少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (単行本)

著者 : 一肇
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年2月27日発売)
3.45
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  • 51レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041106853

作品紹介

中堅私大1年にして20歳の十倉和成。下宿の天袋からセーラー服姿の絶滅危惧種的大和撫子さちが突如はいおりてきた日から彼の停滞しきった生活は急転する!映画と少女と青春と。熱狂と暴走が止まらない新ミステリ!

少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (単行本)の感想・レビュー・書評

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  • いやぁ~、こういう掘り出し物に出会うから
    本読みは止められない(笑)

    最後のページを閉じた後も胸にストーリーが広がり続け、
    登場人物たちのその後に思いを馳せ、
    クライマックスを思い出すたびに、どこで誰と何をしていても心ときめき、胸が熱くなり、いつしか泣きそうになる。
    そんなお気に入りの本が僕には何冊もある。
    そしてまた一冊、
    忘れられない物語がここに。

    自分の内側に刺さり、何故だかずっと抜けない一冊。


    あらすじはこんなん。

    二浪の果てに吉祥寺にあるお坊ちゃん学校に入学した十倉和成(とくら・かずなり)は、築数百年の木造学生アパート、友楼館(ゆうろうかん)に住むことに。
    ある晩、友楼館の十倉の部屋の天袋から這い出てきたのは屋根裏に住む物の怪ではなく、なんとセーラー服姿の美少女、黒坂さちであった。
    身よりがなく苦学生である彼女の生い立ちを聞いた十倉は、
    引っ越し資金が貯まるまでの期間、さちが屋根裏で生活することを了承する。
    内心甘い生活を期待する十倉だったが、実はこの男、天才的映画監督の才を持っていた親友・才条三紀彦(さいじょう・みきひこ)が撮影途中に謎の死を遂げた、その真相を探るという大きな使命を持って九州から上京したのだった。
    やがて、さちや友人たちとの出会いに導かれ、才条が作った未完成の映画に辿り着く十倉。
    そしてこの未完の映画にこそ、死の真相が隠されていると気付くのだが…。


    物真似では終わっていない森見登美彦を思わす古風な文体と
    溢れでる生きた名言の数々。
    (飴玉を口の中で転がすように何度もお気に入りの箇所を反芻したくなる)

    ほとばしる熱量を有した
    胸躍るボーイミーツガール的青春譚に
    ほどよく効いたミステリーの風味。
    (「僕が死んだらこの本を棺桶に入れて欲しい」と言った乙一や
    綾辻行人や辻真先が絶賛したのも頷ける出来!)

    ポップで漫画チックな表紙のイラストから
    「これは今流行りのラノベ的で
    軽いラブストーリーだったりして…」と思いきや、
    いやいやどうして
    意外に硬派で一本筋の通った
    一人のお馬鹿学生の再生の物語でした。


    主人公は髪はくせっ毛で根性なし、人並み以上に煩悩にまみれ、たびたび間違った方角に全力疾走し、あげく袋小路で泣き濡れるような
    星香大学一年、「暴走王」こと十倉和成(とくら・かずなり)。

    涼やかな声と深く透き通る瞳、艶やかな黒髪のおかっぱ、白く綺麗な顔立ちという大和撫子的風貌を持ち
    みたらしだんご屋でアルバイトしながら、
    6年もの間、女人禁制の友楼館の屋根裏で潜伏生活をしていた(笑)
    セーラー服姿の「屋根裏姫」こと、17歳の女子高生、黒坂さち。

    明治期の貧乏学生を思わせる(笑)
    坊主頭に着流し姿と
    手には教科書を十字に束ねたブックバンド、
    趣味は読書と絵画、食事はすべて人のおこぼれをいただく(笑)という
    映画嫌いで変わり者の友楼館の住人、亜門次介(あもん・つぐすけ)。

    高貴な生まれでありながら、
    たった一人の運命の人を捜して合コンに明け暮れる
    演劇部のチャラ男で友楼館の住人、久世一磨(くぜ・かずま)。

    牛乳瓶の底を思わせる度の強い眼鏡をかけたもやしのような住人、
    キネマ研究部部長の宝塚八宏(たからづか・やひろ)。

    ワケありの人間が集う友楼館の中でも最も奇怪な噂を帯びた伝説の人物、伊祖島亨(いそじま・とおる)。

    大輪の花のごとき長身で、類い稀なる毒舌家の「キリコ嬢」こと、七瀬桐子。

    そして、映画という魔物に飲み込まれ、
    謎の死を遂げた主人公・十倉の親友、
    才条三紀彦(さいじょう・みきひこ)。

    などなど登場人物たちのすべてが
    コレだけキャラ立ちしまくってるのもスゴい。
    好むと好まざるとに関わらず
    なぜかみな映画に取り憑かれています。

    中でも、やはりこのヒロインがいなければ、
    この作品は完成しなかったと言える、黒坂さちの
    「絶滅危惧種・大和撫子」を完璧に体現した恐るべしそのキュートさ!(笑)

    世話になった御礼に何か食事を作って差し上げたいと言い、
    どしゃ降りの雨の中、傘もささずにおにぎりを届けにくる義理堅さを見よ!(笑)

    腹の虫がきゅ~うと鳴るたびに頬を赤らめ、
    「死にとうございます…」と恥じらう仕草に
    僕のアホウな胸も激しく高鳴ったのでした(笑)
    (いや、コレは男なら一発でメロメロだし、女性から見ても嫌みなく可愛いと思えるキャラじゃないかな~)

    それとは対照的にいやが上にも香り立つ女子力の魅力に抗うため、
    黒坂さちには絶対に手を出さぬとお互いに宣誓しあう
    アホウで煩悩だらけの十倉と久世が笑えます。

    ひたすら己だけの道を邁進する亜門や
    映画や芝居に節操なく手を出すが己の欲求は自覚している久世、
    暗い目をして陰鬱な宝塚でさえ、映画の淵を日々さまよってるのに
    みんなと比べ自分が何をしたいのかまるで把握できてないことに思い悩む主人公の十倉の心情が切なく、
    同じように悶々とした青春時代を送った僕には
    まるで鏡を見せられたかのようにリアルに胸に響いてきたし、

    十倉に正体不明の熱を宿し、人生の起動を曲げたあげく、
    唐突にこの世から消え失せてしまった親友への思いも、
    同じく僕をボクシングや音楽の世界に誘い先に逝ってしまった親友を嫌でも思い出してしまったなぁ~。


    友楼館に伝わる『女人禁制の呪い』。
    古本屋で熱心に立ち読みする
    1900年代初頭に死んだ本に宿る幽霊。
    さちを乗せて白いベスパの鼓太郎と街を爆走したベスパドライブ事件。
    (ルパンとクラリスの逃亡劇を彷彿とさせる物語中最も印象的なシーン!)

    やがて、ベスパに乗ることによって才条が見たはずの景色を捉え、
    十倉は親友が残した未完の作品を仕上げるため、映画制作へと突き進んでいく。

    中盤以降の怒涛の展開が素晴らしく
    特にエモーショナルに胸を打つ最終章は一気読み必至!

    作者が言った「このラストシーンが書けたら死んでもいい」は
    ラスト一行の奇跡に集約されています。

    森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」が好きな人、
    映画や演劇や古本屋に目がない人、
    古いカメラやベスパに思い入れがある人、
    可愛いヒロインに餓えてる人、
    そして良質の青春物語が読みたい人なら
    自信を持ってオススメします。


    ★なんとこの作品のために作ったプロモーションビデオがあります!歌付きで小説の世界観が味わえますよ~♪↓
    https://www.youtube.com/watch?v=pCEb1i2cU9Q&feature=youtube_gdata_player

  • 本好きな芸能人のブログで紹介されていた本を読むのが好き。この本もそうして巡り会った一冊だ。
    2浪して熊本から東京の大学に入った主人公が、友人の死の真相を探りながら、友人の残した映画を完成させるストーリー。どこか森見さんを彷彿とさせる文章がコミカルに進み、癖のある登場人物たちとのやり取りに引き込まれる。これは一風変わった青春ラブストーリーだな。
    最後の映画を撮るシーンは物凄く勢いが感じられて良かった。ラストの展開も、有りがちだけどにやにやしてしまった。

  • 登美彦氏の作品に似ている…というレビューを拝見し、手に取ってみました。

    映画嫌いの主人公・十倉は2浪の大学1年生。
    故郷・熊本から上京したものの、食事に困るほどの貧乏暮らしです。
    たびたび部屋の中から物が消えることに堪えかねて一人喚いてみたところ、天井裏から清楚で可憐な少女が現れたのでした…。

    登場人物たちの暑苦しさ、迷走っぷり、暴走する妄想(略して"暴想")に、大学生の無茶苦茶さを思い出しました。
    無茶苦茶なのに真剣なのです。
    若者特有の熱量の高さを思い知らされました。
    …が、その熱にあてられたのかちょっとくらくらしてしまいました。

    後半で明かされる真実やスピード感あふれる展開はおもしろかったのですが、ときどき物語においてきぼりにされてしまったように感じて☆2つ。
    大学時代に読んでいたら、もっと楽しめたのかも…。

  • 大正ロマン的な文章に慣れるまで、少々まごつくけどこの文章のリズムにのってしまえばもう一気読みです
    東京の大学に進学した高校の親友の突然の死を突きつけられ、彼のいた大学に二年遅れて入った十倉
    映画に取り憑かれて撮影中に校舎の屋上から転落した才条が残した未完成の短編を巡って展開する、ボロ下宿に集う住人と何故か天井裏に住む少女の奇想天外なストーリー

    主人公十倉の暴走する妄想と天井裏少女さちの淡い関係、それぞれの現実が絡み合ってずっと爽やか飲料を含んでいる気持ちになります

  • 店頭でなんとなく気になって、なんとなく購入しました。
    好きだなぁ、ってじんわり思えました。
    カタカタと鳴りながら上映される小説だけど、そのときの色鮮やか、があるんだろうなぁ、という。
    買ってよかった、と思える小説かな、と。

  • 小説ではなく、どっちかといえばラノベ。というか一 肇さん自身が作家ではなく物語クリエイターと呼ばれる人なので、その辺を取り違えると肩透かしにあうかも。
    感想としては、全く文句のつけようのない内容だった。
    前半こそ「森見登美彦のようだ」と思ったが、中盤から一気に加速し、後半から一気にすべてが集約されていく。あんまりにも心地が良いので時間を忘れて読みふけってしまいそうになった。時間が許したのならば、1日を費やして内容に没頭したかった。忙しない世の中が恨めしく思える、そんな素晴らしい物語だった。

  • 一筆と書いて「にのまえ はじめ」と読む。
    タイトルと装丁と、著者の名前に大好きな厨二病臭を感じたウチ。著者のことは全く知らずに、さっそく読んでみることに

    読み終えてから著者のことを調べてみると、ゲームメーカー「ニトロプラス」に所属するクリエイターで、「魔法少女まどか☆マギカ」の小説版を書いた方とのこと。うーん、まどマギは言葉だけは知ってるんだけどなぁ……娘の方が詳しいかも

    某私大の学生寮。二浪で学生となった十倉和成の住むたった6畳の部屋の天井裏から女子高生が顔を出す。
    事情があって、屋根裏に潜むことになった女子高生のさちを食べさせて、できる限り早くそんな環境から救うために十倉は少しずつ動き始める。

    映像の天才だった友人の影を追って、二浪までして上京した十倉の事情と、彼の周りから彼をつつく個性的な同級生に、謎の大和撫子・さち。さちと十倉の微妙な距離感を軸に、なぜ十倉が上京したのか、なぜ映画を忌み嫌うのかを印象的なシーンと台詞回しで描きます

    なんというか、かなりクセのある世界感ですが、先入観なしに気持ちよくその世界感に浸れる小説です。
    著者は「このラストシーンを書けたらもう死んでも悔いはない」とまで書いていますが、ラストシーンも、その一つ前のシーンも個人的には大好きです。アニメ作品や演劇的なアプローチができる作品じゃないかなぁ。
    「ありえへん」と言ってしまうと、泡のように消えてしまう世界、物語ではありますが、この世界を感じる力は大切にしたいなあと思うわけです。

    あー、楽しかった。

  • ミステリーというよりも、映画(あるいは文学や絵画などを含めた創造するもの)に関わる人たちにとって、その本質的なところを描く作品。
    一握りの『天才』にしか見えない、そして手が届きそうで届かない世界があるんだと思う。それを『切り取る』ために己の全てを賭ける。映画「cut」での西島秀俊の狂気に近い言動が想起された。
    「光を制するものは映画を制する」ということを僕は映画「セイジ陸の魚」のラストカットとエンドロールで感じた。伊勢谷友介監督の切り取った『奇跡』がそこにある。

  • 映画とは
    人の気持ちを、光を、影を、
    切り取るものである。
    切り取ったものが誰かに伝わるかどうかはわからない。
    それでも誰かに伝わってほしいとも思う。
    才条の遺した繋がっているのかという答えは、
    全てを捨て去ったその先にしかない。
    全てをかなぐり捨てて露出しなければいけないほど映画とは重たいもの、というのはcutにも通ずる。
    才条が好きだった。

  • らっぷびとさんが動画に楽曲提供をしているということで購入。

    登場人物一人一人のキャラが濃くて素敵です。

    文体が森見登美彦に似てる感じはしますが、もう少しラノベ寄りになっていて読みやすいと思います。(個人的に森見小説は苦手ですが、この小説は好きでした)

    主人公の葛藤は映画ですが、誰でも人生にある、むしろ人生という名の葛藤を彷彿させるのではないかと思います。

    07/08/14〜07/10/14

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