五つの季節に探偵は

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感想 : 75
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  • 本 ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041111680

作品紹介・あらすじ

“人の本性を暴かずにはいられない”探偵が出会った、魅惑的な5つの謎。

高校二年生の榊原みどりは、同級生から「担任の弱みを握ってほしい」と依頼される。担任を尾行したみどりはやがて、隠された“人の本性”を見ることに喜びを覚え――。(「イミテーション・ガールズ」)
探偵事務所に就職したみどりは、旅先である女性から〈指揮者〉と〈ピアノ売り〉の逸話を聞かされる。そこに贖罪の意識を感じ取ったみどりは、彼女の話に含まれた秘密に気づいてしまい――。(「スケーターズ・ワルツ」第75回日本推理作家協会賞〈短編部門〉受賞作)

精緻なミステリ×重厚な人間ドラマ。じんわりほろ苦い、珠玉の連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 先日発売された『彼女が探偵でなければ』をミステリー評論家の杉江松恋さんが高評価しているのをネットで見かけ、その前作にあたる本作から読み始めてみることにしました

    うーん、なかなか面白い
    ただ残念ながらかなーり苦手な文体、こういうブツッとした文体苦手なのよね

    そんなわけで読み始めてすぐにアレルギー反応が出て、どうしようかな?と思ったんですが、主人公の探偵みどりが良い
    殊の外良い
    彼女のキャラクターに引っ張られて最後までヌルっと読み終えることができました(ヌルっと?)

    探偵といっても本格ミステリーに登場して殺人事件を解決するあの探偵じゃなくて、いわゆる調査会社に所属する調査員なんだが、ひと言でいうとド変態ですw
    いやそっちの変態じゃなくて(どっち?)

    人間の隠された本性を暴かずにはいられないという…怖っ
    普段いい感じなのよ
    普段いい感じの人が急に目をギラーンさせるわけ…怖っ

    そしてほっといたれば平和に終わる話を暴いちゃうわけ…怖っ

    だけどそんなことをやめられない自分に葛藤も抱えているっていうね
    複雑か!

    よーし、次作も読むでー

    • ひまわりめろんさん
      一Qさん

      いや、まともの概念変わってるみたいだから気を付けて!
      一Qさん

      いや、まともの概念変わってるみたいだから気を付けて!
      2025/02/18
    • ゆーき本さん
      数日 ブクログ開かなかっただけで 変態さんたちの楽しい会話に乗り遅れちゃうー
      数日 ブクログ開かなかっただけで 変態さんたちの楽しい会話に乗り遅れちゃうー
      2025/02/19
    • ひまわりめろんさん
      ゆーさん

      安心して下さい
      数日乗り遅れたくらいでクイーン・オブ・まともの座は揺るぎないから
      概念変わってる方のまともね

      わーユッキーとペ...
      ゆーさん

      安心して下さい
      数日乗り遅れたくらいでクイーン・オブ・まともの座は揺るぎないから
      概念変わってる方のまともね

      わーユッキーとペアーだー
      うっらやましー
      2025/02/19
  • 表紙のイメージからすると、ほろ苦い青春ミステリーなのかと思っていたが、良い意味で裏切られて面白かった。

    主人公は榊原みどり。父が探偵事務所を経営している彼女が成長しながら探偵という職業に目覚め、のめり込んでいく2002年から2018年までの姿を描く。

    第一話での2002年のみどりは高校生。
    クラスメートの女子生徒から半ば強制的に担任の男性教師の弱みを見つけて欲しいと頼まれ、教師を尾行する。結果、見事に教師のもう一つの姿を見つけるのだが、同時にみどりは別の真相にも気付く。

    第二話、2007年のみどりは京都大学に通う学生。
    龍涎香を巡って香道の師匠の秘密に切り込む。
    香道のルールはちょっと難しかったが、ここでついにみどりは自分の業に気付く。
    『こんなことをして欲しいなんて、頼んでなかった』
    『ごめんね』『わたしは、こういう人間なんだ』
    一体彼女がどんな探偵になるのか、ハラハラドキドキする。

    第三話、2009年のみどりは父が経営するサカキ・エージェンシーで働いている。当初個人事務所だった会社は拡大し、大勢の調査員が働いているようだ。
    なんとなくみどりは一匹狼で探偵をするのかと思っていたため意外な感じがする。
    だがみどりの性癖は相変わらず。調査員としても無茶をするシーンがあり、先輩の奥野に度々窘められている。
    だがそんなことで抑えられるなら苦労はしない。
    『ごめんなさい』『わたし、どうしても見てみたかったんです』
    いつか大けがするんじゃないか、みどり。

    第四話、2012年のみどりは調査を追えて立ち寄ったレストランで、ピアニストの女性から昔語りを聞く。
    その話の違和感から真相に辿り着く。
    みどりは優秀な調査員なだけでなく、優秀な探偵でもあった。
    だがここでみどりは再び躊躇する。真実を告げたことで相手を傷つけてしまうのではないか。
    ちょっと異色な話だった。

    最終話、2018年のみどりは課長職となっている。そしてプライベートでも様々な変化があったようだ。
    また語り手を新入社員の須見要に変えて、客観的にみどりを見ているのも新鮮。
    要はみどりの性癖と業に流されず、抗うのでもなく、彼女らしい調査と報告が出来るのか。


    みどりの、自分でもままならない性癖と業を描いたハードボイルド的探偵小説なのかと思えば、それだけではない物語だった。
    苦いだけではないラストが良かった。
    続編もあるようなので、今後のみどりも見てみたい。

  • 本格探偵推理小説ですね。
    「星空の16進数」の私立探偵みどりの五話の成長物語。
    高校時代に初めて探偵の真似事を経験。
    この頃から真相の究明に必要以上の好奇心に駆られることに気付く。
    二話の大学時代にも友達から真相の究明を頼まれるのを切っ掛けに乗り出すが、解決が人を傷付ける事になっても、謎解きの解明に躍起に成ることに気付く。
    殺人事件の話はありませんが、探偵に夢中になって危ない目にあったり、無茶な捜査にのめり込み性格が顔を出す。
    探偵のジレンマをテーマにしているように思える作品です。
    読みやすい作家さんなのですが、あまり後味が良くないかな。

  • 探偵森田(旧姓榊原)みどりの
    高校2年生からの16年間をたどった連作短編

    調香師、指揮者、鳶職…
    その専門的な世界が
    とても丁寧に調べられていて
    表現に嫌味がない

    友人を無くしてまで
    真相を、人の本質を明らかにしたいみどり
    序盤は危なっかしくてハラハラだけど
    次第に探偵としての凄みが増してくる

    「スケーターズ・ワルツ」がお気に入り
    「解錠の音が」はラスト最高

    文庫も買って手元に置こう
    図書館本

  • 昨年末読んだ「彼女が探偵でなければ」がとても面白かった《榊原(森田)みどりシリーズ》。本書はみどりが高校生から始まり探偵としての才能を開花させながら、鋭い洞察力で謎を解き明かしていく連作短編集。人間の本性を暴くことに固執し過ぎて時に危なっかしいけど、タフでキレ者で魅力的なハードボイルド探偵だ。
    本書がシリーズ一作目かと思いきや、どうやら「星空の16進数」という前作があることも判明。読まなきゃ〜。

    「イミテーション•ガールズ」
    榊原みどり高校2年生で探偵初仕事。初々しい。
    みどりをハメようとした“犯人”の動機が自己中過ぎて不快だが、探偵の才能の片鱗を見せつけてハメ返すみどりが凛々しい。

    「龍の残り香」
    京大文学部に進学したみどり。友人が盗難にあった貴重品“龍涎香”の行方を追う。倒叙ミステリで、いかにして犯人を追い詰めるかが読みどころ。何かを調べ暴き立てる探偵の才覚に、いよいよ目覚めるみどり。

    「解錠の音が」
    大卒2年目で父が営む探偵事務所に就職したみどり。ストーカー被害を受けたという男性からの依頼に、元警官の相棒•奥野とコンビで取り組むが…
    事件の真相が意外なところに転がり、タイトルに繋がるラストにドキドキ。みどり〜!好奇心が過ぎるよっ!

    「スケーターズ•ワルツ」
    バーで出会った女性ピアニストの話を聞く、探偵6年目のみどり。彼女の話に違和感を感じて…
    この“反転”は予想通りだった。クラシック音楽をBGMに聞きながら読み進めたい。
    日本推理作家協会賞(短編部門)受賞(2022年)

    「ゴーストの雫」
    探偵11年目となったみどり。いつの間にか結婚してて産休明けに、鳶職上がりの後輩と共にリベンジポルノ犯を追う。後輩(須見要)視点で描かれ、OJTで指導する過程でみどりの人間味が感じられて良い。ちなみに須見要は「彼女が探偵でなければ」収録の「太陽は引き裂かれて」にも登場する。

    《榊原(森田)みどりシリーズ》
    1.星空の16進数
    2.五つの季節に探偵は
    3.彼女が探偵でなければ

    • ryokutya87さん
      「星空の16進数」がこの物語と繋がっているとはまったく気づきませんでした。また読み返してみます。教えてくれてありがとうございます。
      「星空の16進数」がこの物語と繋がっているとはまったく気づきませんでした。また読み返してみます。教えてくれてありがとうございます。
      2025/01/24
    • mysnaviさん
      ryokutya87さん、コメントありがとうございます。「星空の16進数」には産休中?のみどりが登場するようです。私も近いうちに読むつもりで...
      ryokutya87さん、コメントありがとうございます。「星空の16進数」には産休中?のみどりが登場するようです。私も近いうちに読むつもりです。逸木さん、もっと世間に評価されてほしいですよね〜。同感です。
      2025/01/24
  • 普通のミステリーかと思いきや依頼者のほうも癖があり、物語が二転三転して面白かった!
    鍵の話はその後犯人は捕まったのかドキドキした展開。
    ピアニストの叙述トリックにはまんまと嵌められて悔しかった~。主人公の好奇心はまさに、深淵をのぞく時深淵もまたこちらをのぞいている でした。

  • シリーズ二作目を先に読んでからの本作。
    うーん。面白いんだけどどうにも主人公のみどりが受け付けない。
    人を傷付ける可能性があるのをわかっていても、真相を暴くのをやめない姿勢が、やっぱり嫌だ。
    「解除の音」のラストはある意味、鳥肌がたった。
    怖すぎる。

  • 探偵榊原ミドリ。シニカル。本性を暴き容赦なく傷付けるのは残念。誠実な相棒要登場で状況が変わる最終話「ゴーストの雫」(エアドロップ痴漢)が見処。2話龍涎香の香り,3話解錠の音,五感に響く。

  • 自身が気になったことは、周りにどう思われるかがストッパーにはならず、とことん解明する。
    そんなところにヒヤヒヤしたり、自分が依頼した側だとしたらなんて事してくれるんだという気持ちにもなる。
    しかし!鍵の話の結末では、この後どうなる!?と好奇心全開となってしまった。
    どの話も全くトリックは見破れなかったどころか、全く違った予想をしていたりだったので、ほほ〜となるばかりだった。

  • 高校時代に同級生から頼まれた尾行をきっかけに、榊原みどりは人の本性を見ることに喜びを感じる自分に気づいた。探偵となった彼女が巡る季節の中で関わる事件を描いた連作短編ミステリ。

    季節とリンクする短編に加え、みどりが学生時代から探偵としてキャリアを積む姿までを連作で描くという構成になっている。主人公が人の本性を暴く性質を持つというだけあって読後感は苦め。ただ、その苦さが人と時の雫に穿たれて徐々に変わっていくところが見どころでもある。イヤミスではなく、ラストはスッキリ。

    個人的に『解錠の音が』が断トツで好き。予想外の展開にオチまで奇麗に決まっていて、相棒の奥野とのかけ合いもドラマ性があってよかった。

    『イミテーション・ガールズ』
    高校生・本谷(もとや)怜は、親が私立探偵を営むクラスメート・榊原みどりにある調査を依頼する。好美のグループから受けているいじめを解決するために、取り合ってくれない清田先生の弱みを握ってほしい。みどりは自分には探偵はできないと断るも、調査してくれないなら家に火をつけると脅され──。

    脅されたのをきっかけに初めての探偵業を経験するみどり。彼女は右も左もわからない中で、探偵の資質を少しずつ開花させ、隠された人の本性を覗き見る喜びに目覚めていく。怜の狂気を上回る狂気をもって事態を解決するという手法に血の気が引いた。偽物で塗り固められた関係の中で、剥き出しになる本性が蠱惑的。

    『龍の残り香』
    京大薬学部の松浦保奈美は、文学部のみどりに相談を持ちかけた。保奈美が通う香道の教室に希少な龍涎香(りゅうぜんこう)を持って行った帰り、それが盗まれてしまったのだという。犯人は君島(きみじま)芳乃先生だと確信しているのだが──。

    マッコウクジラの結石・龍涎香。芳乃は龍涎香にある思い出と執着を持っていた。それをいかに穏便に取り返すかという流れから、香道の基礎、香りを当てる組香なども鮮やかに描かれてとても興味深いテーマだった。しかし、人の心ではなく、人の本性を「聞く」ことに目覚めてしまったみどりの背負う業が香る作品に。
    「世界とつながるための窓がひとつしかない状態を、人は<才能>と呼ぶのかもしれない」

    『解錠の音が』
    みどりは大学卒業後、父の探偵会社「サカキ・エージェンシー」で働くようになった。ある時、笠井満(みつる)が依頼したストーカー調査へと着手する。自転車にかけたダイヤル式のワイヤーロックが壊された上にパンクさせられ、駐輪場の中を移動させられていたという不可解な嫌がらせの意味とは──。

    みどりとペアになるのは元警官の奥野。危険地帯に踏み込みすぎるみどりに釘を刺しながら調査を進めていく。鍵の脆弱性や対策などが語られていて勉強になる。一番に鍵をかけなきゃいけないのは、みどりの好奇心だよなあって感じられる一作。オチにニヤニヤしてしまう。周りの人はやれやれ…としか思えないだろうけど(笑)

    「犯罪の動機なんて、大きく分ければ<利害>か<信仰>のどちらかです。一連の犯行からは、利益が生まれているようには見えない。他人の信仰について考えてみても、馬鹿を見るだけですよ」
    奥野のこの言葉は確かにそうだなと。まあ、その信仰が気になっちゃうみどりには、探偵は天職ではなくて身を滅ぼすものになってしまいそうで怖い。

    『スケーターズ・ワルツ』
    みどりが探偵になって六年目。彼女が休暇をとって訪れたのは軽井沢のとあるドイツ料理店だった。そこでピアノを弾いていた土屋尚子(なおこ)と思いがけず意気投合。みどりが探偵だと知ると、尚子はとある指揮者とピアノ売りの思い出話を語り出した──。

    「スケーターズ・ワルツ」に端を発した過去の語りが中心。クラシックの物語が大半なので、詳しい方が楽しめそう。指揮者の苦悩、それを支えるピアノ売りの献身。その最果てに訪れた悲劇。そこからみどりが導き出した答えは、悲しいけれど希望に満ち溢れたものだった。

    『ゴーストの雫』
    みどりと探偵見習いの須見要(すみかなめ)が受けた依頼──それはリベンジポルノの調査だった。垣内(かきうち)健太の妹・羽衣(うい)は、恋人の鈴木和也にエアドロップで画像をバラまかれる被害に遭っていた。しかし、その恋人はいくら捜してもどこにも見当たらない男で──。

    物語は新人の女性探偵見習い・要の視点で描かれる。先輩に誘われて入ったとび職で、女性という引け目から退職してしまった過去。そこから探偵へと転身した迷いをドラマで絡めながら、消息を掴めない和也を追う。要がいたからこそ、事件は報告だけではなく解決することができたというのが熱い。すべての話を読み終えて、表紙を見るとグッとくる。

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著者プロフィール

小説家。1980年、東京都生まれ。第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、2016年に『虹を待つ彼女』(KADOKAWA)でデビュー。2022年には、のちに『五つの季節に探偵は』(KADOKAWA)に収録された「スケーターズ・ワルツ」で第75回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した。このほか著作に、『少女は夜を綴らない』(KADOKAWA)、『電気じかけのクジラは歌う』(講談社)などがある。

「2023年 『世界の終わりのためのミステリ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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