- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041110799
作品紹介・あらすじ
派遣社員、彼氏なし、家族とは不仲。冴えない日々を送る葉菜は作家になる夢を叶えるべく、戦時中の沖縄を舞台に勝負作を書くことを決める。しかし取材先で問題の当事者ではない自分が書くことへの覚悟を問われ……。
感想・レビュー・書評
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好きか嫌いかとか、得意不得意は抜きにして、ものすごい話を読んでしまった感がハンパない。
慰安婦って言葉はニュースでとてもよく聞くけど、実際のこと深く知らない人が多いのでは?
なんとなくでしか知らずにいる人に是非読んでもらいたい。
この作品を書き始めた覚悟、書き切った想い。熱すぎて苦しくなるほど。
久しぶりに「この作品に出会えてよかった」と思えた一冊。 -
ウクライナがロシアから侵略されている。
街は破壊された無残なアパートや壊れた戦車が放置してあり、人々の苦しみ、うろたえ、希望のもてない姿がメディアで映し出されている。
昭和4年生まれの母は16歳の時に終戦を迎えている。激動の戦前戦後を生き延びてきている。
きっと、ウクライナ国民とあの頃の自分がリンクしているだろう。
そんなことを考えていると戦争から目をそむけてしまう。
しかし、この小説により心が激しく動かされた。
すべての国の人に幸せになってもらいたい。ウクライナの人もロシアの人も・・・
感動のあまり言葉に表せれない。心が激しく何かに打ちのめされた・・・ -
新人賞を獲るために選んだ題材は従軍慰安婦。沖縄を訪れ取材をすすめるが…。
自分の国のことなのに沖縄で何があったかを知らない。「民間人がたくさん犠牲になった」という言葉の裏の現実を知らない。戦争を始めた時点で策は失敗だ。人類はいつになったら折り合うための建設的な方法を見出だすのか… -
家族との関係や仕事が上手くいかない小説家志望の女性と、戦時中わけもわからないまま従軍慰安婦となっていた女性が交差して物語は進んでいく。
著者と主人公はもちろん別の人物なのはわかるんだけど「多くの時間を費やして、覚悟と責任を持って創り上げた作品」である事は一緒なんだろうな。
最後の参考文献の多さを見てもわかる。
性を詐取される時の淡々とした描写が余計に辛さを感じさせる。美しい海の色の風景もさらに切なさが募る。私自身、勉強不足でもあり、きっと誤解もしてる部分もあったり、今も様々な事に繋がっているこの問題はつい目を背けがちだが、読む事ができて良かったと思う。 -
いなかったことにしないこと。
自分が色々なことを知りたいと思うのは、これかもしれないと読んで思った。
何気ない、あ、いたの?とか、想定されてなかった来客みたいな扱いに対してすごく気持ちが揺らぐのはそういうことなのかも。 -
一気に2時間ほどで読めてしまった短い小説だったけれど、(そんなつもりはないけれど上から目線っぽいコメントしか思いつかない...)良く書けてる、と思った。重たいテーマと現代っ子の軽さ・浅さが上手くマッチしていて、売れたのがうなづける。今時は重たいテーマを重厚感で包むのではなくてこうやって身近に感じられるように書いたほうがウケるんだろうな。
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本作品は、2人の女性の現在と過去が交錯しながら、一本のストーリーに展開する。1人は小説の新人賞に挑戦し、取材のために沖縄に向かった派遣社員河合葉菜の現在進行形の物語。もう1人は、朝鮮で暮らし日本兵のお世話をする仕事と言われて沖縄に連れてこられ慰安婦にされ、無理矢理日本名をつけられた「コハル」の戦中・戦後の物語。葉菜は沖縄の戦跡や当時を知る人の取材で、沖縄の朝鮮人慰安婦の歴史を深く知ることになる。一方の「ハルコ」は日本軍の「穴」にされ、沖縄戦に巻き込まれ、壕(ガマ・穴)の中でも、繰り返し「穴」にされる。逃げ惑う壕で一命を取り留めるも声を失い、沖縄住民に助けられ、戦後は赤線で働く女たちの子どもを預かるなど、沖縄の女たちの力になっていた。葉菜は、取材が進む中で、シェルターを運営する女性の母親が戦災孤児で助けてくれた人こそ「コハル」である事に結びつく。朝鮮人慰安婦、戦時性暴力、沖縄戦、ジェンダーの問題など、非常に難しい問題を素晴らしいバランス感覚でコンパクトにまとめた至極の1冊。感涙。
想像して欲しい「また男が部屋に来る。切符を受け取る。脚を広げる。男はサックをつけて入れる。事が済んで出ていく。消毒する。また男が部屋に来る。」の繰り返しの描写は正に、1995年の映画「きけわだつみの声」の1シーンであり、2020年にグラフィックノベルで綴った「草」の1シーンである。
著者プロフィール
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