一私小説書きの日乗 憤怒の章

  • KADOKAWA
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  • 本 ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041106365

作品紹介・あらすじ

行きつけの飲み屋で酒を呑み、編集者と打ち合わせ、新作の執筆にいそしむ。あこがれの人との邂逅に心ときめかせ、そして愚昧な人々に怒りを爆発させる。現代の私小説家、西村賢太の虚飾無き怒りの日々の記録。

感想・レビュー・書評

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  • ☆3つ
    なんてことはない、あまり変わり映えもしない毎日の生活をぼそぼそと書いているだけの事である。
    なのになぜかせっせと毎本読んでいる自分がいる。
    ふと我を想うと、まあおれはこんな風なだらしない不摂生な生活はしていないから良かったのだよなあ、という自己満足確認が出来て嬉しいようなのだ。
    ふーむ、毎日朝方寝て午後起きる。しかも就寝前にはかならづ深酒と暴食をする。
    これで体にいいわけはなく肥満と痛風の発作にあえぐ筆者。
    でも全く改善するつもりもなく、日々遅れていく締め切り仕事にクルシミながら執筆に取り組む姿をつづっている。
    芥川賞作家西村賢太。めちゃくちゃな生活だけれど仕事は結構一所懸命に遣ってるのだぜぃ。

  • 同じ編集者と何度も仲違いして和解するのがすごい。自分だったら変えてくれとなってしまう。

  • 映画「苦役列車」は、一観客としてひどくつまらなかった。二時間近くラストまで眺めていること自体が、苦役列車であった。完成度が低く不思議なくらいに出来が悪い。中途半端に陳腐な青春ムービー。あまりに正直にストレートな感想を述べている。おかしすぎる。映画を見たわけではないが非常に伝わってくる。日記だからこその生々しさとリアルな生活実感が作家西村賢太をくっきりと立ち昇らせる。憤怒の章と言う割に常識の範囲にすっぽり収まっているのもまたおかしい。

  • 言わずと知れた私小説作家、西村賢太さんの日記。
    分かっていても、その独特の文体に魅せられてしまう。
    前編よりも編集者の方たちとの交流が減っており、孤独度が増しているような感じ。連載などの仕事はどんどん増えている雰囲気。この続編も楽しみにしたい。

  • 江戸川区の先生方を対象にした講演会(鼎談形式)で、西村氏がいったいどんな発言をしたのかが、気になる。

  • 図書館で借り読了

  • 行きつけの飲み屋で酒を呑み、編集者と打ち合わせ、新作の執筆にいそしむ。あこがれの人との邂逅に心ときめかせ、そして愚昧な人々に怒りを爆発させる。現代の私小説家、西村賢太の虚飾無き怒りの日々の記録。

  •  昨年2月に刊行された『一私小説書きの日乗』につづく、日記の単行本化第2弾。

     版元が文春から角川に変わっている。本書の9割方は文春の「本の話WEB」に連載されたものだが、途中で「本の話WEB」の編集長と西村が衝突し、角川の『野性時代』に連載媒体を移したためである。

     この日記の面白さは何よりも、そのような編集者などとのトラブルがすべて赤裸々に綴られる点にある。
     それ以外は、何を食ったとか誰に会ったとか、テレビやラジオに出演したとかのどうでもいい日常雑記がメインであって、エッセイとしてとくに面白いものではないのだ。

     「相変わらず、実生活ではつきあいたくない男だなあ」と思う。各誌の編集者とこうも頻繁に衝突していたら、本が売れなくなったらたちまち干されるだろうに……。
     とくに、最も頻繁に登場する『新潮』の編集者・田畑氏のことが、読んでいて気の毒になってくる。なにしろ、西村から何度も「クビ」(自分の担当をやめさせるという意味か)を言い渡されたり、しばしば罵倒されたりしているのだから。

     西村が無名無冠の「持たざる者」であったときにはそうした所業が痛快に思えたものだが、いまや売れっ子芥川賞作家なのだから、たんなる傲慢にしか見えない。

     笑ったのは、作家の江上剛と西村が会い、江上のペンネームが親しい担当編集者3人の名前を合成したものだと知ったときの一節。

    《自分は、ではもしもその編輯者たちと険悪な状況になったら、そのときはペンネームを変更するのですか、なぞ不躾なことを聞いてしまう。
     だが、よく考えてみれば、普通の書き手は余程のアレな者でない限り、編輯者とは極めて良好な関係を長きに亘って築くものなのであろう。
     自分には、到底真似のできない芸当だ。》

  • だいたいは11時に起きて入浴。昼からは仕事をしたりしなかったりで、編集者と喧嘩しているか、白旗をあげている。たまにクイズ番組出演。買婬がたまに入る。食べたものを丁寧に書いていて、こういう日記スタイルが普通なんだろうかと思う。当然ならが痛風になり抜歯することになったり。いかにひどい食事をしているかをアピールしているのかもしれないが、そうなると計算している風もあるが、あけすけに書くという計算もあるのかもしれない。しかし「いいことがあった」といった書き方にしている事件もある。
    編集者との喧嘩はえげつない。編集者が作家の命運を握るのは事実かもしれないが、どちらかというと作家のほうが上で、編集者は基本的には逆らえない。なので弱い者いじめしているように見えてしまう。ホントに悪いならしょうがないがよく分からない。

    この日記を書いている「本の雑誌」にも噛み付いて、最後はカドカワで書いて、本もカドカワから出している。

    今どき珍し無頼派という個性は感じる。偽悪的というスタイルも今どき珍しい。
    こういう形の私小説、私小説作家という有り様がひとつの個性になっている。
    一作目は芥川賞をとった前後でかなり面白かったようだが、その続きとなると「苦役列車」映画の悪口と編集者との喧嘩となって少し変化に乏しい。この続きはあるのだろうか。
    もう読まなくてもと思いながら読んでしまいそう。

  • 作家の生活実態が克明に分かるので楽しく読めた.永井荷風を意識しているようだが、荷風のものを読んでいないので比較はできない.作家だから同時並行的に執筆しているのは当然だが、良く他の作品を読んでおり、それを糧にしているようだ.でもよく食べて飲んで、痛風が出るはずだ.テレビは出演だけで自宅では見ていないようだが、屁にもならない番組ばかりだから当然だろう.

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著者プロフィール

西村賢太(1967・7・12~2022・2・5)
小説家。東京都江戸川区生まれ。中卒。『暗渠の宿』で野間新人文芸賞、『苦役列車』で芥川賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『随筆集一私小説書きの日乗』『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』『小説集 羅針盤は壊れても』など。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂し解題を執筆。



「2022年 『根津権現前より 藤澤清造随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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