飼い喰い 三匹の豚とわたし (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 146
感想 : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041109106

作品紹介・あらすじ

ロングセラーの名著『世界屠畜紀行』の著者による、もう一つの屠畜ルポの傑作! 
自分で豚を飼って、つぶして、食べてみたい――。

世界各地の屠畜現場を取材していく中で抱いた、どうしても「肉になる前」が知りたいという欲望。
養豚が盛んな千葉県旭市にひとりで家を借り、豚小屋を作り、品種の違う三匹の子豚を貰い名付け、半年かけて育て上げ、屠畜し、食べる。
「畜産の基本は、動物をかわいがって育て、殺して食べる。これに尽きる」。
三匹との愛と葛藤と労働の日々に加え、現代の大規模畜産での豚の受精、出産から食卓にあがるまでの流れも併せて踏み込み、描いた前代未聞の養豚体験ルポルタージュ! 

※本書は2012年に岩波書店から出た単行本を加筆修正し、文庫化したものです。


【目次】
はじめに なぜ私は自ら豚を飼い、屠畜し、食べるに至ったか

見切り発車
三種の豚
システム化された交配・人工授精
分娩の現場で
いざ廃墟の住人に
豚舎建設
お迎え前夜
そして豚がやって来た
日々是養豚
脱 走
餌の話
豚の呪い
豚と疾病
増量と逡巡と
やっぱり、おまえを、喰べよう。
屠畜場へ
何もかもがバラバラに
畜産は儲かるのか
三頭の味
震災が

あとがき
文庫版あとがき
解説

感想・レビュー・書評

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  • 祝文庫化(版元変更)

    これは奇書中の奇書である──『飼い喰い 三匹の豚とわたし』内澤旬子著 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/675939

    飼い喰い 三匹の豚とわたし 内澤 旬子:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322008000231/

  • 本書は動物愛護・保護的感情論から’肉を食うのを止めよ’とか、道徳的視点から’命の有り難みを噛み締めよ’等といった主張をするものとは全く一線を画する、私の内に強烈な印象を刻み込んだドキュメンタリー。

    自ら飼って育てた豚を捌いて食べるなんてかわいそう!信じられない!という気持ちを抱くのは何ら不思議ではないし、そもそも著者の内澤旬子先生だって悪鬼羅刹ではないので屠畜の日が近づくにつれての複雑な心情を明かしているし、当日も「辛かった」(p251)「せつなかった」(p257)という瞬間があった事を綴っている上に「豚がかわいくてしかたがなかった。」(p158)と振り返っている。
    ここで大事な事は、そもそも内澤先生は三頭の豚をペットではなくて家畜として飼い始めた訳で、飼い出した理由は世界中の屠畜現場取材の過程に於いて屠畜場に送られてくる家畜達そのものの事についてを知りたいと思った、という学究的関心による。

    かわいそう!信じられない!という反射的反応の根拠って相当曖昧で、「何がかわいそうで何がかわいそうでないか」(p155)とか「動物を食べるのがかわいそうで、植物を食べるのがかわいそうではないと断ずる理由はなにか。」(p336)とかって突き詰める程に、結局はそう考えるその人の「単なる習慣」(p158)に過ぎないエゴイスティックな押し付けなんだろうなと私自身の事も含め、改めて考えるきっかけになった。
    …と書いていてふと思ったけど、ついさっき豚の生姜焼きを食べたんだよなあ。結局のところそんなもんよ。

    ちなみに、三頭の豚が屠られる場面以上に衝撃的だったのは分娩立ち会いのシーン。豚舎に入って「まず目に入ったのは、下半身がちぎれてなくなって死んでいる赤ちゃん豚だった。」「猫が入ってきて食べちゃう(中略)それと初産の母豚は(中略)驚いて噛み殺したり、食べちゃう」(すべてp66)らしい。絶句。まあ猫問題はともかくとしてパンダだって育児放棄するっていうし、母に無償の愛を強要するのはそれこそエゴイスティックな無理強いというものでしょう。

    他にも大規模養豚業が孕む問題点だとか持続可能な循環型農場の課題点だとか、様々な知見を得られた一冊でした。


    よく学校での「いのちの授業」を巡って意見が割れたりもするけれど、勿論子供達に棍棒やナイフを持たせて手ずから解体にあたらせるのは慎重に為されるべきだが、※注※屠畜業についてをタブーとして隔離・隠蔽するというのは却っていのちや食べ物をぞんざいに見做している事になりはしないだろうか。
    少なくとも、私は自分の子供たちには食卓にあがる
    食べ物についてを(肉だけじゃなくて)きちんと説明出来るようにありたいと月並みながら思いました。

    (訂正・追記)※注※について、屠畜場法第十三条に「何人も、と畜場以外の場所において、食用に供する目的で獣畜をとさつしてはならない。」と定められておりました。けどこれ、教育目的であればOKなのだろうか?

    1刷
    2022.11.20 訂正・追記

  • TBSラジオ「アフター6ジャンクション」で花田菜々子が紹介。

  • 読もう読もうとずっと先延ばしになってた本。
    千葉に土地を借り、家を修繕しながら、豚3匹を飼って、
    肉にして食べるまでの1年間の緻密なレポ。
    今まで読んできた内澤さんの本の中にもこの時の話はたびたび出てきたが、
    『身体の言いなり』『捨てる女』と並行して、豚を飼う生活があったのかと思うと驚く。
    これまで読んだ本を読み返してみたらまた発見がありそう。
    温度の変わらない淡々とした文章の中に、
    ハプニングやら養豚業の内情やら豚の可愛さやらが書かれている。
    内澤さんの凄さは実際に行動してしまうことだけど、
    豚との生活が半年程度だったのはなんだかもったいない。
    短期間の中で得た、圧倒的な経験の濃さ。
    なのにことさら大騒ぎするでもない、飾り立てない文章の力に唸ってしまう。
    しかし全部食べられる野菜と違って、豚を職業として成り立たせることの割の合わなさ。
    もっとありがたく、大切にいただかないといけないなと反省した。

  • 正確には私が読んだのは岩波書店の単行本版である。

    これは最高におもしろい本だ。
    内澤旬子さんは『着せる女』でこんなおもしろい人がいるのだなと認知。
    この本は出版当初に評判になったものの読んでおらず、たまたま手に取ったら内澤旬子さんだった。

    ロシアが開発したイエバエを使った「ズーコンポスト」という豚の糞尿処理方法の話と、自分の「大」をおやつに与えたら見向きもされなかった、というエピソードが興味深かった。

  • Cocco「My dear pig」を思い出す内容。
    「思いついたらなんでもやってみよう!」という筆者のパワーとエネルギーが素敵。
    そういえばうちでも昔、鶏飼って食べてたな。ヤギもいた。私の乳用だったらしいけど、しょっちゅう私をどつくから売り払ったとは母の話。でも、食用動物に名前はつけてなかったぞ。
    あと、たまたま遊びに行ってた同級生のうちで飼ってた牛が逃げ出して、ブロック塀の上に避難したこともあったっけ。そういう家畜まみれの幼少期を送った人間から見ると、最近の豚ってずいぶん過保護に飼われてるんだなーという感想。しかも、確か豚って犬並みかそれ以上に賢いんじゃなかったっけ?さらには遺伝子的に人間に近いんだとかなんとかで、移植用の臓器を豚の体内で育ててる(た?)とか。うーん、なんか鶏しめるのとはレベルが違う感じ。でも、今日の夕飯は酢豚なのだった。うん、せめて残さず食べよう。My dear pig is you♪

  • 豚を飼って食べるってこと自体には特に心理的抵抗はないから、帯に奇書中の奇書って書かれてもそんなにかなーって思ってたけど、想像するのと実際やってみるのとはだいぶ違ってやっぱりすごかった。

  • とても興味深く読んだ。
    著者は泣かなくとも私はやはり泣けた

  • 序・中盤の密度に比べて、終盤が駆け足気味だったのが残念。個人的には最終盤こそを、もっと濃密に堪能したかった。自分だったら愛情かけて育てちゃった豚喰えるかなー。だって家族でしょもはや。って思考が平和ボケした現代人過ぎてアレか。最初から喰う前提で生き物を育てるって、凄いね人間。決して天国には行けんわ。美味いから喰うけど。

  • 初、中澤旬子氏です。はじめはグロテスクなイメージで、おそるおそるといった感じでページをめくっていましたが、途中からは目が離さなくなりました。3匹のブタたちがどのように成長していくか、どんな苦労と工夫があるのか、そして中澤さんがどんな気持ちになっていくのか。次の展開が気になって、読み終わった後も、もうしばらく後日談を聞きたくなってしまいました。

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著者プロフィール

1967年生まれ。神奈川県出身。文筆家、イラストレーター。緻密な画風と旺盛な行動力を持つ。異文化、建築、書籍、屠畜などをテーマに、日本各地・世界各国の図書館、印刷所、トイレなどのさまざまな「現場」を取材し、イラストと文章で見せる手法に独自の観察眼が光る。2011年、『身体のいいなり』(朝日新聞出版社、のち朝日文庫)で第27回講談社エッセイ賞を受賞。他に『世界屠畜紀行』(角川文庫)、『ストーカーとの七〇〇日戦争』(文藝春秋)、『着せる女』(本の雑誌社)など多数。

「2021年 『飼い喰い 三匹の豚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内澤旬子の作品

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