- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041111642
作品紹介・あらすじ
別々の人生を歩み、10年ぶりに再会したアサヒとユウヒの兄弟。ふたりはある目的のため、狂言誘拐を実行に移す。その犯罪は成功したかに見えたが、思いもよらない結末を迎えることになった。
それから8年後、神倉駅前交番の警察官・狩野雷太は、マンションの一室で衰弱した男児を保護する。男児の傍らには、餓死した妹の亡骸があった。神奈川県警捜査一課の烏丸靖子は兄妹の母親を取り調べるが、彼女がかつて誘拐事件に巻き込まれていたことがわかり、状況は一変する。悲劇的な事件の裏に横たわる、さらなる衝撃とは――。
感想・レビュー・書評
-
20歳の大学生アサヒは8年前まで兄と弟として父と三人で車上生活をしていた弟のユウヒと東京で偶然の再会をします。
父を亡くして小塚家の養子となった旭と児童養護施設<ハレ>で暮らしていた正近雄飛。
ユウヒはアサヒに<ハレ>を存続させるためにお金が必要だから松葉美織という15歳の政治家の娘を狂言誘拐するのを手伝ってくれないかともちかけられアサヒは自分の分け前はいらないからと言い、誘拐当日のスパイとして松葉家の選挙事務所にボランティアとして入り込みます。
狂言誘拐は成功します。しかし、その日アサヒがユウヒのアパートを訪ねると、腹を包丁で刺され血を流して倒れているユウヒを発見します。「料理中に転んだ」と言うユウヒをアサヒは病院に連れていきます。
そして、第二部はその8年後。
二人の子どもをアパートに残し置き去りにした母親、吉岡みずき23歳が逮捕されます。兄の夕夜7歳は生き残りましたが、妹の真昼5歳は餓死による死亡。
そして、吉岡みずきは偽名であり、2011年に松岡家から誘拐された直後に失踪した松葉美織であることが警察の調べでわかります。
夕夜は児童養護施設<ホルン>に保護されます。
狂言誘拐の後、ユウヒを刺して逃げたのは美織なのか…。それならば何のために何を隠しているのか…。
警察は夕夜の証言と美織の古い知り合いから、正近雄飛という名前を探り出しますが、正近雄飛なる人物はどこにもいません。8年前怪我をした病院から逃げ出して行方不明です。
夕夜が「マサチカユウヒはヒーロー。苦しんでいる人を守って助けてくれる。おれのパパ」と言っているのが泣かせます。
優しいがゆえに犯罪を起こしたユウヒそして、兄のアサヒ。
二人がどうか罪に問われないようにと願いながら読了しました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
偽りの春の続編。
サラッと読めるし、少しホロっと泣けます。
犯罪者と言えど、その過程は実は切ない過程があるのかも… -
2011年、アサヒとユウヒと美織が行った、狂言誘拐。
そして8年後、母親が何日も帰宅せず、放置された子どものひとりがなくなる事件が発生し……。
『偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理』の続編。
今回は長編で、捜査担当でメインの視点人物は、捜査一課の烏丸。
狩野たちのの出番は少なめだけれど、鬱陶しいほどの人懐っこさと、推理力は変わらず。
狩野たちが主体で、みっちゃんとのコンビもたのしめる短編集で、またさらなる活躍を読んでみたい。 -
第一部は、離れていた兄弟との出会いとそれまでの境遇。
単純に思われた狂言誘拐は…
それからこの兄弟は…
もやもや感が残ったまま、第ニ部へと
繋がりが感じられないまま、引き込まれてしまう展開に圧倒された。
真実を見抜く交番巡査である狩野に脱帽。
悲劇と衝撃の連続で、驚かされた。
家族の在り方を考えさせられる奥深い内容だった。
-
作者追っかけ。ホームレスとして窃盗を繰り返して来た父とアサヒとユウヒの兄弟。離れ離れになった家族は10年ぶりに再会し、良家の少女の狂言誘拐を目論む第一部。
ネグレクトで2人の子供を置き去りにし、妹を衰弱死されてしまった母親が逮捕される場面から始まる第二部。
家族の不幸の連鎖を真正面から描いた力作。重い話ながら、ミステリとしての意外性も十分。
作者はエラリークィーンや岡島二人のような連名作家。最近では珍しいですね。なお、シリーズものとして、前作に主要登場人物が出ているようですが、この本だけ読んで問題ないです。 -
とても真っ暗なお話。
なぜみんなこんな人生を歩んでしまったのか。
もっと幸せ、とはいかないまでも穏やかな生き方だってあった筈なのに。 -
近頃、ネグレクト、幼児虐待を扱った小説が非常に多くて読んでいて憂鬱な気持ちになります。世の中そういう人が増えたというより、昔は表面に現れていなかった問題が表面に出てきていると思っています。
これもネグレクトが二つ出てくるのですが、それが過去、現在で繋がっています。しかし連鎖では無いんですよね。絡み合っているという感じでしょうか。
血のつながらない兄弟が一人のクズ男と一緒に賽銭泥棒や万引きなどで糊口をしのいで
いるのですが、これも一般的にはネグレクトなんだけれど、三人が三人を気遣って生きているのがひしひしと感じられて胸が痛いです。
世間的にクズなのに子供への愛情は間違いなくある男、世間的には名士で金もあるのに愛情より世間体を取る親。色々な事を考えさせられますが、一番可哀そうなのは放置された子供。どう転んでも許されないからな。と新米おじいちゃんは憤りながら読みました。 -
重い…。境遇が…。
暴力の連鎖…辛い…。 -
相変わらず降田天氏達の物語は綺麗なんだけど、これに関してはもっとドロドロした所を描いて欲しかった。
関係性は解るんだけど、個人的なそれぞれの思考っていうか動機っていうか。
システム的には二部構成で良かったんだけど、様式美に行ってるのが何とも勿体無いな。