幻夏 (単行本)

著者 :
  • 角川書店
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本棚登録 : 627
感想 : 123
  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041105832

作品紹介・あらすじ

「俺の父親、ヒトゴロシなんだ」毎日が黄金に輝いていた23年前のあの夏、少年に何が起こったのか。人が犯した罪は正しく裁かれ、正しく償われるのか。残酷な「世界」に、必死に挑んだ少年の驚くべき秘密とは…!?

感想・レビュー・書評

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  • 「犯罪者」からのこの作品…警察官の相馬が小学6年生の夏に出逢った兄弟はその母との3人暮らし、父は刑務所に服役していたが冤罪であったことが判明、その直後に亡くなる…それから数日後この兄弟の兄が失踪する…。それから23年が経過、鑓水が起業した興信所(助手として修司が勤務)に、その母が23年前に失踪した息子を探してほしいとの依頼を持ち込む…。

    今回も引き込まれるように読んじゃいました!!やっぱり、太田愛さんの作品ってすごいです。関係なさそうに思えて全てはつながってる…「冤罪」に翻弄された被疑者とその家族、そして「冤罪」を作りだした側の警察、検事、判事…1つ1つが細部まで描かれてます。真の正義とは?を考えさせられ、大切な人を守りたい思いにじーんときました。そして「犯罪者」から続く、相馬、鑓水、修司のこのコンビ、やっぱ好きだなぁ…!だんだんと結束感が強くなってきているように思えたので、「天上の葦」への期待も自然と高まります。

  • 「俺の父親、ヒトゴロシなんだ」少女失踪事件を捜査する刑事・相馬は、
    現場で奇妙な印を発見し、23年前の苦い記憶を蘇らせる。
    台風一過の翌日、川岸にランドセルを置いたまま、親友だった同級生は消えた。
    奇妙な印を残して…。
    人が犯した罪は、正しく裁かれ、正しく償われるのか?
    残酷な「世界」に、必死に挑んだ少年の驚くべき秘密とは…! ?


    毎日が黄金に輝いていた12歳の夏、少年は川辺の流木に奇妙な印を残して忽然と姿を消した。
    23年後、刑事となった相馬は、少女失踪事件の現場で同じ印を発見する。
    同時期に23年前に失踪した少年の行方を探して欲しいという
    奇妙な依頼を受けた探偵・鑓水。
    23年の時を経て何が起こっているのか…?
    過去の事件と現在の事件が交錯しながら物語が進んでいく。
    謎が謎を呼び、新しい事実が明らかになる。
    するとまた新しい謎がうまれ…凄く引き込まれて一気に読まされました。

    23年前に尚が消えた理由。
    尚の母親が今になって尚の捜索を探偵・鑓水に依頼した理由。
    少女の誘拐事件が起きた理由。
    奇妙な印が残されていた理由。
    父親の冤罪事件が起こった理由。
    様々な理由が明らかになった時、犯人に抱いた感情…。
    責める気持ちばかりになれなかった、とても切なかった。
    あの夏のあの一瞬がなければ、
    尚と拓と相馬、今も仲良く過ごしていたんじゃないかなぁ…。
    何故、冤罪事件が起こるのか。
    司法の在り方や、警察の捜査の問題。
    重いテーマも含まれていて、考えさせられた。

    久し振りにとっても凄い警察ミステリー面白いミステリーを
    読めたと嬉しかった(*´ `*)
    著者の紹介欄を最後に目にした時「相棒」の脚本家なのですね。
    成程です♪

    登場人物の刑事の相馬と探偵の鑓水とアルバイトの修司。
    昔からの知人の様だ。
    最初はこの関係性がわからずモヤモヤ

  • ひとつの「冤罪」が幸せな一家の運命を大きく変えてしまう、悲劇の社会派サスペンス。
    ランドセルを残し姿を消した兄の尚に一体なにが起きたのか?現場に残された印の意味は?母親はなぜ失踪から何年もたった今、息子を探すよう探偵に依頼したのか?
    数々の謎が明らかになるにつれ、幼い兄弟の兄弟愛、母子愛、友情に切なく心揺さぶられる。
    ストーリー展開が素晴らしかった。
    他の作品も読んでみたい。

    • ロニコさん
      gaoさん

      おはようございます、ロニコと申します。
      マカン・マランにコメントをありがとうございました。

      私も1972年生まれです!(早生...
      gaoさん

      おはようございます、ロニコと申します。
      マカン・マランにコメントをありがとうございました。

      私も1972年生まれです!(早生まれなので、gaoさんより1学年上かと思いますが)
      少女漫画誌は、小学校低学年の時の「なかよし」に始まり、「りぼん」、「LaLa」…。
      単行本は、友人間で様々なレーベルが飛び交いました( ^ω^ )
      併せて、少女小説全盛期だったため、コバルト文庫で氷室冴子や久美沙織なども読んでいました。

      太田愛さんの作品は、「犯罪者」と「天上の葦」を読みました。「天上の葦」は特におススメです!

      これからも宜しくお願いします。
      2020/03/18
  • やっぱり太田愛さん、面白い。
    金曜日の朝に失踪した少年のランドセルに土曜日の時間割が入っていた謎とか
    もう読むしかない。とにかく真相を知りたいと思わせる謎を次から次へと投げ込んでくるプロ。
    そしてその色々な伏線を丁寧に回収していくところとか、本当に大好き。
    日本の司法制度から生まれる冤罪と少年の悲しいお話。
    男の子の母親としては、少年の不幸な話はつらい。お願い最後は幸せになってと願いながら読みました。

  • あの夏から全てが始まった。
    一つの誤解が新たな誤解を生む。
    彼が何よりも守りたかったもの、失ってしまったものを考えると、切なくて遣りきれなくて言葉に出来ない位悔しくて泣けてくる。
    「過去に関する『もし』は全部起こらなかったことだ」彼の潔いセリフにも泣ける。

    大人達よ、子供の本気を侮ってはいけない。
    真っ直ぐすぎる想いは大人達のジョウシキを突き刺す。
    平然と「信念を持て」という大人達。
    奴らが言う「信念」とはその場しのぎの戯言なのか?

    シリーズ第2弾は相馬メインの物語。
    相変わらず3人のバランスが絶妙。
    映像が目に浮かんでくる位今回も躍動感があった。
    このままずっと続けてほしいシリーズ。

  • ガッツリ読んでしまった。

    内容を読んで、題を見るとピッタリだと感じる作品。視点移動が多く頑張る所はあるが細かい描写や心情の表現があり没入できる作品だと思う。

    終わりよければすべてよしではないが、エピローグが個人的に好きだった。1から10全て語られると味気ないが1だけでも困る。ほどよい余韻と想像の余地が残る最後だったと感じる。

  • けっこう切ないし余韻を残すミステリーです。出だしから息も吐かせない展開で、なかなか上手いストーリーでした。小学生時代に束の間 強い友情を育んだ3人の男児の思いがけないその後の人生!
    冤罪に弄ばれた家族と 日本の理不尽な司法制度を浮き彫りにしつつ、テンポ良く快調に進んで行くけど、終盤は少し冗長な印象を受けた。それでも厭きることは無く余韻を残して穏やかにエンディングを迎える♪

  • デビュー作「犯罪者」が面白く、登場人物が同じとのことなので、続けて読んでみた。
    修司が20歳になっているので、多分前作から2年余り。鑓水は興信所を始め、その鑓水の元に23年前に行方不明になった12歳の息子を探して欲しいとの依頼が舞い込む。
    一方、深大暑の交通課に異動になっていた相馬は、元検察の大物の孫が誘拐された事件の手伝いに出ていた。
    一見、全く関係なさそうな二つの事件だが、相馬は誘拐事件の現場で見つけた「//=|」と言う記号が、23年前、自分の友人・尚がいなくなった現場に残されていたものと同じであることから、科警研の倉吉の協力の元、独自の調査を始める。
    物語の伏線として、冤罪事件が取り上げられており、物語として面白いのはもちろん、冤罪事件がいろいろな人の人生に及ぼす影響を描いた社会派の作品でもあり、考えさせられる部分も。

  • 初めて読んだ作者の本。
    序盤は面白かったのに段々とそうでもない・・・となって話に入りこめなくなった。
    設定が甘く、無理があると思う。
    尚の消息を絶った後の生活、そしてその正体・・・どうもうまくいきすぎという気がした。
    それに、長年会ってないといっても父親と会った時の態度はあんなものなのかな・・・と思った。

    小さな興信所の探偵、鑓水は23年前に消息を絶った息子を探して欲しいという依頼を受ける。
    依頼者の女性はその後、金を置いて姿を消してしまう。
    仕方なく依頼を受ける形になった鑓水。
    その頃、少女が誘拐されるという事件が起きる。
    彼女の祖父は有名な元検事で、彼女が連れ去られた現場にはある印が残されていた。
    それは23年前にいなくなった少年のランドセルが残された場所にも刻まれた印だった。
    事件を追う刑事は鑓水の友人で、しかも消息を絶った少年、尚とひと夏の間親しくしていた。
    二人は23年前の事件を追うと共に誘拐事件の真相をつきとめていく。
    そこから見えてきたのは尚の父親の冤罪事件だった。

    偶然この本の前に読んだ本も冤罪の事について描いた話だったので、冤罪事件について考えさせられた。
    警察という巨大な組織においては冤罪事件を仕立てるというのがこんなにたやすくできるのかという事、その事で人生を狂わされた人間がどれだけいるのかという事。
    だけど、父親の冤罪事件の復讐、冤罪事件というものについて世間に提議を投げかけるという事なら、もっと父親に思い入れがあるのでは・・・と思う。
    母親は23年間、自分の息子がいなくなったというのに何をしてたのか?と思うし、その辺の事情やら感情やらが置き去りになっていて結論ありきで書かれている感じが白けてしまった。

    事件どうのこうの関係なく、序盤の少年たちのやりとりは生き生きしていて、特に出会いの場面は良かった。
    夏という季節は強烈で、思い出になりやすく記憶に残りやすい。
    大人になっての夏と違って子供の頃の夏は特に、誰にとっても幻の夏のようなものがあるんじゃないかと思う。

  • 前作よりも読みやすくなった。
    哀しい物語。
    それでいて懐かしく、暖かい。

    読みながら苦しくなるけど、でも先が気になり、
    余韻が強い、そんな物語を綴る作家さんだと思う。

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著者プロフィール

香川県生まれ。「相棒」「TRICK2」などの刑事ドラマやサスペンスドラマの脚本を手がけ、2012年、『犯罪者 クリミナル』(上・下)で小説家デビュー。13年には第2作『幻夏』を発表。日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補になる。17年には上下巻の大作『天上の葦』を発表。高いエンターテインメント性に加え、国家によるメディア統制と権力への忖度の危険性を予見的に描き、大きな話題となった。

「2020年 『彼らは世界にはなればなれに立っている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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