刺青・少年・秘密 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 108
感想 : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041109748

作品紹介・あらすじ

舞台は江戸時代の下町。腕ききの刺青師・清吉の心には、人知らぬ快楽と宿願が潜んでいた。ある日ふとした折に見かけた娘の足。その娘こそ、彼が憧れる肌の持ち主だった。
1年後、偶然にもその娘が訪ねてきた。娘を麻酔薬で眠らせ、一心に女郎蜘蛛を娘の背中に刺し込む清吉。そして娘は――。谷崎潤一郎24歳の処女作「刺青」。

ガキ大将の仙吉と、良家の子息の信一、信一の姉、そして私。踏みつけたり、姉を縛り上げるなど、4人の少年少女の「遊び」は次第に過激なものとなってゆく。子供の倒錯した世界を描く「少年」。

普通の刺激に慣れ切った私は、女装をして浅草の街中を歩くことに悦楽を覚え始める。だが、映画館の貴賓席で、かつて暫く関係を結んでいたT女と出会い――。秘されたものに魅了された男を描く「秘密」。

耽美、サディズム、マゾヒズムが交錯し、それでいて格調高い物語の数々。著者初期の代表作8編を収録した短編集。
永井荷風による「同時代人の批評」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 新潮文庫には未収録の「悪魔」「続悪魔」「神童」を読む。

    「悪魔」は陰鬱とした作品。
    神経衰弱の佐伯は汽車や地震を極度に恐れ、そのために死ぬのではないかと怯えている。上京して叔母の家で下宿を始めるが、そこには鈴木という陰気な書生がいて、佐伯の従姉妹の照子と婚約をしていると主張する。しかし照子と佐伯は次第に親しくなっていき、鈴木に恨まれるようになる。最後は照子の鼻水がついたハンカチを佐伯がこっそり舐めるシーンで終わる。

    「続悪魔」は、佐伯と照子の関係がさらに進み、最後は鈴木に刺されてしまう。
    谷崎は「続悪魔」を執筆するにあたって、「悪魔」の結末部分(ハンカチの場面)をないものと思って読んでもらいたいとしている。

    「神童」は、驚異的に勉強のできる瀬川春之助が純粋さを失って驕り高ぶり、自分の堕落を悔い芸術を志すまでを描く。最後に芸術に目覚めるというのは「異端者の悲しみ」と同じ。

    「人間の歓楽世界の裏側に、こんな秘密な、奇妙な楽園が潜んでいるんだ。 (中略) 一種掻き挘(むし)られるような快楽が、煙草の酔の如く脳味噌の浸潤して、ハッと気狂いの谷底へ、突き落とされるような恐怖に追い立てられつつ、夢中になって、ただ一生懸命ぺろぺろと舐める。」
    (「悪魔」p.148)

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著者プロフィール

谷崎潤一郎
明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2022年 『瘋癲老人日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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