翡翠色の海へうたう

  • KADOKAWA
3.91
  • (26)
  • (33)
  • (13)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 345
感想 : 34
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041110799

作品紹介・あらすじ

派遣社員、彼氏なし、家族とは不仲。冴えない日々を送る葉奈は作家になる夢を叶えるべく、戦時中の沖縄を舞台に勝負作を書くことを決める。しかし取材先で問題の当事者ではない自分が書くことへの覚悟を問われ……。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ヘイトは消えたか:差別が許されないのは恥だから? 在日作家・深沢潮さんの違和感 | 毎日新聞(有料記事)
    https://mainichi.jp/articles/20210714/k00/00m/040/333000c

    連載「深沢潮「翡翠色の海へうたう」」一覧|カドブン
    https://kadobun.jp/serialstory/hisuiiro/

    「翡翠色の海へうたう」 深沢 潮[文芸書] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322010000475/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      [A Book for Peace 森田裕美 この一冊] 「翡翠(ひすい)色の海へうたう」 深沢潮著(KADOKAWA) | 中国新聞ヒロシ...
      [A Book for Peace 森田裕美 この一冊] 「翡翠(ひすい)色の海へうたう」 深沢潮著(KADOKAWA) | 中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター
      https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=119474
      2022/05/18
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      <差別なき社会へ>沖縄の朝鮮人慰安婦の小説執筆 作家・深沢さんが川崎区で講演 母のチマ・チョゴリまとい 「共生社会への願い深まった」:東京新...
      <差別なき社会へ>沖縄の朝鮮人慰安婦の小説執筆 作家・深沢さんが川崎区で講演 母のチマ・チョゴリまとい 「共生社会への願い深まった」:東京新聞 TOKYO Web
      https://www.tokyo-np.co.jp/article/184883
      2022/06/23
  • 女として生まれたことを悔しくてたまらない、と思わざるを得ない人生。
    その理不尽さと悔しさを思う。

    女という性を、人としての尊厳を凌辱され続ける。死ぬ道さえ選べぬその過酷な日々。戦時下の日本が生んだ慰安婦という存在。なぜ彼女たちは名前を奪われ、人生を蹂躙され続けなければならなかったのか。いま、SNSでその言葉を発信することはかなりのリスクを負う。その存在自体を否定する空気、かかわりたくない、かかわるべきではないという暗黙の了解。
    それを「小説」という形で描こうとする一人の女性。女として、その問題に真っ向から立ち向かうことはできるのか。当事者ではない、関係者でもない、ただ、小説家になるための題材としてそれを扱うことの危うさ。

    私たちはいつもこの問題と地続きで生きている。表面的な関係者ではないとしても、女として生まれ、女として生きている限り。そして男として生きているすべての人にとってもそれは無関係とはいえない問題である。
    誰でも当事者となりうる。今でも、これからも。
    いつかきっと向き合わなければならない。どんな形であったとしても。
    深沢潮が私たちに眼をそらすな、他人事として自分と切り離すな、とこの小説を突きつける。
    知れ、そして考えろ、と突きつける。

  • 太平洋戦争末期の従軍慰安婦の話。悲惨でかわいそうというだけではなく、一人の女性が生きた話として受け止めた。
    小説家志望の女性の語りがちょっと鬱陶しいと思っていたけど、この作品を書くにあたっての意図がわかりやすくなり、過去と現在を繋げて考えさせてくれる大事な役割を持っていると次第にわかった。

  • 沖縄戦、従軍慰安婦、朝鮮人強制労働、戦争収容所、日・米軍による性被害、現代における言動の抑圧、沖縄の若年層が陥りがちな負の連鎖…等、扱い難い題材が盛り沢山だが、驚くほど読み易かった。

    重たいテーマを重厚感たっぷりに描く本は数多あるため、本書のような日常的な平易な文体で綴られる物語があってもよい。何かを凶弾したり被害を訴えるよりも、傷付いて諦めかけている人だって何か出来ることがあることを伝えたい作家の思いを感じた。

    物語の途中、現代パートで噴出する当事者性についての問いが印象的だった。読者は主人公の誠実さを知っているから「書く資格がない」的な発言を投げつけられる主人公に同情するが、無知や無関心や偏見や幻想や上から目線の言動があふれているのも事実。それは沖縄だけでなくアイヌや様々な社会問題や歴史についても同じことが言えるだろうけれど、当事者性以上に大事なのは、知ろうとする姿勢や、無知や無関心を恥じる謙虚さ、知ったことを振りかざしたりせずに相互理解に努める心だということを、主人公を通して感じられるので、多感な若年層にこの本が多く読まれたらいいなと願う。

  • 語る物語と、語られる物語とが、終わり頃に一つに収束する
    その後の更なる最後も美しい
    物語というだけでなく、間違いなく過去に起こった(であろう)ことの記述を受け止めきれない
    読む途中、目を瞑ったり、耳を塞いだり

    これでもか、これでもかと、繰り返す表現の力強さもすごい

    多くの人が読むべき一冊だと思います

  • 好きか嫌いかとか、得意不得意は抜きにして、ものすごい話を読んでしまった感がハンパない。
    慰安婦って言葉はニュースでとてもよく聞くけど、実際のこと深く知らない人が多いのでは?
    なんとなくでしか知らずにいる人に是非読んでもらいたい。
    この作品を書き始めた覚悟、書き切った想い。熱すぎて苦しくなるほど。
    久しぶりに「この作品に出会えてよかった」と思えた一冊。

  • ひとりの朝鮮の女性の半生が書かれてあります。
    私は穴になる、との表現がとても痛ましく、言葉を見失う程でした。沖縄の戦中、戦後に生きた、その半生が、心に染み入りました。
    難しい表現はひとつもなく、けれど、とても平和とは何かを語っている気がしました。
    この本を多くの人に読んで欲しいと思わずに要られません。

  • とてもエグい。読むのしんどい。
    それが正直なところ。

    でも小説であって、内容は実際にあったこと。
    戦時中に本当に起きていたことであり、
    現代のこの時代に些細なことで
    嫌気がさしてしまう贅沢は、
    私の「運」が良かったのだろうか。

    だとしたら、
    戦時中に生まれた人は
    そういう時代に生まれたから、
    「運」が悪かったのだろうか。

    そういう単純な話ではないのだろうけど、
    本当にこんなことがあったなんて
    信じられなくて辛くて心が痛い。

    でも、性の搾取はいつの時代にも存在して、
    世界はいつも争いが絶えなくて、
    本当にどんな方向に向かってしまうのだろう。

    決して他人事ではなくて、
    少し踏み外せば私も争いの被害者にも加害者にも
    なるかもしれない。

    偉大なハルモニたちに、私たちは
    もっと学ばなければいけない。

  • 新人賞を獲るために選んだ題材は従軍慰安婦。沖縄を訪れ取材をすすめるが…。
    自分の国のことなのに沖縄で何があったかを知らない。「民間人がたくさん犠牲になった」という言葉の裏の現実を知らない。戦争を始めた時点で策は失敗だ。人類はいつになったら折り合うための建設的な方法を見出だすのか…

  • いなかったことにしないこと。
    自分が色々なことを知りたいと思うのは、これかもしれないと読んで思った。
    何気ない、あ、いたの?とか、想定されてなかった来客みたいな扱いに対してすごく気持ちが揺らぐのはそういうことなのかも。

全34件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

東京都生まれ。2012年「金江のおばさん」で第十一回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。著書に受賞作を含む『ハンサラン 愛する人びと』(文庫版『縁を結うひと』)『ひとかどの父へ』『緑と赤』『伴侶の偏差値』『ランチに行きましょう』『あいまい生活』『海を抱いて月に眠る』などがある。

「2022年 『わたしのアグアをさがして』 で使われていた紹介文から引用しています。」

深沢潮の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×