人体 ミクロの大冒険 60兆の細胞が紡ぐ人生

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  • 本 ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041107584

作品紹介・あらすじ

人はどのような細胞の働きによって生かされ、そして、なぜ老い、死ぬのか。本書は生命が40億年の歳月をかけてつくりあげた仕組みを読み解こうという壮大な「旅」である――。

感想・レビュー・書評

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  • 書名と同盟のNHKスペシャルの番組について、その制作過程に加えて科学的な解説を行って書籍化したもの。制作には2年以上かかったというが、その間に山中さんは本書にも出てくるiPS細胞でノーベル賞を受賞したし、研究も先端でどんどん進んでいる。

    副題に「60兆の細胞が紡ぐ人生」となっているが、この「細胞」が本書の主役だ。DNAのドグマから最近のエピジェネティックスの動きもNHKの観点からは、人体の中の細胞の動きを技術を駆使して映像化するということだ。担当のNHKのディレクターが望み、技術者がそれに応える、というのがひとつの骨子になっている。せっかくなので放送で使った図を入れてほしかったが、放送をNHKオンデマンドで見ろということか。YouTubeにも公開された受精から出産までを描いたCG映像はここから派生したものだと思うのだが、生物の不思議を強く感じさせるもので、映像化の意義を感じさせる作品で一見の価値がある。

    人体の細胞は約200種類。人体の中で一番多い細胞は赤血球。一番大きな細胞は卵子で、小さいものは精子、という蘊蓄から入る。確かに細胞のことがよく知られていない象徴的なエピソードかもしれない。

    「経験を受け止める主体は、細胞なのである」

    まだまだ未知の領域は広い。

    ※ STAP細胞の事件で自殺をした笹井氏も出てきている。優秀な研究者であったはずだ。残念。

  • エピジェネティックス関連の本を連続2作目
    NHKスペシャルの『人体 ミクロの大冒険』は見ていない
    のですが、本書の中に書いてある通り、映像で細胞や
    遺伝子、ホルモン等の活動をとても美しく見せてくれる
    のであれば見てみたいと思いました。再放送が
    あればみようと思います。
    エピジェネティックスに関して、最終章に書かれて
    ある二つの内容がとても感慨深いきがします。
    『生き抜くために、胎内にいる時から環境を探り、準備しようとする。そして生きている環境に合わせてよりよく変化していく。その変化の源こそ、細胞という存在ということになる。その変化する細胞でつくられている私たち。その主体は何なのだろう。
    いくつの細胞が集まったとき、私という主体が現れるのか。それは、たくさん集まれば浮かび上がる幻のようなものなのか。細胞たちが移ろい変わる中でも、確かなものとして存在しているのだろうか。』
    『もしも私たちの経験がエピジェネティックスという形になって子どもたちへ引き継がれていくなら、私たちの日々の思いや努力もやがて未来へと引き継がれる気がする。私たちの内なる細胞社会は、現実の社会を反映しているとともに、未来の社会を描きだすキャンパスでもある。生命をおびやかされるような過大なストレスを経験すれば、その影響は世代を超えて続いてしまう。平和な社会を築くことは、子孫たちの中に健全なよき細胞社会を作る大事な要件なのだ。』

  • 人体にかかわる先進的な科学の研究成果が非常に興味深く書かれているノンフィクションであった。特に、エピジェネティックという概念と、オランダ飢饉及びホロコースト、9.11のPTSD調査に根ざした次世代への特質の継承という点に今後も注目したいと感じた。

  • この手の本ではよく、テレビ番組を書籍化しただけのものがあるけれど、本書は違う。テレビ番組に収まらなかった部分も含めて、読み物としてしっかり書かれていると感じた。冒頭に書かれている、人体の中のにある、最大の細胞は?、最小の細胞は?、最多の細胞は?という質問でつかみはバッチリ。聞き分け困難なヒンディー語の発音を、1歳と6ヶ月の赤ちゃんで聞き分けさせる実験は興味深い(6ヶ月児は聞き分けできるが、1歳児はできない)。卵巣には出口がない(卵細胞は無理やり壁を突き破って卵管へ移動する)理由が、外部からの侵入を防ぐためというのは大いに納得。キスでオキシトシンは分泌される。女性は男性の10倍。見つめ合うだけでも効果ありってすごいね。テロメアの長さが寿命と一致していない生物もいるというのは知らなかった情報。

  • 読みやすく分かりやすかった。

    児が胎内にいる際の母の経験は細胞や遺伝子に引き継がれる、というもの。
    他にも話はあるが、要は環境の遺伝子への影響の話だった。

    ハーモニープロジェクトというのも面白かった。
    社会的な課題を抱えた家庭にある子供に楽器を与えると学習能力が上がるというもの。
    複雑な作業は脳を活性化させる、とかなんとか。
    ルーチンワークに終止し、発展性の無い中高年に聞かせたい内容だった。

  • 遺伝子で決められた人生は、
    細胞によって変更される。

    生き物は、突然変異の遺伝子の自然淘汰だけで、
    変化に対応してきたのではなく、
    細胞による急激な環境変化にも
    ある程度対応できる驚くべきシステム。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:491.3||N
    資料ID:95140315

  • Nスペの書籍版だけど,図版がまったくないのはどうしたことだろう。番組では4K収録とかバイオイメージングとかでビジュアルを売りにしてたのに,本書は文字だけでちょっと驚いた。取材裏話というより放送内容の補足がメインの構成だし,写真や図,せめてイラストがあればもっと理解を深められると思うのだけど。
    文体がちょっとテンション高めで大袈裟だったのもいまいち。「○○博士である。目がクリッとしていて、濃いソース顔。親切この上ない人柄だ。」p.182 みたいな感じの何だか外れた記述も多くて興をそがれる。

  • 学術的内容というよりは、NHKスペシャルの番組の舞台裏という印象。最先端の研究内容などの説明には物足りなさを感じた。遺伝子を修飾してその遺伝子を働かせるかどうかのスイッチを切り替えることで、環境に対して柔軟な遺伝子発現を行うことができる『エピジェネティクス』についての最先端の研究が紹介されている。

    ・親が飢餓状態のときに生まれた子どもは太りやすくなる
    ・親がPTSDを発症したことのある子どもは、PTSDを発症しやすくなる
    ・愛情のホルモンと呼ばれるオキシトシンの人工投与によって、自閉症の方の対人コミュニケーション能力を改善させる可能性が期待されている
    などが興味深かった。

  • PTSDは精神的なもんだとばっかり思っていたから細胞レベルまで行って説明できるのにびっくりした。だから妊婦のPTSDが遺伝するのもうなずける。これがおもしろかった。

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著者プロフィール

長年「ひきこもり」をテーマに取材を続けてきたメンバーを中心とする、全国で広がる「ひきこもり死」の実態を調査・取材するプロジェクトチーム。2020年11月に放送されたNHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作およびドラマ「こもりびと」の取材を担当。中高年ひきこもりの実像を伝え、大きな反響を呼んだ。

「2021年 『NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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