ミュゲ書房

著者 :
  • KADOKAWA
3.81
  • (17)
  • (36)
  • (27)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 390
感想 : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041110508

作品紹介・あらすじ

小説編集の仕事をビジネスと割り切れない、若手編集者の宮本章は、新人作家・広川蒼汰の作品を書籍化できず、責任を感じ退職する。ちょうどその頃、北海道で書店を経営していた祖父が亡くなり、章はその大正時代の洋館を改装した書店・ミュゲ書房をなりゆきで継ぐことに……。
失意の章は、本に関する膨大な知識を持つ高校生・永瀬桃ら、ミュゲ書房に集まる人々との出会いの中で、さらに彼のもとに持ち込まれた二つの書籍編集の仕事の中で、次第に本づくりの情熱を取り戻していく。そして彼が潰してしまった作家・広川蒼汰は――。

挫折を味わった編集者は書店主となり、そしてまた編集者として再起する。本に携わる人々と、彼らの想いを描いたお仕事エンターテインメント。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 東京の丸山出版で働いていた編集者の宮本章28歳が、祖父母の経営していた北海道にあるミュゲ書房を立て直すお仕事小説です。

    祖父母が亡くなり、市長の佐伯にミュゲ書房の経営を引き継いでくれれば市立図書館の仕入れ先にするからと言われたことに後押しされ、東京の職を辞し、章はミュゲ書房を立て直す決心をします。

    手伝ってくれるのは、大学三年生の池田君、高校二年生の永瀬桃、近所の菅沼さん。池田君はカフェとウェブを担当、桃は、選書サービスと児童書と絵本。菅沼さんは今週の庭担当。

    そして章は東京にいたころに広川蒼汰という『リベンジ』という小説を書いた新人作家をデビューさせたくて仕事の傍らずっと探していたのですが、意外なところでみつかります。

    ミュゲ書房の”ミュゲ”というのはフランス語でスズランの意味があり、スズランの花言葉は「再び幸せが訪れる」イコール『リベンジ』ということで、章は『リベンジ』の出版を目指しますが…。

    「北海道の風景や食べ物」という惹句に惹かれて読み始めた作品ですが、本の中に出てくる食べ物ってなんでこんなに美味しそうなのかといつも思います。
    池田君の作る食べ物、ラテアートやステンドグラスクッキー、シュトーレン、フルーツパンチなどが凄く美味しそうで食べてみたいと思わされました。

  • 目頭熱くなった一冊。

    祖父母の書店を継いだ元編集者の再起をかけたお仕事小説。

    一冊の本が世に送り出されるまでの紆余曲折。
    ダイヤのような輝きを秘めた奇跡の一冊を世に送り出したいだけなのにそこに立ちはだかるのはビジネスの壁。

    店主、編集者としての葛藤が痛いほど伝わるシーンはもちろん作家のプライドと、ビジネスのぶつかり合いには目頭が熱く、涙。

    売りたい、読んで欲しいという愛情を順に注いで流通させる喜び、そしてその土台としてなくてはならない"信頼"というベルトコンベア。

    また一つ心に響く作品に出会えた喜びを噛み締める。

  • 大正時代の洋館を改装した書店・ミュゲ書房。
    建物のみならず内装も、椅子やテーブルなどのインテリアも素敵。庭も四季折々の植物が植えられてあって、書店にしておくのが勿体ないくらいの雰囲気を醸し出している。
    こんな居心地の良さそうな空間なら、地元の常連客が読書会等何かと集まってくるのも分かる。おまけに書店内にはお洒落なカフェまで併設してあり本に出てくるスイーツを手作りして出してくれて、選書サービスまであるなんて。
    こんないたれりつくせりの書店があったら、私も常連客の一人になりたい。

    世間を賑わすベストセラーよりも、常連客の要望を取り入れた本を揃える地域に根付いた小規模書店。
    閉店する書店が多い中、個性を活かした書店の必要性について考えさせられた。
    そして本を一冊創り、それを売ることの苦労といったら…。紙の本はほんと貴重だ。これからは大切に扱わなきゃ。
    続編が出るといいな。

  • 「本」に対する愛を感じました^_^
    本作りもだし、本を世に売り出すことも簡単ではないですね。
    少し話が上手く行きすぎた気はしますが、出版業界のことが知れて面白かったです。

    伊藤調さん初読みだなと思ったら、こちらがデビュー作らしいので、また次の作品も楽しみにしています。

  •  本に関わるお仕事物としてとても面白かった。
     作家、編集者、出版社、装丁・装画家、印刷、流通、書店、書店員、顧客と本の作成過程の一通りの仕事について触れられていて興味深く読めた。
     主人公は元編集者で祖父の書店を継ぎ、その書店から出版も行うようになる。北海道の田舎町での書店経営は難しいが、それを支える周囲の人々は暖かい。過疎化の進む町に優秀な人材が揃いすぎだというところは確かにあるが、ぶっ飛んだところはないしバランスはとれていて、物語進行上の都合として受け入れやすかった。
     とある登場人物が敵対心を抱いている相手に対して親切であることもちゃんと理由が説明されていた。主人公しか見えていない作者だと、脇役が性格と矛盾した言動をすることがよくあるが、本作ではそういう細かいところにも目が配られていた印象だ。
     本の装丁も紙の質感がよかった。

     よくなかったところを挙げると、カクヨムで連載していったときの名残だろうが、各章が短いうえにその都度章タイトルが挟まれるのが鬱陶しかった。しかも、タイトルでネタバレしてくる。これは書籍化するときに変えられなかったのか。

     カクヨムには実際の書籍化の流れの話も追加されていてそちらも一読の価値があった。
    https://kakuyomu.jp/works/16816452218677318232

  • 本を作りだす、世にだすという苦悩だけではなく、ちょっとミステリアスな部分もあり入り込んでしまった。
    やっぱり本って良いです。
    私は、紙の本が好きです。
    また、本屋さんへ直行です。

  • とても心地良い物語。
    編集者として挫折を経験した主人公が後先決めず退職。成り行きで祖父母の住んでいた北海道へ移住、祖父母の経営していた街の書店店主として再出発する。色々な登場人物が出てくるが、小さな街の濃い人間模様に触れ、読んでいて温かい気持ちになる。素敵な塔やお庭、カフェカウンターのあるこじんまりとしたミュゲ(=フランス語で「すずらん」の意味)書房は、個人的には異国情緒も感じ、雰囲気がとにかく良い。どんなに挫折しても、前に進んでいけば新たに出会う人や環境の中、またきっとやり直せる、もっと自分に合った場所に身を置く、そのために必要な経験だったんだ、ということを教えられ元気づけられる本。

  • 新人作家さんながら堂々とした書きっぷりでしっかり感動させて頂きました。
    書店ものが大好きなのでバイアス掛かっている可能性もありますが、出会いの偶然以外は突飛な事も無く非常に心地よく読ませてもらいました。
    大手出版社を退職した主人公が、訳あって祖父母の書店を引き継いだ所から物語が動き始めます。書店から本を出版するあたりは、リアルでも最近有る話なので頷きながら読みましたし、新人作家と編集者の関係性も勉強になりました。
    何より行ってみたいと思わせる本屋が本の中に有ると、読んでいてワクワクしてしまいます。
    続き出なくともいいので、もう一冊書店ものよみたいなあ。やはり書店フェチなんだなと自覚します。

  • 図書館で見つけて、表紙の雰囲気に惹かれて、手にとった作品。
    一日で読んでしまった。
    本全体の空気感が好き。こんな本屋さんが近所にあったらいいな。こんなお仕事に携われたらいいな。
    羨ましくなる本だった。
    また、ストーリーも、主人公二人がとても一生懸命で、真っすぐで、好感がもてた。きれい事のストーリーかもしれないけど、私は好きだな。

  • この本屋に行きたいと思った。
    本への愛情と熱意で
    あらゆる才能が集まっている。
    いろんな仕事、いろんな想い、いろんな才能が集まって
    一つのものが完成する。

全35件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

北海道出身、東京在住。大学図書館などで業務に携わってきた。2019年5月より『ミュゲ書房』をWeb小説サイト「カクヨム」に投稿開始。本作でデビュー。本作には北海道の風景や自然、食べ物が多く登場する。

「2021年 『ミュゲ書房』 で使われていた紹介文から引用しています。」

伊藤調の作品

ツイートする
×