ムーンライト・イン

著者 :
  • KADOKAWA
3.65
  • (16)
  • (55)
  • (47)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 487
感想 : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041110782

作品紹介・あらすじ

「わかっちゃった。あなたもムーンライト・フリット(夜逃げ)でしょ」。人生の曲がり角、遅れてやってきた夏休みのような時間に、巡り合った男女。高原に建つ「ムーンライト・イン」で、静かな共同生活が始まる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 予想と違ってお別れの話なのに何故か清々しい。再会が予想出来るからか? だがこの後予想通りに上手く行くかは誰にも分からない。また始まりに戻って袋小路に嵌まるかも知れない。再会出来ないかも知れない。けれどそれぞれの旅立ちがそこにある。

    元ペンションだった家で共同生活をすることになった五人の老若男女。家主の老人・虹之助、車椅子の老女・かおる、介護士の塔子、フィリピン人で看護師資格を持つマリー・ジョイ、自転車で旅する拓海。
    虹之助以外、皆が何かから逃げてきて何かに抑圧されている。それだけにそれぞれが距離感を保ち、それでいて暗黙の連帯感もある。
    虹之助の家での程よい解放感と緊張感。しかしその夏休みのような日々はやがて終わりを迎える。

    それぞれが抱える鬱屈が分かると苦しい。
    ジェンダー問題を提起したいわけではないだろうが、女性だから見下され女性だから侮られというシーンが多い。そしてマリー・ジョイもまた外国人だから辛い目に遭い、その元を辿れば男性の無責任さに繋がっている。
    そんな嫌な男性と真逆な虹之助と拓海だが、どこか頼りない。お気楽な虹之助と自分が心許なくて言いたいことが伝えられない拓海。
    二組のカップルの行方が気になる。

    後半から終盤はみんなの行く末が気になって仕方なかった。マリー・ジョイの涙、かおるの叫び、どちらも胸に突き刺さった。塔子の息子を巡っての様々な苦しい思いも理解出来る。
    みんなの問題や鬱屈が完全に晴れたわけではない。多分一部はずっと抱えながら生きていくのだろう。

    いつかは旅立つ場所と分かっていても寂しい。だが拓海が言うように『実家』のように折々に訪ねていける、いざとなれば帰る場所があると思うだけでも心の支えになるのだろう。
    またみんなが再会する日は来るだろうか。

  • 人生で行き詰まった時、避難できる場所があるととても助かる。がんじがらめになった自分を温かく受け入れてくれる。それだけで心から安堵できる。
    しかも景色も良くて食べ物も美味しくて、一緒に暮らす人達もいい人達ばかり。
    そんな居心地の良い場所があれば、もう言うことはない。

    トラブルを抱えた人達が夜逃げ同然に駆け込んだ先で、ひっそりと穏やかに住まいと時間をシェアする共同生活。
    それぞれの悩みも取り敢えずは脇に置いて、互いに束縛することなく楽しく暮らす。
    けれど、それはあくまでも一時避難でしかない。
    いくら居心地が良くても、どんなに楽しくても、長く居着くことはない。長くは続かない。
    束の間の長期休暇を終えると、帰るべき場所へ戻っていく者もいれば新天地へと旅立つ者もいる。
    休暇っていずれ終わりが来るから休暇なんだな。
    終わりが来ないと、それは日常生活になってしまって、楽しめる場ではなくなってしまう。

    「いつでも戻っておいで」
    そう言って自分を温かく迎え入れてくれる人がいることの心強さ。
    日常に疲れてまた現実逃避したくなったら、いつでも戻れる場所がある。そんな居場所を持っていることは、日常を生きる上での励みになるはずだ。
    夢のようなひと時とは、あくまでも夢であって現実ではない。

    それにしても、男性ってロマンチストなのね…。一時の感情に走れる生き物なんだ。
    女性の方がよっぽど冷静に現実的に物事を捉えている…まぁそれもちょっと淋しいけれどね。
    フィリピン人のマリー・ジョイがいい味出していて、最後まで楽しませてくれて物語全体を救ってくれた感じ。
    かおるさんはマリー・ジョイの読み通り、いつか虹サンの元へ戻ってくるかな。

  • お互いが特技を出し合い

    生活が回っていく

    とても夢のある

    共同生活



    こんな生活が長く続けばなー

    と思うんですが

    やはり 問題から

    目を背け続けるわけには

    いかなくて

    決着をつけていくと

    理想の輪は終わってしまうんですが



    その先にもまた

    新しい輪が始まる予感を

    感じさせます

  • いろんな「事情」をかかえた他人同士5人が共同生活を送る話。
    現実にもこういう、人には軽く言えない事情をかかえている人多そう…

    マリー・ジョイと拓海のやりとりがほほえましかった。ちょっと展開早いなあと思ったけど、まあお互いいい大人なんだしいいでしょう、と。

    お互い事情があるのを、なんとなく察していて、だけど詳しくは聞けなくて、自分のことも詳しく話せなくて、っていうの、わかるなぁ。
    だけどだからといって距離をとるのではなく、お互い事情があるからこそ、ほどほどに思いやって、気心が知れているのは、過ごしやすそうだなと思った。

    かおるさんが最後あの決断をしたのはよくわからなかったな。まだまだ私の人生の経験が足りないからかな…

  • 『ムーンライト・イン』中島京子著 どうしたって幸福になりたい生き物 | 47NEWS
    https://nordot.app/745402571060215808?c=39546741839462401

    「ムーンライト・イン」 中島 京子[文芸書] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322010000474/

  • 著者のベスト本、更新しました!
    人はいつになっても、何かを抱えて生きているもの。
    若くても年老いても。
    3世代の女性、それぞれにとても魅力的で、したたかでありそして可愛らしく描かれていました。

    この先、みんなが幸せになれますように・・・。

  • 夢のようなシェアハウス… は、やっぱり夢で、でもこの先があってほしいと思う。

  • マリー・ジョイのキャラが最高。期待どおりのエンディング(予定調和的とも言えるけど、、)で読後感もすっきり、、というか、この幸せ感はなんでしょう? 中島京子マジックというべきか。。。映像化して欲しい!

    マシュマロの正しい(?)食べ方を学んだので、緊急事態宣言のGW中に試してみます。

    • oyucaさん
      そうですよね!なんか読後感よかったですよね、マリージョイとたくみの会話のテンポもよかったんだと思います。
      そうですよね!なんか読後感よかったですよね、マリージョイとたくみの会話のテンポもよかったんだと思います。
      2021/11/14
    • Bikkieさん
      そうですね。中島京子さんにはこの路線で突き進んで欲しいです。
      そうですね。中島京子さんにはこの路線で突き進んで欲しいです。
      2021/12/04
  • 流されて生きる日常に、ふっと訪れるアクシデントあるいは衝動。本当の転機になるかもしれないけれど、いっときのバケーションなのかもしれない。そんなこと自分にも誰にも分からない。

  • 年代、性別、国籍の違う男女がなぜ高原のリゾート地に同居しているのか。それぞれの抱える秘密が徐々に解き明かされる。リアリティーの無い設定なのになぜか頭のなかでは登場人物達が生き生きと動き出す。ページを繰る手が止まらない!

全52件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

中島京子

一九六四年、東京生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒。出版社勤務、フリーライターを経て、二〇〇三年に小説『FUTON』でデビュー。以後『イトウの恋』『ツアー1989』『冠・婚・葬・祭』など次々に作品を発表し、二〇一〇年、『小さいおうち』で直木賞を受賞。一四年に『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞を、一五年に『かたづの!』で河合隼雄物語賞と柴田錬三郎賞、及び『長いお別れ』で中央公論文芸賞を受賞。その他の著書に『エルニーニョ』『眺望絶佳』などがある。

「2021年 『やさしい猫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中島京子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
凪良 ゆう
瀬尾 まいこ
寺地 はるな
三浦 しをん
恩田陸
伊坂 幸太郎
雨穴
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする
×