- Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041106877
作品紹介・あらすじ
満開の桜の下の墓地で行き倒れたひとりの天使――。昏い時代の波に抗い鮮烈な愛の記憶を胸に、王寺ミチルは聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す。愛と憎しみを孕む魂の長い旅路を描く恋愛小説の金字塔!
感想・レビュー・書評
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同性愛者を目の敵にした独裁政権下で,秘密警察やネオナチの横暴に屈しないで舞台で同性愛者の芝居を強行する王寺ミチルとその仲間の物語だが,魅力的な人物が数多く登場する.冒頭で記憶をなくしたミチルを手厚く介護し,四国の隠れ家への道をつけてくれた隈井静慧.体制側からの締め付けを打破しようと議員に立候補し,ミチルの助けで力を得た白鳥さやか.ミチルは四国遍路の道中で捉えられ収容所に送られるが,そこで会った野党党首の 春遠ひかり.ミチルはひかりの脱走に力を貸すことになる.政権への抗議でハンストを強行する静慧尼の説得役として収容所から出られたミチルは,尼の旧来の友人への伝言を託されてスペイン巡礼へ旅立つ.ミチルと稲葉久美子との芝居の場面の描写も素晴らしかったが,二人に事故の記述は真に迫っていた.久美子は死亡するが,スペイン巡礼で彼女の霊と同行するような場面も楽しめた.427頁の大冊だが一気に読破した.面白かった.
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気になっていた作家さんの一人で始めて読んでみました。ストーリー全体としては日本で起きている事件とは思えない展開で、ちよっと現実味がない感じです。同性愛については、人って異性にも同性にも好意を持つ感覚は同じで、そこから先にどう進むかで決まってくるんじゃないだろうか?
どちらの性でも好意があるのが二人の関係の始まりだよね!ただし、同性だと親しくなってからブレーキがかかるのかもしれない。
他の本も読んでみようと思う。 -
面白いけどぐったりする。三部作だったとは気付かなかった。
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私、中山可穂はもう、作品の出来とかどうでもいいんだ…。
いや、決して作品をけなしてるわけじゃなくて、作品も好きで、でも彼女の場合は物語の向こう側、作者本人の気迫が、私の心臓を鷲掴みにするのだ。
今回も、物語として無理のあるところもあったし、荒いところもあった、それでも一文字一文字に彼女の魂が込められていて、それがどうしようもなく胸を揺さぶる。
更に今作は、同性愛者が迫害されるほんの少し先の未来の日本が舞台で、物語全体と後書きには、これが現実になりかねないという悲痛な恐怖に満ちていた。
自身も同性愛者である彼女は、膨らむ不安に今作を書かざるを得なかったのだろう。
社会性もあるこの作品も良い作品だ、けれど私は彼女の恐れが拭い去られ、最小単位の人の間の感情のやり取りだけにまた集中して書ける世界になることを強く願っている。
彼女のファンとしても、偏見や差別のない世を望む一市民としても。 -
前作の内容を全くおぼえてないなーと思ったら20年ぶりなんだ…。中山可穂さんの本はいつ読んでも切なくてひりひりする。
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最新作。王寺ミチル三部作完結編です。『猫背の王子』『天使の骨』を読んだのが以前すぎてあんまり内容覚えてないですが、全然大丈夫でした。
やっぱりすごい。この人より純粋な恋愛小説を書かれる方はたぶんいない。もし王寺ミチルに愛してもらえるなら、私もそっちの世界行ってもいいわ。 -
「猫背の王子」「天使の骨」に続く王寺ミチルシリーズ完結本。
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王寺ミチルさんが、記憶喪失になって帰って来ました。同性愛者が弾圧される世界で戦うミチルさんは公安警察に追われ、お遍路さんに扮し逃亡を図ります。収容所に入れられますが、機会を得てスペインに亡命。久美子さんを感じながら巡礼の旅をします。
中山可穂さんが骨身を削り心血を注ぎ綴った文章をゆっくり味わい、愛の国を見せていただきました。ミチルさんが舞台を作るのと同じ情熱で、中山可穂さんは物語を描くのだと思います。好きな作家さんが生きて活動していて、新作が読める喜びを感じました。