ムーンライト・イン

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 790
感想 : 78
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041110782

作品紹介・あらすじ

「わかっちゃった。あなたもムーンライト・フリット(夜逃げ)でしょ」。人生の曲がり角、遅れてやってきた夏休みのような時間に、巡り合った男女。高原に建つ「ムーンライト・イン」で、静かな共同生活が始まる。

感想・レビュー・書評

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  • 予想と違ってお別れの話なのに何故か清々しい。再会が予想出来るからか? だがこの後予想通りに上手く行くかは誰にも分からない。また始まりに戻って袋小路に嵌まるかも知れない。再会出来ないかも知れない。けれどそれぞれの旅立ちがそこにある。

    元ペンションだった家で共同生活をすることになった五人の老若男女。家主の老人・虹之助、車椅子の老女・かおる、介護士の塔子、フィリピン人で看護師資格を持つマリー・ジョイ、自転車で旅する拓海。
    虹之助以外、皆が何かから逃げてきて何かに抑圧されている。それだけにそれぞれが距離感を保ち、それでいて暗黙の連帯感もある。
    虹之助の家での程よい解放感と緊張感。しかしその夏休みのような日々はやがて終わりを迎える。

    それぞれが抱える鬱屈が分かると苦しい。
    ジェンダー問題を提起したいわけではないだろうが、女性だから見下され女性だから侮られというシーンが多い。そしてマリー・ジョイもまた外国人だから辛い目に遭い、その元を辿れば男性の無責任さに繋がっている。
    そんな嫌な男性と真逆な虹之助と拓海だが、どこか頼りない。お気楽な虹之助と自分が心許なくて言いたいことが伝えられない拓海。
    二組のカップルの行方が気になる。

    後半から終盤はみんなの行く末が気になって仕方なかった。マリー・ジョイの涙、かおるの叫び、どちらも胸に突き刺さった。塔子の息子を巡っての様々な苦しい思いも理解出来る。
    みんなの問題や鬱屈が完全に晴れたわけではない。多分一部はずっと抱えながら生きていくのだろう。

    いつかは旅立つ場所と分かっていても寂しい。だが拓海が言うように『実家』のように折々に訪ねていける、いざとなれば帰る場所があると思うだけでも心の支えになるのだろう。
    またみんなが再会する日は来るだろうか。

  • 人生で行き詰まった時、避難できる場所があるととても助かる。がんじがらめになった自分を温かく受け入れてくれる。それだけで心から安堵できる。
    しかも景色も良くて食べ物も美味しくて、一緒に暮らす人達もいい人達ばかり。
    そんな居心地の良い場所があれば、もう言うことはない。

    トラブルを抱えた人達が夜逃げ同然に駆け込んだ先で、ひっそりと穏やかに住まいと時間をシェアする共同生活。
    それぞれの悩みも取り敢えずは脇に置いて、互いに束縛することなく楽しく暮らす。
    けれど、それはあくまでも一時避難でしかない。
    いくら居心地が良くても、どんなに楽しくても、長く居着くことはない。長くは続かない。
    束の間の長期休暇を終えると、帰るべき場所へ戻っていく者もいれば新天地へと旅立つ者もいる。
    休暇っていずれ終わりが来るから休暇なんだな。
    終わりが来ないと、それは日常生活になってしまって、楽しめる場ではなくなってしまう。

    「いつでも戻っておいで」
    そう言って自分を温かく迎え入れてくれる人がいることの心強さ。
    日常に疲れてまた現実逃避したくなったら、いつでも戻れる場所がある。そんな居場所を持っていることは、日常を生きる上での励みになるはずだ。
    夢のようなひと時とは、あくまでも夢であって現実ではない。

    それにしても、男性ってロマンチストなのね…。一時の感情に走れる生き物なんだ。
    女性の方がよっぽど冷静に現実的に物事を捉えている…まぁそれもちょっと淋しいけれどね。
    フィリピン人のマリー・ジョイがいい味出していて、最後まで楽しませてくれて物語全体を救ってくれた感じ。
    かおるさんはマリー・ジョイの読み通り、いつか虹サンの元へ戻ってくるかな。

  • かつては賑やかだった元ペンション「ムーンライト・イン」
    雨の夜にずぶ濡れでドアをノックをしたのは フリーターの拓海、35歳。

    そこでは、70代のオーナー・虹之助 と 女性三人が共同生活をしていた。
    80代のかおる、50代の塔子、フィリピンから来た20代のマリー・ジョイ。
    三人はそれぞれ秘密を持ち、事情を抱えて、ここへ逃げてきていたのだ。

    雨をしのぐため、一晩だけ泊めてもらうはずだった拓海だが
    怪我をして治療が必要になり、四人目の同居人になる。
    「マリー・ジョイ、わかっちゃった。
    あなたもムーンライト・フリット(夜逃げ)でしょ?」

    年齢も性別もバラバラな五人が、それぞれ役割分担をして暮らす。
    適度に一人になれて、適度に他人が身近にいる居心地の良さ。
    高原の美しい景色と 採れたての新鮮な野菜。
    まるで天国のような平和な世界での静かな生活。
    そこでは不思議な調和が保たれていた。

    しかし、逃避の原因になった現実が消えたわけではない。
    パワハラ、セクハラ、家族の意見の相違、外国人技能実習生の問題など。
    女性たちは、いつまでもこの「休み」が続くことはないと認識し
    ここでの安らぎを力に、再生への道を探り始める。
    一方、男性二人が夢を見つづけようとする姿は対極的で面白い。

    とりわけ、フィリピンの若い女性、マリー・ジョイには拍手。
    彼女はずっと、元気で楽しくて素敵だったけれど
    最後のシーンは、あっぱれ!!としか言いようがない。

    手に負えないことから いったん逃げて休んで。
    そんな場所と時間があったら、人はもっと元気になれるかも…ね。

  • お互いが特技を出し合い

    生活が回っていく

    とても夢のある

    共同生活



    こんな生活が長く続けばなー

    と思うんですが

    やはり 問題から

    目を背け続けるわけには

    いかなくて

    決着をつけていくと

    理想の輪は終わってしまうんですが



    その先にもまた

    新しい輪が始まる予感を

    感じさせます

  • いろんな「事情」をかかえた他人同士5人が共同生活を送る話。
    現実にもこういう、人には軽く言えない事情をかかえている人多そう…

    マリー・ジョイと拓海のやりとりがほほえましかった。ちょっと展開早いなあと思ったけど、まあお互いいい大人なんだしいいでしょう、と。

    お互い事情があるのを、なんとなく察していて、だけど詳しくは聞けなくて、自分のことも詳しく話せなくて、っていうの、わかるなぁ。
    だけどだからといって距離をとるのではなく、お互い事情があるからこそ、ほどほどに思いやって、気心が知れているのは、過ごしやすそうだなと思った。

    かおるさんが最後あの決断をしたのはよくわからなかったな。まだまだ私の人生の経験が足りないからかな…

  • 『ムーンライト・イン』中島京子著 どうしたって幸福になりたい生き物 | 47NEWS
    https://nordot.app/745402571060215808?c=39546741839462401

    「ムーンライト・イン」 中島 京子[文芸書] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322010000474/

  • 高原(清里あたりと思われる)のかつてのペンションを舞台にした物語。それぞれに事情を抱えた人が暮らすこのペンションにやはり事情を抱え流れ着いた拓海(35)。年齢も国籍もばらばらでそれぞれが何かを抱えた5人の男女の話だが、高原の爽やかな空気や雄大な自然がそうさせるのか、どろどろした感じはなく、淡々と話の進んでいく感じが良かった。登場人物のうち、1人だけ外国籍の「マリー・ジョー」の拙い日本語が非常に上手く描かれているなと思った。とても絶妙な終わり方で、読後感も良い。

  • 虹さんがかつてペンションを営んでいたムーンライトイン。そこに集まり、一時を一緒に過ごすこととなった虹さん、拓海、マリー・ジョイ、塔子さん、かおるさん。その5人それぞれにドラマがあり、その様がとても面白かった!今後のこの5人の行方をまだまだみたい、そんな物語です。

  • ある日、偶然なのか必然なのか、わからないけれど、シェアハウスのように住むようになった、老若男女の4人。

    各々は各々の事情を抱えていて…。
    読み進めるうちに、各々が抱えている事情や気持ちがわかってくる。

    どうなるんだろうと思いながら、読み進めた。
    若い二人に幸あるといいな。
    いくつになっても、相手を想う気持ち、想える相手がいることって素敵だなと思った。

  • 著者のベスト本、更新しました!
    人はいつになっても、何かを抱えて生きているもの。
    若くても年老いても。
    3世代の女性、それぞれにとても魅力的で、したたかでありそして可愛らしく描かれていました。

    この先、みんなが幸せになれますように・・・。

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著者プロフィール

1964 年、東京都生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』で小説家デビュー。2010 年『小さいおうち』で直木賞、2014 年『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞、2015 年『かたづの!』で河合隼雄物語賞、柴田錬三郎賞、歴史時代作家クラブ賞、同年『長いお別れ』で中央公論文芸賞、2016 年日本医療小説大賞、2020 年『夢見る帝国図書館』で紫式部文学賞、2022 年『やさしい猫』で吉川英治文学賞、同年『ムーンライト・イン』『やさしい猫』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。ほかに『イトウの恋』、『平成大家族』、『ゴースト』、『キッドの運命』など著書多数。

「2022年 『ワンダーランドに卒業はない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中島京子の作品

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