ブレイブ・ストーリー 上 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2021年6月15日発売)
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  • 本 ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041111703

作品紹介・あらすじ

ごく普通の小学5年生亘は、友人関係やお小遣いに悩みながらも、幸せな生活を送っていた。ある日、父から家を出て行くと告げられる。バラバラになった家族を取り戻すため、亘は異世界への旅立ちを決意した。

感想・レビュー・書評

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  • 2003年刊行のファンタジー。
    文庫化された当時にすぐ買って、その後借りパクされて手元に無くなっていた既読未登録のものを改めて購入し再読しています。

    宮部みゆきにとっての2003年は、「時代物ばかり書いていた」スランプを脱し、直木賞受賞から4年、「模倣犯」刊行から2年後。
    よく言われる「脂の乗り切った」頃で、この頃に書かれたものが一番楽しめると、個人的にはそう思っています。
    試みに「ここではない世界」が舞台の、ゲームの影響を受けていそうなもの作品を拾ってみましょうか。
    2001年:ドリームバスター
    2003年:ブレイブ・ストーリー
    2004年:ICO(イコ) ―霧の城―
    2009年:英雄の書
    2012年:ここはボツコニアン
    2015年:悲嘆の門

    初期のころから「龍は眠る」、「震える岩」や「クロスファイア」のようなSFはありましたが、異世界を舞台に冒険が繰り広げられるという、明らかにゲームの影響がみられるようになったのは2001年から。大ファンであることを公言している幻想水滸伝IIIの発売が2002年で、この時に公式サイトで「先行プレイ日記」を書いていたそうですので、いちゲーマー(本人によると「ゲーム女」)から一歩踏み出して、制作側とのつながりができたことが大きかったのかもしれません。
    一方で、ゲーム原作となった本作、ゲーム自体のノベライズの「ICO」を経て、しかしその後の「英雄の書」「ここはボツコニアン」は腰砕けでした。いずれも壮大すぎる世界を描き切るには紙幅が全く足りていないのです…。クリアまでのプレイ時間が100時間を超えることも珍しくないゲームの世界に受けたインスピレーションを原稿用紙の上に再現するには、これまでの宮部みゆきにない仕組みが必要なのかもしれません。(それはおそらくラノベのような長大な作品の出版を可能とする仕組みであって、「ここはボツコニアン」なんて最初からラノベでシリーズ化していればあんな打ち切りみたいな終わり方はしなかったのではないかと思うのですが…。)

    そんなわけで、宮部みゆきのファンタジーとしては「これが一番面白い」とお勧めできる1冊です。

    ドラクエを始祖とする(と言うときっと怒られると思いますが、わかりやすいので例に挙げさせてもらいます)JRPGの王道を踏まえる――例えば、主なプレイヤー層である小学校高学年~中学生が主人公で、剣と魔法の世界を数人のパーティーを組んで冒険し、目的を果たして現世に帰る――一方で、単純な勧善懲悪からは一歩踏み出している――ドラクエで言えばロト3部作を卒業し、ラスボスにも三分の理(…いや、五割くらいはあったかもしれません)があった4を経過して、サブストーリーでいちいち表裏ある人間模様を描いて見せた7を思い浮かべてください――そんなトレンドをきっちり取り入れて見せています。
    主人公の三谷亘が異世界に足を踏み入れたきっかけ、そこで迎える結末、いずれもこの時代のJRPGの文法にのっとっており、だからこそ多くのプラットホームでRPGの原作になっているのだと思います。

    実際、文庫化の後、児童書・ラノベレーベルからの刊行、コミカライズ、劇場版アニメ化、ニンテンドーDS・PS2・PSPでのゲーム化と多彩なマルチメディア展開がされています。
    出版が角川からなのが積極的な展開の一因なのはもちろんでしょうが、作品自体が素直で清々しい読後感のあるジュブナイルであることが特にティーンズ向けに安心してプッシュできる安定感につながっているのだと思えます。

    ちなみに、ゲーム化されたものについては、自分はPSPでクリアしています。ゲーム自体はものすごく面白い、わけではありませんでしたが、原作の雰囲気がよく反映された佳作だったと思います。

    以下粗筋に触れます。
    ネタばれを気にされる方はそっ閉じをお勧めします。


    3分冊のうちこの上巻では、主人公の小学5年生、三谷亘がいかにして「幻界(ヴィジョン)」を訪れることになったかが丁寧に描かれます。
    ゲームだと疎かにされがちなところで(やりすぎるとドラクエ7のように「なかなか戦闘がなくて退屈」と言われてしまったりします)すが、ここをきちんと描いたものには「グランディア」などの超名作が挙げられます。
    いきなり剣と魔法でモンスターと戦う世界に放り込まれても、プレイヤーは(特にRPGに慣れているプレイヤーは)それなりに対応してくれますが、丁寧に描かれた導入部はプレイヤーを上手に釈迦の掌に載せてくれるように思えます。そしてそれはヴィジョンの成り立ちや三谷亘が選び取った結末にとても強い説得力を持たせています。

    PS2全盛期、綺羅星のように名作と言われるJRPGが続々と登場し、続編を重ねていたそんな時期と歩調を合わせて書かれたジュブナイル・ファンタジーの名作です。
    繰り返しになりますが、すべての人に――主人公と同年齢の小学生にも、ゲームを毛嫌いしがちな大人にも――自信をもってお勧めしたいと思います。

    中巻・下巻とペースを乱さず、世界観を崩さず、感動のラストまで走り切る様子を引き続き追体験してこようと思います。

  • どんどん次が気になって読んでしまう本!
    大輔くんが激刺さりしたと聞いて、どんな物語かと思ったら、、、刺さるのもめちゃくちゃわかる。
    亘の気持ちを考えれば考えるほど辛くなってくるけど、家族を取り戻すために幻界に行くなんてすごい!かっこいい!
    これからどんな旅をするのか楽しみ!

  • 小さい頃にアニメで見た話。
    小学生のワタルが未来を変えるために幻界へ向かうとこまでの話。
    小学生には酷な運命だなと思いました。
    そして、母のため、運命を変えるため、決意して行ったワタルは一見頼りなさそうにみえます。これからきっと逞しく成長していくんだろうな。
    頑張って

  • ファンタジー要素は映画のほうが好きだった。でもストーリー展開のためのプロセスであったり歴史の部分を知ることができ、よりブレイブストーリーを楽しむことに繋がった。

  • 中学国語 光村 紹介本

    流し読みで、なかなかの手応え!

    悲しすぎる現実に翻弄される少年たち
    運命を変えるために異世界へ
    命がけの旅がはじまる

  • 読み始め
    たまに挟まる、物語を客観的に見た視点からの意見が面白い。
    主人公の亘の家庭事情が激重で辛いが、めちゃくちゃにリアル。
    ファンタジー要素が5%くらいで、あとは、小学生が主人公のミステリーの序章を見ている感覚。
    最後の最後に剣を手にして、キ・キーマに出会って、やっとファンタジーっぽくなったところで、終話

    ファンタジーってご都合主義要素が非常に多いと勝手に考えていたが、
    重厚でリアルな作り、
    物語に一切妥協なしの書きぶりがたまらないです

  • 宮部みゆきさんの本としてはなんと初読の本。主人公が小学5年生ということで、小学生向きの異世界ファンタジーかと思ったが、少し違った。
    上巻は特に、主人公・三谷亘の何気ない日常から始まり、これから異界へと誘われるきっかけとなる人物との出会いや、親の複雑な問題へと話は続く。その親の問題のことを考えると、この作品は安易に小学生へ進めることはできないかな、と思った。
    上巻のほとんどが幻界ではなく現世が舞台であり、亘の親問題の闇が深いため、そこに幻界の魔法やゲームの世界のような話がちょいちょい出てくると、なんだか違和感があった。それはちょうど自分が普通に日常生活をおくっているなかで、いきなり勇者だの魔法だのの世界の扉が目の前に出てきたら、持つのではないかという違和感なのかな、と思った。

  • 私が人生で初めて手に取った小説。本を読むことの素晴らしさ、ファンタジーの美しさを存分に感じられた。
    「人が頭に浮かべる"綺麗な泉"は、その人の中で最も美しい泉になる。映像でそうはいかない」といった小話をどこかで聞いたが、まさにそのような読書体験だった。

  • お母さんを助けるために主人公たちが冒険に出かけるところが、ゲームの中にいるかのような感覚で好きです。(小5)

  • 主人公の家庭がキツくてなかなか読み進められなかった。後半にスピードが出てきた。物語としては、まだこれから。どうなるんだろう?面白いかどうかも、まだ分からない。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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