長兵衛天眼帳 (角川文庫)

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  • 本 ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041108901

作品紹介・あらすじ

日本橋の村田屋は創業百二十周年の老舗眼鏡屋。そのあるじの長兵衛は、すぐれた知恵と家宝の天眼鏡で謎を見通すと評判だった。
ある日、目明かしの新蔵が長兵衛に助けを求めてくる。住吉町の裏店で起こった人殺しの本当の下手人を挙げるのに長兵衛の力を借りたいという。
浜町の目明かし・巳之吉が、殺人が起こった長屋の者たちの手を検分して、手が汚れていたというだけでそこに住まう十七の娘おさちに縄を掛けたという。
ろくな調べもせずに罪なき娘を引き立てたことに怒りを覚えた長兵衛は、広い人脈と持ち前の人柄を発揮して事件を解決に導く。
長兵衛の評判がますます高まる中、今度は木場の檜問屋・福島屋矢三郎の遺言状の真贋鑑定を依頼される。
息子の豊太郎に遺されたものの他に、矢三郎の弟・新次郎の許にも遺言状があるのだという。
長兵衛は天眼鏡で真贋を明かすが、福島屋を自分のものにしたい新次郎の企みによって、事態は思わぬ方向へ動き……!?

感想・レビュー・書評

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  • 山本一力作品には男が惚れ込むような男気が描かれる。今作は捕りものを中心とした人情時代小説。目明かし・新蔵、南町奉行所定町廻同心・宮本宜明、そしてタイトルでもある老舗老眼鏡屋・村田屋の店主長兵衛が難事件を解決していく。新シリーズ始動、何とも嬉しい限り!

  • 山本一力さんの作品には、「人情物」と、この作品のような「知恵比べ物(?)」とがある。僕は、後者の方が好きだ。「勝者」が「敗者」を一方的に叩きのめすのではなく、両者に暖かい目を向けているところが、素晴らしい。

  • 日本橋の老舗眼鏡屋・村田屋の店主長兵衛は、豊かな見識と家宝の天眼鏡で謎を見通すと評判だった。目明しの新蔵も難儀をするたび相談を持ちかける。ある日、住吉町の裏店で人殺しが起き、十七の親孝行な娘・おさちが縄を打たれる。新蔵は濡れ衣ではないかと疑うが、現場を受け持つ目明しは乱暴と悪名高い巳之吉。縄張り違いの厄介事に、助けを求められた長兵衛が練った策とは―。江戸の活気と人情あふれる新シリーズが始動!

  • 第一話は親蔵親分が主人公?という話の流れでしたが、なるほど周りから固めていく手法なのかなと納得。その後魅力ある登場人物がどんどん出てきます
    悪人への罰、その落とし所など丁寧さを感じる作風です

  • 3.8
    日本橋室町の老舗眼鏡屋・村田屋の主人・長兵衛と、日本橋小網町の目明かし・新蔵が、二人の眼力と村田屋の家宝・天眼鏡を駆使し、力を合わせて難題を解決してゆく。

    「天眼帳開き」

    悪名高い目明かし・巳之吉の縄張りである住吉町の裏店で起きた殺しの捜査で巳之吉が縄にかけたのは、母と妹の面倒を見つつ長屋の住人の手伝いをしながら生活を支える、近所でも評判の娘・おさちだった。
    おさちへの嫌疑に疑問を抱く新蔵は長兵衛に助力を求めるが…

    おさちの手についていた泥と、出所の分からない多額の支度金がおさちの立場を危うくしてしまう。

    ◯宮本宜明…南町奉行所定町廻同心。新蔵の雇い主。
    ◯小倉義則…北町奉行所の定町廻同心。巳之吉の雇い主。
    ◯巳之吉…新蔵の縄張りと境目が隣り合う浜町の目明かし。町民から蛇蝎の如く嫌われている悪名高い目明かし。小倉の部下。
    ◯余左衛門…小網町の太物屋大店・蔦屋の頭取番頭。


    「真贋吟味」

    深川・木場の檜問屋・福島屋の主人・矢三郎の急死に伴い、生家を出て川並宿を営む実弟が、内儀も頭取番頭も寝耳に水の書残(遺言書)を出して来た事で起きた騒動。

    双方が鑑定人を出し真贋を吟味する事に…

    ◯やぐら下の幹二郎…木場の材木問屋の大店・木柾の次男坊で目明かしとなった変わり種。
    ◯福島屋矢三郎…深川木場の檜問屋福島屋の七代目主人だったが正月に急死。
    ◯新次郎…川並(筏乗り)宿・岐阜新を営む矢三郎の実弟。
    自分を豊太郎の後見人とする矢三郎の書残を出し、全権を渡すよう迫る。
    ◯吉乃…矢三郎の妻。
    ◯中悟郎…福島屋の頭取番頭。亡き主人の信頼厚く、商売向きの一切を取り仕切っていた。吉乃の信頼も厚い。
    ◯豊太郎…矢三郎の息子。
    元服間近だが、ひ弱で線が細い。
    ◯飛騨屋東七郎…今戸の檜問屋・飛騨屋の主人。福島屋の商売仇。筆跡鑑定人として名が通っている。この事件の黒幕。
    ◯竪川厳美斎…中悟郎側の用意した鑑定人。女と金に弱い。

  • 3年1月17日読了。
    またまた、江戸の男気満載の人々が登場。
    善が悪を成敗するも、情状酌量の幕引き。
    嫌な奴が、ちょっとだけ見直せる奴に。
    家宝の天眼鏡も、使う人間によってその真価は、変わるだろう。
    「塩梅」という言葉がいいなぁ。
    今年、シリーズ2作目が出るという。楽しみ。

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著者プロフィール

1948年高知市生まれ。都立世田谷工業高校卒。旅行代理店、広告制作会社、コピーライター、航空関連の商社勤務等を経て、97年「蒼龍」でオール讀物新人賞を受賞。2002年『あかね空』で直木賞を受賞。江戸の下町人情を得意とし、時代小説界を牽引する人気作家の一人。著書多数。

「2023年 『草笛の音次郎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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