- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041110676
作品紹介・あらすじ
ののとはな。横浜の高校に通う2人の少女は、性格が正反対の親友同士。しかし、ののははなに友達以上の気持ちを抱いていた。幼い恋から始まる物語は、やがて大人となった2人の人生へと繋がって……。
感想・レビュー・書評
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手紙のやり取りだけ、怒涛の500頁!!
手紙だけの小説なんて退屈に思えそうなものだけど、どっこい、ぐいぐい惹かれて読まされます。
男とか女とかなく、人を想うということ。離れていても、会うことが叶わなくても、心のそばにいるということ。愛の物語だった。
ミッション系のお嬢様学校に通う"のの"こと野々原茜と、"はな"こと牧田はな。
ののは庶民的な家で育ち、成績優秀、クールな委員長タイプ。はなは外交官の家に育ち、天真爛漫で甘え上手、みんなから可愛がられるタイプ。
なぜか気の合った2人は、手紙をやり取りするうちに親交を深め、相手に対する気持ちは友情ではなく恋なのだと気づき、ののがはなに告白。2人は秘密の交際をするようになる。手紙の内容はどんどん他者を寄せ付けない情熱的なものになる。唯一無二の相手を見つけた幸福、失うことの不安。まっすぐな気持ちを伝え合う。
しかし一方で、ののが抱えていた秘密がはなに知られることになる。以前のようにはいられなくて、2人は傷付き苦しみながらも、別れが訪れる。ここまでが第一章。
でもまだ2人の物語は終わらない。大学生になって、再び手紙のやりとりをするようになった2人。それぞれ別の道を歩み出し、以前の関係には戻れないけれど、互いの存在は特別なもので、燃えるような恋情が形を変えたとしても心に互いの存在が強く残っていることを感じる。
はなの結婚を機に、2人は長期的に疎遠になる。でもメールという手段を得て、20年もの時を経て、2人はメールで繋がる。ののはフリーのライターとなっていて、はなは外交官の夫と共に、アフリカのゾンダ共和国(架空の国)に大使夫人として駐在している。
過去のことや現在の生活を伝え合う中、ゾンダで内乱が起きて…
私も女子校出身なので、女子しかいない中での、ある種特殊な関係性はよくわかる。
それに、高校生の頃の潔癖性から、はながののの行為を裏切りととらえて許せなかったことも。
ののとはなが、離れ離れになっても、いつも心の底で相手を思い続けてきた関係性には、魂の繋がりのようなものを感じる。
おそらく誰にでも、苦い恋や辛い別れの記憶があるだろう。昔、共に過ごしたあの子は、あの人は、今はどうしているだろう。ふとした瞬間に甦る気持ちを丁寧に掬い取っている。
ある程度年を経て、出会いや別れを繰り返した人に読んでほしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
可愛らしい表紙からは想像できないほど激しく情熱的な愛。二人の少女の往復書簡のみで描かれる。なんだか秘密を覗き見しているようでドキドキ。
大切に思う人からの愛や理解こそが最大の幸福。全てをさらけ出し、ぶつけあい、許しあい、受け入れあう。女同志の友情から始まった恋だからこそ、ではあるんだろうなぁ。
それは大人になってからも、かけがえのない記憶としてずっと生き続ける。後悔や苦い思いも含めて。
離れていても互いを思いあう、信じあう、結びつきの強さ。こんなにも深く誰かを思うことが自分はできただろうか。
辻村深月さんの解説も素晴らしかった。 -
前半のやりとりは中高の友人を思い出して、個人的な感傷があった。あれくらいの時期の女の親友同士の親密さを描くのが上手い。毎日顔を合わせているのに授業中に手紙を書いたり同じものを持ちたがったり、距離感が共依存寄りになっていくのは女子の多い学校でできた2人組あるあるな気がする。
恋愛の描写があまりにも激しく眩しいので直視できない。ラブの大きさ、激しさ、盲目さが全て想像の範囲外にある。上に振れるときの躁状態は良くても、下に振れたときの絶望感も強すぎて自分はもうどちらも味わう体力がないんだなと感じる。
最後はなからの返信がないまま解説に突入してしまい、少し指先が冷たくなる。
強弱はあれどずっと愛と信頼と尊敬、親密な空気が文面に流れていて、物語の起伏やオチが少なくても心地よく読める。
なぜか女性同士の恋愛ものは片方が天真爛漫で愛され上手、もう片方が現実的で堅実で自分の欲を汚いと思っている、みたいなキャラ設定が多い気がする。 -
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3年越しの手紙【新文化】 - 連載 第53回 - 本屋の新井です
https://www.shinbunka.co.jp/rensai/ho...3年越しの手紙【新文化】 - 連載 第53回 - 本屋の新井です
https://www.shinbunka.co.jp/rensai/honyanoarai/honyanoarai53.htm2021/07/26
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ある2人の女性の恋と友情を綴った書簡体小説です。高校生時代から、結婚するまでの現在まで続く2人の一代記です。ゲーテの「若きウェルテルの悩み」を彷彿とさせる新たな書簡体小説で、友達同士だった2人がだんだんと、友情が恋に変わっていく模様を手紙のように交互にかわす文章が素晴らしいです。一つの大河ドラマを観てるように感じました。
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す、す、すごいなぁ、しをんさん‼︎
この、可愛らしい表紙、ののとはなの往復書簡のみで語られる…という、ふんわりしたイメージから、誰がこの話の先を予測できるだろうか?まさに人生そのもの。「女の一生」という題名ではないか?なんて思うくらいでした。(ごめんなさい、古典は未読です)夢中で一気読みしました。ほんの些細な文章で泣きました。
手紙(速達含む)や教室で回すメモで始まった2人の書簡、後半はメールになります。年代的にも私よりちょっと下、という感じで、時代背景も個人的にはすんなり入ります。(私は女子校育ちでないので、その辺りはちょっと違うけど、すんなりでした)
とにかく、この往復書簡の形が、物凄く上手いと思う!こういう形の小説ってたくさんあるけれど…。デスマス調と普通に話しかけてる感じとが、思いっきりミックスされてる感じがリアルで…。
ののとはな、2人と一緒に生きてる気持ちで読んでしまったのでした。自分が手紙やメールを受け取っていたみたい…。
10代の頃は永遠に思えたことが、ちっともそうでないと大人になって気づく。でも、根底にある、誰かをを愛したり大事に思う気持ち、離れていても大切なのだと感じる気持ち、そういうものは消えないと信じたい。
印象に残ったところを少し…
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神さまは人間を見くびっている。恋と欲望の強さをちっともご存知ない。神はひとの脳みそが生みだした単なる幻影よ。
考えることを捨てて、ただ神を信じればいいだなんて、とても危険なことのように私には思えるんだけど。
星同士の重力だって、距離がひらけば影響は弱まるのだから。
一人でも食べて寝て生活はできるけれど、本当の意味で生きるのはむずかしい。自分以外のだれかのために生きてこそ、私たちは「生きた」という実感を得られるのかもしれない。
もっともっとあなたの話を聞かせて。すごく距離がある私たちだから、せめて離れていた時間を埋めたいの。
年齢も、性別も、時と場所も選ばず、運命は唐突にひとを訪う。こちらの準備ができているかどうかも、まったく考慮には入れてくれない。だから運命とは残酷なものなのです。
文章って、変なものですね。過去やあの世とつながる呪文みたい。
死んだ人とも、まだ会っていないだけのような気がするのです。
曇り濁った目を洗い、希望を胸に新たな気持ちで周囲を見たいと思いました。
外交においては、これぐらい玉虫色の決着のほうがいいのです。
うつくしいものは思い出だけ、記憶だけではないかと、このごろ思います。ひとが手にすることのできる最もうつくしいものは、宝石でもお花でもなく、記憶なのです。さびしいね。
小さな輪が胸もとの肌に触れる。
(この一文で泣きました)
もともと、私たちはなにも持っていないのよ。この体と、心以外は。
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ふわふわしたお嬢様だったはなが、自身の「誇り」をかけてした行動。無事でいてとだけ強く強く祈りながら、読み終えました。素晴らしかったです‼︎ -
LaLaの連載で「日出処の天子」を読み、長文の手紙を毎日のようにやり取りする「のの」と「はな」に、ほぼ同世代で全く同じ経験をしていた自分を投影して読み始めた。2人の関係が展開していく頃からは、「自分とは違う経験」が進んでいくが、自分自身も、疎遠になった親友と中高年になってから再会した経験から、とてもリアル感も感じた。二人の精神的な成長もありのままに受け止めつつ、意外な物語の展開を楽しみ、社会的な課題をも考えさせられ、色々と諦めながら時代を進んできた同世代の女性として、秘めている大きな可能性と決意に希望を感じた。
女性の心の成長や変化をよく描いていると思う。あまりによく描け過ぎていて、男性の読者には少し難しい方もいるのではないかと思った。
著者プロフィール
三浦しをんの作品





