不尽なほどの忙しさに見舞われることとなる。
    冬乃(『カフェ』サイド)・川崎(『ブラック企業』サイド)の交互の語りで、それぞれの過去のエピソードを挟みながら話が進んでいくが、それらをつなぐのが、唐突に佐々井家に現れた菫の知人・モリ。善人なのか悪人なのか、イマイチ正体不明なこの男が実に不気味。どうやら川崎とも面識があるらしい(川崎の芸人時代に絡みあり?)。そして、時々ぽつぽつと出てくる登場人物らの意味深な行動、発言が不安を徐々に染みのように広げていく。
    どうして佐々井夫婦は長野を離れたの?
    どうして菫は前の居住先でぼやを起こし火傷を負ったの?
    どうして冬乃は通帳記帳しているところを菫に見られておどおどしたの?
    どうして川崎はモリに怯えるの?
    佐々井らの会社の壮絶なブラックっぷりにぞっとしながらも、カフェ開店の準備シーンは多少心が躍る。冬乃の作る料理のフード描写にもわくわくする。どんどん自信を付けていく冬乃を頼もしいと思い始めてきたところで、終盤は思いがけない展開を迎え、様々な謎は次々に明らかになる。度肝を抜かれる、どんでん返しのようなこの手法は文緒さんならでは。
    家族の愛憎。夫婦のすれ違い。皆「幸せ」を求めて生きてきたはずなのに、心の歯車は噛み合わず、必要以上に傷つけあってしまう。気持ちをうまく伝えられなかったり、思いとは裏腹に空回りしたり。それぞれが心身のバランスを崩し、クライマックスでは苦さが一挙に押し寄せてくるけど、同時に、全てを包み込むような山本さんの視線の温かさも感じられる。山本さんの長編の構成の巧さは、15年前から魅了されていたけれど、長いブランクの中で山本さん自身が感じてきた痛みや苦しみが、本作に形を変えて反映されているんだろうな、と思えた。
    本作についての読売新聞のインタビューで、彼女はこんな風に述べていた。
    「成り行きまかせで生きてもいいと思うんです。受け身でも。そう自覚できれば、だいぶ楽になる」
    その言葉を実感できる存在が、冬乃が散歩きっかけで知り合い、交流を深めていく「所さん」(仮称)という老人。付かず離れず絶妙な距離感で彼女を見守る所さんの励ましに、私自身も救われた。
    40を過ぎ、自力ではどうにもならないことの多さに愕然とすることが増えた。己の拙い大人力なんかじゃ太刀打ちできず、無力感に苛まれてしまうけど…山本さんの言葉のように、成り行きまかせにして、その上で、どう歩んでいけるか。いくつになっても迷い、足掻くことばっかりだけど、この作品に出会って一筋の希望を見出すことが出来たかなと思う。

    • vilureefさん
      こんにちは。

      メイプルマフィンさんのレビューを読んでいたら、私同じようなこと書いてるじゃん!!
      とちょっと笑っちゃいました。

      ...
      こんにちは。

      メイプルマフィンさんのレビューを読んでいたら、私同じようなこと書いてるじゃん!!
      とちょっと笑っちゃいました。

      私も山本さんの小説が大好きで、心待ちにしていた一人です。
      だからまっさらな気持ちで読みたかった。
      なので新聞書評もブクログのレビューもなるべく目につかないようにしておりました(笑)
      そんな理由で、やっとメイプルマフィンさんのレビューを読むことになった次第です。

      メイプルマフィンさんのレビュー、的確です!
      私なんて何を書いていいやら、とっちらかってしまって書いたり消したりを繰り返し・・・。
      でもメイプルマフィンさんがちゃんと気持ちを代弁(?)してくれたから良かった~。

      素敵なレビュー、ありがとうございました。
      2014/02/10
    • メイプルマフィンさん
      vilureefさん:コメントありがとうございます!
      やっぱりね、20代に彼女の作品に触れてきたファン達は、感じることは皆同じだと思うので...
      vilureefさん:コメントありがとうございます!
      やっぱりね、20代に彼女の作品に触れてきたファン達は、感じることは皆同じだと思うのです♪
      ほんっと、本を出してくれてありがとうって感じで、本屋の店頭でうっすら涙ぐみそうに…
      ってちょっと大げさか(笑)でもそんな気持ちでした。
      vilureefさんも同じことを感じて下さって、とても嬉しいです!それにしても図書館で3か月待ちでしたっけ、すごいですね!
      (こちらの図書館はどんな状況なのかムショーに知りたくなった)
      それだけ皆さん心待ちにしていたんでしょうね。
      そして、きっと新しい読者もついてるんだろうな。それもまた嬉しいですね。
      2014/02/10
  • この小説は私をどこに連れていくのだろうと思いながら読み進めた。
    行き着いたのは解放だったのかもしれない。

    その解放は私にはもう必要のないものだった。
    でも、きっと必要な人がいる。
    その人たちにとって良い小説になるかもしれない。

    私のリズムと山本文緒さんが奏でるリズムは合わないなーと思った。

  • 終始、薄曇りで少しひんやりとした空気のような雰囲気で、私にはそれがとても心地良く感じられました。

    劇的な何かがあるわけではないので、10代〜20代の頃に読んでいたらつまらないと思ったかもしれません。最近は人情の機微に触れるようなものでなければ、逆につまらなく、薄っぺらさを感じますが、その点この本はそれぞれの登場人物の心情がとても丁寧に描かれていて、静かに見守るような気持ちで読んでいました。

    それぞれのこれからの人生を想像せずにはいられない終わり方も、私は好きです。

    明るい話ではありませんが、すんなりと心に入ってきて、少し前向きな気持ちにさせてくれる本でした。

  • 家族、書いたらやはり上手ですねぇ。
    旦那さん、自分語りは何もせず主人公目線で状況や内面が進行していくのに旦那さんの心の移り変わりや心境が伝わってきて切なくなる場面多々。登場人物中この人に一番共感できたかなぁという感じですね。

    主人公みたいな人は私はあまり好きではないのだけれど、多分自分にも通じるところがあるからだろうなぁと感じながら読み進めました。
    主人公の家族のように子供にがっぷり寄りかからなければ生きていけない親も世の中にはたくさんいるでしょう。
    それがいいことではないとわかっててももう、状況がそうさせるようないい悪いの話しじゃなくなっている家庭もたくさんあるだろうなと思います。
    主人公の妹の立場からこの一連の話を描いたら、全く別のストーリーになるのでしょうね。

    モリみたいなヤツ、いますよねぇ。
    嫌いだし、好きな人少ないだろうな。でもこういう人ほど人たらすのがうまいと言うのも世の理。

    山本さんは人物描くのが本当にお上手。
    今後も心の繊細さに迫る作品をお待ちしたい作家さんですね。

  •  故郷を捨てて夫と二人で海沿いの街でひっそりと暮らす冬乃のもとに、音信不通だった妹が転がり込んでくる。やがてマイペースな妹を中心に、さまざまな人々が冬乃の生活に変化をもたらしていき、いつしか冬乃自身もその変化を楽しむようになっていく。

     一見、人と人との出会いを通じて平凡な幸せをつかむ話のように見えながら、実際はそのような幸せは簡単には手に入らず、他人は本当は何を考えているのかわからない、というやるせない余韻を残す小説。
     以前読んだ短編集『アカペラ』も、人間のどうしようもない愚かな部分・優しい部分を描いていた。他人の感情を推し量れない薫や佐々井やモリ、他人の野心や欲望にふり回され流されていく冬乃や川崎が等身大すぎて、へたな同情や哀れみの感情もわいてこない。安易なハッピーエンドにしないところがいい。

  • なぎさカフェ

    家族、というつながり
    永遠につづくことはない、というあきらめ

    築いていくものと、淘汰されるもの

    そんな繰り返しが人生

    2016.12

  • なぎさ刊行記念の、長嶋有との対談→http://www.kadokawa.co.jp/nagisa/taidan_1.php

    全部の登場人物のお話が丸く解決しなくていいし、謎の男は謎のままでいい。生きてる私たちと同じ次元で語られるお話だ。
    なので私は、続編はなくていいと思う。特定の誰かたちの「お話」を追い続けるあり方の本じゃない気がする。

    川崎くんには『オノウエさんの不在』を、モリには友人を思い出しました。

  • 山本さんの作品は久しぶりに読みました。
    冬乃と菫の姉妹、冬乃の夫佐々井、佐々井の会社の後輩の川崎、そして菫の友人のモリ。
    色々な人物の視点から描かれる。

    子供に寄生する親も
    人生が定まらない若者も
    生き甲斐が見つからない主婦も
    何にもこだわらずノマド的に放浪する人も。

    確かに現代的だなーと思った。

    これが今の縮図かもしれない。

    夢とか目標とかやたら意気揚々としている人たちがフューチャーされる一方で
    こういう人たちもいて、でもなんとか抜け出したいとか変わりたいとか思います。

    どっちかというと、この小説の登場人物たちには共感できるところが多かった。


    ラストはフラフラした川崎が
    少しは方向性を見いだせたのかなと感じられました。


    冬乃と佐々井夫婦もきっといい方向に
    変わっていけるだろうし…。

  • 姉妹、夫、夫の後輩のそれぞれの視点で話がつづられていく。
    ブラック企業、両親への仕送り、夢、仕事…?
    みんなそれぞれになかなかうまく行かない日々の中、タイトルがなぎさだからなんとなーく波の音が聞こえる気がして、さわやかさがプラスされ続けたような…
    ブラック企業の話のあたりはずしーんと重く、カフェも乗っ取られて姉妹いまいち仲悪く、
    でも夫婦は荒波越えて少し深まったような。
    ふわふわと、ひとつところに留まらないで漂う人間もいる。そういうのが嫌いな人ももちろんいるけど。
    自分はなにがしたいかな、ってちょっと思わさるところもあった。

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著者プロフィール

1962年11月13日横浜生まれ。 神奈川大学卒業後、OL生活を経て、87年「プレミアム・プールの日々」でコバルト・ノベル大賞、佳作受賞。 99年「恋愛中毒」で第20回吉川英治文学新人賞、 2001年「プラナリア」で第124回直木賞受賞。

「2016年 『カウントダウン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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