ミュゲ書房

著者 :
  • KADOKAWA
3.84
  • (35)
  • (66)
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  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 619
感想 : 71
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041110508

作品紹介・あらすじ

小説編集の仕事をビジネスと割り切れない、若手編集者の宮本章は、新人作家・広川蒼汰の作品を書籍化できず、責任を感じ退職する。ちょうどその頃、北海道で書店を経営していた祖父が亡くなり、章はその大正時代の洋館を改装した書店・ミュゲ書房をなりゆきで継ぐことに……。
失意の章は、本に関する膨大な知識を持つ高校生・永瀬桃ら、ミュゲ書房に集まる人々との出会いの中で、さらに彼のもとに持ち込まれた二つの書籍編集の仕事の中で、次第に本づくりの情熱を取り戻していく。そして彼が潰してしまった作家・広川蒼汰は――。

挫折を味わった編集者は書店主となり、そしてまた編集者として再起する。本に携わる人々と、彼らの想いを描いたお仕事エンターテインメント。

感想・レビュー・書評

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  • 東京の丸山出版で働いていた編集者の宮本章28歳が、祖父母の経営していた北海道にあるミュゲ書房を立て直すお仕事小説です。

    祖父母が亡くなり、市長の佐伯にミュゲ書房の経営を引き継いでくれれば市立図書館の仕入れ先にするからと言われたことに後押しされ、東京の職を辞し、章はミュゲ書房を立て直す決心をします。

    手伝ってくれるのは、大学三年生の池田君、高校二年生の永瀬桃、近所の菅沼さん。池田君はカフェとウェブを担当、桃は、選書サービスと児童書と絵本。菅沼さんは今週の庭担当。

    そして章は東京にいたころに広川蒼汰という『リベンジ』という小説を書いた新人作家をデビューさせたくて仕事の傍らずっと探していたのですが、意外なところでみつかります。

    ミュゲ書房の”ミュゲ”というのはフランス語でスズランの意味があり、スズランの花言葉は「再び幸せが訪れる」イコール『リベンジ』ということで、章は『リベンジ』の出版を目指しますが…。

    「北海道の風景や食べ物」という惹句に惹かれて読み始めた作品ですが、本の中に出てくる食べ物ってなんでこんなに美味しそうなのかといつも思います。
    池田君の作る食べ物、ラテアートやステンドグラスクッキー、シュトーレン、フルーツパンチなどが凄く美味しそうで食べてみたいと思わされました。

  • 本作品はKADOKAWAの「カクヨム」という、小説を書いたり読んだりできるサイトに投稿した作品が書籍化されたものだが、
    まさに、本書のストーリーに重なる。

    丸山出版のWeb小説サイト「ソウサク」に投稿した「リベンジ」という作品を本にして出版するという話。
    「リベンジ」=「ミュゲ書房」、広川蒼汰 = 伊藤調 として読んでみるのも良いかな。

    伊藤調は男性と決めつけていたが、本書を読んで女性かも知れないと思う。

    で、チョット調べていたら著者による読者へのインタビューのページを見つけた。
    (伊藤調さんの正体はわからないが、雰囲気が伝わってくる)
    https://kadobun.jp/feature/interview/2yt1urslj9mo.html

    本に関する小説はいい人がたくさん登場するので気持ちよく読めるが、本書では大手出版社が悪役になっている。
    その悪役の編集長にプライドを傷つける言葉を浴びせスカッとする場面があるが、それゆえ編集長の個人的な感情による露骨な嫌がらせを受けることになる。
    が、地道に築いてきた人とのつながりから希望の光を見つけ出し「リベンジ」を人気作品に導くので、めでたしめでたしで物語は終わる。

    "丸山"出版は"角川"を想像させる名前で、権力を武器にビジネスをする会社像に描かれている。
    現実にKADOKAWAは東京五輪汚職で経営陣のモラルに問題ありのイメージが付いたので、本作品の設定にぴったしになってしまった。

    「ミュゲ書房」は小さな出版社からではなく角川書店からの発行なので、「リベンジ」ではなかったですね。
    「ミュゲ」=「すずらん」、「すずらんの花言葉」=「再び幸福が訪れる」。
    そんな雰囲気を持った本屋さんの物語でした。

  • みんなで協力して目標を達成するのって、なんかいいなあと思う。ミュゲ書房の存続、出版をやってのけてしまうからすごい。チームワークがとにかく良い。私もその一員になりたいなぁ、と思った。

    主人公の宮本章は、本屋の店主は新米だけど、編集の仕事が天職だと思う。原稿を持ち込まれてこれは売れると思うと、利益などを考えて即決断。作家に寄り添い改稿を重ね、良いことも悪いことも遠慮せず言う。作家もこういう編集者だと嬉しいだろうと思う。市長、副市長の話が面白かった。編集さん大変、頑張ってと応援してしまった。

    中盤ぐらいまでは、物事がスムーズに行き過ぎだなと思ってたけど、嫌な場面が出てきてイライラした。でも、永瀬桃がイライラする人物にズバッと言ってくれたからスッキリ。よく言ってくれたと拍手喝采だ。  

    話の中に実際にある本をいっぱい出てきて、読んでみたい本があって参考になった。ブクログでもよく見かける本なんだけど、ヨシタケシンスケさんの『あるかしら書店』は読んでみたいな。永瀬桃が宮本章に選書した本なんだけど、私だったらどういう感想になるのかな。

  • (読書メーターの)おすすめリレー キャンペーンで感謝の読書。ドキドキしながら一気に読み耽る。その理由として、リーダビリティ、ブレない登場人物設定、編集者・宮本と新人作家・広川蒼汰の大逆転劇を含むストーリー展開、最後までのめり込めた。一方大手出版社の後藤が利益を追求。作家の将来を潰そうとする輩が本当にいるのか?この点だけ気になる。大手出版社だからこそ作家を最大の高みまで連れていくことが本分だと思う。高校2年生・永瀬桃の天才的な発想・センス、それを超える努力家、彼女の今後の行方を応援したい。壮大なテーマを描く作家さんとして。⑤

  • このレビューを見るという事は本が好きという事。
    本が好き…読書が好き、装丁が好き、なんなら使われた紙さえ気になる、スピン(栞の紐)も洒落てると嬉しい(〃ω〃)

    一つの作品が世に出るまで、編集と作家の関係、いかにして売るか、色々知れて面白かった‼︎

    本好きさんにオススメです\(//∇//)
    装丁デザインも大正浪漫で可愛い♪

    • 1Q84O1さん
      この作品気になっていたんですが、うちの図書館に置いてないんです〜(TдT)
      残念…
      この作品気になっていたんですが、うちの図書館に置いてないんです〜(TдT)
      残念…
      2023/02/04
    • みんみんさん
      まだこの一冊しか出してないみたいね。
      うちの図書館も置いてない本がたくさんあって
      残念。゚(゚´Д`゚)゚。
      まだこの一冊しか出してないみたいね。
      うちの図書館も置いてない本がたくさんあって
      残念。゚(゚´Д`゚)゚。
      2023/02/04
  • ブクログは自分の本棚が一覧でずらりと見れるのがいいですよね〜

    わりとジャケ読みすることも多いんですが、本書のような装丁の素敵な本が入ると、よくうっとり自分の本棚を眺めちゃう私です。

    ※※※

    東京の大手出版社で働く編集者・章は、新人作家・広川蒼汰の作品を書籍化できなかったことに責任を感じ、退職する。
    そして、縁があって北海道で祖父が営んでいた書店・ミュゲ書房を継ぐことに。

    そこで様々な人と出会い、書店経営や自費出版の編集をとおして、ふたたび本づくりへの情熱を取り戻していく──

    ※※※

    書店経営のこと、本づくりのこと、すごく興味深く読むことができました。
    取次のことなど簡単な仕組みは知っていましたが、大手出版社でないところが本を作って売るというのは、こんなに大変なことなんだなぁと。

    章は、世の中のニーズのことばかり考えた「売れる本」と、作家の個性や書きたいものを歪めずに生み出す「作りたい本」という、いわば現実と理想の狭間に苦しんで会社をやめるわけですが、この悩みは出版業に限らずどんな職種でもありえる悩みですよね。

    現実ばっかり見てもつまらないし、かといって理想だけ追いかけても生活はできない。
    そこになんとか折り合いをつけるのか、理想じゃお腹ふくれんわい!と現実だけを見るのか、あくまで理想を追求するのか…

    章は新人作家を潰すような「現実」に見切りをつけます。そして、ミュゲ書房の赤字経営を軌道にのせるとともに、現実からも目を背けずに編集した出版物の部数を伸ばす手段を模索します。もちろん、理想を失わないまま。

    このあたり、若干のうまく行きすぎ感もあるものの、周りにいる仲間たちと力を合わせて目的に向けて一歩一歩前進していく展開にはすごーくワクワクできます。

    ちなみに作中で悪役出版社として描かれる業界最大手の丸山出版て…どう考えても角川ー!

    ちなみにのちなみに、この本は角川から出版されています。なんかニヤリとしてしまった。

  • 目頭熱くなった一冊。

    祖父母の書店を継いだ元編集者の再起をかけたお仕事小説。

    一冊の本が世に送り出されるまでの紆余曲折。
    ダイヤのような輝きを秘めた奇跡の一冊を世に送り出したいだけなのにそこに立ちはだかるのはビジネスの壁。

    店主、編集者としての葛藤が痛いほど伝わるシーンはもちろん作家のプライドと、ビジネスのぶつかり合いには目頭が熱く、涙。

    売りたい、読んで欲しいという愛情を順に注いで流通させる喜び、そしてその土台としてなくてはならない"信頼"というベルトコンベア。

    また一つ心に響く作品に出会えた喜びを噛み締める。

  • これは本好きさんのための本。面白かったです。

    主人公は大手出版社で編集の仕事をしていた青年。
    ふとしたことから祖父が経営していた、地方の小さな書店を継ぐことになります。

    ミュゲ書房というその書店。地域で一軒だけの書店で、地元の人たちが遊びに来るものの、売り上げは微々たるもの。
    そこを立て直すべく、主人公が奮闘します。

    この作家さん、文章が読みやすく、かつ表現が的確なので、読んでいて作中の架空の本から食べ物まで、映像を見るかのように浮かんできました。

    作家、出版社、取次、印刷所、装丁作家、イラストレーターも登場し、出版業界の一部を垣間見ているようで、楽しかったです。

    実在する本がこれでもかとばかりに出くるところも楽しかったです。参考文献の量がすごいです。

    『本が好き』というツボに、ここまで刺さった本は初めてです。本当に面白かった。誰か読んでくれないかなあ、と思います。



    • mochimochiさん
      ほん3さん
      こんにちは、はじめまして(^^)
      いつも読み応えのあるレビューだなぁと楽しく拝見しております。

      この本、私もすごく楽しめました...
      ほん3さん
      こんにちは、はじめまして(^^)
      いつも読み応えのあるレビューだなぁと楽しく拝見しております。

      この本、私もすごく楽しめました!本好きさんのための本っていうのに、心から同感です。
      本ってこういう風に作られるんだなっていうのが一緒に味わえて、本が好きな人なら絶対に楽しめますよね。

      これからも色々と参考にさせてください。よろしくお願いいたします(^^)
      2022/11/01
    • ほん3さん
      mochimochi さん
      こんばんは。はじめまして。
      コメントありがとうございます(´∀`)
      この本、本を作る過程を一緒に楽しめるのがいい...
      mochimochi さん
      こんばんは。はじめまして。
      コメントありがとうございます(´∀`)
      この本、本を作る過程を一緒に楽しめるのがいいですよね。
      今、mochi さんのレビューをあらためて拝見しました。
      ほんと、装丁がきれいな本ですよね。淡い紫の色合いがいい感じです。
      悪徳出版社がおそらく角川、でこの本も角川から出てるってところ、笑いました。

      こちらこそ、参考にさせてください。よろしくお願いいたします(*'ω'*)
      2022/11/01
  • 大正時代の洋館を改装した書店・ミュゲ書房。
    建物のみならず内装も、椅子やテーブルなどのインテリアも素敵。庭も四季折々の植物が植えられてあって、書店にしておくのが勿体ないくらいの雰囲気を醸し出している。
    こんな居心地の良さそうな空間なら、地元の常連客が読書会等何かと集まってくるのも分かる。おまけに書店内にはお洒落なカフェまで併設してあり本に出てくるスイーツを手作りして出してくれて、選書サービスまであるなんて。
    こんないたれりつくせりの書店があったら、私も常連客の一人になりたい。

    世間を賑わすベストセラーよりも、常連客の要望を取り入れた本を揃える地域に根付いた小規模書店。
    閉店する書店が多い中、個性を活かした書店の必要性について考えさせられた。
    そして本を一冊創り、それを売ることの苦労といったら…。紙の本はほんと貴重だ。これからは大切に扱わなきゃ。
    続編が出るといいな。

  • 「本」に対する愛を感じました^_^
    本作りもだし、本を世に売り出すことも簡単ではないですね。
    少し話が上手く行きすぎた気はしますが、出版業界のことが知れて面白かったです。

    伊藤調さん初読みだなと思ったら、こちらがデビュー作らしいので、また次の作品も楽しみにしています。

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著者プロフィール

北海道出身、東京在住。大学図書館などで業務に携わってきた。2019年5月より『ミュゲ書房』をWeb小説サイト「カクヨム」に投稿開始。本作でデビュー。本作には北海道の風景や自然、食べ物が多く登場する。

「2021年 『ミュゲ書房』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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