- 本 ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041109755
作品紹介・あらすじ
しみじみと思う。怖しい病気に憑かれしものかな、と――。若くしてハンセン病を患った青年は、半ば強制的に療養施設に入所させられる。自分の運命を呪い、自殺すら考えた青年を絶望の淵から救い出したのは、文学に対する止めどない情熱だった。差別と病魔との闘いの果て、23歳で夭折した著者が描く、力強い生命の脈動。施設入所初日のできごとを克明に綴った表題作をはじめ、魂を震わす珠玉の短編8編を収録。
感想・レビュー・書評
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ハンセン病を煩い隔離施設に入った著者、北條民雄。
隔離施設に入り絶望し死のうとしたが果たせず…。夜が明けて「一瞬だけ生きてみよう」。文学に一条の光を見つけた著者。どんなに悲惨な状況でも書くことはできた。最期まで希望はあると。
病を得て「いらないもの。忌避される自分」しかし、「食べて寝る、ただ生きる、ということへの敬意」「自分が生きているという事実は誰にも否定されない」というメッセージは、とても力強い。
「100分de名著」の中江有里さんの解説では、
隔離施設から川端康成へ手紙を出し、川端康成から作品を認められた著者。自分の存在を肯定してもらい、どんなにうれしかったことでしょう!
川端康成からの手紙には、「文壇の評価は高いけれどもそのことは気にせず、古今東西の名著に親しみ、今のあなたの世界を見つめるがよろしい」「お金は足りてますか?原稿用紙ありますか?」という内容の手紙が残っているようで、これも、作品を通じて、いる場所は違ってもお互いに尊敬しあっている…よい師弟関係だなぁ…と…じんわりしました。
23歳で亡くなった北條民雄さん。作品は復刻され、今 読める。北條民雄さんとの対話ができる。どん底にいる人も勇気がもらえる作品です!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
★4.6
苦しく、辛い小説でした。
高校生の時に、破戒に出会った時と同じだ。あの時も丑松さんあなたはなにも、悪くない。と悔し泪を流したものですが、いのちの初夜も同じ感覚でした。
私の故郷にも、ハンセン病の療養所があり、今まで手を出すのが正直怖かったのかもしれない。
子供の頃にそれに罹患された方にあったこともあるので小さな頃だったので、ただただ、怖かった。驚き怖かった。それが、凄まじい差別を伴っていることを知ったのは、だいぶ後になってからだったが、その差別を知った上で、この作品に触れると、苦しく、辛い、ものかたりでした。
常に自死と隣り合わせ、死を見つめて生きる、辛く悲しいものかたり。
ちゃんと向き合わないといけい、そんなものかたり。 -
「何もかもが奪われて生命だけが取り残されてしまった。」
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まずは文庫化してくれた角川に感謝。
読み始める前に多少の覚悟をしておかなければならないが、やはり標題の「いのちの初夜」は心を打つ。人間として一度滅び、そして再生する。
標題作は勿論だが、同じく収録されている「吹雪の産声」も傑作。「いのちの初夜」で打ちひしがれた心もこの作品に一縷の望みを感じる。
ハンセン病(癩病)が不治の病でなくなった今、この病を身近に感じた事のない全ての人々に読んで欲しい一冊。
田村書店天下茶屋店にて購入。 -
ハンセン病に巣食われそうになっても、たくさんの苦悩が降りかかろうと、命のかがやきは絶やさずに明日を生きようとする姿に感銘を受けた。
ハンセン病になったわけじゃないけど、自分も苦労をしたから、絶望のさなかにいるときの心情は痛いほどに共感した。 -
これほど心を揺さぶる本はなかなかないのでは。
ハンセン病を患った人々の生命の力強さがひしひしと伝わってくる。徐々に肉体を冒していく病の恐ろしさ、それに立ち向かい、なんとか生きる意味を見出そうとする精神の尊さ。
たんにハンセン病を主題にした作品ではなく、人間とは、いのちとは、生きるとはという根源的な問いを投げかけているように感じた。 -
この本に出会わなければ一生ハンセン病というものをきちんと理解できていなかったと思う。
療養所での生活があまりに壮絶で、この敷地内だけで世界が完結している……いや、せざるを得ないほど忌避されることが当然だったのかと思うと暗澹たる気持ちになった。
著者プロフィール
北條民雄の作品





