竜とそばかすの姫 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2021年6月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784041110560

作品紹介・あらすじ

高知の田舎町で父と暮らす17歳の高校生・すずは、幼い頃に母を事故で亡くし、現実世界では心を閉ざしていた。ある日、親友に誘われたことをきっかけに“もうひとつの現実”と呼ばれるインターネット上の超巨大仮想空間〈U〉に「ベル」というアバターで参加することに。ずっと秘めてきた比類なき歌声で瞬く間に世界中から注目される歌姫となったすず(ベル)は、〈U〉の中で「竜」と呼ばれ恐れられている謎の存在に出逢う。凶暴ながらもどこか孤独な竜との出逢いをきっかけに、すずは自分の中にある迷いや弱さと向き合っていく――。歌が導く奇跡の出会いと成長の物語!
商品のパッケージ変更に伴い、掲載画像とは異なったデザインの商品が届く場合がございます。あらかじめご了承ください。

みんなの感想まとめ

現実と仮想世界の交錯を描いた物語は、特に現代のネット社会における人間関係の複雑さや孤独感を鋭く表現しています。主人公すずが、仮想空間〈U〉で歌姫「ベル」として注目を浴びる一方で、彼女が直面する現実の葛...

感想・レビュー・書評

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  • さすが細田作品
    【夏休み!!】って感じ
    サマーウォーズと同じ様にネット社会がテーマ

    凄い大事な事、今の人間に足りてない事を描いていて良かったです

    でも、終わり方や 話の片付けかたが個人的には
    気持ち悪かったです
    【竜のその後どうなったか】
    【ネット社会で正体を晒した鈴(ベル)はどうなる?】
    【そのネット社会にその後変化はあったのか?】
    ここら辺が解決してないので…んん…となった

    細田作品ではサマーウォーズ、時をかける少女が自分は好きですが
    それを越えなかったかなぁ…って感じです

  • 小説よりもやはり映像で見たほうが良さそうな作品。
    映画は見に行ける予定がなく本を手に取ったが、歌唱シーンなどはやっぱり映像のほうが勝るだろうなあと。
    小説では、現実では地味で静かな女の子が、急にUの世界で歌いだして(どういう歌声、曲調なのかは描かれていない)、いきなりフォロワーが爆増して有名になるような描写なので、これは映像ありきな作品だなと感じた。

    誹謗中傷と応援メッセージでまみれるUの世界。
    インターネットのSNSと同じだ。
    少しでも有名になれば、フォロワーが増えれば、それだけアンチも増える。
    みんな匿名で、本当の姿かたちは画面上ではわからない。
    「私刑」、そして、自分本位の誤った「正義」とやらを振りかざす人々。
    ただ他人を屈服させたいという「正義」。

    そんな被害者を「救う」には、やはりリアルでの手段が必要になる。

    サマーウォーズの仮想空間はそう考えると平和な世界だったなあ。
    竜とそばかすの姫は、社会派で現代の問題を題材にしていた。

    「あの人」はなぜ、ベルが鈴だとすぐにわかったんだろう。
    「50億分の1」とはいえ、案外近くにいるものだなと(遠すぎたらお話にならないもんね…笑)

    そして細田守監督作品、ほんっとにクジラがよくでるなあ…

  • 「アンリアレイジ」22年春夏パリコレは「竜とそばかすの姫」の世界で発表 初のNFTコレクションも | WWDJAPAN
    https://www.wwdjapan.com/articles/1266974

    「竜とそばかすの姫」 細田 守[角川文庫] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322010000441/

    「商品のパッケージ変更に伴い、掲載画像とは異なったデザインの商品が届く場合がございます。あらかじめご了承ください。」ですって、、、

  • 「U」はもう1つの現実
    「As」はもう1人の自分
    現実はやり直せない
    でも「U」ならやり直せる
    このフレーズが好き。

    歌う場面が多いから、映画で見た方がより楽しめるかも。サマーウォーズと似てる気がする。

  • 普段は映画より本で読む方が好きだけれど、この竜とそばかすの姫は映像がきれいで歌もあるので映画で見るほうがいいと思う。

  • ラストに向けて涙がこぼれっぱなしだった。
    独りの女の子が、泣きじゃくっていた女の子が立ち上がり拳を握りしめ涙を拭って顔をあげ、再び歌い始めるまでの物語。
    新しい自分に翻弄されながらも「自分」を取り戻してゆく。
    インターネットの世界は、今や現実と地続きと言っても過言ではないと感じている。
    わたしはどこにも顔を出していない。
    素顔をインターネットの世界に流すなど怖くて出来ない。
    それは自分の手を離れてどこへ流されてしまうのかわからない、どれほどの大きさになってしまうのかわからないからだ。
    その中で素顔を明らかにしてひとりの人の元へ走ることを決めた鈴はすごい。
    「すごい」なんて言葉では相応しくないほどに。
    全ては最初にこめられていたのだ。
    あの、『U』からのメッセージに。

  • 細田守監督映画『竜とそばかすの姫』の小説版。

    高知の田舎町に住む鈴は、平凡で内気な女子高生。容姿にも自信はなく、顔のそばかすを気にしている。
    昔は歌を歌うのが大好きだったが、子供の頃、母親を亡くして以来、心を閉じてしまい、人前で歌うことができずにいる。
    そんな鈴だが、友達のヒロちゃんに「U(ユー)」というインターネット空間を教えてもらう。そこでは「As(アズ)」という分身(アバター)を作り、別の自分として存在することができる。
    鈴は自らのIDを「ベル」とする。
    アップロードした写真から、「U」のAIが自動作成した画像は、同じ学校のアイドル的存在、ルカちゃんに似ていた。ルカちゃんと一緒に写った写真を使ったからかもしれなかった。でも顔にはちゃんとそばかすがあった。
    鈴は、いやベルは、「U」の中でなら歌うことができた。個性的で魅力的な歌に、「U」に集う「As」たちは夢中になった。
    「U」はボディシェアリング技術を使って、ユーザーの隠された能力を引き出すことができるプラットフォームだった。歌いたいけれど歌えずにいた鈴の望みと才能を見事に花開かせてみせたのだ。
    ヒロちゃんのプロデュースの力も借り、ベルは瞬く間にフォロワーを増やしていった。
    最初は、鈴=ベル(Bell)の意味でつけた名前だったが、いつとはなしに、他の「As」たちからは、フランス語の美しい(Belle)の綴りがふさわしいと言われるようになった。
    世界中でファンが増えるにつれて、疑問も膨らんだ。
    「Who is Belle?」-ベルって誰?

    ベルの大規模なライブが行われた時、闖入者が現れた。
    「竜」と呼ばれる「As」。「U」の武術館に現れては、汚いやり方で勝ち続けているモンスター型「As」だった。荒々しく粗暴で、嫌われ者。「U」の平和を守るジャスティスたちに追われている。
    ベルのライブがめちゃくちゃにされたのは、ジャスティスに追われた竜が転げ込んだためだった。
    竜の正体が何なのかも「U」の大きな関心を集めていた。
    ジャスティスは正体を暴く「Unveil」の技術を使って、竜を丸裸にすると息巻いている。これを行うと、現実世界の姿がさらされ、もう「U」に存在することはできなくなるというのだ。

    ベル(鈴)は、竜が単に悪いやつだとはどうしても思えない。それは自分もまた現実とはまったく異なる仮想を生きているからかもしれなかった。
    ベルは竜の城を探して「U」の中をさまよう。
    やっと見つけた竜と鈴の間に通うものは。
    そして彼の現実での正体とは。

    ・・・いや、これはなかなかすごい。
    細田の過去作品『サマーウォーズ』も思い出させるような仮想空間がとにかく魅力的。小説でこうであれば、映像作品ならさぞかしと思わせる。
    美しい(歌)姫とケダモノという取り合わせは、(ベルという名からしても)まるっきり「美女と野獣」なのだが、さて、それぞれには別の現実の姿があって、というのがミソ。
    ただ、鈴は確かにつらい経験もしていて、父との仲もぎくしゃくしているのだが、実際には頼りになる友人もいて、初恋の男の子もいて、鈴に密かに思いを寄せる別の子もいて、さらには母の旧友たちが鈴を見守ってくれていて、と、とにかく「恵まれて」いる。この甘さには、ちょっと都合が良すぎると感じなくはない。

    とはいえ、仮想空間と現実がまったく切り離されるのではなく、仮想の世界のつながりが現実の苦悩も救うのだ、というストーリー展開には希望も感じるし、著者の願いも込められているように思う。
    誹謗中傷があったり、無責任な噂が飛び交ったり、仮想空間にはさまざま問題がある。けれども、便利なことには間違いないし、使いようによっては、実際に現実を支えるものにもなるはずだ。

    ミュージシャンの中村佳穂が声優を務めることでも話題を呼んだ。
    本作はいずれ、映画を見たい。

  • 207冊目読了。
    映画はまだ観てないけど音楽は聞いてるのでここかぁって思いながら読み進めた。
    今のSNS時代にもあてはまる状況で、リアルが見えないことで変われるもの、隠れ蓑に覆われることで傲慢・誹謗に走るもの、正義を振りかざすもの、さも自分の考えが正しいと心ない発言をするもの。
    それでも読んでて後半鈴の行動にジーンときた。
    映画観たくなってきた!

  • 今までの細田作品の感想と同じになってしまいますが、物語としての出来は別として小説としてはいまいち。もっと小説なりのエピソードがあったり、映画とは違う視点があってもいいと思うんだけどね。でもだんだん上手くなってるかな。
    「竜とそばかすの姫」は映画は公開日に観ました。世間が求める細田作品だと思いますが、ベルが竜に入れ込んでいくきっかけが、もう一段描かれてもいいかなと思いました。

  • 映像が既に頭の中にある人の書き方な感じがした。映画を観ていない自分にとっては、この本だけでは描写が分かり辛く感じたり、ストーリーが先走っているような印象を受けた。
    とはいえ大体どんな話だったのか分かったのは良かった。「U」はすごく今時の題材というか、近未来にありそうな世界で、ワクワクと怖れの両方の好奇心を抱き想像しながら読んだ。

  • 富山出身の細田監督の高知県の話だった。
    母を失い、歌声を失ってしまった少女。けれど、バーチャルの世界では、自分でも意識しない瞬く間に歌姫になっている。
    「サマーウォーズ」と比較されてしまうのかもしれない。あの「オズ」の世界と。サマーウォーズも、ヴァーチャルがインフラをも制御しているような世界で、なお、最後はリアルな対面のつながりが世界を救う物語だった。本作でも、一番の見せ場は”アンヴェール”する場面だろう。匿名性を剝がされてもなお、ただの一般人が注目を浴びるということが、本当に起こるかはさておき、鈴は確かに最初から最後まで、歌をたくさんの人に聞いてもらいたいとは思っていなかった。最後に救われるのも、世界ではない。それに、家族でもない。
    最後の対決?の場面も、あえて、シンプルな人と人とのやり取りにしたのではないかとも思う。ネット空間で不特定多数を巻き込んでの大団円を意図的に避けているようにも思える。そのことを、盛り上がりに欠けると指摘することもできる。でも、竜をアンヴェールし、かつ救う(救えたと思いたい)ことが出来たのは、関係ない多数ではなくて関係のない無名の1人だったということなのか。
    現実の自分の潜在的な心の痛みとか、内にある能力みたいなものをアバター化してくれる機能があるのは面白かった。また、「U」では誹謗中傷に負けずに真価が正しく評価される…ような描写もあった。ほんとにそんな理想的な機能なんてできるはずないとも思ったが。。
    リアルでは負け組で、バーチャルでは無双に活躍するなんてこと、あまり素直には信じられない。私はリアルで人と話すのは苦手だし、ネットで人と仲良くなるほうがたぶんその1万倍は難しいと思っている。
    けれど、この物語は、サマーウォーズのような派手さがない分、鈴の等身大の物語という気がして、身近に感じることができた。
    これからも同郷の細田さんの作品にはずっと触れていきたいと思った。

  • 映画を見て印象に残る内容だったので、小説も買ってみました。
    映画は歌がとても良く初めて歌で泣きそうになりました、
    小説も歌を聞きなから読んでいました。

  • 小説を読んで映画を観てみたいなと思いました。きっと文脈では読み取れなかった主人公の表情やいろんな伏線。音楽、描かれていないものが映像で捕捉されていたりするのかなと思いました。
    公式サイトを覗いてみました。ベルの歌う音楽こんな曲が流れていたんだなとちょっと感動しました。インターネット上のバーチャルな世界、技術によって世界が大きく変わろうとするときにぴったりの作品ですね。思い浮かべながら読みました。10年後どんな世界になっているんだろうって想像しました。

  • サマーウォーズと似ているところがあったけど、歌姫が自分の過去と向き合っているのが勇気もらえます!

  • 映画がめっちゃ良かったから小説もという事でお借りした。
    細田監督は作家さんではないから勿論文章としての描写は単直だけど、映画を見た上で読むと、色々文章ならではの登場人物達の心の中が読めるので楽しかった。
    映画を見てから読むのがいいと思う。

  • ハラハラした
    映画観たくなった

  • 高知の田舎に住む鈴。歌や音楽が好きだったが、母が水難事故により亡くなったことを機に心を閉ざしていた。
    高校生になった鈴は、ふとしたきっかけで、全世界で50億アカウントもあるインターネット空間「U」を始めてみた。そこは、もう一つの別の現実世界。ここでは心を解放できるかも?試しに歌ってみたところ、それが様々なアバターの心に刺さり、一気にフォロワー数は急上昇。世界中から歌姫として注目されることになった。
    そして、ライブを開催した矢先、謎の「竜」が襲ってきた。鈴は、そんな「竜」に興味を示した。
    「竜は誰なのか?」


    アニメ映画化される作品の原作小説です。インターネット世界が舞台ということで、どうしても細田さんの別の作品「サマーウォーズ」と比較してしまいます。

    個人的には「サマーウォーズ」の方が、好きかなと思いました。エンタメ性があって、戦いのシーンやみんなで一致団結して協力していくシーンが印象的で、スカッとした記憶があります。

    この作品は、エンタメ性はあるのですが、より社会問題を取り入れているので、スカッとしたというよりは、じんわりと心に突き刺さる良い作品として楽しめました。

    作品の要となるのが、「竜」の存在。果たして、現実の世界では誰なのか?ヒントとなる要素はありながらも、最後に明らかになります。その背景に潜む社会問題が、心に痛々しく
    突き刺さり、何か手を差し伸べなければならないなと感じさせてくれました。

    その他にも社会問題として、SNSによる誹謗中傷といった問題が挙げられています。個人情報が提示されていないので、簡単に相手を批判できます。
    そういった攻撃でも立ち向かおうとする鈴の純粋さや行動に勇気をいただきました。

    なかなか現実では思い通りにいかなくても、仮想現実で実現できるのもあるかもしれません。引っ込み事案だった鈴が、〇〇のために奔走する姿にも応援したくなりました。
    母の水難事故や父との遠い距離感。そういった過去を持ちながらも、仮想現実を機に段々と元気になっていく姿には、読んでいて、こちらも元気にさせてくれました。

    現実での舞台は高知県の田舎で、「仁淀川」や「伊野」といた実際にある地名が使われています。
    なぜ、ここが選ばれたのかわかりませんが、都市とは違った人の温かみや青春が伝わってきて、「心のゆとり」さを感じました。

    ドタバタながらも、高校生たちの友情・恋愛が微笑ましく、安心しながら読めました。
    それとは逆に仮想現実で起きる暴動が激しく、目まぐるしかったです。鈴で癒される場面はあるものの、拡散による勢いや竜との対決、誹謗中傷によるスピード感も相まって、全体的にメリハリのある展開になっている印象でした。

    そして、「竜」との出会いによって、助けようとする皆の団結力や行動には印象的でした。

    映画がまもなく公開されますが、どんな映像になっているのか楽しみです。

  • 前作は微妙だったが、今回はスケールが大きく『U』というもう1つの世界を通して鈴が成長する物語で、映画を観るのが楽しみである。

    実は竜の正体は物語の1/3あたりで出ているが、そこでは一切言及がされていなかった。見事な伏線回収であった…。歌姫「ベル」が主役でもあるため、各所に歌の歌詞が表記されている。早くフルで聴きたいと強く思った。

    「わたしに、その光を放て!!」という鈴(ベル)の言葉には、心打たれるものがあった。それは、確実に『U』の世界で彼女が強くなった証である。

    竜の正体が分かっていても、この話は何度も読みたい。

  • 「サマーウォーズ」と世界観が似ていると思ったら監督が同じ人でした。話自体は全然違うのですが「サマーウォーズ」のバーチャル空間とアバターをさらに進化させた形で、児童虐待を題材に母親の死と向かい合う鈴の成長物語? 話の流れに疑問があるし突っ込みどころ満載ではあるが、そういうところをあまり深く考えずに読むと面白いし最後数ページはちょっと泣きそうでした。舞台が高知でわりと近くの県というのもちょっとポイントでした。

  • 追記
    この物語が自分に合わないと感じたのは、「独善的な自己犠牲」を肯定しているように見えるからだ。
    過去、主人公鈴の母親は幼い子供を救って命を落とす。
    それは幼い鈴の目の前でのことで彼女に強烈なトラウマを残した。
    鈴はそれ以来活発だったのが内向的になり、残された父親との関係もぎくしゃくとしたものになってしまう。
    また娘の鈴や夫以外にも、鈴の幼馴染忍にも重い荷を負わせている。
    仮に自分の死後、現在の鈴たちを見て母親は後悔しないのだろうか。
    幼い子供を助けるために咄嗟に取った勇敢な行動だが、鈴の母親が守るべき一番大切なものは、娘の心だったのではないか?
    都会から来た人たちが無責任な行動をしたその咎は、自分たちの娘の命をもって贖われるべきで、鈴の母親が肩代わりするものではなかったはずだ。

    また、忍が引き止めなければ実際鈴は母親を追って川に入ろうとしていた。
    幼い子が目の前で母親に置いていかれそうになったら追いかけるのも当然である。
    鈴の母親は目の前のことに集中し過ぎて、娘の命も危険に晒していたことに気づかなかったのだろうか。

    何より引っかかるのは、母親が追い縋る我が子を振り払って行ったことだ。
    自分一人の時に取り残されて命の危険が迫る子を見れば、我が子と重ねて咄嗟に助けに行くかもしれない。
    だがこの場面ではそうではなく、天候はひどくライフジャケットが一人分しかないという時点で片道切符の可能性は充分予測できた。
    つまり彼女は「死ぬかもしれない」と思いつつ出かけて行っている。
    娘より赤の他人を「助けたい」という自分の気持ちを優先したのだ。
    そういう意味で、私は彼女にも作者にも共感できない。
    守るべきものの優先順位は歴然なのに、それを無視してヒロイックな行動に走ることは理解することはできない。

    その上物語の後半で、鈴は幼い兄弟を助けるために自ら盾になっている。
    そうやって自分の身を差し出すことで母親の行動を肯定しひと回り成長したように見えた。
    だが実際のところ、彼女の行動もまた無謀なものであり、一歩間違えば死に至る危険もあった。
    もし鈴が殴り殺されでもしたら、鈴の父親の悲嘆はどれほどのものだろうか。
    彼女を見守ってきた忍や合唱隊の人たちの心は?
    鈴は母親に置いていかれて激しく傷ついたのに、どれだけ愛されているかには深く注意せず自分の気持ちを優先してしまった。

    人を助けることと無謀な行動は違う。
    鈴の母親は娘に、「自分の衝動のためには愛するものを放り出しても良い」と教えたのであり、鈴は母親への愛ゆえにそれを盲信した。
    若い人には命をかけた自己犠牲は美しく、それをしない大人は醜く自己中心的に見えるかもしれない。
    それでも、自分を愛してくれている人、本当に自分を必要としている人たちのことを考えるなら、自分を捧げられる範囲については考えるべきだと思う。
    自分を大切にするということは、まわりの人も大切にすることなのだ。



    映画はまだ観ていないが、これは小説というよりも映像を文字にしたものだった。
    映像はきっと素晴らしいのだろうが、これではわざわざ文字にする意味があまりないと思う。
    あと、一人称なのに主人公が見ていない場面を描写しているのが気になった。
    それなら、そこだけいっそ三人称にすればよかったのではないか。

    ストーリーはドラマチックで、竜の正体を想像しながらどんどんページは進むが、なんだかんだで才能のある主人公がみんなに愛され恵まれていて上手くいき、若干ご都合主義に感じる。
    ラストシーンも映像ならもっと感動したのだろうが、なんだか波に乗れないまま置いていかれてしまった気分。
    きっとUの世界にも私のようなへそ曲がりも何人かはいるだろう。
    兎にも角にも、昔の少女漫画を見ているみたいだった。

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著者プロフィール

1967年富山県生まれ。91年東映動画(現・東映アニメーション)入社。アニメーターおよび演出として活躍後、フリーに。『時をかける少女』(2006年)、『サマーウォーズ』(09年)を監督し、国内外で注目を集める。11年には自身のアニメーション映画制作会社「スタジオ地図」を設立。監督・脚本・原作を務めた『おおかみこどもの雨と雪』(12年)、『バケモノの子』(15年)はいずれも大ヒットとなり、『未来のミライ』(18年)ではアニー賞を受賞、米国アカデミー賞長編アニメーション部門にもノミネートされ世界中で注目を集めた

「2021年 『角川アニメ絵本 竜とそばかすの姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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