俺と師匠とブルーボーイとストリッパー

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 440
感想 : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041111123

作品紹介・あらすじ

【第13回 新井賞受賞決定!】
切ない事情を持ち寄って、不器用な四人が始めた同居生活。

ギャンブルに溺れる父と働きづめの母から離れ、日々をなんとなく生きる二十歳の章介。北国のキャバレーで働きながら一人暮らしをする彼は、新しいショーの出演者と同居することになった。「世界的有名マジシャン」「シャンソン界の大御所」「今世紀最大級の踊り子」……店に現れたのは、売り文句とは程遠いどん底タレント三人。だが、彼らと言い合いをしながらも笑いに満ちた一か月が、章介の生き方を変えていく。『ホテルローヤル』『家族じまい』著者が放つ圧巻の人間ドラマ! このラストシーンは、きっとあなたの希望になる。

感想・レビュー・書評

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  • 釧路のキャバレーで働く二十歳の章介。
    ある日、寮の部屋の前に父親の骨壷が置かれていた。置いていったのは母親‥‥出だしからインパクトが凄すぎる!
    キャバレーの下働きをしながら淡々と日々を過ごしてきた章介。目覚まし代わりにラジオをセットする。誰とも喋らない毎日だから、人間の声を聞くためにラジオを聴いている。
    物語の序盤は、昭和の場末のキャバレー‥‥北海道の厳しすぎる寒さ‥‥と、なんだか寂れた物哀しいお話なのかと思っていました。なんとも言えないこの懐かしい感じ、あ!昔よく観た角川映画みたいなんだ!なんて思って確認してみるとやっぱり角川書店‥‥て、関係あるのかな?(歳がバレる 汗)
    しかし!ある日キャバレーにやってきたマジシャンとシャンソン歌手と踊り子のお陰で章介の毎日が変わる。同じ寮に住み込むのだけれど、いつの間にか章介の部屋でみんなで暖を取り食事をするのが当たり前になっていて、毎日どんちゃん騒ぎ。もう角川映画の雰囲気はまるでなし。
    章介も「笑い声が響く部屋で、なにやら幼い頃に過ごしたアパートの数少ない親子らしいひとときを思い出し」たりして。
    でも、マジシャンたちの契約の期間は決まっていて、いつかこの生活に終わりがくることを章介同様読者も心の片隅では気付いていて、楽しければ楽しいほどなんだか切ない。
    みんなで暮らしたのはほんのひと月のことだけれど、この間の章介の心の成長ぶりが文章にも現れているような気がしました。
    酸いも甘いもの噛み分けた人たちのあったかいお話でした。

  • 人生って、一期一会の積み重ねの上に成り立っているんだな。
    人と出逢い別れて、また新たな出逢いがあって。その繰り返しが人を更に強くしていく。

    昭和50年の釧路のキャバレーを舞台にした、笑いと切なさたっぷりの人情劇場。
    年末年始のキャバレーを彩るため寒空の釧路に降り立った「世界的有名マジシャン」「シャンソン界の大御所」「今世紀最大の踊り子」…しかし現実はお世辞にも華やかとは言えない3人。
    この3人との奇妙な同居生活が、キャバレーで働く20歳の章介の生き方を変えていくことになる。

    失敗続きの売れないマジシャン・師匠、どん底に落ちても歌い続けるパワフルなシャンソン歌手のブルーボーイ・シャネル、口は悪いが面倒見のいい年齢不詳のストリッパー・フラワーひとみ、身よりも友達もいず「寮完備・まかない付」だけの理由でキャバレーの下働きをこなす章介。この年齢も性別も職業もバラバラの4人のやり取りがとてもいい。
    世間からはみ出した過去を持つ冴えない4人が、狭い部屋の中でぎゅうぎゅうに肩寄せあって、ストーブの上で温めた夜食を分け合って食べるシーンにほっこり。
    遠慮もなく言いたい放題かと思いきや、さり気なく相手を気遣っていたりして。
    たった一ヶ月とは思えない濃密な時間は、それまで根無し草のようなふわふわした生き方をしていた章介の心に深く濃く刻まれたことだろう。
    そしてキャバレーの先輩・木崎の親心にもうるうる。
    若い頃に、仕事にプライドを持った大人たちからいい刺激をもらえた章介が羨ましい。
    貴重な一期一会は、長くは続かず終わりが来るから意味のあるものになるのかも。
    小さなお辞儀に不敵な笑みに投げキッス。別れのシーンは笑いあり涙ありで、ほんと切なかった。

    これはぜひとも映画化してほしい。
    時代設定は異なるけれど、木内昇さんの『笑い三年、泣き三月。』を思い出す。

  • 愛おしさがつのる一冊。

    好きだ。
    このタイトルをリフレインするたびにこの物語へのこの四人への愛おしさがつのる。

    マジシャンと歌手とダンサー。この三人と俺とのわずか一か月の共同生活。

    真冬の厳しい寒さと人生に哀愁を感じながらも絶え間なく笑いと人の温もりが心に降り積もる。

    何度シャネルたちの掛け合いに和んだだろう。何度、気付きと温かい言葉と涙をもらっただろう。
    それこそが何よりの暖、温もり。

    俺と一緒にそれを感じるたびに心の奥が幸せ感で満たされた。

    出会いがあれば別れもある。

    一期一会、かけがえのない出会いと時間は人生の宝。

  • 昭和50年頃の北海道の釧路のキャバレー。店にはステージがあり月替りで色々な旅芸人が舞台に立ち連日客を楽しませる。
    主人公は中卒でそのキャバレーにて下働きをしている20歳の章介。複雑な家庭環境故に、自我を出さず、というよりも自我を持たない章介。最低限の会話しかしないし人間関係も希薄。
    書き入れ時の12月に店にやってきたのは、パッとしないマジシャン、大柄な女装シンガー、そしてベテランストリッパーの3人。
    冬の北海道のハズレの港町のキャバレーにて、芸人の3人と章介との仕事上の関わり合いはモノクロームのような雰囲気を味わう。時間も場所も登場人物の設定も、全てにおいて場末感が充満している。
    ところが芸人3人がいい味を出しているので、不思議と読んでいて悲壮感はない。
    逆に、物語が進むに連れて、脳内映像が徐々にカラー化していき、読了後には爽快感を味わえる。

  • 思い出したことが二つあります。

    一つは昨年桜木紫乃さんの『恋肌』読んだ時にも
    元バレリーナのストリッパーが登場していて
    すごく見に行きたくなった私。

    二度も出てきたということは
    実際に桜木紫乃さんが出会ったということなのでしょう。
    どうしたら見られるのかなあ。

    もう一つはずいぶん前ですが、出張先近くに可愛い女の子の名前の店があったので、寄ってみた時のこと。
    「いらっしゃいませ」と初老の男。
    他に客なし。
    げっ…。一杯だけ呑んで退散しよう…。

    そしたらその店主、ブルーボーイだったのです!
    その話が面白くて、楽しくて、長居してしまいました。
    どうしているかなぁ。

    ところでこの小説は1975年12月の話なんですが、
    この時代特有のものなのか
    今でも地方にいけばこういう風景が見られるのか
    私にはわかりません。
    けっこう楽しそうです。

  • 読んでしまったけれど、もう一度4人に会いたくて、1週間も経たずに再読

    何が私の心を掴んだのだろう
    昭和感? 北海道釧路の12月の感じ? 4人のキャラクター? どれもこれもいい
    まるで演歌のような舞台セットではあるけれど、ジメジメしていない、暗くない、ほんわかとぬくもりさえ感じさせる

    釧路に降り立った今世紀最大の踊り子 フラワーひとみ、失敗で飯を食う肝の据わり方が芸なのか マジシャン チャーリー片西 (師匠)
    どん底のソコから這い上がる シャンソン歌手ソコ・シャネル
    三人それぞれ訳ありの過去を持つ身でありながら、人情味たっぷりあったかい 
    ステージでの肝の据わったパフォーマンスを披露するプロ根性もお見事!

    そんな三人と奇妙な同居生活を始めることになったキャバレーパラダイスの下働きをしている二十歳の章介

    鬱陶しいなと思う間もなく、狭く、臭く、寒いながらも楽しい我が家ならぬ共同生活
    家族の縁が薄い章介にとっては、三人は父であり母であり姉?兄?だったのではなかろうか

    安アパート、ストーブを囲みながらの共同生活を見ているうちにこの時間がずっと続いて欲しい、別れが来てほしくないとさえ思ってしまった

    しかし、そんな私の期待もむなしく、1か月が過ぎ、根無し草の章介の心の中に確実に何かを残し、三人はそれぞれ次の地へ

    年号は平成となり、その後の章介と読者サービスとも思えるサプライズ的なラストにグッときた

  • 【祝・新井賞受賞】「血のつながり」はなくても、そこには家族があった。笑いと涙の人間讃歌。桜木紫乃『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』#1 | カドブン
    https://kadobun.jp/trial/blueboystripper/ai99krw8ys8c.html

    俺と師匠とブルーボーイとストリッパー 桜木 紫乃:文芸書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322010000875/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【BOOK】もう一つ自分を“産み直す”場所 “他人”と繋がる…リアルな私の内側の「家族」 桜木紫乃さん『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー...
      【BOOK】もう一つ自分を“産み直す”場所 “他人”と繋がる…リアルな私の内側の「家族」 桜木紫乃さん『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』 - zakzak:夕刊フジ公式サイト
      https://www.zakzak.co.jp/lif/news/210627/lin2106270003-n1.html
      2021/06/28
  • 3.5
    釧路の老舗のキャバレーで、その日暮らしの下働きをする20歳の章介。そこへ営業でやって来た、どん底のマジシャン、シャンソン歌手、踊り子というクセの強い3人。ショーの間の1ヶ月、4人の同居生活が始まる。
    本を読んでるのに、まるで映画を観ている様な感覚だった✨昭和レトロな釧路の夜の風景がそこにある感じ。←行った事ないけど笑
    みんな風変わりだけど、とても温かい。みんなでストーブを取り囲んで、がやがや食べるご飯。家庭の愛にあまり縁のなかった章介には、この1ヶ月は生涯忘れられない大切な時間だっただろうな✨
    素敵な話でした!これほんとに映像化されたらいいのに〜☺️

  • 良かったです。第13回 新井賞受賞作。
    釧路のキャバレーで下働きする20歳の「俺」、そして店に営業で現れた三人のタレント、スベリ芸マジシャンの「師匠」、ガタイの良いおかまで実力派のシャンソン歌手「ブルーボーイ」と年齢詐称の「ストリッパー」。四人は真冬のおんぼろ寮に同居することになり。。。

    外酒はしないのでキャバレーなどという物に縁が無い私。思い出すのは吉田修一の幾つかの作品です。でもこの作品はちょっと違います。汚濁の世界かもしれないけど、余り頽廃的にならず、脇役も含めて登場人物一人一人が前を向いています。桜木さんの旧作『ホテルローヤル』や『星々たち』のようなドロドロした演歌/艶歌の世界とも異なり、キャバレーでの三人のタレントの年季が入った放埓な芸の面白さと、「俺」と破天荒な三人の軽妙で、しかもどこか含蓄が有りそうな温かな掛け合いが何とも素晴らしく。ノスタルジックな雰囲気の中に随所にハッとするような表現が散りばめられていて読み応えがありました。

    ちなみに、この物語が書かれるきっかけは、桜木さんが大竹まことのラジオ番組に出演した事だそうです。その時に大竹さんが桜木さん出身地釧路思い出として、20歳の頃に年末に釧路のキャバレーに営業に行き、その時一緒に海を見に行ったメンバーが、“俺と師匠とブルーボーイとストリッパー”だったと言ったそうです。それがそのままタイトルになり、実際に4人でお正月の海を見に行くシーンも出てきます。

  • 挿絵ひとつない文字だけの作品だが、そこから漂ってくる場末感が半端ない。情景が浮かぶくらいリアルな描写。後日談がたくさんあるようや余韻を残したラストだったのでスピンオフ的に読みたい。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年に同作を収録した単行本『氷平線』を刊行。13年『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞を受賞。同年、『ホテルローヤル』で第149回直木三十五賞を受賞し、ベストセラーとなる。20年には『家族じまい』で第15回中央公論文芸賞を受賞。『ワン・モア』『砂上』『起終点駅 ターミナル』『無垢の領域』『蛇行する月』『緋の河』など著書多数。

「2021年 『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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