遠巷説百物語

  • KADOKAWA (2021年7月2日発売)
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  • 本 ・本 (600ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041109953

作品紹介・あらすじ

【第56回吉川英治文学賞受賞作】
『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞を受賞――本作でシリーズ三冠!

「遠野は化け物が集まんだ。咄だって、なんぼでも来る」

盛岡藩筆頭家老にして遠野南部家当主の密命を受けた宇夫方祥五郎は、巷に流れる噂話を調べていた。
郷が活気づく一方で、市場に流れる銭が不足し困窮する藩の財政に、祥五郎は言い知れぬ不安を感じる。
ある日、世事に通じる乙蔵から奇異な話を聞かされた。
菓子司山田屋から出て行った座敷童衆、夕暮れ時に現れる目鼻のない花嫁姿の女、そして他所から流れて迷家に棲みついた仲蔵という男。
祥五郎のもとに舞い込む街談巷説、その真偽は――。

ハナシは、やがて物語になる。どんどはれ。
〈巷説百物語〉シリーズの集大成!

感想・レビュー・書評

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  • 京極夏彦さんの巷説百物語シリーズ。盛岡藩遠野保で、筆頭家老の銘を受け、市井の動向と噂話を調べている宇夫方祥五郎は、化け物の噂に巻き込まれていき、その裏の仕掛けを作る長耳の仲蔵達と出会う。

    化け物などの話を絡め、仕掛けを作ることで、問題の落とし所を作っていくシリーズの流れは、そのままで今回が特に長耳に仲蔵の拵えものが、鍵となっている。怪異による幕引きと、なぜそれが必要だったのかの話がよい。
    「波山」の加害者家族の落とし所、「鬼熊」の被害者であるが、戻るのに少し時間が必要なところを考えた幕引きと単純に罪を暴く、断罪するだけではなく、誰もが損しないようケアしていく感じである。

    最後の出世螺では、あの人も登場。他の間の話とのつながりが示唆されるが、話は知らなくてもわかります。前巷説と西巷説読まないと。

  • しみじみ面白かった。やっぱり間違いないわ。今作は盛岡、遠野の話で越後や紀州にもちらりと触れてくれて個人的に興奮度高い。読みすすむにつれて、だんだん仕掛けも話も大きくなってきて、で、最後に又さんが出てきて、テンションだだ上がりした。京極本というと、当時住んでたとこの最寄りの書店、流石書店さんという小さい本屋の店主さんが、すすめてくれたのが読み始め。若い頃、というか小さいころはミステリ好きだったんだが、長じてから純文学系ばかり読んだ時期が結構長続きしてたところに、姑獲鳥をすすめられて買ったんですよねぇ。まあ、単に文字数ページ数の多さに目が眩んだとも言えるが(笑)。もしかして、(もしかしなくても)30年近く前の話ですな。怖いわ。
    同じ話に収束されていくが、基本短い”おはなし”の集まりで、集中力がない子供にもおすすめできるのではなかろうか。民話と表に出てきている話と、裏の事情がはっきり区別して描かれ、非常に明快。そういえば、後巷説とか内容を綺麗さっぱり忘れているので、再読したくなった

  • 遠野が舞台 「妖怪」で悪を粉砕 [評]細谷正充(文芸評論家)
    <書評>遠巷説(とおくのこうせつ)百物語:北海道新聞 どうしん電子版
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/603818?rct=s_books

    京極夏彦の〈巷説百物語〉シリーズが11年を経て再始動!新作『遠巷説百物語』刊行&限定オリジナルグッズ予約販売開始! | KADOKAWA(2021年7月2日)
    https://www.kadokawa.co.jp/topics/6010

    「遠巷説百物語」 京極 夏彦[文芸書] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322009000361/

  • 11年振りのシリーズ新刊。
    ものすごく期待して読んだんだが、いまひとつでした。
    なぜだろう。
    パターン化し過ぎているかな?
     
    人を殺さぬ化け物遣い仕事人。
     
    続巷説百物語>巷説百物語>前巷説百物語>西巷説百物語>遠巷説百物語(本書)>後巷説百物語
    の順におもしろかったな。

  • 【収録作品】歯黒べったり/礒撫/波山/鬼熊/恙虫/出世螺
    盛岡藩筆頭家老にして遠野南部家当主の密命を受けた宇夫方祥五郎を語り手とした連作。
    民話や言い伝えの形で残る話をベースに、仕掛け人が暗躍する。

    祥五郎のまっすぐな気性が好もしい。そして乙蔵の妙な意地と祥五郎との繫がり方にちょっとほろりとする。
    パターン化しているので、祥五郎が危機に陥っても安心して読める。

  • 11年を経てシリーズ再始動。と、いう事で久々の“巷説百物語”は民話の聖地・遠野が舞台です。
    『遠野物語remix』『遠野物語拾遺retold』を描かれている京極さんだけに、お手のものという感じですね。

    遠野南部家当主の密命を受けて、巷に流れる噂話を調べている宇夫方祥五郎をメインに、彼に“咄”を提供する乙蔵。そして、噂話の裏にある厄介事を収める為に動いている“仕掛け人”達・・・。彼らが関わる不思議な出来事を描く連作六話が収録されています。
    各話の冒頭に「譚」として“昔、あったずもな”で始まり、“どんどはれ”で締める、遠野弁(?)の民譚が入っているのが雰囲気出ていて好きでした。
    そして、“巷説シリーズ”といえば“御行の又市”を中心とした仕掛人チームあってこそだと思うのですが、今回は『前巷説百物語』に登場した“長耳の仲蔵”と『西巷説百物語』で登場の“六道屋の柳次”のコンビで、“今回は、又さん出ないのかなー・・”と思いながら読んでいたのですが、第六話「出世螺」で出てくれて嬉しかったです。
    遠野ならではの物語も堪能させて頂きましたし、「出世螺」の終盤での、祥五郎と乙蔵の友情に胸が熱くなりました。
    という訳で、久しぶりに好きなシリーズを終始楽しめたのは良いのですが、何しろ本が重たいので、腕がめっちゃ疲れてしまいました(笑)

  • 11年ぶりの巷説百物語シリーズ新刊。読むのがもったいなくて、買ってしばらく寝かせておいたくらいですが、そのかいあって(違う)、たいへん引き込まれて読めました。久々のこの世界観、精緻な仕掛け、最終的に全ての話が繋がるその手腕。全てが収まるところに収まり、遠くの咄を語る人、その咄を見届ける人も退場し、噺を造る人だけがその先を造り続ける。どんどはれ。

  • 新作が出ていることを知って、シリーズを最初から一気に読み直しました。
    西巷説百物語からなんと11年だとか。
    11年。すごい。

    裏の世界で生きる彼らが、
    相変わらず生き生きしていて、とても嬉しかった。

    鴉が出てくるところは、今作1番の盛り上がりポイントですよね。ですよね。待ってました!感。

    完結編が出るということで、楽しみに待ちたいと思います。

  • 初めて京極夏彦さんの本を読んだ。物語の中に深く浸れた。巷説百物語シリーズ最初から読みたいと思う。

  • <憶>
    僕が『巷説百物語』を最初に読んだのは,おおよそ20年も前の事になろうか。のっけの印象は他の京極本にたがわず ”分厚い本だなぁ”であった(笑)。その後このシリーズは,なんと直木賞を獲ったりしてづいぶんと驚いたものだ。あれから20年以上の年月が経っているが今でも断然白い。僕はこの本位触発されて遠野を訪ねたのであった。日本の西方に住む僕らには東北地方へと旅をする機会は普通は無いものなのだ。

    ”拵え咄”と いう漢字にルビがふっていなくて僕は読めなかった。まあ読めない人は結構いるのだろうと,京極はすぐ後に『咄ぃ拵える』という別の言い廻しもわざわざ書いてくれている。が,この送り仮名の小さな「ぃ」はちょっと曲者で,やっぱり僕は読めなかった。

    仕方なくネット漢和辞典で調べた。部首と画数で調べるのだが,”口” 偏にも ”扌” 偏にも結構沢山の候補漢字があってなかなか見つからない。そうなると画数の不確さが自分の中で不安になってくる。何とか探し当てて『拵え咄』は読むことが出来たが,いやいや冷や汗ものである。読者諸兄と同じく,とんと字は書かないので画数など忘れてゆくに決まっている。夏彦くんありがとう。今回は礼を言っておく。

    それでも僕ら世代が(現在62才です)ワープロやPCで頻繁に文字を書き始めたのは30代になってから。つまり漢字を習った中学校を卒業して,まあ15年程度は自分の手で字を書いていたのだ。ところが例えば現在20代前半の我が次男だとどうだろう。今度「紙の本で読めない分からない漢字はどうやって調べるんだ」と訊いてみることにする。

    でも,あっそうか。読めない漢字をスマホで撮影して画像検索などすれば今は一発で分かったりするのだな。やはり科学の進歩は素晴らしい。読者諸兄よ,いつまでもグチグチ言ってないで,最新の科学兵器いや科学機器の使い方をどんどん学びましょう。

    今作は終いのお話『出世螺』がとても秀逸的感動作品で,最近とみに涙もろいあっしは読みながら泣いていました。京極君の作品で泣いたの初めてかもしれない。でもって「どんどはれ」という岩手のとても良い方言を覚えられたので,いやぁえがったえがった。すまぬ。

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著者プロフィール

京極 夏彦
小説家、意匠家。一般社団法人日本推理作家協会監事。主な著書に『百鬼夜行』シリーズ(講談社)、『巷説百物語』シリーズ、『談』シリーズ(KADOKAWA)、『書楼弔堂』シリーズ(集英社)など。

「2024年 『怪異から妖怪へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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