さいごの毛布 (単行本)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.64
  • (35)
  • (101)
  • (99)
  • (11)
  • (1)
本棚登録 : 510
感想 : 103
  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041106495

作品紹介・あらすじ

年老いた犬を飼い主の代わりに看取る老犬ホームに勤めることになった智美。なにやら事情がありそうなオーナーと同僚、ホームの存続を脅かす事件の数々――。愛犬の終の棲家の平穏を守ることはできるのか?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ★3.5

    年老いた犬を飼い主の代わりに看取る老犬ホームに勤めることになった智美。
    なにやら事情がありそうなオーナーと同僚、
    ホームの存続を脅かす事件の数々――。
    愛犬の終の棲家の平穏を守ることはできるのか?


    幼い頃から自分に自信が持てず、引っ込み思案。
    家族とも折り合いが悪く就職活動も失敗続きだった智美は、友人の紹介で、
    事情があって飼い主とは暮らせなくなった犬を有料で預かる老犬ホームに勤めることになる。
    最後まで看取ってあげることの出来ない様々な事情を抱えた飼い主と犬達。
    亡くなってしまった人、闘病中の人…どうしても仕方なく預ける人がいる一方、
    身勝手な事情で若い犬を預ける飼い主や、
    子供に死を見せたくないと老犬を預ける親。
    共に成長して生と死を身をもって教えてくれるペットという存在は、
    最後まで命を見届けてこそ情操教育になるんじゃないの٩(๑`^´๑)۶

    動物を飼うときは、その命の最後まで責任を持たなければ
    いけないという事の自覚がない人が多い事が辛すぎる。

    ここに預けられている犬達、淋しい思いをしているけど
    恵まれている…幸せだともいえます。
    捨てられたり保健所に連れて行かれる犬達もいる。
    老犬ホーム・老猫ホーム必要です。

    智美はホームで働く事により、苦手だった人付き合いや
    疎遠になっている家族との関係を改めて考え直し始めた。
    そんな姿は良かったです。


    犬は昨日を愛する生き物
    今日も昨日と一緒であればいいと思っている。
    特別な事は何も必要としていない。
    昨日と一緒の家族、昨日と一緒のごはん、昨日と一緒の散歩。
    この言葉、泣けました。

  • 人と上手く付き合うことのできない主人公が、友人の勧めでとある老犬ホームで働く事になる。
    様々な事情を抱えた犬たち。こちらから見たら、人間は自分勝手だと思う事でも、仕事だと割り切って犬だけでなく依頼者の気持ちも受け入れなければいけない仕事。大変そうだなぁ。それでも毎日を一生懸命生きている、昨日と同じ日々を求めている犬たちが健気で、本当に可愛く思えた。人と人、人とペット、どちらも共に生きるって大変だ。

  • さいごの毛布
    近藤史恵

    ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼

    犬でも猫でも、飼うならちゃんと寿命まで飼ってほしいと思うのが第4者の当たり前の感情だよね。
    子供に、動物の死ぬところを見せたくないっていう親ってなんなんだろう。

    犬にとっては飼い主が亡くなったんだろうが、捨てて行ったんだろうが、どうしてもの事情で飼えなくなったとしても、もう会えないなら一緒のこと。

    主人公の感情なのか、文章が淡々として冷たい感じがした。人生がつまんなそうだなっていうのが、雰囲気で分かってしまう。自分と犬の人生(犬生)を重ねて、可哀想と思ってるのもひしひしと伝わる。「可哀想と思うのは傍観者」って言葉、他人だから無関係だからいちいちそう思えることに、妙に納得してしまった。

    動物を飼うための心得というか、勉強になったと思う。昔実家で猫ちゃん飼ってたけど、最後は事故だったので急でとても淋しかった。でもそれだけ家族の一員だったって、大事に飼ってて最後に死んでしまったからこそ学べたことっていっぱいある。

    2022/10/22 読了(図書館)

  • 近藤史恵さん作品。読後感が心配でしたが、とてもいいお話で、読んでよかったです。
    老犬ホームかぁ。
    時代が進むにつれ、どんどん選択肢も増えていきますね。
    読んでいる途中、何度も我が家の愛犬をハグして、ワンコに鬱陶しがられましたσ(^-^;)

  • 表紙の絵とタイトルから「これ人前で読んだらアカンやつ(T-T)」と覚悟して読んだけれど、大丈夫だった(^^;)老犬ホームの話だから、胸がギュッとなるところもあったけれど、ホームで働く人間の方が大丈夫なのかよ!?(゜゜;)と心配になった(-_-;)ワンコも人もどうなるのか、もう少しだけ先の話を読みたかったなぁ(^^)

  • 極端な人見知りで、何をやっても上手く行かない智美が知人の紹介で行きついた先が老犬ホーム・ブランケット。
    慈善事業ではなく、家で飼うのが難しくなった犬たちをきちんと料金をいただいて面倒を見る。そんな老犬ホームで働くのは元高校教師の店長と、訳アリの動物看護士の二人のみ。
    その中で智美は悩みながらも、自分の居場所を見つけていく。
    老犬ホームに預けられる犬=「不幸」とつい思いがちで、損得関係なく、手を差し伸べそうになる。
    しかし、その考えがとても自分勝手であることに、主人公の智美と共に気づかされていく。
    決して緩やかな話ではなく、結構重めの個人の事情なども出て来るし、それをいい話に収めることなく、それでもラストにはちょっとうるっとさせてくれる良作。

  • 人にはそれぞれ自分に合った居場所が必ずどこかにある。
    そう思えた。
    老犬センターと人付き合いのニガテな智美。
    人相手ではなく、主にイヌ相手の仕事だったから変な緊張が溶けていったのかもしれない。
    イヌにもこれほど個性というものがあるのか(飼ったことがないのでわからない)、そりゃ生き物だから当たり前かぁ。
    人の気持ちを察して寄り添ってきてくれたりなんかしたら涙が出そう。

  • 老犬ホームという
    興味深い施設の裏側が知れたことだけでも
    読み応えありだし
    やはり、犬ってけなげな生き物だと
    改めて飼っていた犬のことを
    思わずにはいられなかった。

    人間の方がいかにブレブレで
    情けないことか……。

  • 老犬ホームに勤める、内気で人付き合いの苦手な新人女性が主人公。

    最期まで世話をできない飼い主と犬の問題を軸に、家族のあり方、不倫などの要素をちょこちょこ盛り込んで、サスペンスで色付けというあたりは、テレビの2時間ドラマのよう。
    犬を飼っている身としては、犬を巡る厳しい現実を目の当たりにするのは辛かった。

  • 読書感想文向き。

    人付き合いが苦手で、就職活動に失敗してしまった智美は
    友人から、老犬ホームの仕事を紹介される。
    そこは、さまざまな事情で飼い主と一緒に住むことができなくなった犬の面倒を見る施設だ。
    ド派手な服装のオーナー麻耶子や
    休日になるとやたら着飾って出かける碧の2人に仕事を教わりながら、
    15匹近くの犬の世話をする生活にすこしずつ慣れていく智美。
    慣れ始めたころにわかる、
     犬との別れの辛さ。
     それぞれの犬が抱える複雑な事情。
    ある日、智美は施設のそばで物が焼け焦げた跡を見つける。
    一体誰が、何のために?

    老犬ホームの存在について、非常に考えさせられます。
    本当に人間は身勝手。
    でも、それが必ずしも悪とは言えないのです。
    ・飼い主が亡くなったものの、保健所に連れて行くのは忍びなく、この施設にあずけられた犬
    ・子供が犬アレルギーだとわかり、子供が家を出るまでは施設で預かることになった犬
    ・犬が死ぬところを子供に見せたくないからと預けられた犬
    事情を聴けば酌量の余地のあるもの、ないものもさまざまですが、
    犬にしてみれば、それらは全部「人間の身勝手」でしかない。
    老犬ホームは身勝手な人間を助けるための施設なのです。

    麻耶子は強い。
    犬が好きで、犬が飼い主と一緒に生を全うできることを願いながらも
    この施設を運営する以上、
    施設に入ってくれる犬を探し続けなければならない。
    悲しくなるような切なくなるような出来事が
    ビジネスのスタートだから、必ず心がつらくなると思うのに。。。

    「犬は愛してくれた人のことを忘れない」
    「犬は昨日を愛する生き物」
    それは、人間も実は同じなのです。
    この物語は、犬の話のようで人間の話でもあります。

    自分は犬を飼ったことがないので、
    犬を飼ったことがある人が読めば
    更に思うところはいろいろあると思われ。

    ミステリー色はもう少し薄めでもよかったかな?
    相変わらず後悔する人を描くのがうまい作家さんです。

全103件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家

「2022年 『はらぺこ <美味>時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

近藤史恵の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×