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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784041109410
作品紹介・あらすじ
1925年、治安維持法成立。太平洋戦争の軍靴が迫るなか、罪状捏造に走る官憲と、信念を貫く男たちとの闘いが始まった……。
『蟹工船』の取材と執筆に熱中するプロレタリア文学の旗手・小林多喜二。
反社会的、非国民的思想犯として特高に監視される反戦川柳作家・鶴彬(つる・あきら)。
同業他社の知人たちに不可思議な失踪が続き、怯える編集者・和田喜太郎。
不遇にありながら、天才的な論考を発表し続ける、稀代の哲学者・三木清。
法の贄(にえ)となりながら、男たちは己の信念を貫いた。
みんなの感想まとめ
信念を貫く男たちの物語が描かれており、治安維持法の成立に伴う言論や思想の自由との闘いがテーマとなっています。歴史的背景を踏まえた短編集で、特高に監視される作家たちの苦悩や、国家に反抗する姿勢が深く刺さ...
感想・レビュー・書評
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表題の意味は複雑だ。unbreakableは一般的には「壊せない」を意味する。しかし用法としては「壊すのが困難な(困難だが不可能ではない)」という使い方をするらしい。更に著者は最終行、ある人物の呟きを借りて「敗れざる者」と表現している。これは沢木孝太郎のルポの題名にもなったが「才能に恵まれながらも栄光をつかむことのできなかった」者たちという意味で使われたらしい。
だとしたら、小林多喜二や鶴彬、戦時下の「改造」や「中央公論社」の編集者たち、その他特高警察によって逮捕され、拷問や劣悪な環境で死んでいった千数百名の(三木清含む)「アカ」たちを、著者はそのように「顕彰」したかったのだろう。今更ながら。
小林多喜二を主人公にした小説は多数ある。特高による犠牲者の物語もよく聞く。しかし、川柳作家・鶴彬や特高による冤罪・横浜事件、哲学者・三木清に焦点が当てられた小説は初めて読んだ。四つの物語を通して出てくる、特高の「クロサキ」という人物を黒子として今回描いたのは、昭和の戦中の暗黒時代そのものだったと思う。副題をつけたならば、もっとわかりやすかった。「それだとあからさまです」と言って編集者が反対したのかもしれない。例えば‥‥「治安維持法物語」。うん、やっぱりダサい、止めた方がいい。
著者は前著「大平洋食堂」で近代日本社会主義の勃興期と大逆事件(1910年)前夜を描いた。本書で、そこから一挙に20年だけとんで、そして1945年までの15年間の最悪の時代を描いた。こう書くと、なんと短い間なのか。まるまる人の一生の半分の期間ではないか?日本の自由と民主主義は、そんなにも急速に悪化したというわけだ。
著者の問題意識は明らかだ。著者は岩波書店「図書9月号」に「アンブレイカブル」を引き合いに出してこう書いている。
‥‥治安維持法の最大の問題点は、本法が変革を禁じる「国体」の概念が曖昧だったことだといわれる。曖昧な法律用語に現実が抵触しないようどうするのか、具体的な方策は現場の裁量に丸投げされた。「適当に処置せよ」というわけだ。上から「テキトーにショチせよ」と言われた現場はたまらない。何をどこまで取り締まるべきか?上の顔色を必要以上に窺う者が必ず出てきて、彼らはほぼ100%やり過ぎる。最近では佐川宣寿元理財局長がそうだ。(8p)‥‥
過去のことじゃない。今この瞬間にも、この国のそこかしこで起きている事態だ。
治安維持法に唯一反対していた代議士・山宣が右翼に刺殺されたのも、当夜「たまたま」特高が山本宣治を尾行していなかったからだ。クロサキは殺したのは特高の指示ではないという。労働者の谷は嘯く。「現場の連中が勝手に忖度してやりすぎた。よくあることだべ」(54p)
「京大はじまって以来の秀才」三木清が治安維持法で捕まり、獄中死する運命を知りながら、クロサキは「どうせアカの連中だ。わざと殺したんじゃなけりゃ、どこからも文句は出ない。いつものことだ」とつぶやく。(261p)
三木清は終戦後1ヶ月以上経過した昭和20年9月26日、豊多摩刑務所拘置所内の劣悪な環境の中で死んでいるのを発見された。
2021年9月26日読了
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深く刺さります。
「太平洋食堂」に続く特高と言論思想の自由との間の理不尽な攻防といった内容でしょうか。
歴史の授業でもあまり詳しく習ってこなかったため精神が削られますが、忘れてはいけないことだと思います。
今の時代、公に取り締まられなくても、息苦しい様子はありますがそんなのは比にならないくらいの時代だったのかなぁと思います。
早くジョーカーゲームの続きが読みたいです。 -
2021年
アンブレイカブルとは、壊れない、不屈の、 解読できない暗号、強固の絆・精神など、幅広い文脈で使用される
監視され、仕立て上げられたり、捏造されたり、その果ては捕まってしまう4人の話
『ジョーカーゲーム』シリーズは、グロい直接的表現がなくそんなになく読めたが、本書は劣悪な状況表現がある
2章以降は重い
戦争時代は国の思想が普通でない
戦争を否定するものに敏感に反応してしまい、特に文章を読ませる出版業界は、編集者が行方不明となり今度は自分かと戦々恐々する日々
つらいな
加えて、捕まえられる側より、国家が関与した捕まえる側目線が多く、倒叙ミステリのように、あの人は捕まってしまう運命なんだなとドキドキして読んでいた
途中で、もう読まなくていっかと何回か思ったが、文章の巧みさと、内務省のクロサキの存在が、怖いもの見たさのように引き込まれてしまった -
治安維持法の犠牲となった「敗れざる者たち」の物語。国家の意に沿わない人間を処罰するようになっていった当時の時代背景を考えるとうすら寒くなってくる。そんな時代に自らの主張を通した人物たちを描く短編集。蟹工船の小林多喜二や哲学者の三木清など名前は知っているけど、という人物ばかりで勉強不足がバレる。この時代のことをもっと知らねばと思った。ストーリーとしては柳さんらしいスパイ要素のある「雲雀」や暗号ミステリの「虐殺」などバラエティに富んでいる。ラストの「矜持」で三木清が全体の主人公?でもあるクロサキに対し語る内容は現代にも通ずるものだと思った。
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「ジョーカーゲーム」の裏版というか、法という名のもとに戦争でおかしくなっていく社会を渡っていく人々の生きる力が読み取れた。
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■ Before(本の選定理由)
タイトルからは、どんな本なのか分からない。あらすじを読むと、太平洋戦争下の日本の内務省の物語、なのだろうか。
■ 気づき
蟹工船の著者・小林多喜二がこんなにチャーミングな人とは知らなかった。蟹工船乗務員へのインタビューという形式も秀逸。誰にでも人には言えない事情があり、治安維持法の名のもとに相互監視をし、逮捕・拘留・獄中死が多発する。
■ Todo
内務省・黒崎という人物が実在なのかは分からないが、最後の章で黒崎自身の回顧と内面が描かれていて物語としてまとまりが良い。 -
小林多喜二の話がおもしろかった。
歴史を知るという意味でとても楽しめた作品。 -
タイトルから勝手に現代もののハードボイルド系かと思って読み始めたら小林多喜二が出てきたので、並行して『一九二八年三月十五日』も読んでみた。
小林多喜二、鶴彬、和田喜太郎、三木清など歴史上の文筆家が取り上げられながら各話が繋がって行くラスト。
社会的には敗れ命失う事になった者たちでありながらも、今なお読み継がれ思想が繋がれている人々を"アンブレイカブル-敗れざるもの"と作者は評したのか。
ミステリとしての色合いは薄いながらも、歴史舞台として好きだった。
クロサキを捕らえて離さなかった三木清の思想。
この本に描かれた景色を踏まえた上で、改めて三木清をもう一度読み直してみたいと思った。 -
リアルに怖いと思った。某局のアナウンサーが政治家に厳しい質問をした、とかの(うわさ)理由で更迭されたらしいこの国。過去に何も学んでないのかと恐怖がヒタヒタ押し寄せた。
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【収録作品】雲雀/叛徒/虐殺/矜恃
いくつかの国がリアルタイムで行っている暴挙を思い起こすまでもなく、この国の中にある反知性主義の系譜を見る思いで読んだ。 -
どんな時代にも世の流れに乗るものと、抗いながらもあるべき本質や自身の核を守る者が居る。お上に迎合しないモノはさぞ目障りだったことだろう。
それが戦時下であれば尚更である。
現代においても所謂「わきまえない」意見を言うものは標的にされがちなのだから。
この時代に起きていた事を知る事、そして同じ轍を踏まぬ事。
名もなきアンブレイカブルが堂々と意見を交わせる、いつもそんな世の中でありたい。 -
日本に治安維持法があった時代、特高警察と彼らに追われる4人を描いた連作短篇。小林多喜二や三木清らが同調圧力に屈しなかった敗れざる者として描かれる。この時代の雰囲気がどこまで正確に描写されているのかは分からないけど、狂っていたとしか言いようがない。もちろん国民も含めてだ。権力は腐敗し、必ず暴走する。これは今だって変わらない。民衆はどうだろう。SNSとかをみてると危ないよなぁ。
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1925年、治安維持法成立。太平洋戦争の軍靴の響きが迫るなか、罪状捏造に走る官憲と信念を貫く男たちとの闘いが始まった-。小林多喜二、三木清…。法の贄となった、敗れざる者たちの矜持を描く。歴史スパイ・ミステリ。
「ジョーカー・ゲーム」に代表されるように柳広司はスパイものの印象が強いけれど、本作は同じ歴史ミステリーでも少し毛色が違った。治安維持法下で信念を貫く、まさにunbreakable(壊せない)な男たちの姿が描かれ、読みごたえがあった。
(B) -
プロレタリアの意味や登場する作家たち、事件が気になり調べ、戦時下にあり得ないほど不自由で厳しい環境の中でも貫こうとした強い思いがある人たちがいたのだなと知る
『虐殺』は無理やりこじつけの理不尽な結末に気づき始めると、どうにもならないことに絶望し読んでいて苦しくなる
刑務所の描写などもグロテスクでつらい…
過去の日本であったことかと思うと怖くなってしまった -
内務省クロサキを核とした短編集。この手のスパイ、特高作品は毎度読み応えあり。
最初の話の終わり方は痛快だが、進むにつれ一筋縄では行かない気がして、読み終える。
治安維持法の時代の、昭和初期の遺物の話ではなく、現代の検察や官僚にも通ずる、職務と命令と実行する意思が過去にどう使われたか、責任とは何かを考えさせられる。職務の全うとは何か?時代の空気や方針で変わることは、ままあること。
コロナ禍での政府関係者や東京五輪の関係者の言動や行動を、ふと思う。 -
治安維持法・特別高等警察を主題にした小説は初めて読んだな。終戦の日前後は戦中のドキュメント番組はよく放送されるが上記の内容の番組は観た記憶がない。自虐史観を持っているわけではないが、戦後、内務省官僚や特高職員が堂々とのし上がって社会の中心に立っている者がいると思うと今一度検証しても良いのかもしれない。凡庸で無自覚な悪意ほどタチの悪いものはない。
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詳細な史実とリアルな台詞回しに想像力を掻き立てられた。言論の自由と優秀な人材を消し去った時代と日本人の愚かさに憤りを感じずにはいられなかった。唯一、谷さんがいい人でホッとした。
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