最後の鑑定人

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041111673

作品紹介・あらすじ

「科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です」
「最後の鑑定人」と呼ばれ、科捜研のエースとして「彼に鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない」と言わしめた男・土門誠。ある事件をきっかけに科捜研を辞めた土門は、民間の鑑定所を開設する。無駄を嫌い、余計な話は一切しないという奇人ながら、その群を抜いた能力により持ち込まれる不可解な事件を科学の力で解決していく。孤高の鑑定人・土門誠の事件簿。
『永遠についての証明』『水よ踊れ』で業界の注目を集める新鋭が正面から挑む、サイエンス×ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 民間の鑑定人の土門の鑑定に基づく推理が凄い。どんでん返し起こしたりや迷宮入りを解決したりするのだが、あくまで科学が証明することがすべてと言い切る。そうだよなあ、綿密で正確な鑑定があってのことなのだから。無表情で感情を表さないのだが、助手の高倉や関わる弁護士、刑事がその土門の姿を描き出していくのが面白い。そして、彼らも土門によって変わっていく。最後に真犯人の吐露があるのだが、なかなかこれで露にされる真相がざらざらとしていて、読む者にとってはきついよなあ。全体として暗いよ。いやどす黒いか。

  • 面白い!!!
    すっかり土門ファンです(〃ω〃)


    ブクログのおかげで少しずつ読み進めてる岩井圭也さん。ありがとうございます(^^)

    岩井さんはいろんなテーマの作品を描けるのが本当にすごい!!!引き出しの多さに驚かされます。
    こちらは岩井さんの中でも特に読みやすい作品だと思います(´∀`)


    今回は最後の鑑定人と呼ばれた民間の鑑定士の物語。彼に鑑定できなければ、誰も鑑定できないとまで言われた実力の持ち主。ただかなりクセのある人物なのです。それが面白いんですよね〜


    視点が変わりながら4編の短編で土門について語られています。


    ◯遺された痕
    元恋人の殺人の容疑で逮捕された男はずっと容疑を否認し続けている。証拠は揃っているが、、、

    ◯愚者の炎
    外国人労働者の寮代わりとなっていた建物での放火事件。その真相は、、、

    ◯死者に訊け
    海から引き上げられた白骨化した遺体と大量の宝飾品。事件からは十二年が経っている、、、

    ◯風化した夜
    土門が科捜研を離れたきっかけとなる事件


    鑑定から事件を紐解いていくストーリーが面白く、専門的な鑑定内容はわからないものの、いろんな鑑定方法があることを知りました。どれも非常に興味深く、いつもとは違った角度で事件を見られるのが面白かったです


    明かされた謎自体は闇を抱えたものが多く暗い気持ちになりそうなものですが、なぜだかスッキリもする読みごごち。土門の人柄がそうさせるのでしょうか。


    『科学は嘘をつかない』

    その言葉は土門の自身のプレフェッショナルさの表れでもあり、信頼度を高め、土門ならやってくれるという気持ちになります。

    助手の高倉さんも好きです(*´-`)
    もっと他の事件も見たい!彼らを見たい!


    続編も手元にありますヽ(´ー`)
    順番通りに読めそうです♪
    楽しみですー(=^▽^)σ

    • かなさん
      どんぐりさん、こんばんは〜!
      土門さんにハマりましたか??
      「科捜研の砦」も続けて楽しんでくださいね(*^^*)
      きっと、もっと土門さ...
      どんぐりさん、こんばんは〜!
      土門さんにハマりましたか??
      「科捜研の砦」も続けて楽しんでくださいね(*^^*)
      きっと、もっと土門さん、好きになれますよっ♡
      2024/09/22
    • どんぐりさん
      ゆーきさん おはようございます♪

      まさに科捜研の変態(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾笑

      土門さんめっちゃ好きになりましたー!
      続編も楽...
      ゆーきさん おはようございます♪

      まさに科捜研の変態(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾笑

      土門さんめっちゃ好きになりましたー!
      続編も楽しみです(=^▽^)σ
      2024/09/23
    • どんぐりさん
      かなさん おはようございます♪

      すっかり土門さんファンです〜(//∇//)

      すごい魅力的な人ですよね!
      続編出るのもわかりますヽ(´ー`...
      かなさん おはようございます♪

      すっかり土門さんファンです〜(//∇//)

      すごい魅力的な人ですよね!
      続編出るのもわかりますヽ(´ー`)
      楽しみます!
      2024/09/23
  • 親子三世代で「科捜研の女」を観ています。
    いや、私は観ていません。子どもが小さい頃、母に預ってもらったりすると「科捜研の女」やら「相棒」やらを一緒にテレビで観ていたようで、その中でダントツに子どもがハマったのが「科捜研の女」でした(^_^;)
    大きくなっても今だに大好きで観ています。なので横目で見ている私も沢口靖子演じる科捜研の女・榊マリコの仲良しの刑事が、内藤剛志演じる土門さん、ということは知っています。
    ‥‥この物語の主人公、元科捜研の土門‥‥って、ややこしいわ(>_<)土門は刑事の方だろ!と、まずツッコミを入れておきます٩( ᐛ )و
    「科学は嘘をつきません」っていう決め台詞も同じだしね٩( ᐛ )و

    さて、この物語の主人公の土門は誰もが認める科学鑑定のエキスパート。
    感情を表に出さず、淡々と仕事をして、迷宮入りだった事件を解決していく。
    あまりにも完璧すぎる仕事っぷりの背景にある土門の信条が分かった時に、あ、人間臭いところもあるんだ、とちょっと好きになれました。
    続編ではもっと好きになれることを期待(*´∇`*)

    • こっとんさん
      思いつかないのかーい(๑•ૅㅁ•๑)
      思いつかないのかーい(๑•ૅㅁ•๑)
      2024/09/07
    • かなさん
      続編では、もっと好きになれますっ♡
      楽しんでくださいね!
      続編では、もっと好きになれますっ♡
      楽しんでくださいね!
      2024/09/08
    • こっとんさん
      かなさん、おはようございます♪
      今、続編読んでます。
      あの堅物土門にこんな過去が!
      だいぶ好きになってまーす♡
      かなさん、おはようございます♪
      今、続編読んでます。
      あの堅物土門にこんな過去が!
      だいぶ好きになってまーす♡
      2024/09/08
  • 地味にかっこいい元科捜研のエース土門さん、民間の鑑定所を立ち上げて依頼人のオーダーを解明していきます。
    技官の高倉の出す不味そうなハーブ水、オリジナルだとかどんな成分が入ってるのか鑑定して欲しいです。

    自分勝手な理由で殺人してしまった犯人たち、科学的根拠に基づいて証拠が挙げられていくなかどこまで採用されるのか知りませんが自白に追い込んでいく過程が面白かったです。

    それにしても岩井さんの幅広いジャンルに精通している知識はどこから湧いてくるの注目すべき作者ですね。

    • かなさん
      つくねさん、こんばんは!
      土門さん、いいですよねぇ(*´∀`*)
      高倉さんの出すハーブ水、
      私は飲んでみたいと思ったけど
      鑑定をお願...
      つくねさん、こんばんは!
      土門さん、いいですよねぇ(*´∀`*)
      高倉さんの出すハーブ水、
      私は飲んでみたいと思ったけど
      鑑定をお願いするってのは、
      つくねさんらしい視点ですね♪
      「科捜研の砦」も面白いんで、是非手にしてみてくださいね♡
      2024/11/04
    • つくねさん
      科捜研の砦は続編なんですね。
      是非借りて読んでみたいですっw
      科捜研の砦は続編なんですね。
      是非借りて読んでみたいですっw
      2024/11/04
  • 元科捜研のエース
    彼に鑑定できない証拠物なら他の誰にも鑑定できないー最後の鑑定人と呼ばれた土門
    科捜研辞職後、個人で民間鑑定所を開設
    その鑑定所に持ち込まれる難解な依頼の数々
    氏家京太郎氏のライバル現るといったところでしょうか

    「遺された痕」
    元彼女の殺人容疑をかけられた青年
    遺体に残されたDNAの鑑定の隙をついていく
    技術的にはなるほどって思いましたが
    真犯人には 無理があるかな

    「愚者の炎」
    外国人技術実習生による宿舎放火事件
    犯人となった実習生が本当に隠したかった事を
    鑑定で明らかにしていく

    「死人に訊け」
    海から引き上げられた車の中に盗品と白骨遺体
    犯人達は確定されていくけど
    言い訳がましく

    「風化した夜」
    亡くなった元刑事の女性の遺品鑑定が持ち込まれる
    彼女はある事件をきっかけに警察を辞職していた
    それは土門も関わって誤認逮捕となった殺人事件
    亡くなった女性の真意を鑑定する

    四編とも緻密な化学的鑑定で真犯人を追い詰める
    そして、どの事件も真犯人と動機が明らかになるとより苦しい
    科学は嘘をつかない
    嘘をつくのは人間
    嘘をついていた真犯人達

    • 1Q84O1さん
      ブクログ内で岩井さんがまた密かにブームなっている感じがします
      ブクログ内で岩井さんがまた密かにブームなっている感じがします
      2024/09/06
    • かなさん
      科捜研の砦も是非お楽しみくださいね!
      土門さんが好きです(*^^)v
      科捜研の砦も是非お楽しみくださいね!
      土門さんが好きです(*^^)v
      2024/09/06
    • おびのりさん
      かなさん、本とコさんが順番間違えたやつですね
      おかげ様で こちらを先に読めました笑
      かなさん、本とコさんが順番間違えたやつですね
      おかげ様で こちらを先に読めました笑
      2024/09/06
  •  刑事事件の証拠品やデータについて、科学的鑑定を行う民間鑑定所「土門鑑定所」の二人が大活躍します。4篇構成で、とっても面白いです。
     土門さんといえば、『科捜研の女の』の土門薫刑事ですが、こちらは元科捜研の土門誠先生、ややこしい。
     土門先生、科捜研をおやめになり、自ら鑑定所を開所。科捜研時代には、スーパーという意味で「最後の鑑定人」と呼ばれていたらしいです。

     「最後の鑑定人」の鑑定が、とても気になって読みました。今の仕事を引退したら、次の仕事は憧れのスタバの店員さんになりたかったのですが、もっと楽しそうなので土門鑑定所のバイトに憧れ対象をチェンジしました。まあ、キホン老害ですけど。

     土門さん、最後の鑑定人だけあって犯罪の鑑定に精通されていて、カバーする領域が広いです。
     登場人物の中には彼を、鑑定の「変態」と呼んでいた人もいました。どうやら鑑定大好きオジのよう。好きな鑑定の依頼を受けると、眼の奥がキラリ。

     土門鑑定所は土門先生と、技官の高倉さんの二人。この高倉さん、知的美人で心理系大学院修了、ポリグラフ検査で博士となっています。「科学」と「人が嘘をつくこと」に興味津々な人で、お客が来るとハーブ水をすすめる、クセ強めの人です。ハーブ水をすすめる理由は、本書でご確認くだい。

     という訳で、「科捜研」好きの方なら必読でしょう。ただ、各お話最後の犯人独白みたいなところは、ちょっと苦手でした。
     しかし、岩井圭也さん、面白そう。続けて読みたいです。

     以下、土門鑑定所でのバイトに備え、各お話の鑑定について、簡単にまとめておきます。

    『遺された痕』
    筆跡・文体鑑定、画像・歩容解析、DNA鑑定(科捜研データの検証)
    ・・・歩容解析などのソフトウエア解析は素晴らしいです。DNA鑑定、この事例は教科書の応用例みたいに感じます。もしそうなら、科捜研のひと、損な役回りでお気の毒です。

    『愚者の炎』
    ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、炭化深度測定及び解析、心理操作
    ・・・GC/MSは前処理が肝かな。予備実験なしで指示する土門さん、さすがです。
    意外でしたが、土門さんは見かけによらず心理的圧迫がお上手なようです。

    『死人に訊け』
    DNA鑑定、復顔(外部実施)、骨緻密質観察、FT・IRまたはSEM・EDS(外部実施)、土砂分析及びデータベースリサーチ
    ・・・科捜研のデータをみるだけでなく、検査方法の詳細をチェックする土門さん、最高ですね。DNA鑑定で科捜研が選択したDNA抽出方法「フェノール・クロロホルム法とプレップ法」とはあれかな?確かにちょと荒っぽいかも。生化学系は何でもキットですからね。
    このお話しが一番科捜研ぽいです。

    『風化した夜』
    筆圧痕レーザー顕微鏡解析、地理的プロファイリング、PCパスワード解除(専門外)
    ・・・筆圧痕は、えんぴつで薄く塗って読むんじゃないんだ!これじゃ、少年探偵団でしたね。

  •  前々から岩井圭也さんの作品をもっと読みたいと思っていたこともあって、この後に出された「科捜研の砦」とともに、図書館から借りることができました。

     科捜研で鑑定の経験があり、現在は個人で鑑定事務所を構える土門誠は「最後の鑑定人」と呼ばれていた。「科学は嘘をつかない、嘘をつくのはいつだって人間…」という信念のもと鑑定に向き合い、事件解決に導くというストーリーです。

     「遺された痕」:20代女性殺害事件の遺留試料等の鑑定
     「愚者の炎」:放火事件の燃料残渣の鑑定
     「死人に訊け」:事故死した身元不明の男性の複顔と遺された車両の鑑定
     「風化した夜」:科捜研を辞めるきっかけになった事件で自殺した捜査員の遺留物の鑑定

     4作の短編の内、「愚者の炎」はとっても切なかった…。放火の容疑で逮捕されたのは外国人技能実習生、『日本に来れば、すべてうまくいくはずでした。』の言葉が頭から離れません…。

     主人公の土門誠、長身ですらりとした体系、必要最低限の会話しかしないため人付き合いは苦手だけれど、鑑定の腕はピカイチ!!なんとも、カッコいいです♡そして技官としてサポートするのが、高倉柊子という大学院出の女性なんですが、嘘をつく人を観察するために特製のハーブ水を依頼人に提供するんです。このハーブ水、すごくまずいみたいなんだけれど、ちょっと飲んでみたいです。そんなお二人を含めて、依頼人や事件関係者に好感を持てる人物が結構多かったので、読みやすく感じました。「科捜研の砦」を読むのも楽しみです。

    • かなさん
      けよしさん、今日もお疲れ様です。
      こちらこそ、ありがとうございます(*´∀`*)

      高倉さんのハーブ水、
      ぜひぜひ飲ませてほしいです...
      けよしさん、今日もお疲れ様です。
      こちらこそ、ありがとうございます(*´∀`*)

      高倉さんのハーブ水、
      ぜひぜひ飲ませてほしいですね!
      どんな味なんだろう?色は??
      ハーブ水なんだから、透明に近いのかな??
      とか、色々想像しちゃいます!!
      で、何かお酒で割ったら行けるかもっ…とか^^;

      マズかったら、きっと隠しきれないでしょうねぇ…
      だって、高倉さんは見破る専門家ですしね!!
      バレない自信はなくとも、バレる自信はあります(*^▽^*)
      2024/08/07
    • 1Q84O1さん
      かなさん

      岩井さんはちょこちょこ読んでいきたいなあと思っています
      これはまだ未読です…
      けど、うちの図書館はあまり岩井さん置いてないんです...
      かなさん

      岩井さんはちょこちょこ読んでいきたいなあと思っています
      これはまだ未読です…
      けど、うちの図書館はあまり岩井さん置いてないんですよね…(-_-;)
      2024/08/07
    • かなさん
      1Q84O1さん、おはようございます。
      岩井圭也さん、1Q84O1さんの「楽園の犬」がきっかけで
      もっと読みたいなって思った作家さんです...
      1Q84O1さん、おはようございます。
      岩井圭也さん、1Q84O1さんの「楽園の犬」がきっかけで
      もっと読みたいなって思った作家さんです。
      こちらの図書館にも、置いてない作品もあるんですよね…
      でも、図書館にあって興味がわいた作品は読みますよっヽ(^o^)丿
      ちょっと並べたいと思ってます♪
      2024/08/08
  •  土門誠。事件に関わる物証を科学的に解析する鑑定のプロだ。かつては科捜研のエースだった土門だが、ある事件がきっかけで退職し、民間鑑定所を立ち上げ独立した。

     「彼に鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない」とまで言われた土門のもとには、現在でも鑑定困難な証拠物件が数多く持ち込まれる。

     これは「最後の鑑定人」の異名を持つ土門が解明した事件の記録である。
                ◇
     人間は嘘をつく生き物だ。
     若手弁護士の相田直樹は浅いキャリアであるにも関わらず、近頃その思いがますます強くなる一方だった。

     相田は現在、かつての交際相手の女性を殺害したとして起訴された北尾洋介の弁護を担当している。
     洋介は犯行を否認しているが、被害者の体内に残されていた体液のDNAが洋介のものと一致。状況は極めて不利である。

     一縷の望みがあるとすれば、防犯カメラに写っていた犯人の映像が不鮮明で、洋介であることを証明できないことぐらいだ。だがそれとて裏を返せば、洋介でないことの証明にもならないということになる。

     相田は先輩弁護士の勧めで土門鑑定所を訪ね、防犯カメラ映像の解析を頼むことにしたところ……。
         (第1話「遺された痕」) 全4話。

          * * * * *

     岩井圭也さんの作品は初読みでしたが、本作は骨太で読み応えがありました。
     何より主人公の土門誠という鑑定人の魅力によるところが大きかったと思います。

     長身で痩せ型。眼光は鋭く愛想笑いなどしない。
     無駄口は利かず、話すのは必要なことだけで、当然、人付き合い等は苦手で不器用。
     ただし、鑑定人としての見識とスキルは高く、他の追随を許さない。
     その実力と重厚な人柄で、多くの関係者の信頼を集めている。
     
     まったくシブくてかっこいい。ザ・プロフェッショナルの風格を感じます。
     実際、土門が行う緻密な鑑定によって、事実が次々と明らかになっていくところには圧倒されてしまいます。
     そんな土門のスタンスの根底にあるのは、「科学は嘘をつかない」という信念です。

     科捜研を退職する原因となった冤罪事件を教訓にして、その信念を強くした土門は「鑑定人なら、科学を裏切るような真似をしてはいけない」ということを常に念頭に置くようになりました。

     土門はそれ以来、ベストを尽くした鑑定をきちんと表に出し、科学に裏打ちされた分析結果に基づく見解を述べるのでした。
     たとえその結果が、組織的に見て、あるいは人情として、好もしくない事態を招いたとしても、土門の姿勢は変わりません。
     事実、第2話「愚者の炎」最終話「風化した夜」で土門が鑑定し解明したのは、このまま蓋をしておいてもよかったかも知れない事件の真相でした。

     土門鑑定所でただ1人の職員である高倉柊子は、「いかなる事件についても、解明した事実は表に出す」ということに疑問を呈しますが、土門の「事実を選別しない」という姿勢に圧倒されるとともに感銘も受けます。
     普段は朗らかでマイペースな柊子が、真剣に鑑定人としての自らの立ち位置について考えるシーンは印象的でした。

     事件に絡むすべての人の事情を斟酌して真相を明らかにするかどうかを判断するのは、神にしかできないことでしょう。
     1人の人間に過ぎない土門にとっての最善は、ただ粛々と鑑定作業に取り組み、忖度なしに真相を解明することであるのは間違いないと思いました。

  • 『科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です』

    〈科学捜査研究所〉を辞めて民間の鑑定所を立ち上げた土門誠。『最後の鑑定人』と呼ばれ、彼が『鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない。科捜研の最期の砦』とまで言われたほどの高い技術と鑑定眼を持つ男。

    四話収録されているのだが、第一話での印象は名探偵キャラにありがちな、気難しくて彼の興味を引く事件でないと引き受けないという設定。
    そんな彼が警察や科捜研が下した事実をどう覆すのか、あるいは警察や科捜研すら見つけられない新事実をどう見出すのかが作品の肝となる。

    専門用語には着いていけなかったが、物語としては興味深く読めた。
    第一話のDNAの話は確か横山秀夫さんの作品にも似たようなものがあったように記憶しているが、全く違う展開だった。
    一方でこの話の中で、土門が科捜研を辞めたことに何かしらの事情があることが示される。

    第二話では土門鑑定所の唯一の技官で助手で事務員の高倉の目線で描かれる。
    第一話同様、事件の真相は苦い。同情の余地はあるがだからといってどうすれば良かったのかは分からない。
    その苦さによるモヤモヤを口にする高倉に対し、「鑑定人なら、科学を裏切るような真似をしてはいけない』と断じるブレない土門が描かれる。

    そして第三話では、土門鑑定所と警察、科捜研ではなく科警研の三つ巴の捜査が描かれる。
    海底から引き揚げられた十二年前に沈んだ遺体。遺体の身元すら分からなかった捜査が、土門と科警研との競い合いで様々な手がかりが見つかっていく。
    そしてその手がかりを元に警察の捜査も加速していく。

    『科学は嘘をつかない』『私は鑑定結果を読み違えたことなどありません』と絶対の自信をもっている土門だが、一方で科学捜査にも様々な手法があり鑑定結果の解釈にも様々あることも分かる。
    ということは、どの手法を取るのか、どういう条件で鑑定するのか、そしてその結果をどう解釈するのかによって結果は違ってくるということではないかという疑問も湧く。

    そして最終話。いよいよ土門が科捜研を辞めたきっかけとなった冤罪事件の真相に土門自身が迫る。
    土門の下した鑑定結果が、捜査にどう影響を与えたのか。結果的になぜ冤罪事件は起きたのか。そしてその捜査を担当した警察官は何故亡くなったのか。

    第三話で土門のプライベートも少し明かされ、この第四話では彼の気難しいキャラ設定にも変化が出ている。それだけ彼にとってもこの事件は大きな影を落としていたということだろう。
    だが何よりも、ここまでの第三話で加害者の物語ばかりが描かれていたのだが、最終話では初めて被害者遺族の話が出てきた。

    様々な事情があって事件を起こしたのは分かるが、やはり一方的な印象が拭えずモヤモヤが残っていた。
    だが最終話に至って鑑定者、捜査員、加害者、被害者遺族という様々な視点から描かれていたのが良かった。

    加害者にとっては過去のことであっても被害者遺族にとっては『終わりなんてない』のだ。
    この事件と再度向き合った土門がどう変化するのか。また高倉の技官としての成長もみたい。
    続編を期待したい。

    初めて読む作家さんだったが、他の作品も読みたくなった。

  • 「土門に鑑定できないなら、他の誰にも鑑定できない。」だから、最後の鑑定人と呼ばれている土門。
    こういうTHE仕事人で、寡黙で少し影があり…というタイプの職人気質な人が、どうやら私は好きみたい。
    プライドを持って鑑定に挑む姿がいいし、仕事が早いわ!
    土門鑑定所で働きたくなってしまった。

    科学は嘘をつかないけど、人は嘘をつく。鑑定をもとに最後に捜査をするのは人だから、真実から遠のいてしまうこともあるのだな。

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著者プロフィール

いわい・けいや 小説家。1987年生まれ。北海道大学大学院農学院修了。2018年『永遠についての証明』で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞(KADOKAWAより刊行)。著書に『文身』(祥伝社)、『水よ踊れ』(新潮社)、『この夜が明ければ』(双葉社)などがある。

「2021年 『人と数学のあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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