ナーダという名の少女

  • KADOKAWA
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感想 : 21
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  • 本 ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041106532

作品紹介・あらすじ

リオデジャネイロに住む15歳のアリコは、初めて一人で映画を見に行った日、帰り道で不思議な少女に出会う。自由奔放なナーダに魅せられたアリコは、だんだんと仲を深めていくが… 。友情と恋愛の成長物語。

感想・レビュー・書評

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  • ある日、映画館でアリコは「なにもない」という意味のナーダという名前の少女と出会う。
    自由で気ままで奇妙なナーダ。
    ぱっと目を引く赤毛で、翡翠色と水色の瞳を持ち、足はいつもサンバのリズム。
    シャカシャカ、シャカ。
    反発しながらも惹かれ、振り回されながらも彼女に会いたくなるアリコ。

    内気でこもりがちだったアリコがナーダと出会ったことをきっかけに、少しの冒険心を出し、恋を知り、抑えていた母への想いを追いかける。
    光と影、はっきりと分かれているような強い日差しのブラジルが舞台。
    眩しい光だと思っていたら影だったナーダ。影から光へと踊りだす「これから」のアリコ。
    ちょっと不思議で切ない少女の成長物語。

    あとがきの「エイコ」のブラジルでのお話も印象深い。

  • 日本出身の父とポルトガル出身の母を持ち、ブラジルで生まれ育った少女アリコは不思議な少女ナーダと出会う。
    前半は少し読みづらかったのだけど、ナーダがとても魅力的で後半一気に読んだ。
    生と死が手を取ってくるくると踊るような物語は、カルナバルと通じる。
    角野さんのノスタルジーを含んだブラジルの情景が美しかった。

  • これは大人が読む本だと思った。
    過去の悲しい出来事を受けとめ、前に進む物語。
    母親との関係をクリーニングして、本当の自分になっていくストーリー。

  • 『魔女の宅急便』の角野さん。お年を召されてもお洒落で可愛らしい角野さん、書く物語もオシャレ。
    ブラジルが舞台。
    喪失感を抱えた少女が、ナーダという謎の女の子との出会いによって変化していく。
    南米の文化も味わえた。
    光があるから影がある。なるほど。

  • 角野栄子さんがこんなさびしいお話を書くなんて
    遠くでカーニバルの喧騒が聞こえてくる
    私にとっては、小野リサのアルバムNaNaのアウトロのイメージ

    幸せじゃないお話とは知っていたけど
    悲しくはならなかった
    「フェリシターデ」だからかな
    うんと大人の人にも読めるストーリーだと思います

  •  子どもが生まれたのは、ちょうど2年前の夏です。生まれた場所は、琵琶湖のほとりの産院でした。あの時のこと―。
     低気圧がやってきて、雨が降りはじめ風も少し出てきた、そんな晩。破水し、夫と大慌てで(!)、ばたばた産院に駆け込みました。額に汗し、ひたすら「ふー、ふー、うーん、うーん」。外はいよいよ嵐です。陣痛の波にひたすら耐える長い一日が終わるころ、無事に子どもが誕生しました。
     分娩室から病室に戻り、少し眠った明け方。目が覚めると、部屋の窓辺はほの白く、窓からは、低気圧も過ぎ去りもうすっかり穏やかになったつるつるした湖面に、朝日が照り返しきらめいているのが見えました。そして、私のベッドのすぐそばには、昨日まではいなかった、生まれたての小さな小さな赤ちゃん。ようやく会えたねえ。子どもがこの世界に生まれたあの日の朝の風景を、私は生涯忘れることはできません。
     さてさて、私がみなさんに紹介したい本は、角野栄子作『ナーダという名の少女』です。「あんたの世界の始まりっていったら、どこ?」。登場人物のナーダが、主人公アリコ(15歳の少女)にこのように問いかける映画館でのシーンから、物語は始まります。急にこんな風に聞かれたアリコは、〈始まりの場所なら、生まれたこの町、リオ・デ・ジャネイロだけど……。いや、そうじゃない。それはもっと違う意味のある、もっと特別な場所のはず。思い出したら涙がにじんでくるようなところ〉だと、戸惑いながらも考えます。皆さんなら、自分の世界の始まりの場所を聞かれて、どこって答えますか。
     先を急いで言ってしまうと、この物語は、アリコが自身のルーツを辿るお話と要約できるでしょう。アリコにはお母さんがいません。幼いアリコを置いて家を出、その後亡くなってしまったのです。アリコはお母さんについてほとんど知らず、心の深いところでは、自分は生まれなければよかったと考えています。そんなアリコが、お母さんの生まれ育ったところを見るべく旅に出るのです。そして、旅の終わりには、自分の存在の起源である〈始まりの場所〉へと戻っていきます。裏表紙に、始原としての世界樹や子宮のモチーフが描かれているのは、とても象徴的。
     アリコが行き着いた〈始まりの場所〉ってどんなところでしょう?皆さんも本を開けて、どうぞ物語を体験してみてください。いつしか、読者であるあなたは、アリコとは全く別の人生を生きているにも関わらず、あなた自身の〈始まりの場所〉にまつわる記憶を、アリコとアリコのお母さんの物語に重ねることになるのではないでしょうか。私も、すっかり物語にひき込まれて、先に記したような我が子の誕生やら、色々なことを思い出しました。そして、一面では悲しくもあるこの物語。それでも、読み終わった後、心がすこし元気になっている―。
     カーニバルで知られるブラジルのリオが物語の舞台ですから、夏の強い陽射しと熱い風を感じながら、読んでみてください。この季節に、おすすめの一冊です!

    国文学科 ほそだ

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=25881

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB15111072

  • ブラジルリオデジャネイロが舞台。
    生い立ちにより内気な少女アリコが不思議な少女ナーダと出会い大人へと成長して行く。アリコの周りの大人達、カルナバル、ポルトガルへの旅・・・とても素敵です!ラストに向かって作者からのメッセージを強く感じ、読後感が良かったです。(最初は不思議な物語だと思いましたが、あとがきを読み納得しました)

  • 表紙のポップな絵柄に魅かれ読んでみた本です。
    ナーダという不思議な少女の魅力は~?と、サクサク読み進めることができました。
    最後はどうなる?なんて推理小説っぽいところも好きでした。

  • 不思議な世界観のおはなし。期せずして大好きなポルトガルがキーワードの1つとなるお話で、一気に読みました。
    角野さんの実体験からインスピレーションを得た作品とか。登場人物がそれぞれ個性的で頭に映像が浮かびやすい。

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著者プロフィール

1935(昭和10)年、東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、出版社に勤務する。25歳の時からブラジルに2年間滞在し、その体験をもとにしたノンフィクション『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』で作家デビュー。著書に『ズボン船長さんの話』『小さなおばけ』シリーズ、『魔女の宅急便』『ぼくびょうきじゃないよ』『おだんごスープ』『ラストラン』など数多くの絵本・児童文学作品がある。産経児童出版文化賞大賞、路傍の石文学賞、旺文社児童文学賞、野間児童文学賞、小学館文学賞、IBBYオナーリスト文学賞など受賞作品多数。

「2017年 『いろはにほほほ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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