朝と夕の犯罪

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 642
感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041111642

感想・レビュー・書評

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  • アサヒとユウヒの狂言誘拐から始まる物語だけど、思ったよりも深すぎる話だった…。
    第一部と第二部で内容がガラリと変わるというか、児童養護施設を助けるための狂言誘拐が一転、育児放棄致死事件に発展。読み始めの印象よりもかなり重い作品でした。

  • 8年の時を経て浮かび上がる罪と秘密。
    重なるはずのなかった三本の線。兄弟と兄妹。いくつも走る亀裂。絡まり合い、そして途切れた糸。それをほぐしてつないだ一人の刑事。

    外から見るとそれは不幸しかない人生。「かわいそう」しか見えないけれど、そこに幸せのカケラはなかったのか。見つけたいと思いながら読む。どこかに光よあれ、と祈るように読む。

    狂言誘拐、ネグレクト。流れた血が隠そうとしたもの。許したのは誰。許されたかったのは誰。そして、許せなかったのは、誰。
    予想もしなかった罪と秘密。なぜ、という言葉がうつろに響く。

  • 重い…。境遇が…。
    暴力の連鎖…辛い…。

  • 狩野雷太はある意味主役

    一応「偽りの春」警察官狩野雷太シリーズの続編。

    今回はアサヒとユウヒという兄弟が主役で、
    過去の誘拐と現在のつながりをうまく描いていますね。
    ※アサヒとユウヒの名前が似てて混乱しました。

    狂言誘拐の真相が、残酷で悲しいんですが、
    事件の前振りが長いわりに、真相のインパクトが少し弱いかなという気がしました。

    しかし、そんな事件を解決に導く、
    影の立役者、狩野雷太の推理力がすごいです。
    あえて狩野雷太を主役ではなく、ちょっと絡んでくる形にすることで、
    ミステリアス感を演出していますね。

    実際、前作読んでない方は
    「この人急に出てきてなんなの?
    しかもあんま事件に関わってない感じなのに、
    推理力キレキレで気になるー」となると思います。

    狩野雷太は、まぁある意味主役といっていいでしょう。

    降田天先生のそういった読ませ方、(私が勝手に思ってるだけ)
    と読後のなんとも言えない切なさが、いつもどおり表現されていて良かったです。

  • 狩野雷太の続編。
    父親と窃盗を繰り返しながら車上暮らしをしていたアサヒとユウヒ。血の繋がりはないが兄弟みたいな2人。生き別れになった2人が再会をし、狂言誘拐をする第1部。
    それから8年後。幼い兄弟が自宅に置き去りにされ、妹が亡くなる虐待事件が起こる。
    関係なさそうな二つの事件と徐々に関係性がみえてくるアサヒとユウヒ。
    形を変えた虐待の連鎖。戸籍のない子供たち。
    最後に希望はあるものの、それを上回るやり切れなさと切なさでズシーンとくる読後感。

  • 狩野雷太シリーズ2作目。今回は長編で、シリーズと言いながら狩野雷太は重要な脇役に回っている。狩野雷太でなくても物語は成立する役どころながら、前作を読んでいるとキャラクターに厚みが出る。独立した長編ながらシリーズとして成立しているところが上手い。

    狩野雷太の扱いだけでなく、長編ミステリーとしても秀逸。車上暮らしの父と兄弟、狂言誘拐事件、ネグレクトによる用事餓死事件。数年を経て起こるこれらの出来事がどういう風につながっていくのか?

    物語前半で犯人も動機も手法もすべて分かったはずの狂言誘拐事件、その奥底に潜んだ真相の解き明かされ方。シブいミステリーを読んだなぁって思いとともに、貧困化する日本の根底には、子供を産み育てられない社会環境があるんだなと痛感する。

  • 凄まじかった。

    『偽りの春』に続く狩野雷太シリーズ第二弾は虐待をテーマにした二部構成の長編小説。

    一部ではアサヒとユウヒの兄弟が実行した狂言誘拐が描かれる。
    それから8年後、とあるマンションの一室で衰弱した男児が発見された第二部から物語は大きく動いていく。

    児童虐待、養護施設内の陰湿ないじめ、壮絶な場面に何度も目を背けたくなる。

    短絡的とも思えた狂言誘拐の裏に隠されていた真実に衝撃を受け、更にそれまで信じていた事柄も次々と反転していき、その度に驚きと切なさで胸が詰まる。

    罪のない子らの慟哭が聴こえて来るような一冊だ。

  • さすがの伏線回収。
    読みやすい。児童向け?

  • 狩野雷太シリーズ第二弾

    今回の狩野は主人公というより名探偵役という感じでした。
    二部構成で第一部は狂言誘拐のクライムサスペンス、
    第二部は8年後の保護責任者遺棄致死事件から始まり過去の事件、関係者たちの生い立ちなど、
    狩野の手で全貌が暴かれ、非情ながらも自分たちの罪や負のスパイラルを直視させたところまでは、
    前作同様、すっきりするところではありましたが、登場人物たちの過去が可哀そうすぎたので、
    判決結果はホッとしました。
    無戸籍幼児や家庭内DV、貧困なシングルファザーやシングルマザーなど社会的問題も盛り込んでいて、
    硬派な社会派ミステリーという感じでしたが、狩野の存在が物語性を際立たせていて、読者に悲壮感を引きずらせないようにしていると思います。
    ただ、このシリーズって続くのかな?

  • あらすじ 
     第一部と第二部に分かれている。
     第一部は過去編。2011年、アサヒは生き別れた弟ユウヒと出会う。二人はアサヒが小学5年生になるまで父親と3人で車中暮らしをしていた。もちろん学校にも通っていなかった。父親が亡くなったため、アサヒは離婚した妻に引き取られた。妻の夫は歯科医で暮らしに困らなかった。弟の方はそのまま施設に引き取られ、養子になっていたが生活は苦しそうだ。ただ弟の方はそのまま施設でも働いているらしい。弟から持ち込まれたのは偽装誘拐の手伝い。図書館で出会った政治家の娘から頼まれたのだ。アサヒは父親が亡くなったのが、自分のせいだと思っている為断れずに引き受ける。政治家松葉の選挙事務所のスタッフとして入り込み、身代金の受け渡し係になった。誘拐は無事成功したがその夜弟は何者かに刺される。命は取り留めた。
     第2部、別の作品でも出てきた警察官狩野が出てきている。ネグレクト状態の幼い兄と、亡くなった妹を見つける。兄は7歳だという。母親はあっさりと発見・逮捕されたが、彼女が8年前に行方不明なっていた政治家松葉の娘美織だと分かる。捜査一課の烏丸・西が事件を捜査する。アサヒは家を出て出版社に勤めていた。またユウヒはすぐにアサヒとの繋がりが分かるが行方が知れない。
     一方、引き取られた幼い兄ユウヤは養護施設で情緒不安定のためトラブルを起こしがちだ。また、政治家松葉の家では突然母親が美織の兄を殺害するという事件が起きた。
     結末・・・美織が偽装誘拐までしたのは、家を出るためと、兄からの虐待から逃げるため。兄には甲殻類アレルギーがあり、それを利用して兄の殺害も目論んでいた。しかしユウヒがアサヒに人殺しの手伝いをさせることを嫌がり、勝手に計画を変えたためトラブルとなって刺してしまった。その後美織は逃亡生活を送りながらユウヤを育てていたのだった。 また行方不明になっていたユウヒは、児童福祉司の立川真司。立川はアサヒと父の本当の家族ではない。元々問題のあった家庭から、父親が連れてきて、一緒に暮らすことになったのだった。だから戸籍はその実家の家にあったまま。立川その戸籍を使って新しい身分を手に入れたのだった。整形もして。
     
     感想・・・全体的に切ない・やるせない話だったけれども、読後感としてはそんなに悪いものではなかった。 おそらくアサヒもユウヒも辛い環境にありながら、相手のことを思いやる部分が大きかったからだと思う。この兄弟の幼い頃の記憶にしても、もっと暗いものにできたと思う。その方向にいかず、しっかりミステリーに仕立てることでストーリーの展開も楽しめることになっていた。それにやはり狩野の存在が大きいかな。飄々としたキャラクターが作品を少し軽くさせているのじゃないかなと思う。今回は女性刑事烏丸もいい味だしてた。ザクザク仕事できる感じで。狩野が一課に戻ってくる作品が出てほしい。

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著者プロフィール

(ふるた・てん)プロット担当の萩野瑛(はぎの・えい)と執筆担当の鮎川颯(あゆかわ・そう)による作家ユニット。少女小説作家として活躍後、「女王はかえらない」で第13回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、同名義でのデビューを果たす。「小説 野性時代」掲載の「偽りの春」で第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。同作を収録した短編集『偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理』を2019年に刊行した。他の著書に『匿名交叉』(文庫化に際して『彼女は戻らない』に改題)『すみれ屋敷の罪人』がある。

「2021年 『朝と夕の犯罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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