- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041111529
作品紹介・あらすじ
「文ちん、やれるよな?」人気者とつるむようになってから、文也は自分がクラスの中心にいるような気分がする。担任の幾田先生は地味で怖くないし、友達と認定してくれるみんなと一緒にいるのが一番大切だ。ある日、クラスを崩壊させる大事件に関わってしまうまでは――。(「みんなといたいみんな」)
今の自分は仮の姿だ。六年生の杏美は、おとなしい友人の間で息をひそめて学級崩壊したクラスをやりすごし、私立中学に進学する日を心待ちにしている。宿題を写したいときだけ都合よく話しかけてくる”女王”香奈枝のことも諦めているが、彼女と親友同士だった幼い記憶がよみがえり……。(「こんなものは、全部通り過ぎる」)
学校も家庭も、子どもは生きる世界を選べない。胸が苦しくなるような葛藤と、その先にある光とは。
2020年、難関中学校の入試問題に数多く取り上げられた話題作に、文庫でしか読めない特別篇「仄かな一歩」を加えた決定版!
感想・レビュー・書評
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受験シーズン到来ですね。受験生の皆さんに「桜咲く」の吉報が届くよう祈念いたします!
本作は、2019年に刊行されると、多数の難関中学入試の国語問題として出題され、話題となったそう‥‥。小・中学生に限らず、若い方やその親御さん世代の方にも読んでいただきたい一冊です。
6年3組が舞台で各章が独立し、主人公(4人)が変わります。いずれもクラスで中心的な存在ではなく、その周辺の子たちです。それぞれが、自分の居場所・立ち位置に悩む展開が主軸となっています。
同調や群れる安心感、悩み、大人への態度や反感等、微妙な心情がリアルに描かれています。
共感や反感をもちながら、決して楽しい読書ではなくても、人間関係について自分の考えを深められる気がします。
子どもの繊細で複雑な心情は、大人でも理解や判断・対応が難しいのに、子どもたち自身は本作をどう考えるんでしょうか? 入試問題の出題意図は不明ですが、異性や立場の異なる人の気持ちを考えられる人に、という願いがあるんでしょうかね。
クラスで疎外されている子が2人います。彼らは「空気を読めない」のではなく「空気を読まない」数少ない子たちでした。恵まれない家庭環境でも、優しく感受性のあるこの2人の存在が、救いであり希望と思えました。特別篇にもよく表れています。
エピローグでは、教師となった子が当時を客観視し、今の心境と決意を語っています。これも物語へ深みを与え、希望につながっている気がしました。
人との関わりで大切なことを考えさせ、気付かせてくれる物語でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まさかの絵本だと思ってたら小説だった初めてのパターン。
物凄い胸くそ悪くて胸が痛いと思いつつ、読み始めたら気になって読んでしまった。
エピローグで私の胸くその悪さも少し救われたかな。
学校生活で生じるあのヒエラルキーってなんなんだろうね?
派手で目立って思ったことを口に出してしまえばこっちの勝ちみたいな。
それを持ち上げる取り巻きも。
ってこれ子どもの世界だけじゃないね。
大人がそうだから子供も真似するんだ。
私そういうのが嫌いで面倒だから一匹狼でいるんだ。
何かあれば学校のせい、教育委員会に訴えます、自分の子どもは悪いことしません、みたいなの、本当嫌になる。
悪いことを悪いと教えないで育てたら誰が困るって、子どもだよ。
しかし、読み終わってよかった。
あのまま読み続けてたら具合悪くなってたかも。
でもさ、星の数は低くできないなって思わせる本だった。
あー、疲れた。違う本読も。 -
ブルーハーツの甲本ヒロト氏が言っていた。小学校なんて、たまたま同じ地域の同じ年のものが集められ、「ハイっ!皆んな仲良く友達でいましょうね!」って先生と呼ばれる大人から言われているだけで、例えるなら、たまたま同じ電車の同じ車両に乗り合わせただけの人達。そんな価値観も好きなものも違う集団の中で友達になりましょうって…友達なんかじゃないよって。ただ同じ目的地まで、向かう他人同士が集団で争わず、迷惑をかけず、ルールの中で生きる練習。それが学校、特に小学校なんじゃないかなと。当時は全く、そんなこと思わずに、感じず、だって、あそこは子供だった私の世界のほぼ全てだったから。
皆、小学校という所には特別な何かがあるように思う。ヒエラルキーは確実に存在し、発言権は上位者にのみ与えられ、一部上位者は権力という名のもとに圧倒的制圧力を持ち、それは同調圧力を持って民主を物言わぬ群衆に仕立て上げてしまう。そして30人からの生徒に対しひとりの先生。その先生とは社会経験の乏しい大人と呼ぶには余りにも幼いものであることが多い。ここまでだいぶ偏見にまみれた意見であるが、要はかなり、危い、かなり危険だということが言いたい。23分間の奇跡を読んだ時に感じた恐怖。今回はこの本の小学生達のストーリーを読むことで、あぁ小学生って、こんな感じだよなぁって懐かしむように読みながら、終始登場人物達にイライラし、子供の残酷さ、幼児性と大人の想像力の欠如に黒いものを感じた。子供達は皆、成長過程だ。歳を重ねることで他者を思いやる心、寄り添い、救いたいと思う心を養っていくのが常だろう。改めて小学校教育。ここがいかに大事であるか、自分の子供はもう、そこへ行くこともないが次の世代の為に自分も考えたい。当時何も感じず、考えることが出来なかった分。
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「その先生とは社会経験の乏しい大人と呼ぶには余りにも幼いものであることが多い。」という感想に同感です。
教師という職業に就くには大人としての...「その先生とは社会経験の乏しい大人と呼ぶには余りにも幼いものであることが多い。」という感想に同感です。
教師という職業に就くには大人としての社会経験が不可欠だと常々思っています。
大学を卒業後何らかの社会経験を経てからでなければ採用してはいけないということにならないかなあ。
とは言え最近の教職の現場のブラックさは相当なものらしいのでそちらの問題もあり教師になってくれるというだけでもありがたいってところもある。
そしてもしかしたら大学を卒業してすぐに社会の汚れを身につけないうちに純真な気持ちで教師となることこそ望ましいのかなあ?
ジレンマ!2023/08/01 -
moboyokohamaさま
貴重なご意見コメントありがとうございます。本当に先生達の中にも素晴らしい方はいて、大変な環境で日々奮闘されてい...moboyokohamaさま
貴重なご意見コメントありがとうございます。本当に先生達の中にも素晴らしい方はいて、大変な環境で日々奮闘されていると思います。どこの職場にも、問題のある人はいますから。先生達も職場内の同調圧力は必ずあり、問題は現状の教育制度や体制の方に大きな闇があると思ってます。
私がどうしても許せないのが、いじめです。本当に本当に許せない行為です。…もし誰かひとりでも寄り添ってくれる人がいたら、誰かひとりでも味方をしてくれる人がいたら、それだけで恐らく救われる命があると思います。自分より下と思える存在を作りたいと思うのが人間の性であることはわかります。ただ、いじめが周りで起きていて本当に自分も心からいじめたい!なんて人ほとんどいないと思います。群衆心理だと思います。言いたいけど…言えない。言うと自分が標的になる。そんな事がほとんどだと。いじめを無くそうとするよりも、ヒーローを生み出す教育。そこを家庭と教育の現場で一緒に作っていくことが大事だと思います。2023/08/01
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けっこう重めな読了感。
とってもリアルな感じで本当の教室の様子を覗いているよう。
同じ年に産まれ、同じ地域に住んでるだけの子ども達が教室という空間に入れられ1日の大半を過ごす。大人になれば、そんな世界は珍しくいくらでも逃げられるのだけれど、子ども達はそうはいかないところがツラい。二章に出てくる杏美のように『こんなものは、全部通り過ぎる』と思い過ごしてくのが良いのか。。。
でも、大人になっても色んな性格の人に出会うし、合う合わない関係なしに人付き合いとして会わなくてはいけない場面もある。
気を付けたいのは、その人にはその人なりの背景があり成り立っているのだということ。
自分だけの価値観で決めつけてはいけない。
親目線で読んでいたが、私も気を付けないとなと改めて感じた。 -
よくいる子供達の日常を、妙にリアルな心理描写と共に描く作品。
この作品に登場する小学生達が普通の子達であるが故に、自分の子供時代にいた周りの友人達に自然と重なっていってしまうのが逆に怖い。
全編を通して子供の持つ無垢な純粋さと残酷さに癒されたり苦しめられたりするせいか、何枚かページを繰るたびに、いちいち考えてこんでしまっていた。
どんな人にも事情がある。
その人の立場になって物事を考えてみよう。
言葉にするのは簡単でも、子供に理解してもらうのは実際かなり難しい。
ただこの作品を子供に読んでもらえたら、親の言葉とは全く違う種類のインパクトを与えられそうな気がする。 -
家庭科の授業で、調理実習中にいたずらで洗剤を混入したり、先生を揶揄ったりと学級崩壊寸前の6年3組。そのクラスの生徒たちは、それぞれ同級生のことや進路のことなど様々な悩みを抱えている。自分の心地よい居場所を求めて、どのように過ごし、どのように切り抜けていくのか?
2020年の中学入試問題に取り上げられたということで、興味本位で読んでみました。
小学6年生というと、小学校の中では大先輩。子供ならではの心の余裕が盛んにある時期。
その反面、クラス同士での立ち位置は様々で、色々な心情があると思います。
同じクラス内の小学生四人の視点で進行する連作短編集です。それぞれが抱える同級生同士の友情や苦悩、ジレンマといったものが描かれていて、自分が小学生だった頃の光景が色々思い出されました。
小学生と同じ年代の人が読むと、共感するところがあるのではと思いました。
大人が読むと、あの頃の心情といったものが思い浮かぶのではないかと思いました。
大人から見た6年3組は、小学生としては度が過ぎる光景で、先生は大変そうだなと感じてしまいました。先生の視点はありませんが、裏側では生徒をどのように指導していくのか苦労が絶えなかったのではと大人目線で読んでいました。
そう思うと、当時の先生方には申し訳なかったなと感じてしまいました。
子供時代は、その空間だけが世界だと思っていた時期。その限られた空間で、他人とどう過ごしていくのか?それぞれの生徒の心情が丁寧に描かれていました。
あの頃には戻りたくないなと思いましたし、この先世界はこんなに広いんだよと助言したくもなりました。
ちなみに入試問題に取り上げられたということで、2020年の開成中学では、第4章の部分が出題されました。
第4章では、女子同士の友達関係といった心情が描かれています。それを男子受験生が解くということで、女心がわかっているのか試されていると考えると、興味深いです。
海城中学では、第2章の部分が出題されました。こちらも男子受験生が、女子の心情を読み解くということで、どんな回答があったのか興味深いです。
著者プロフィール
朝比奈あすかの作品





