空を飛ぶパラソル 改版 (角川文庫)

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  • 本 ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041109724

作品紹介・あらすじ

新聞記者である私は、美貌の女性が機関車に轢かれる様を間近に目撃する。思わず轢死体の身元を改めると、衝撃の事実が続々と明らかになって……。読者を魅了してやまない、文壇の異端児による絶品短編集。

感想・レビュー・書評

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  • すべてが、いなか、の、じけん。ココナットの実はちょっと違う話を想像。

  • 書評にあるとおり、かつては日本の大文豪といえば夏目漱石や森鴎外に芥川…だったろうが、今や夢野久作も日本が誇るキャノンから外すことはできないだろう。

    彼の代表作『ドグラ・マグラ』に出てくるキチガイ地獄外道左衛門の端緒となる短編が『空を飛ぶパラソル』には含まれている。さらには怪夢を連続的に編み上げるショート・ショート的短編集あり、探偵小説としての夢野久作の実力発揮と、これから久作を読み始める読者にとってはタマラナイまとまりがここにある。

    〈『空を飛ぶパラソル』目次〉
    ・空を飛ぶパラソル
    ・いなか、の、じけん
    ・復讐
    ・ココナットの実
    ・怪夢
    ・キチガイ地獄
    ・老巡査
    ・白菊
     解説

  • 角川文庫から久々の復刊。短編集なので「いなか、の、じけん」「怪夢」「白菊」などいくつかは既読だったけれど、表題作を読んでいなかったので手に取りました。

    「空を飛ぶパラソル」の主人公は新聞記者。ある日パラソルを持った美女が鉄道線路で自殺するのを目撃、警察がかけつける前に頭の潰れた死体の懐を探り、身元のわかりそうなものを盗んで記事にしてしまう。どうやら彼女は富豪の娘だったが家出して病院で看護婦をしていたところ女たらしの医者に妊娠させられて自殺したらしい。特ダネをあげた記者は得意になっていたが、警察によると彼女の親が、死んだのは自分の娘ではないと言いだしており…。

    彼女の正体は?自殺の本当の理由は?などの、謎解きものになるのかと思いきや、このエピソードはこれで終わりで拍子抜け。月日が流れ、記者はまた別の事件でも、特ダネだと思って飛びついたら後味の悪いことになって…という話で、謎解きというよりは記者という職業の呪われた業のお話でした。久作自身の記者時代の体験談なのかもしれません。

    収録作で一番おもしろかったのは「キチガイ地獄」タイトルからしていかにも夢野久作な感じ。お得意の精神病院の患者の独白もの。記憶を失った男が、悪辣な記者のたくらみで、さる金持ちの家に婿にはいり成功するも、そんな身元不明の男を婿にする家には当然いわくがあり、そのそもその男が記憶喪失になった理由とは…と、どんどん時間を遡っていくのだけれど、もちろん最後にはどんでん返しあり。予測はつくものの、やっぱりこの「やられた」感は気持ちいい。

    ※収録
    空を飛ぶパラソル/いなか、の、じけん/復讐/ココナットの実/怪夢/キチガイ地獄/老巡査/白菊

  • 夢野久作作品は、ドグラ・マグラだけだったので、短編集ということで読んでみた。やはり猟奇的で耽美的な作品が多い印象。世界観に没入する前に、突然話が終わってしまうのがなんとも歯痒い。

  • やはり夢Qワールドは至高
    ところどころドグラ・マグラを彷彿とされる構成。
    白菊がお気に入りである。

    とにかく、夢Qの書く女性は淑女で上品ながら耽美であり、実際にそんな女性がいたら傾国間違いなし。

    美しい

  • 久々の夢Q!
    読みやすい短編集。
    キチガイ地獄、白菊が面白かったです。
    〇〇地獄、好きですよね。
    少女地獄、瓶詰地獄。
    どちらも好きです。
    今ならキチガイ地獄なんてタイトルを付けられないでしょう。
    ドグラ・マグラに通じる精神病の片鱗に触れること、夢野の憧れなのかな。

  • 読了

  • それぞれ繰り広げられていく作者の色全開の世界が独特かつ癖になる感じでした。

  • 表題含め8編の短編が収録された、ザ・夢Qワールド。あいも変わらず奇々怪々なのだけれど、今に通じるところもあり、味わい深い。
    狂気と正気の曖昧な境目が狂気よりに傾き、そしてあっという間に狂気に飲み込まれるギリギリがたまらなくってよ。

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著者プロフィール

1889年福岡県に生まれ。1926年、雑誌『新青年』の懸賞小説に入選。九州を根拠に作品を発表する。「押絵の奇跡」が江戸川乱歩に激賞される。代表作「ドグラ・マグラ」「溢死体」「少女地獄」

「2018年 『あの極限の文学作品を美麗漫画で読む。―谷崎潤一郎『刺青』、夢野久作『溢死体』、太宰治『人間失格』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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