浪速のロッキーを〈捨てた〉男 稀代のプロモーター・津田博明の人生
- KADOKAWA (2014年4月24日発売)


- 本 ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041107591
作品紹介・あらすじ
大阪・西成の下町から裸一貫で出発して、ボクシング界に一時代を築き上げた男、津田博明。その成功の礎にいたのは、あの赤井英和だった。世界王者という夢を抱いた男達の熱意と思惑、そして「孤独」。
感想・レビュー・書評
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普通ならば、ジムを立ち上げた会長とボクサーの成功物語になるはずが、読んでいて非常に後味悪く胸が痛む内容になっている。津田会長がジムを立ち上げるまでの苦難の人生と、ブームの中にも冷静に赤井の才能に早々に見切りをつけ、ジムの存続を模索する経営者としての才覚が、悲劇的な結末に結びついたような気がしてならない。何故赤井と共に燃えて、可能性にかけることができなかったのか。事実、津田会長はこの後経営者としては成功するのであるが、そのためにヒトの人生や夢が軽んじられていいのか、非常に考えさせられる。赤井が一命をとりとめ、現在活躍しているのが救いではある。
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ボクシングのプロモーターの博打打ちのような世界。ボクサーとの絆が中心になるのもわかる。津田を許せなかった赤井英和の気持ちを思うと読みながら津田に腹が立って仕方なかった。商品として使い捨てた印象は拭えない。何らかのカリスマ性もあったのだろうが、人間として好きになれなかった。
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どこか焦点が合わない眼鏡をかけて歩いている気がする。そんなスポーツノンフィクション。
なぜ稀代なのかが、よく分からない。
ただ、赤井さんのボクサーとしての実像を伝えることには成功している。 -
良かった!良かったんですが終盤、「おそらく~」「~はずである」「~かも知れない」という表現が気になってしまった。当事者から話を引き出すのが難しかったのは文章中から伝わってくるんですが…。
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赤井英和、井岡を育てたグリーン津田ジムの津田会長のルポ。
こうかくと成功物語のように思えるが実際はドロドロの人間の葛藤。
どうしても成功したいと願う津田会長の業とでもいうのだろうか。津田会長の成功とともにまわりの人間関係に軋轢がおきまくっていく。晩年は幸せだったんだろうか?赤井と和解できなかったことはどうおもっているのだろうか?成功と幸せについて考えさせられる。
赤井が成功しそしてボクシングに恩返しでコーチをしてるのが読後感で唯一さわやか。 -
何とも異色のプロモーターである。
経歴は元プロボクサーではなく、タクシー運転手の業務の傍らジムにかけつけ、時には理髪師の腕を活かして練習生の頭をカットする。
指導は手取り足取り懇切丁寧で、自宅や公園でもつきっきりで教え、練習後には生徒の体を拭いてやるほど献身的だ。
弱小のジムの会長らしく、時には新幹線の車内放送を利用して、ジムの宣伝にも余念がない。
従来のミットを構えつつ同時に算盤もはじく、狡知に長けた傲岸不遜のプロモーターのイメージとは異なり、津田にはどこまでも不器用で純粋な印象がある。
ただ正直言えば、津田が赤井という傑出したボクサーの世界への挑戦に寄り添いながら、なぜ去っていった竹ノ内に未練を残し、赤井より魅力も戦績も劣る杉本に執着したのか最後までわからなかった。
赤井にしてみると、教えてくれと何度も頭を下げ、ジムの立ち上げの際には自ら練習生をリクルートし、最大の後援者の心までとらえたのに、津田に自分の成功の可能性を最後まで信じてもらうことは出来なかった。
「津田が自分に交互に向けてくる甘い蜜と冷たい棘の記憶は、消化されない心の澱となって残り続けるしかなかった」という赤井の複雑な感情は読者の胸を打って止まない。
カバー絵がタクシーの制帽をかぶったまま練習生のパンチを受ける津田の写真であればもっと良かったのに残念。
というより本書の中で写真が一切使われていないのは、関係者の同意を得れなかったためか、何とも解せない。 -
グリーンツダジム会長だった津田博明の評伝。良かったけど、もっと津田会長、赤井英和さんのドロドロ心の動き、対立が知りたかった。
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タクシー運転手をしながら西成の公園で自分の妻子をほったらかして若いボクサーを育てたプロモーター津田博明の人生。浪速のロッキー、赤井英和は単なる商品だったように読み取れましたがスポーツでありながら興行であるボクシングの宿命なのかもしれません。著者の思いとは違って、赤井英和に思い入れがあるからか私には最後まで津田博明の生き方を受け入れられませんでした。
著者プロフィール
浅沢英の作品





