- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041108499
作品紹介・あらすじ
吉野家へ婿入りした岡三郎は、妻・おそめに惚れ込んでいたが、どうやらまだ夫婦の契りがないらしい。それをきいた長兵衛は、吉野家の主人から依頼されていた眼鏡の受け渡しを神社の本殿で行うと言い出して……。(「蒼い月代」)
長崎での遊学から戻って以来、“オランダかぶれ”の風を吹かせていた息子・敬次郎に困り果てた長兵衛は、敬二郎を研ぎ常兄弟の元へ奉公に出すと決める。敬二郎の長崎談義を面白がって聞いてくれる兄弟に、奉公も上手くいきそうだと喜ぶ敬二郎だったが……。(「よりより」)
ひいきの芸者・純弥にカネを惜しまず、さりとて旦那風を吹かせない長兵衛に、誰もが一目置いていた。そんなあるとき、純弥からお茶屋を普請するために力を貸してほしいと手紙が届き……。(「上は来ず」)
家宝の天眼鏡で見通すのは謎か、心か。お江戸日本橋を舞台に知恵と人情で謎を解く、村田屋長兵衛大人気シリーズ第二弾!
感想・レビュー・書評
-
短編が6話
夜回りをプロに任せる決断をした長兵衛たちの話と芸妓純弥に関わる長兵衛たちの話、は惚れ惚れする話です
金メダルを齧るような奴とは大違い!
そして、潔く息子に店を譲り2番手に徹する父親の話。自分の心構えにしなければと気づかされた話です詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小説野生時代2019年2月号:蒼い月夜、6月号:よりより、10月号:秘伝、2020年2月号:上は来ず、7月号:湯どうふ雪牡丹、10月号:突き止め、に加筆修正して2021年2月角川書店刊。長兵衛天眼帳シリーズ二作目。湯どうふ雪牡丹はちょっとした謎が解けるところで終わっているが、その先の豆腐が八百善とまでは行かなくとも、江戸の料亭まで届く話にならなかったのかなと思いました。が、短編なのでここまでなのかも。やせ我慢、正味、呑み込みの一力節は健在ですが、短編だと少し物足りないです。
-
山本一力の最新作であり、長兵衛天眼帳シリーズという作品でした!江戸時代の大店の眼鏡店の主である長兵衛を主人公に、いろいろな出来事を長兵衛とその仲間たちが解決に導くという粋な人情短編6編という内容ですが、どの短編も山本一力ならではのさすがのテイストで非常に面白かったです!
-
長兵衛天眼鏡の第二弾
江戸の巷に起こる様々な揉め事を、
老舗眼鏡屋主人・長兵衛と、小網町の目明かし・新蔵が人情に支えられた知恵と、深い洞察力で解決してゆく。
物語毎に紡がれる
珠玉の言葉達が刺さる
◯蒼い月代
巨額の持参金を目当てに、大店の米問屋から婿を取った小網町の白扇屋・吉野家の当主・四五六とその娘おそめは、お預けにしている床入りを餌に無理難題を吹っかけ、賄い女との不義を画策するが…
人は、話をつなぐ度に、
我知らず話を盛るのが常…
◯よりより
「栴檀は双葉より芳し」
長崎から戻った息子・敬次郎は、すっかり「オランダかぶれ」となっていた。
行く末を案じた長兵衛は、キセルの政三郎の口利きで研ぎ師・研ぎ常兄弟の元へ修行に出す。
合理主義の対極とも言える指導…。
一言の指示もなく、何日もひたすら放っておかれた敬次郎は…
長崎の小料理屋「びーどろ」の女将の餞別といい、研ぎ常の指導といい、現代の若者達ではとても受け入れられる事はないだろう。
その是非はともかく、
崇高な物事の伝達には、受け取る側の資格が問われたという事だろう。
敬次郎もまた栴檀で良かった…
◯秘伝
小網町の鰻屋・初傳の主人・傳助(五十二歳)。
その三軒隣の薬種問屋・柏屋の主人・光右衛門(六十一歳)。
その道一筋、名人の域に達した男二人の生き様と幕の引き方。
「明日は味方」
そのエッセンスとは…
◯上は来ず
上は来ず
中は朝来て昼帰る
下は夜来て朝帰る
下下はそのまま居続ける
十年に渡り、室町の冬場の夜回りを請け負う万年橋の鳶宿・豊島亭の親方・安次郎との出会い。
時を経て…
再びその男の名と遭遇したのは、
長兵衛が長年に渡り贔屓にしてきた芸妓・純弥の為に尽力し、その望みを叶えてやったという満足感の中だった…
お座敷遊びが男の夢などとは爪の先程も思わないが…
「上は来ず」
肝に銘じよう。
◯湯豆腐牡丹雪
新蔵の強い勧めで、武蔵野は飛鳥山の名湯・鷹の湯へと出掛けた長兵衛達は、
極楽の湯と、絶品の湯豆腐、至高の按摩に酔いしれるが、その真夜中…
なんと「騙り」の嫌疑をかけられ村の自身番の元に引き出される。
村田屋の手代頭を騙った与四郎という男の真実は…
その湯豆腐、
食べてみたいなぁ…
◯突き止め
ろくでなしの母親と、その母に我儘放題育てられたバカ息子は、働き者だった亡き父親似の娘・えみにタカリ続ける。
度重なる火の不始末から施設送りとなった母が、えみの夫・新三郎にねだって買った富くじは…
珍しく、
長兵衛・新蔵コンビの出番は殆どなし。
-
長兵衛天眼帳シリーズ2弾。
天眼鏡で名をなした長兵衛の大店としての心得。
主人というもの、大店としての地域の立ち位置。
文化はじめ生活に関わる責任と役割。
難しいようだが、それがいくつかの店と主人たちによって物語になっている。
市井の人々の営みの中で営まれる悲喜交々。 -
時代小説。
著者の得意な人情もの。 -
初出 2019〜20年「小説野性時代」の6話で、長兵衛天眼帳シリーズ第2作。
かつての一力節がややおとなしくなった感じ。
江戸は室町の眼鏡の大店村田屋長兵衛の人格と推理と機転の物語で、安政3〜4年の話。
多額の持参金付きの婿を嵌めて不縁にしようと企む扇子屋の主に、神主から”偽りの神託”を語らせて”円満に解決”する「蒼い月代」。でも神をも恐れぬやり口はいかがなものか。
長崎遊学ですっかり長崎かぶれになった村田屋の跡継ぎを、刀研ぎに弟子入りさせて気づかせる「よりより」。
うなぎ屋の潔い代替わりが薬種問屋の主の代替わりを促す「秘伝」。
室町の火の用心の見回りを一冬百両で委託した長兵衛だが、大地震後新しい茶屋を建てるという贔屓の芸者の順弥を応援したが、火消し宿の主がもっと応援していたと知って驚く「上は来ず」。
王子村に湯治に出かけて騙りの犯人の疑いを掛けられたが、本気で取引しようとしていて地震で死んだと真相が分かる表題作。これが一番おもしろかった。
夫を亡くした後わがままになり、息子を激愛して娘夫婦に迷惑を掛けた女が、二千両の富くじを当てたものの落雷で死ぬという因果応報のような「突き止め」は後味の悪い作品。
著者プロフィール
山本一力の作品





