- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041111529
作品紹介・あらすじ
六年三組の調理実習中に起きた洗剤混入事件。犯人が名乗りでない中、担任の幾田先生はクラスを見回してこう告げた。「皆さんは、大した大人にはなれない」先生の残酷な言葉が、教室に波紋を生んで……。
感想・レビュー・書評
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ブルーハーツの甲本ヒロト氏が言っていた。小学校なんて、たまたま同じ地域の同じ年のものが集められ、「ハイっ!皆んな仲良く友達でいましょうね!」って先生と呼ばれる大人から言われているだけで、例えるなら、たまたま同じ電車の同じ車両に乗り合わせただけの人達。そんな価値観も好きなものも違う集団の中で友達になりましょうって…友達なんかじゃないよって。ただ同じ目的地まで、向かう他人同士が集団で争わず、迷惑をかけず、ルールの中で生きる練習。それが学校、特に小学校なんじゃないかなと。当時は全く、そんなこと思わずに、感じず、だって、あそこは子供だった私の世界のほぼ全てだったから。
皆、小学校という所には特別な何かがあるように思う。ヒエラルキーは確実に存在し、発言権は上位者にのみ与えられ、一部上位者は権力という名のもとに圧倒的制圧力を持ち、それは同調圧力を持って民主を物言わぬ群衆に仕立て上げてしまう。そして30人からの生徒に対しひとりの先生。その先生とは社会経験の乏しい大人と呼ぶには余りにも幼いものであることが多い。ここまでだいぶ偏見にまみれた意見であるが、要はかなり、危い、かなり危険だということが言いたい。23分間の奇跡を読んだ時に感じた恐怖。今回はこの本の小学生達のストーリーを読むことで、あぁ小学生って、こんな感じだよなぁって懐かしむように読みながら、終始登場人物達にイライラし、子供の残酷さ、幼児性と大人の想像力の欠如に黒いものを感じた。子供達は皆、成長過程だ。歳を重ねることで他者を思いやる心、寄り添い、救いたいと思う心を養っていくのが常だろう。改めて小学校教育。ここがいかに大事であるか、自分の子供はもう、そこへ行くこともないが次の世代の為に自分も考えたい。当時何も感じず、考えることが出来なかった分。
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「その先生とは社会経験の乏しい大人と呼ぶには余りにも幼いものであることが多い。」という感想に同感です。
教師という職業に就くには大人としての...「その先生とは社会経験の乏しい大人と呼ぶには余りにも幼いものであることが多い。」という感想に同感です。
教師という職業に就くには大人としての社会経験が不可欠だと常々思っています。
大学を卒業後何らかの社会経験を経てからでなければ採用してはいけないということにならないかなあ。
とは言え最近の教職の現場のブラックさは相当なものらしいのでそちらの問題もあり教師になってくれるというだけでもありがたいってところもある。
そしてもしかしたら大学を卒業してすぐに社会の汚れを身につけないうちに純真な気持ちで教師となることこそ望ましいのかなあ?
ジレンマ!2023/08/01 -
moboyokohamaさま
貴重なご意見コメントありがとうございます。本当に先生達の中にも素晴らしい方はいて、大変な環境で日々奮闘されてい...moboyokohamaさま
貴重なご意見コメントありがとうございます。本当に先生達の中にも素晴らしい方はいて、大変な環境で日々奮闘されていると思います。どこの職場にも、問題のある人はいますから。先生達も職場内の同調圧力は必ずあり、問題は現状の教育制度や体制の方に大きな闇があると思ってます。
私がどうしても許せないのが、いじめです。本当に本当に許せない行為です。…もし誰かひとりでも寄り添ってくれる人がいたら、誰かひとりでも味方をしてくれる人がいたら、それだけで恐らく救われる命があると思います。自分より下と思える存在を作りたいと思うのが人間の性であることはわかります。ただ、いじめが周りで起きていて本当に自分も心からいじめたい!なんて人ほとんどいないと思います。群衆心理だと思います。言いたいけど…言えない。言うと自分が標的になる。そんな事がほとんどだと。いじめを無くそうとするよりも、ヒーローを生み出す教育。そこを家庭と教育の現場で一緒に作っていくことが大事だと思います。2023/08/01
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よくいる普通の子供達の日常を、妙にリアルな心理描写と共に描く作品。
この作品の登場人物である小学生達が、本当に普通の子達であるが故に、自分の子供時代にいた周りの友人達に自然と重なっていってしまうのが逆に怖い。
全編を通して、子供の持つ無垢な純粋さと残酷さに癒されたり苦しめられたりするせいか、何枚かページを繰るたびに、少し考えてこんでしまうという事が多々あった。
どんな人にも事情がある。
その人の立場になって物事を考えてみよう。
言葉にすると簡単なことでも、子供に理解してもらうのは実際かなり難しい。
ただこの作品を子供に読んでもらえたら、親の言葉とは全く違う種類のインパクトを与えられそうな気がする。
素晴らしい作品だと感じた。 -
家庭科の授業で、調理実習中にいたずらで洗剤を混入したり、先生を揶揄ったりと学級崩壊寸前の6年3組。そのクラスの生徒たちは、それぞれ同級生のことや進路のことなど様々な悩みを抱えている。自分の心地よい居場所を求めて、どのように過ごし、どのように切り抜けていくのか?
2020年の中学入試問題に取り上げられたということで、興味本位で読んでみました。
小学6年生というと、小学校の中では大先輩。子供ならではの心の余裕が盛んにある時期。
その反面、クラス同士での立ち位置は様々で、色々な心情があると思います。
同じクラス内の小学生四人の視点で進行する連作短編集です。それぞれが抱える同級生同士の友情や苦悩、ジレンマといったものが描かれていて、自分が小学生だった頃の光景が色々思い出されました。
小学生と同じ年代の人が読むと、共感するところがあるのではと思いました。
大人が読むと、あの頃の心情といったものが思い浮かぶのではないかと思いました。
大人から見た6年3組は、小学生としては度が過ぎる光景で、先生は大変そうだなと感じてしまいました。先生の視点はありませんが、裏側では生徒をどのように指導していくのか苦労が絶えなかったのではと大人目線で読んでいました。
そう思うと、当時の先生方には申し訳なかったなと感じてしまいました。
子供時代は、その空間だけが世界だと思っていた時期。その限られた空間で、他人とどう過ごしていくのか?それぞれの生徒の心情が丁寧に描かれていました。
あの頃には戻りたくないなと思いましたし、この先世界はこんなに広いんだよと助言したくもなりました。
ちなみに入試問題に取り上げられたということで、2020年の開成中学では、第4章の部分が出題されました。
第4章では、女子同士の友達関係といった心情が描かれています。それを男子受験生が解くということで、女心がわかっているのか試されていると考えると、興味深いです。
海城中学では、第2章の部分が出題されました。こちらも男子受験生が、女子の心情を読み解くということで、どんな回答があったのか興味深いです。 -
受験戦争にもまれる小学生の心理や、小学校高学年にありがちなヒエラルキーをよくぞここまで言語化したなと思えた作品。特別編でのほのか目線の内容が一番堪えた。ヤングケアラーの象徴的なことが沢山盛り込まれた中に、武市との折り紙探検隊での光刺す時間との対比が、涙無しでは読めませんでした。
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一言で言うと、「生々しい」!!
小学6年生の小さな世界が、リアリティたっぷりに大きく描かれていました。同じ小学6年生の娘がいますが、彼女から見えている世界はどんなものだろう?と考えるきっかけになりました。
決してハッピーエンドというわけではなく読後の清涼感はないものの、最後に大人になった彼らのその後が少しでも書かれていたことがありがたかったです。 -
教室というせまーい空間に閉じ込められて1日過ごす。
何十人もいれば何十通りの人間、考え方、性格がある。教室の中の違うグループから物語が進められており、それぞれの思いが痛いほどわかった。
みんなが小学校卒業したあとどんな道を歩んでいったのか、続編もあるなら見てみたいと強く思った。 -
「女子、怖ええ」っていうのが最初の感想。いつもながら、するどすぎる観察眼で、朝比奈さんも実際こういう小学校生活を送っていたんだろうなあと思わせる。「こんなものは、全部通り過ぎる」というのは彼女自身が思っていたことなんじゃないかなあと思ってしまうほど、リアルだった。かなり息苦しいストーリーではあるが、一つ一つの短編のラストに、この事態を解決してくれそうな希望が垣間見えて、人としての可能性を信じたい気持ちにさせる。まさにエピローグにつけられた、彼女の達の一人が先生になった時に、「みんなを知りたい」と言わせているのが、あすかさんの気持ちなんだろうと思う。同じ気持ちにさせられたのは、あすかさんの作品の力だなあ。
だけど、僕が小学生の時、周りの子がこんなふうに考えていて動いていた気は全然しなかった。やっぱりメンツが違うと雰囲気も違ってくるのだと思う。
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気になって、開成の入試問題をチェックしてみた。
このクラスの女王カナが、クラスの男子(小磯)が好きだと仲間に話していたタイミングで、その男子がグループのメンバーの女子マヤマヤに告白していた。
それを聞いた主人公は、「マヤマヤ終わったな」と思っていたのだが、意外なことに女王カナはマヤマヤを許し、その男子を馬鹿にするだけだった。
開成の問題は「なぜカナはマヤマヤを攻撃しなかったのか」を説明させる。
こういう女子の心理の機微を理解できたものだけが、開成に合格できる! というのはなんだかすごいと思った。これを小学生だった頃の僕が理解できるとは到底思えない。こんなことを小学校6年の男子に期待する開成もすごい。
各社の模範解答を見てみたが、四谷大塚のはなかなか説得力を感じた。
「小磯をけなせば自分の告白は冗談となり、振られた事実はなくなるし、馬鹿な小磯に好かれたまやまやのプライドを傷つけて、小磯の心をうばった腹いせもできるから」 そうね。そうだったかもしれないね。ただこの本最後まで読むと、カナが意外に仲間思いがあるところも見えてくるので、「まやまやは仲間だと信じていたから直接攻撃はせず、自分の告白の件が恥ずかしかったから、なかったことにしようとした」ということなのかもしれないとも思えるけど。 -
娘の夏休みの読書感想文用に。
その前に私が気になっていて読んでみました。
大人が分かっているようで分からない子供の世界をこっそり覗いているような気分になりました。その単純なようで複雑な、幼稚なようで残酷な、私も昔々に少なからず感じてきたザワザワを見せられているようでドキドキしました。そこに登場する親や先生という様々な大人の存在もまた、今の自分を照らし出されているようで落ち着かない気持ちに。手助けすべき場面、口を出す場面とそれをグッと堪えなきゃいけない場面の判断は常に難しい。
子供にとっての学校という場所はとても限られた小さいコミュニティだけど、子供たちにとってはそこが全てになりがち。
その中で幼いながらもどうやって折り合いをつけていくのか、今まさに娘がそういう時期を過ごしているからこそ、余計に人ごとには思えず。
この本の中の誰が正しいのか正解はないと思うけれど、誰に共感して何を感じるか、娘にもしっかりと読んでたくさん考えて欲しい物語りでした。
著者プロフィール
朝比奈あすかの作品






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