- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041110744
作品紹介・あらすじ
向島で箱屋をしている新吉は、木母寺の梅若塚で見た女の涙が気になった。女衒に売った娘の行方を捜しているという。そこで、元船頭の茂助とともに、協力する。一方、新吉の過去の真相が明らかに…!!
感想・レビュー・書評
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読み応えのあり、時代劇と推理小説が一緒になった……
梅若の涙雨 ― 向島・箱屋の新吉シリーズの3作目
2021.04発行。字の大きさは…中。
妖艶な向島芸者お葉の「箱屋の新吉」の人情物語です。
前作最後に、同じ長屋の茂助が、新吉に。
「侍が、訪ねて来たが、新さんが留守なので帰って行った」と、
「そのお侍さん、なんだか新さんに雰囲気が似ていたんだ」と……、
新吉が追いかけると、
(平岡……)
新吉はじっと船を見送った。
いつしか雪が激しくなり、八年ぶりに見る平岡伊一郎の姿が視界から消えて行った。
え、えぇ――、平岩伊一郎て誰なんだ……?
気になって気になって、しかたがなかったです。
平岩伊一郎は、陸奥の仙北藩大藤家の近習番士として油木新次郎(箱屋の新吉)と一緒に勤めていた友で、新次郎が吉原の花魁小柴と恋に落ち、藩を出て浪人して小柴との恋を突き進むのを停め。帰参のために説得に行った帰りに、小柴に横恋慕した旗本・幡多忠次郎が「油木新次郎か」と聞いたが黙って、斬って来た幡多を斬ってしまった。
それを相談された新次郎は、自分が幡多を斬った事にして上州に旅に出て行く。小柴は、愛しい人が人を斬って旅に出た事を儚んで客を取らなくなり廓主に折檻されて亡くなる。新次郎は、小柴が死んだ事を聞いて江戸に戻って来た。
小柴が死んだ事に責任を感じて、名を新吉と改めて小柴にそっくりな向島の芸者・お葉の箱屋となり常に側にいて支え続けているが。新吉は、吉原から出た芸者のお国に、小柴は、新次郎を想って笑顔で死んでいったのではないかと言われ。小柴の事は一区切りをつける。そして、お葉は小柴でなく。お葉は、お葉だと心を切り替える。
【読後】
綺麗な終わり方をしている。
「隠密同心シリーズ」も、3冊で1話が終わって。3話9冊出版されている。
もしかして「向島・箱屋の新吉シリーズ」も同じ流れか?
今回で3冊。1区切りと著者は考えているのか?
此度は、取手からおさんが、5年前に女衒・蓑助に売った娘・おさわに会いたさに江戸へ出てきた。それを聞いた新吉が、おさわを探し出すと大名家の姫君となって輿入れする運びとなっているが……。今作は、時代劇と推理小説が一緒になって新吉の過去と、おさわをめぐり蓑助が殺された謎を解く物語となっています。読みごたえがあります。
317ページ
2021.07.26~27読了
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【豆知識】
「箱屋」とは、芸者の三味線の入った箱を持つことからついた名前です。芸者に着物を着せたり、帯を結んだりと、雑用をこなしていきます。
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※シリーズの感想と読了日
謎の客 ― 向島・箱屋の新吉シリーズの2作目 2021.02.07読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4041108977#
向島・箱屋の新吉シリーズの1作目 2021.02.06読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4041099706#詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
吉原の花魁、小紫と恋仲になって脱藩した武士、油木新次郎。今は向島の芸者、お葉の箱屋、新吉だ。
今回新吉の謎が解ける。
そして小紫への思慕の決別。
今回の事件は、おさんのいう取手の女性。
娘を女衒に売ったのだが、夫が亡くなり、取手から上京。
死ぬ前に一眼娘に会いたいと。
ところが女衒は強盗に娘が殺されたという。
話に信憑性がなく、江戸でそのまま娘のおさわを探すことにしたおさん。
新吉と老船頭の茂助は事件を探る。
このシリーズも3巻目。
小説のテーマの中に、無闇に人を殺さないことを、いれたようだ。
町人も、武士も命を粗末にはしない。
話し合いで、互いに歩み寄りより良い未来へと、主人公は考えているらしい。
著者プロフィール
小杉健治の作品





