- 本 ・本 (472ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041106846
作品紹介・あらすじ
映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮は、資金回収のため、関西とマカオを奔走する。巨額の資金をめぐる争いはやがて組同士のトラブルに発展し、桑原にも絶体絶命の危機が!
感想・レビュー・書評
-
著者、黒川博行さん、ウィキペディアによると、次のような方です。
---引用開始
黒川 博行(くろかわ ひろゆき、1949年3月4日 -)は、日本の小説家・推理作家。愛媛県今治市生まれ。大阪府羽曳野市在住(2014年時点)。京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒業。妻は日本画家の黒川雅子。
---引用終了
で、本作の内容は、次のとおり。
---引用開始
映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮は、資金回収のため、関西とマカオを奔走する。巨額の資金をめぐる争いはやがて組同士のトラブルに発展し、桑原にも絶体絶命の危機が!
---引用終了
本作は、「疫病神シリーズ」の第5作とのこと。
そして、第151回・直木賞受賞作になりますので、当時の受賞作を見ておきましょう。
第151回(2014年上半期) - 黒川博行『破門』
第152回(2014年下半期) - 西加奈子『サラバ!』
第153回(2015年上半期) - 東山彰良『流』
第154回(2015年下半期) - 青山文平『つまをめとらば』
第155回(2016年上半期) - 荻原浩『海の見える理髪店』
第156回(2016年下半期) - 恩田陸『蜜蜂と遠雷』
第157回(2017年上半期) - 佐藤正午『月の満ち欠け』
第158回(2017年下半期) - 門井慶喜『銀河鉄道の父』
第159回(2018年上半期) - 島本理生『ファーストラヴ』
第160回(2018年下半期) - 真藤順丈『宝島』詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(はっ!!極道小説だったのか~~)
直木賞を受賞した、とNEWSで知り、
いち早く図書館へとNET予約。
そんな興味本位でのみ、手にした作品だけに
(…挫折感)という嫌な気を孕んだ不穏な暗雲が
胸の内に広がりつつある気配を感じずにはいられなかった。
…が♪
気付けば
そんな暗雲など、どこ吹く風っ♪
あっ!と言う間に空はカラッと晴れ渡り、
(作風は決して『爽やか』とは言いがたいが。)
そうか。
オモロイ人が一人いるだけで
世界は、あっ!という間に変わるもんなんや。
などと、納得。(^^;
この(極道の)世界では真っ当に生きている桑原さんの
頼もしすぎる背中に惚れ惚れしながら、
(俺は極道なんか嫌や~!)
と、無理矢理引きずり込まれてる二宮との珍妙な掛け合いが面白すぎて、直木賞、大いに頷ける作品であった。 -
カタギの二宮と極道の桑原による疫病神コンビが裏社会のカネをめぐって活躍するシリーズ第5弾。ちなみにこのシリーズは本作で直木賞受賞。
物語の発端は桑原が映画作品に出資したことにはじまる。映画がヒットすれば出資金が何倍にもなって大儲けになるはずだったが、その映画作品自体が全くのでっちあげ。出資を募った映画プロデューサーが詐欺師と知った桑原はいつも通り二宮を巻き込んで、自分の金の回収、ついでに他の出資者の金も奪ってしまおうと企む。
シリーズお約束の大阪弁コンビ漫才風やりとりの挿入はもちろん、桑原の愛人と舎弟、組の若頭、二宮の姪っ子、悪徳刑事、オカメインコと脇役たちの活躍も充分。マカオや香港しまなみ海道と移動し、他の暴力団も巻き込みながら詐欺師の追跡捜査が展開される。今回のストーリーには過去作品と比べて、社会風刺性は抑え気味。それゆえにすんなりと一気読みできる。
この二宮桑原コンビも濃い人生を送りながら年を取った。いつまでも一攫千金を求めての殴る蹴るのアドベンチャーを続ける若さはなくなってきている。そろそろ将来のことも考えるべきだろう。読者もそう考えるし、二宮たちも同じことを考える。
やっぱり人間、平和で堅実な生活が一番だ。この疫病神シリーズでそんなありがちな人生論を考えさせてくれるとは思わなかった。コンビ解散危機を感じさせながら、エンディング。 -
第151回直木賞受賞作品
冒頭───
マキをケージに入れて餌と水を替え。エアコンを切って事務所を出た。エレベーターで一階に降り、メールボックスを見る。チラシが一枚あった。手書きの下手くそな字だ。
《あなたは奇跡を信じますか───。不治の病が治った、宝くじが当たった、あこがれのひとと結婚した、仕事で大成功をおさめた。願えば実現します。ぜひ一度、わたしたちの集会に参加してください。奇跡はほんとうにあるのです。ワンダーワーク・アソシェーション大阪支部》
どちらが北かも分からない殴り書きのような地図が添えられていた。どうせなにかのインチキ宗教だろうが、こんな誘いに乗るやつがいるのか。不治の病がなおるのはまだしも、結婚なんぞ誰でもできるだろう───。
とにかく会話のテンポが小気味良い。
主人公で堅気の二宮とやくざの桑原の会話は、息の合った上方漫才を聴いているかのようなキレの良さだ。
随所の二宮の呟きもユーモアに溢れ、思わず笑いだしてしまう。
ちょっとヘタレで凡庸とした二宮とイケイケ極道ながら狡猾さも併せ持った桑原という二人の相反するキャラの書き分けも上手い。
ヤクザ間の暴力抗争が続く合間に、息抜きのように現れる従妹の悠紀のキャラも可愛らしくて、いいエッセンスになっている。
マカオでのブラックジャックやバカラの博打の状況も、二宮と桑原の性格の違いを見事に表し、展開に花を添えている。
400P以上の長編だが、スリリングな展開に魅了され、ページを捲る手がどんどん早くなり、一気読みさせられた。
この小説が直木賞受賞に値するかどうかは私には判断できないが、読んでみてとても面白いエンタメ小説であったのは確かだ。
黒川さんサントリーミステリー大賞で1980年代にデビューしているんですね。
この二人が登場する『疫病神』シリーズは他に四編もあるようなので、ぜひ読んでみたいと思う。
いやあ、面白かったです、はい。 -
BSスカパー版のドラマから入ったせいか北村一輝と濱田岳で脳内再生余裕、映像から入った特権を味わっている感じはしたけども、ここまで読ませるのは、やはり作者の筆致のおかげもあるんだろう。最近はWEB連載小説の1話目すら読む体力が無かったんだけど、ちゃんとした小説を読んでる充実感を味わいつつ映像とシンクロした関西しゃべくり漫才のようなテンポの良い掛け合いの面白さが、読む手を止めてくれなかったね。古今東西SFやファンタジー小説が近年の映像化で栄華を極め、なろう小説におけるテンプレ化が進み、文章読解による解釈の多様性よりも想像の簡略が行われているこのご時世、己のチンパンジーみたいな脳には映像→原作の流れが脳内補完余裕でしたアヘアヘ状態を作れる良い作品でしたね。
ステレオタイプな関西弁ヤクザはやっぱすっきゃね~ん。 -
直木賞受賞作ということで読んでみました。
第151回、2014年上期、受賞作。
疫病神シリーズの5作目らしい。
建設コンサルタントの二宮は堅気だが、亡き父がヤクザだった縁で、いろいろ繋がりがあり、それで仕事もしていた。
収入は減り気味で困っているが、優しい母親に借金し、何とかやりくりしている。
迷い込んだオカメインコのマキちゃん(自分で名乗っていて良く喋る)の世話をしたりと、けっこうのんきな暮らしぶり。事務所によく顔を出す従妹の悠紀には啓ちゃんと呼ばれている。
ただ、二宮には腐れ縁の桑原がいた。
気の荒いザ・ヤクザの桑原に妙に気に入られ、何かと振り回される毎日なのだ。
二宮を啓坊と呼ぶ若頭の嶋田が映画に出資するという話に桑原も乗ったはいいが、プロデューサーの小清水が金を持って行方をくらます。
金の行方を追いつつ、絡んでくるヤクザと喧嘩になったり、組同士の揉め事から身を隠したり、マカオに渡ってギャンブルにはまったりと忙しい。
テンポのよい会話で追いつ追われつの事件が飽きさせずに展開、意外ととぼけた要素も多いです。
お金が全くないかと思えば、急に美味しい物を食べるためにぱーっと使ってしまう。
高そうな店の名前や料理名は多いけど、具体的に美味しそうに書かれてはいません。
読み通せるけど‥結局、共感できる内容ではないので、★は三つ止まりかな。 -
直木賞受賞という事で、ブックカフェにて読了♪シリーズ物の5?作目だったのですね。知らずに読みましたが、この作品だけでも問題なく楽しめました。桑原と二宮の掛け合いが緊迫感あれどテンポ良くて、どんどん読まされて行く感じがしました。無鉄砲でまさにヤクザといった桑原、桑原に振り回される二宮、出てくる女性はどこか皆魅力的♡こういうヤクザな男性はなぜかいい女を連れていると言う都市伝説がこの作品の中では健在でした。絶縁じゃなくて、破門で良かったねぇ…。飲酒運転と駐車違反を嫌うあたり微笑ましかったです。
-
直木賞受賞作品。サントリーミステリー大賞をとり、ミステリー作家として長年活躍してきた著者にとっては遅すぎた受賞とも言える。
この作品は氏の得意とする大阪を舞台にやくざの世界を描いている。大阪弁の会話を多用し、スピード感あふれる描写でまるで映画を見ているように話が進んでいく。テンポ良く、リズム感あふれる会話は大阪弁ならではだろう。
内容は悪党ばかりが登場するが、どこか憎めない登場人物たちでまるでアメリカのハードボイルド作品のようだ。日本には珍しい湿っぽさがないカラリとしたハードボイルドの一級作品だろう。
著者プロフィール
黒川博行の作品





