アヴェ・マリアのヴァイオリン

  • KADOKAWA (2013年12月20日発売)
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本 ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784041106051

作品紹介・あらすじ

14歳のあすかのヴァイオリンには数奇な物語が隠されていた…。強制収容所に入れられながらも囚人音楽隊員として生き抜いた少女・ハンナ。家族、仲間、そして音楽のすばらしさを高らかに歌い上げた感動の力作。

感想・レビュー・書評

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  • 徳島に住む14歳のあすかが巡りあったヴァイオリン。それは、アウシュヴィッツを生きたユダヤ人少女のハンナが持っていったものだった。あすかは、ハンナとヴァイオリンの話を知る老人から、ハンナと家族が見舞われた悲劇、アウシュヴィッツでの囚人音楽隊について聞かされる。


    将来への不安などは感じながらも恵まれた幸せな生活を送るあすかと、迫害を受けたユダヤ人であったハンナ。
    あまりにも違う境遇ながら、同じ年代で同じようにヴァイオリンが好きだったハンナの話に共鳴していくあすかの姿に、読んでいてどんどん引き込まれた。
    アウシュヴィッツのあまりにも凄惨な環境には気分が暗くなる。
    鬼畜な振る舞いを平然としながらもどこかどうしようもなさを感じている看守たち。同じユダヤ人でありながらも囚人を監視する立場にいて、たった一時の身の安全を保っているカポ。音楽の才能があるがゆえに囚人たちとは一線引いた場にいることができる囚人音楽隊たち。さまざまな立場の人が出てくる。ユダヤ人を助けようとした、アウシュヴィッツで行われていることを知らなかったドイツ人も。
    どこかで食い止められなかったのか。胸に迫る物語であった。

  • 全く内容も知らず
    音楽が題材で中高生が読める本を探して題名で選んだ本だった。
    将来を悩むあすかと巡り合ったヴァイオリン
    第2次世界大戦のユダヤ人のハンナの運命とともに語られる。
    ハンナの物語と言える。

    私はアウシュビッツに行ったことがある。行くまではアウシュビッツがポーランドだということさえ知らなかった。知らないということは罪なんじゃないかと思った。どうしてこんなことになっていったのか、戦争とは一体何なのか、何度もぐるぐると考えても全くわからない。私たちはこの事実を忘れないようにしないと、繰り返す可能性のある動物なんだと思う。5月に行ったアウシュビッツもビルケナウも晴天で気持ち良い風が吹き、植物や花が咲いていた。それでも崩れた焼却炉や有刺鉄線や行き止まりの線路の中で表現しがたい気持ちだった。その風景が読んでる間ずっと浮かんでた。

    あとでわかったことだけど
    この本は中高生の課題図書らしい。課題図書なんて誰が決めてるんだろう。何かを感じて学んで欲しいという意図を感じながら読むなんて、その思惑が邪魔だと思う。この本は史実にも基づいている上にそこにいる人々の様子も臨場感があって、音楽も匂も感じルことができる構成もよくできてる本だけど、課題図書だと思って読む中高生にとって、残る作品になってくれるだろうか。自分で読みたいと思う子が感じるように読んでほしいとは思う。

  • タイトルに、日頃自分が趣味で演奏している"ヴァイオリン"の文字があるのに目が止まり手に取ると、高等学校の部の課題図書とある。表紙のデザインは草原の中ヴァイオリンを持って大きく両手を広げる少女の姿。音楽をテーマにした作品は沢山あるけれど、想像のつくパターンの作品が多い気もしていて躊躇しましたが、課題図書ならもしかして、、と期待を持って読みました。

    読み始めて間もなく、想像とは全く違う内容だと分かり驚きながらも、読むことをとめられないぐらいに夢中で読み切りました。
    ありきたりな言葉で感想を言うのも憚られるぐらい、描かれていたのは、酷く、辛く、俄には信じがたい光景ばかり。アウシュヴィッツを題材にした作品はこれまでにもいくつか触れたことがありましたが、勉強不足でまだまだ初めて知った内容も多くありました。
    1人でも多くの人がこういう事実を知り、人間の怖さを理解する必要があると思いました。

    そんな環境の中での音楽の在り方、それは余りに辛いメロディですが、それでも一瞬でも人の心を捉えていく音楽というものは、神に通ずる何かが宿っているのだろうと感じました。
    今ある幸せに感謝して、様々なことを考え感じながら生きなくては、それに、これからもヴァイオリンを続けていきたいと思いました。

  • これを読んだ高校生は、人間がここまで、人の尊厳を踏みにじれるのかと、愕然とするだろう。美しい音楽は、親衛隊にすら感動の涙を流させる。しかし、その翌日、親衛隊らはまた、何百人ものユダヤ人を虐殺する。何を思って、彼らはハンナらの演奏を聴いたのだろう?

  • 2017.1.8
    アウシュビッツのできごとは、いつ読んでもつらい。わが身に置き換えて考えると、痛み、飢餓、絶望、寒さ、恐怖……
    とても耐えられない。

    音楽の役割 そういう面もあるだろう。

    あすかには共感しづらい。その母親もいやだった。けれど、あまりに形骸化されたキャラクターで、その描かれ方に反発していた。

    描かれ方といえば、文の言いまわしに引っかかるところや、主述がねじれていてわかりづらいところが、少なくなかった。

    若い世代に読んでほしい内容と思ったら、課題図書になっていた。そうなると、なんだかテンション下がる⤵️感じがしてしまった。

  • 小学生のときは「アンネの日記」に影響をうけて、日記を書き始めたけれど、アウシュヴィッツのことはよくわかっていなかった。
    これを読んで、そこに楽団があったこと、生き延びた人がいたことを知ったし、この本では音楽がその場所でどのような意味があったのか、音楽の果たす役割とか、人が音楽に求めるものなども考えさせられる。
    作られたストーリーと現実にあったことと混じってはいるのでしょうけれど、テーマとしてとても深いものを扱っていると感じました。

  • なんか、お説教くさいし、本当の話じゃないから、アウシュビッツの悲惨さをネタに書くなんてなぁという幹事もする。夜と霧かアンネを課題図書にすればいいのに。
    ただ、鈴木メソッド経験者としては、鈴木先生の優しい声を思い出したりして、懐かしかった。

  • 思っていたのと、違う内容で…
    2015.7.17

  • 登録番号:11178 分類番号:913.6 カ

  • 課題図書(高校生) 第60回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(2014年)

    新聞で多数の感想文を読み、本書を手に取ってみた。

    徳島の14歳の少女あすか。医者の娘で、ヴァイオリンを習っている。徳島では天才と言われていたあすか。しかし、東京で受けたレッスンで自分の能力を越える子どもの存在を知り、進めない。
    そんな折に、運命のヴァイオリン「アヴェ・マリアのヴァイオリン」と出会う。
    このヴァイオリンの最後の持ち主は、ホロコーストで家族を奪われたハンナ・ヤンセンで、彼女はあすかと同じ14歳でアウシュヴィッツ収容に送られ、音楽隊として一人生き残った少女だった。





    この内容をこの分量でさらりとなぞるのはもったいない。
    もっと丁寧にたどってもよいのではないかと感じた。
    フィクションだからよい、というのではなく、文学的に成熟させてもよい内容なのに・・・

  • 内容が教育的・でもこれはフィクションなので・・・主要参考文献として出ているノンフィクションを読むべきかも・・・・『夜と霧』とか・・・・・戦争はイカン!

  •  進路調査票をもらって、途方にくれる中学2年生のあすか。親の後を継いで医者になる気はさらさらなく、好きなヴァイオリンを弾いて何か仕事ができればと思うものの、ヴァイオリンで食べていけるほど自分に才能がないこともわかっていて、なかなか結論が出ない。
     そんなあすかに懇意にしている楽器店から、いいヴァイオリンが入ったと連絡が。その中で一番気に入ったヴァイオリンを母に無理を言って買うことにしたあすかだが、楽器店の清原さんから、そのヴァイオリンにまつわる話を聞いて……。

     医者の娘とはいえ、中学2年生で1,200万円のヴァイオリンって、なんだかなぁ~と思いつつ、ページをめくっていくと、いつしか、アウシュヴィッツの収容所で、音楽隊としてヴァイオリンを弾いていた少女ハンナの物語に。
     強制収容所に音楽隊があったことや、その役割など初めて知ることも多かったけれど、(毎回思うことだけど)この1冊でホロコーストのすべてを知ることは到底できないし、この本がきっかけになればいいなと思いました。

  •  14歳のあすかのヴァイオリンには数奇な物語が隠されていた…。強制収容所に入れられながらも囚人音楽隊員として生き抜いた少女・ハンナ。彼女の側にはいつも1丁のヴァイオリンが……。ヴァイオリンの音色が本からも聞こえてくるようです。涙なくては読めません。高校の課題図書ですが、中学生にも
    読んで欲しい一冊。
    (松雪)

  • 徳島に住む中学二年生のあすかが買ってもらったヴァイオリンは、ユダヤ人の強制収容所アウシュビッツで、ハンナという少女が演奏していたヴァイオリンだった。ホロコーストという過去の残酷な事実の中で生き抜いたハンナの弾いていたヴァイオリンを手にしたあすかは、特別な使命感を感じ、今までより真剣にヴァイオリンと向き合うようになる。一丁のヴァイオリンとの運命の出会いが、あすかの心を前向きに変えたのだ。中盤、あまりに悲惨なアウシュビッツでの出来事に、読んでいて辛かったが、ラストは平和へとつながる光を感じ、救われた

  • 課題図書の何物でもない、ストーリー、展開、主人公の心情表現全てが余りに拙すぎる本でした。

    使う題材云々より、中学生の課題図書にするのは、あまりにも中学生をバカにしてませんか?!

    とききたくなるような…。
    だから、本を面白いと思う子がすくなくなるんじゃないかと思ってしまうわけです。

  • あすかの手元に渡ったバイオリンはユダヤ人ハンナのバイオリンであった。
    ハンナとハンナな周りの人に起こったアウシュビッツ収容所での悲惨な出来事が中心に書かれている。

  • 課題図書ということで日本人の作者で主人公も日本の女の子なので読みやすい本かなと思ったけど…
    正直、辛すぎて50ページあたりから涙が止まらなくなった。
    誰にだって、してはいけないと分かっていてもしてしまうということは多々あると思う。
    人の心には良心があり、良心があるから罪悪感が生まれる。罪悪感がなくなったら人は人ではなくなるのではないか。この本を読むとき、被害者の側ばかりではなく加害者の側にも立ってみてほしい。この加害者には罪悪感がなかったのか。加害者は本当に加害者であったのかそんなことを考えさせられる本だった。

  • 強制収容所で生きながらえた少女ハンナのバイオリンが徳島にやってきた。その過酷な人生を伝えられたあすかは……。

  • 中高生向け課題図書~徳島に住む14歳のあすかは父のように医師を目指すか,母が勧めてくれたヴァイオリンでプロの演奏家を目指すか迷っている。今のヴァイオリンは妥協して買ったから少し良いヴァイオリンを買って貰えるはずだが,徳島に入ってきたオールド・ヴァイオリンは1200万だ。弾いてみて是非手に入れたい。そして,この楽器の由来を知っているアメリカ人が第九の指導のために大阪に来ると聞いて出掛けると・・・・ハンナは雑貨店を営む一家に生まれたが,ユダヤ人であるが故にナチスに何もかも奪われ,足の不自由な姉は目の前で殺された。隣町に逃げるときも祖母は足手まといになるのを嫌って家に残った。隠してくれたのは有名な指揮者であるクラウス氏の奥方で,ハンナのヴァイオリンの先生でもあった。週に一度,ゲシュタポが見に来るが,それを地下でやり過ごすと,あとは1階にも上がれる。やがて弟のアンドリューも小さなヴァイオリンで習い始めるが,クラウス氏が帰ってきたときにゲシュタポに見つかった一家は,アウシュビッツに送られ,弟と祖父は左側へ,父母は労働に,ハンナは背負っていたヴァイオリンが目にとまって,音楽隊に加えられた。音楽隊は苦しい労働を免除されるが,同胞が殺される為に送られていく場に立ち合わされるだけでなく,収容者からも敵意の籠もった視線を浴びせられる。生き残って,この惨劇を後世に伝えることを目標に音だけを追求していくが,解放されても,音楽を聴くたびにパニックになる。思い切ってクラウスは,ハンナをアウシュビッツに連れて行き,アヴェ・マリアをチェロで演奏し始めると・・・~物語として海外部分はすんなり受け入れられるのだけど,現代?日本編になると違和感があって・・・第二章に辿り着くまでが大変だ。物語の主人公のように「父が医師」というと「金持ちの子かぁ」と思うし,作者のように「内科勤務医兼作家」と見ると「いや大変だぁ」と思うのだけど。ハンナが使ったカセットというのを見てみたいのだが!!! 手直しをしたときに誰か指摘しなかったのだろうか? 録音・再生機器としてレコードやオープンリールはあったろうけど・・・

  • 読んで良かった。「梵天の民」以降、ずっと涙腺使いっぱなしだった。

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著者プロフィール

徳島県出身。医師。

「2015年 『アヴェ・マリアのヴァイオリン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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