小学4年生の世界平和

  • KADOKAWA (2014年3月25日発売)
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  • 本 ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041107379

作品紹介・あらすじ

アメリカで話題の「世界平和を目指す」というゲーム形式の授業――子どもたちは首相や大臣といった役割を与えられ、互いに交渉のなかで世界平和という勝利を目指す。ゲームの考案者であり教師である著者が今、語る。

感想・レビュー・書評

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  • こんな本格ボードゲームがあるのは知らなかったです。印象に残った部分を二つ抜き出します。
    「思いやりを表す以外に、私たちにどんな存在意義があるだろうか?」という、教育者の熱量に打たれた。
    「われわれはそれぞれ頭脳のOSとも言うべきある種の思考パターンを持っている。(中略)このOSはわれわれが慣れ親しんだものの見方で世界を解釈し、現実を歪めてしまう。ひとは自分の視点がいかに狭いか、どれほど新しい可能性をそれと知らずに取りこぼしているか、たいていは気づくことすらない。(中略)OSが機能不全に陥ると、普段抱いている世界観のその先へと目を向けざるを得なくなる。そして従来の世界観の限界に気づき、普段のものの見方がいかに近視眼的で、部分的になってしまっているかを見抜けることもある。」

  • 世界平和のための想像力
    これはアメリカ黒人教師のライフワークの記録です。彼が30年以上続けているワークショップがある。それは「ワールド・ピース・ゲーム」。ゲームの中で子供達は4つの国の首相や大臣、国連事務総長や世界銀行総裁となり、世界に迫る50の課題を解き、すべての国の経済を成長させ、平和に導かなければ、ゲームに勝利しない。他に2つの少数民族に武器商人、秘密の破壊工作員、はたまた気象の女神(気象現象や戦争の勝敗などで賽をふる)までいて、さながら国際政治の縮図のようだ。課題も環境破壊、貧困、民族紛争に原発問題・・・。すべての問題が複数の国に跨がっていて、問題を見ただけで悲鳴をあげそうだ。しかし、今まですべての子供達が最後には勝利を勝ち取っている。そのプロセスは一様ではなく、またピンチの連続だ。自分を過信して、世界を自分の力で掌握できると思い、失敗する子供もいる。その挫折で自分を発見し仲間に再び受け入れられる。普段はもの静かで行動も遅い子が、ある時ゲームの状況のすべてを掌握し、一気に解決策を提示することもある。子供達が最後に手に入れるのは集団的英知だという。最初はバラバラだったクラスメイト達が課題に取り組むプロセスで、心を一つにして解決策を導きだしていく。だれも答えを知らない課題に取り組み自分たちの解をみつけ出す。そこには世界平和を生み出す想像力がある。しかも彼らは小学4年生だ。考案者のジョン・ハンターが何よりも大切にするのは、エンプティスペースだ。その目的は「まだ見えていないもののために場所を空けておいてやること、可能性や潜在能力が生まれる余地を与えるため」である。「充実と空隙、決まった枠組みと自由さ、知識と創造性など」の両方が必要であるという。このエンプティスペースこそが子供達を集団的英知へと誘って行く。日本でもこのような教育は実践できないのだろうか?「ワールド・ピース・ゲーム」は、何よりもジョン・ハンターその人の英知によっているところが大きいのであるが、そう願わずにはいられない。

  • #69奈良県立図書情報館ビブリオバトル「迷い」で紹介された本です。チャンプ本。
    暁天ビブリオバトルと題して南都七大寺の大安寺で7時30分から実施しました。
    2016.8.20
    https://m.facebook.com/events/1748184685469367?view=permalink&id=1753553621599140

  • 第9回ビブリオバトル全国大会inいこま予選会④オンラインで発表された本です。
    2024.2.4

  • アメリカの授業で行われた、世界の課題解決型シミュレーションゲーム『ワールド・ピース・ゲーム』についての本。

    小学生の子供達が平和を妨害する困難に対して、団結したり時には1人だけで立ち向かう姿が眩しく、泣きそうになるほど感動させられる。 小学生でも世界平和は実現できる。

    現実でもそれを実現するには、少なくとも全世界が自国だけでなく世界全体の平和を目標として動く必要がある。それが一番難しいとは思うけど。

  • 子供たちが世界平和を目指すゲーム「ワールド・ピース・ゲーム」という教育プロジェクトのノンフィクション
    ゲームの考案者であり、教師のジョン・ハンター氏がこのゲームを行ってきた中で、子供の変化や気づきやアイデア、その発見のために必要なものなどが語られる


    ワールド・ピース・ゲームとは
    架空の国や民族や国連の各役割を与えられた参加者が、「50の危機をすべて解決」し、「4つの国すべての資産がスタート時より増えている」状態を目指すゲーム

    ゲームフィールドは宇宙空間、大気圏の上空、地上と海上、海中の4つの層に分かれていて、それぞれに資産となるものや軍備などのアイコンが配置されている
    経済力に格差のある4つの国と2つの少数民族
    先生はまず4つの国の首相の役割を生徒に提案していく
    受け入れた生徒は自分で他の閣僚を任命する
    他の役割は少数民族の族長、国連、世界銀行、武器商人、気象の神(気象や株式市場といった無作為な変動を司る)など

    そして特殊な役割の「破壊工作員」
    表の役割と兼任で「ゲームを台無しにする」事を目的として、限られた資金の中で先生にアクシデントを指示する役割
    資金は潤沢にあるわけではないので、表の役割で敢えて嘘を付く必要がある所謂人狼のような役割を秘密裏に任命する


    50の危機は、国家間の貧富格差、民族の独立や宗教との兼ね合い、気候変動、環境破壊、絶滅危惧生物、飢饉など、ありとあらゆる問題がさらに複雑に絡み合っている

    複雑な危機とは例えば、「貧しい国が所有する孤島に絶滅危惧種が生息していて、その島で未開拓の資源が発見された。この資源からの収入を得られなければ、飢饉を防ぐことができない。その資源の調達先を確保したい経済的に豊かな隣国に採掘権を売却したい。しかし、資源開発は絶滅危惧種を危機にさらすため、生態系保護に強い信念を抱いている第三国が反対している」など、交渉が二者間で完結しなかったり利害関係や複数の課題への影響を考えなければいけないもの

    参加者はそれぞれの立場で交渉や協調、場合によっては威嚇や武力によって課題の解決に取り組む

    先生はゲームの最初に「こんな世界を君たちに引き継がなければいけないことを申し訳なく思う。正直言って解決方法はわからない。君たちはいったいどうしたらいいと思う?」と問いかけ、課題解決には自分たちので正解を見つけなければいけない自覚を促す


    課題の解決に必要なものは、知識、創造性、叡智、そして思いやり

    これまで行ってきたゲームで「もうダメだ」と思った事も何度かあったが、最後にはすべて勝利してきたとの事

    途中で先生の関与も疑われるものの、本人も言っている通り自分も解決方法も知らないのにゲームの誘導なんてできそうもないかな
    ルールの概要だけだと一見複雑そうに見えて、実はゲームバランスの調整がかなり上手く設定されているのではなかろうか?
    ただ、日本で行われたときの映像を見る限り、解決への方法が穴埋め方式の文章になっているテキストもあったので、何度もゲームを開催してきた事による絶妙のバランスなんだろうね

    別で調べたところ、40年間1100回のゲームですべて勝利しているらしい
    はやはり疑わしいところがあるとは思ってしまう


    紹介されているエピソードをいくつか

    「普段はトロい生徒が終盤でいきなり八面六臂の活躍で問題のほとんどを一瞬で解決してしまった」とか
    「争いを好む首相をクーデターで追い落とす」だとか
    「武器商人がエネルギー産業に参入し、国家の資源問題を解決する」だとか
    「油田地帯の反政府集団を排除するためにミサイルを発射をしてしまうやつ」だとか
    「無計画に隣国の石油地帯を占領したように見えた少女の本当の意図」だとか

    普段の人間関係をゲーム内に持ち込んで独裁政治を敷くなんてのにはどう対処すればいいんだろうね
    ゲームシステム上でそんな人間を追い落とす事ができたのが幸いだけどさ

    逆に普段はおとなしい子なのに、いきなり隣国の油田地帯を戦車で包囲する女の子
    「自分が何をしているかわかっている」の問に対して「わかっている」と答えて、ゲーム内時間で数日後その意図がわかるところ
    現実の時間では2週間くらいなんだろうけど、その子の立場ってどうだったんだろうなぁというところを心配してしまう

    一番面白かったのは、パブロかな

    「パブロ!君は見抜いたんだね!」
    「ハンター先生、ボクには全部見えてます」

    これ、絶対に盛ってるだろ(笑)
    唐突に「わかる」瞬間が来るというのもまぁわからないでもないけど、描写の仕方に作為を感じる

    閃きのエピソードで紹介されているもうひとつのやつ
    最貧国の資産が足りない終盤で寄付の提案を思いつくところ
    いやいや、寄付するとか普通に一番最初に思いつくでしょとか思ってしまうのは野暮なんだろうなぁ
    あと、その方法が現実的かどうかというのもまた別の話で
    ただ単にお金をあげるだけでなく、資金の用途を提供側も利益になる形に限定するODAみたいなやつなら現実でも行われている事だよね

    いちいち大げさな表現だと思う



    ゲームを通じて想像力を養うエピソードも好きだ
    軍事行動によって死者が発生した場合は、意思決定した人が家族向けに手紙を書かなければいけないというルール
    授業参観のお母さんに読んでもらったときの教室の空気を想像するに、皆がゲームだけでなくとてもリアルに感じたんだろうね




    エンプティスペースという考えは現代人にとって一番必要な事かもしれない
    何もないところで、自分に向き合い、戦略を立てる空間と時間
    目の前のタスクに押しつぶされている人にとってはそんな時間が取れないからこそどんどん解決策がなくなっていくという悪循環な気がする


    伝えたい事が何度も言い回しを少し変えただけで出てくるので、その辺の理念に関しては削ってもよい部分が多い
    個人的には、ゲームのルールや詳細の説明がもっと欲しい
    でなければ、このゲームがどのくらいの難易度なのか、生徒の判断がどのくらいゲームのセオリーから外れていそうなのか判断できないのでね
    軍事行動を起こしている描写が多数見られるけど、ゲームの目的をすべての参加者が正しく理解しているのであればそんな行動が起こりようもないように思える
    だからこその破壊工作員という役割ができたんだろうけど、だとしても悪手な気がする
    もしかしたら、軍事行動が有用なようにゲームバランスが調整されているのかもしれないので、詳細なルールが知りたい

    ファシリテーターが途中でルールを追加したりする場合もあるようで、インタラクティブなものなので明確なルールとか掲載しにくい面もあるのかなとも思う

    期待はずれだった部分は、子供たちの提示した解決方法とか、意思決定のプロセスとかが書かれているかと思ったけど理念的な描写が多かったところ
    豊かな発想力による解決策をもっと知りたかったかな



    ちなみにこの本を手にとったきっかけは、山本弘さんの『BISビブリアバトル部』でビブリオバトルの本として紹介されて興味を持ったから
    全部読んでみてやはりよかったと思うし僕も読書会で紹介しようと思うので、読者の行動に影響を与えるという意味で『BISビブリアバトル部』もすごいと思う

  • 初めてするゲームは、ルールを一度聞いただけではよくわからないものだ。とりあえず、やってみよう。やりながら分かっていくし、と。「ワールド・ピース・ゲーム」もそんな感じで始まるのかもしれない。

    まず、仮想の4つの国があって、それぞれに首相や大臣が任命される。その他、少数民族、国連、武器商人や気象の女神もいる。破壊工作人の二役する者もいる。
    そして、50を超える様々な課題、たとえば貧困や部族間抗争、大国の侵略、石油流出事故、異常気象などを決断や交渉をしてクリアしていかなければならない。戦争やクーデターを選択することだってできる。

    こんなことを小学4年生が…?!

    このゲームの「勝利」とは、制限時間内にすべての紛争が解決され、4か国すべての資産が増加していること。

    現実世界とリンクしてしまうような仮想世界の中で、時に戦争を選択するようなゲームを子供にさせていいのか。日本人としては、どうしてもそういう風に考えてしまう。
    しかし、読み進めるうちに作者がこのゲームを通して子供たちに何を学ばせたいのか、ということははっきりと分かってくる。
    プレイヤーの役を決めるのも、ゲームを見守ることも、教師側に相当の能力がないと難しいゲームだとも感じた。

    図書館スタッフ(学園前):ノビコ

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    帝塚山大学図書館OPAC
    https://lib.tezukayama-u.ac.jp/opac/volume/808532

  • ふむ

  • 戦争

  • 子供たちにゲーム形式で政治のシミュレーションをさせ、
    世界が抱える問題について考えてもらう「ワールド・ピース・ゲーム」の実施記録。

    「ワールド・ピース・ゲーム」では子供たちは4つの国の首相や閣僚、
    世界銀行や武器商人、破壊工作員や少数民族の長等の役割を与えられ、
    既定の日数以内に、設定された複数の”世界の危機”を全て解決した上で、
    4か国の全ての総資産を開始時より増やすことを求められる。

    ”世界の危機”は、「貧しい国家が所有する島に未開拓の油田が発見されるが、生態系保護を信念とする国家から開発の反対を受けている」等複雑かつ複数の要因を解決しないいけない問題ばかり。

    子供たちは協力したり、騙したり、開発したり、協定を結んだり、戦争したり、
    融資を頼んだりしながら問題の解決に当たる。

    ゲームの規則がいまいちはっきりしないため、時々首を傾げるような点もあるものの
    「争いを好む首相を連続クーデターで追い落とす」だとか
    「武器商人がエネルギー産業に参入し、国家の資源問題を解決する」だとか
    「無計画に隣国の石油地帯を占領したように見えた少女の本当の意図」だとか
    ゲームの場面はエキサイティングで面白い。

    その一方で多々挟まれる著者の教育哲学の部分になると、
    読み物としては冗長かつ観念的になってしまうのが残念。

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