空を飛ぶパラソル (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 98
感想 : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041109724

作品紹介・あらすじ

新聞記者である私は、美貌の女性が機関車に轢かれる様を間近に目撃する。思わず轢死体の身元の改めると、衝撃の事実が続々と明らかになって……。読者を魅了してやまない、文壇の異端児による絶品短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 書評にあるとおり、かつては日本の大文豪といえば夏目漱石や森鴎外に芥川…だったろうが、今や夢野久作も日本が誇るキャノンから外すことはできないだろう。

    彼の代表作『ドグラ・マグラ』に出てくるキチガイ地獄外道左衛門の端緒となる短編が『空を飛ぶパラソル』には含まれている。さらには怪夢を連続的に編み上げるショート・ショート的短編集あり、探偵小説としての夢野久作の実力発揮と、これから久作を読み始める読者にとってはタマラナイまとまりがここにある。

    〈『空を飛ぶパラソル』目次〉
    ・空を飛ぶパラソル
    ・いなか、の、じけん
    ・復讐
    ・ココナットの実
    ・怪夢
    ・キチガイ地獄
    ・老巡査
    ・白菊
     解説

  • 角川文庫から久々の復刊。短編集なので「いなか、の、じけん」「怪夢」「白菊」などいくつかは既読だったけれど、表題作を読んでいなかったので手に取りました。

    「空を飛ぶパラソル」の主人公は新聞記者。ある日パラソルを持った美女が鉄道線路で自殺するのを目撃、警察がかけつける前に頭の潰れた死体の懐を探り、身元のわかりそうなものを盗んで記事にしてしまう。どうやら彼女は富豪の娘だったが家出して病院で看護婦をしていたところ女たらしの医者に妊娠させられて自殺したらしい。特ダネをあげた記者は得意になっていたが、警察によると彼女の親が、死んだのは自分の娘ではないと言いだしており…。

    彼女の正体は?自殺の本当の理由は?などの、謎解きものになるのかと思いきや、このエピソードはこれで終わりで拍子抜け。月日が流れ、記者はまた別の事件でも、特ダネだと思って飛びついたら後味の悪いことになって…という話で、謎解きというよりは記者という職業の呪われた業のお話でした。久作自身の記者時代の体験談なのかもしれません。

    収録作で一番おもしろかったのは「キチガイ地獄」タイトルからしていかにも夢野久作な感じ。お得意の精神病院の患者の独白もの。記憶を失った男が、悪辣な記者のたくらみで、さる金持ちの家に婿にはいり成功するも、そんな身元不明の男を婿にする家には当然いわくがあり、そのそもその男が記憶喪失になった理由とは…と、どんどん時間を遡っていくのだけれど、もちろん最後にはどんでん返しあり。予測はつくものの、やっぱりこの「やられた」感は気持ちいい。

    ※収録
    空を飛ぶパラソル/いなか、の、じけん/復讐/ココナットの実/怪夢/キチガイ地獄/老巡査/白菊

  • 本作は全8作品からなる短編集である。(”いなか、の、じけん”と”怪夢”はショートショート集であり、さらに細かく作品数は分かれる)

    本当は他の本を買う予定で本屋に行ったのだが、残念ながら目当の本が無かった。ぼんやりと小説コーナーをうろついていた時、ふと目に留まった。
    久しぶりに作者の独特な世界観にヒタルのも悪くないと思い、購入し読むことにした。

    全8作品のすべての感想を記載してもいいかもしれないが、冗長的になるし、読んでいてこの作品すごい!と思えるものと、正直少し俺とは合わないかなと思う作品があってイチイチ書くのもつまらない。
    ここでは、表題作の「空を飛ぶパラソル」の感想だけしるして、あとはザっと記載にして終わりとしたい。

    「空を飛ぶパラソル」
    本作はある新聞記者が新聞のネタを狙うあまり、その対象の事を配慮せず、対象者を死なせてしまった結果、自己の良心の呵責に悩まされるという話だ。
    元々、新聞記者をしていたという作者らしく、新聞記者の心理描写が鮮明に描かれているのも特長だ。

    現在でも、マスコミ関係の過度な取材や捜索がその被害者の精神面や肉体面に大きな負担を強いることが問題視されることが多々ある。本作の主人公の新聞記者も、過度な取材や暴かなくてもよい事実を暴いてしまったために、第三者を自殺に追い込むなどしてしまうう。いつの時代もそうなのだが、被害者やその関係者の心理というものは一番に考えるべき点であるのに、なぜかその部分が軽視されている。今では、少しは改善されてきたようにも思えるが、マスコミ以外でもSNS等を通じて情報が垂れ流される結果、被害者心理の軽視というものはなかなか改善を見ないように思える。本当に必要なこと以外は被害者はそっとしておかなければならないはずだ。

    しかし、マスコミ関係者である新聞記者も食べていかなければならない。記事が書けないとその記者が今度は生きていけないことになるかもしれない。そう考えると非常に難しい。特種を書き食べていくことが大切か、被害者感情を配慮することが大切なのか。この問いは人によって答えは変わると思う。

    仮に、職業的に記事を書かなければならない事情があったとしても、列車に飛び込む女性を見殺しにするのは論外である。この点は職業意識云々というよりも、人としてどうなの?という話になる。人にはそれぞれの倫理観や価値観があるが、絶対に人を見殺しにするような行動は慎むべきだ。

    この報道の姿勢という事に関して、作者はこの新聞記者に二重の罰を与えて話を締めくくってりる。この罰は強烈であり、作者が何を主張しているのか明白だと思う。

    ここまで書いてきて、主張性が強い作品で夢Qらしくない気がするような感想になってしまったが、もちろん本作はきちんと作者の幻想的な世界観にはヒタルことができる。轢死した瞬間のパラソルの動きや、色の落ちたこいのぼりが飾られている墓場、祖母の死にざまなどは、夢Qらしい感じがした。

    その他の作品においても、「復讐」の女が夜そっと起きるシーンや、「怪夢」のそれぞれの話のオチ、「白菊」の子供の話など、そのほかにも挙げればキリがないが、夢Qは幻想・怪奇的な世界へと俺を連れて行ってくれた。面白かった。

  • 久々の夢Q!
    読みやすい短編集。
    キチガイ地獄、白菊が面白かったです。
    〇〇地獄、好きですよね。
    少女地獄、瓶詰地獄。
    どちらも好きです。
    今ならキチガイ地獄なんてタイトルを付けられないでしょう。
    ドグラ・マグラに通じる精神病の片鱗に触れること、夢野の憧れなのかな。

  • 鼻をつまみたくなるような臭いを撒き散らす、いなか の じけん はオススメです。

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著者プロフィール

1889年、福岡県福岡市出身。日本探偵小説三大奇書の一つに数えられる畢生の奇書『ドグラ・マグラ』をはじめ、怪奇味と幻想性の色濃い作風で名高い。1936年歿。

「2021年 『空を飛ぶパラソル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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