訣別橋下維新を破った男 (単行本)

著者 : 竹山修身
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年3月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041107546

作品紹介

’09年堺市長選挙で橋下徹の支持を受けて当選した竹山修身は、’13年の選挙では維新の会と対立。圧倒的に不利な状況の中、再選を果たす。なぜ彼は橋下徹と袂を分かったのか?当事者のみが知る赤裸々な真実!

訣別橋下維新を破った男 (単行本)の感想・レビュー・書評

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  • 大阪都構想住民投票の結果後読了。橋下敗北を予感させる内容だった。あとてっきりこの人、大阪維新会推薦と思っていました。

  • 「ブックマーク」読者さんからの紹介で、現職の堺市長が書いた『訣別 橋下維新を破った男』を読んでみた。自分ではなかなかこういうタイトルの本は手に取らないが、読んでよかった。

    かつては大阪府庁で橋下徹に仕え、堺市長選に初めて出たときは、泡沫候補と言われながら橋下徹の応援を受けて当選、しかし2期目は「大阪都構想」に堺が巻き込まれる必要はないと「堺はひとつ」を掲げ、維新の会の候補を破って当選したのが著者。

    維新の会がいろいろ言うことは「雰囲気」もんのことが多くて、私はいまだに大阪都構想がどういうものかよく分からずにいたが、堺市という具体的な基礎自治体の話を例に、維新の会の側が主張していることと著者の側が主張していることとの違いが書かれているので、自分の住んでいる自治体の場合はどうか…と考えてみるにもよかった。

    「是々非々でやっていく」という政治の世界のこともちょっと分かった気がしたし、基礎自治体がなにをやっていくかという点でもおもしろかった。

    都構想のことだけではなく、この本は政治というか選挙というか、そのへんの応援や支援、主張の異同のことなどが、「イメージ」によってねじまがりやすい具体例も示していて、報道機関までもが事実誤認を伝えてしまったりしたことを知ると、こわいなーと思う。

    大阪都構想と二重行政のこと
    そもそも大阪都構想とは「大阪府と大阪市の二重行政の解消」にある、と著者はいう。
    ▼早くから関西の中心都市だった大阪市は、財政力もあり、大阪府に対して、自治の拡大を求め続けてきた。一方、大阪府は、域内の大阪市の権限が増えるのに懸念を示し続けてきた。
     その結果、大規模開発などの広域行政に関して、大阪市内のことは大阪市が、大阪市外は大阪府が、と棲み分けることとなった。これによって、両者が、大阪市内と市外で、似たような事業を行う、二重行政、二元行政が起こってしまった。双方で行われた水道事業や、超高層ビルの建設、信用保証協会など各種外郭団体の運営などがそれにあたる。
     これを無くすため、大阪市を廃止・分割して、複数の30万人程度の自治体にし、広域行政の権限と財源を大阪府が吸収し、一元的に行うというのが、大阪都構想である。(pp.124-125)

    著者は「二重行政をなくす」という理念はその通りだと思うが、そのための手段として大阪市の廃止・分割は得策だと思わないし、二重行政のない堺市の廃止・分割は論外だと思っている、という。堺市にとって、何のメリットもないからだ。

    堺市は、一般市→中核市→政令指定都市と、地力をつけるのにあわせて権限を増やしていき、その過程で、大阪府と権限が重複しないようにその都度調整がされていて、大阪府とのあいだに二重行政はない。だから、堺市には大阪都構想に参加して、廃止・分割される理由など何もないのだ、というのが著者の主張のキモである。

    それがなぜ、堺市も大阪都構想に参加させられようとしたか。著者は、ひとつには政令指定都市を一括りにしてしまうドグマと、もうひとつは堺市の健全な財政が狙われたことだろうと推測している。

    「都構想」が姿をあらわしてくるにつれ、かつて選挙応援をもらった橋下徹と著者との距離は拡がり、2013年の堺市長選では、大阪維新の会の候補と激突する。

    「イメージ」戦略のこわいところ
    著者が最初に堺市長に立候補して当選した際には(2009年9月)、大阪維新の会はまだ発足していなかったし、もちろん大阪都構想もなかった。党のサイトにもあるが、ローカルパーティ「大阪維新の会」発足式は2010年4月23日である。
    http://oneosaka.jp/report/2010/04/2010-0423.html

    ※大阪府議会内の会派として「大阪維新の会」が結成されたのは、4月1日
     大阪府議会ホームページ 会派の解散、結成及び議員の異動について
     http://www.pref.osaka.lg.jp/gikai_giji/others/220401kaisan.html
     【会派の結成】 ○「大阪維新の会大阪府議会議員団」(所属22名)
     〈結成日〉平成22年4月1日

    著者は、この最初の選挙で元上司の橋下府知事の応援を受けたことを「心から感謝している。そして、それがなければ勝利できなかったと思っている」(p.47)と書く。続けて、こう書いてもいる。
    ▼その応援の実態を、橋下氏自身の言葉[=橋下徹、堺屋太一『体制維新 大阪都』]も踏まえて述べるならば、「橋下知事の人気を利用して当選を狙った私」と、「堺市長選挙を利用して政治力の拡大を狙った橋下知事」との利害が、完全に一致した結果だった。(p.47)

    この最初の堺市長選(2009年9月)のあとに、大阪維新の会が発足するのであり、大阪都構想も出てくるのである。

    著者は、大阪都構想で、大阪市の分割話については態度を保留した。大阪市のことは大阪市民が決めるべきで、自分がどうこういうことではないとの考えからだ。その後、維新の主張が「堺市も分割、権限を吸収」となった時点で、著者は、堺市民のためにならないという確固たる自信から、都構想への反対を主張するようになった。

    ところが、こうした時系列を無視して、橋下知事の応援をもらった=大阪都構想賛成=大阪維新の会から立候補した、そのくせに、という批判を著者は受ける。報道関係者も誤認していたし、大阪維新の会の議員のなかにもそういう見当違いの非難を向ける者があり、当然のことながら市民にも、まるで著者が以前は維新の会で都構想に賛成していたかのように誤解する人たちがいた。

    「堺のことは堺で決める」
    大阪維新の会は、大阪都に堺が参加して、廃止・分割された際の権限と財源について「中核市なみ」などとしているそうだ。仮にそうなったとして、堺は「政令指定都市」としての権限、財源は返上することになる。

    著者は、これまでの堺市政が、長く「政令指定都市入り」を悲願としてきたものの、それによって得られた権限について市民にしっかりと伝えてこなかったことを反省点としてあげる。

    政令指定都市となったことで、堺市の場合、約1000の業務を大阪府から委譲されている。都市計画の決定(府にお伺いをたてずとも堺市が判断できるようになった)、府管理の国道と府道の管理(市道とあわせ一元管理ができるようになった)、子ども相談所の運営(堺市では通報後24時間以内の対応を実現)、教員の独自採用、等々、まちづくり、子育てなどに関わる重要な権限が多い。

    ▼よりよいまちづくりに権限の委譲は不可欠で、政令指定都市は、現行の法制度においては、最も市に権限が委譲された形なのだ。(p.144)

    都構想に参加した場合の具体的なデメリットが財源問題だと著者はいう。堺市が、大阪都の特別区になった場合、自主財源というべき税収の少なからぬ部分が府に吸収されてしまう。また政令指定都市の特有財源も召し上げられてしまう。定数109の府議会で堺市選出議員が10人という状況で、府がそれで得た財源を堺市のために使う保障はない。

    さらに、都構想によって堺市が分割された場合の非効率というデメリットがある。仮に堺市が3つに分けられた場合に、それらの特別区に設ける本庁舎、区議会は3つ必要になり、それは3分の1×3とはいかない。初期経費とランニングコストが現在よりもかかるだろうし、情報システムの再構築経費や地名変更による標識などの変更経費も膨大だろう。

    こうして具体的に示したデメリットに対して、大阪維新の会の側が示せた具体的なメリットは何もなく、ただ「制度設計はこれから」と繰り返されるだけだったという。

    市民との対話
    大阪維新の会の候補とたたかうことになった2期目の堺市長選を、著者は徹底して「市民との対話」にかけた。市民と語りあい、堺についてじっくり考えてもらいたかった。著者はこの選挙を「ごく普通の市民の思いと、異次元の経済効率至上主義との戦い」(p.227)とも表現した。

    著者の考える選挙は、「ワンイシューではなく、お互いが「どんなまちにしたいのか」を訴え合い、それを有権者が選ぶもの」(p.212)だったが、その前提となる権限と財源を奪う大阪都構想のことをまず考えてもらわねばならなかった。

    最終的に、自民党の支持、民主党の推薦、共産党・社会党の自主支援を受けた著者は、維新の側から「相乗り批判」をされた。しかし、それはあたらないと著者は自信をもっていた。なぜなら、著者を支援する各党の政策は違うものの、その政策の前提となるのは「権限と財源」であり、それを奪う大阪都構想は政策以前の話だからだ。

    だからこそ、その権限と財源、堺というまちを守るために、政策の違いを乗り越えて、各党が支援した。選挙戦の前半は「都構想の是非」を最大の争点としてきたが、残りの一週間は「どんな堺にしたいんか」を徹底的に訴えた。

    2期目の市長として、著者はこれからの地方自治についてこう述べる。
    ▼住民サービスは可能な限り、基礎自治体が担い、できないことを広域行政が担い、それえもできないことを国が担うというのが、地方分権、地域主権の基本的な発想だと思う。
     また、そうなると、それぞれの自治体で足りない部分を、広域行政に任せるだけではなく、近隣の自治体で補い合う、水平連携が重要になってくる。…(略)…
     基礎自治体に権限と財源を移譲し、近隣の自治体同士で足らずを補い合い、地域が力を付けてこそ、初めて大きな枠組みの変更ができるのだと思う。(pp.234-236)

    そのために、基礎自治体としてもっと足腰を強くしていかなければならないと著者は考える。「先に広域行政を強くして、そのおこぼれを地域に落とすような大阪都構想とは、手順・発想が根本的に異なるのだ」(p.236)と。

    ***

    堺市で働いてる人や、堺市に住んでいる人の話を聞いてみたいなーと思った。市長はこう言うてますけど、どうですか?と。それと、橋下徹の、というか、大阪維新の会の迷走も感じた。「なんとなく」でも分かった気にはならない大阪都構想が、堺市という鏡にうつして、ちょっと分かった気がした。

    (6/19了)

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