ブレイブ・ストーリー 中 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2021年6月15日発売)
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本 ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784041111710

作品紹介・あらすじ

失われた日常を取り戻すため、ワタルは異世界へ旅立った。目指すは、どんな願いでも叶えてくれるという女神のいる「運命の塔」。愛すべき仲間たちと心をひとつに、ワタルは数々の困難に立ち向かう。

感想・レビュー・書評

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  • 2003年刊行のファンタジー、上中下三分冊のうちの二冊目です。
    文庫化された当時は宮部みゆきに夢中だったので、初版をすぐ買って、あっという間に読み終わりました。PSPのゲームも遊んだので、自分にとってはとても印象に残る一作でした。その後布教用に貸したら借りパクされて既読未登録になっていましたが、文庫化された宮部作品の読了が近づく中、改めて購入し再読しています。
    本作品は作者の「脂の乗り切っていた」頃に書かれたもので、ゲームの影響が強く見られるファンタジーであり、同時に瑞々しいジュブナイルでもあります。ちなみに主人公は小学5年生ですが、リアルの小学5年生男子はこの形容詞を使うにはやや幼いように思えます。主人公ワタルの言動はリアルでは中学生くらいの感じでしょうか。ジュブナイルとして与えるには中学生くらいからがふさわしいように思えます(児童向けの「角川つばさ文庫」に入ってますが、やっぱり他の収録作品よりちょっと対象年齢が上に見えます)。
    ゲーム化、劇場版アニメ化もされており、上にも書いたとおり自分はPSP版のゲームをクリアしています。執筆時にゲーム化やアニメ化を意識していたわけではないと思いますが、複数のゲームに作者がドはまりしていた時期でもあり、ゲーム的な文脈の影響を強く感じます。ですから、ゲームやアニメの原作にするにはもってこいなのだろうと思います。


    以下で粗筋に触れます。
    ネタばれを気にされる方はそっ閉じをお願いします。



    この巻ではパワータイプのキ・キーマと身軽なネ族の女の子ミーナといういかにもRPGパーティーっぽい仲間を得、ハイランダーという身分兼後ろ楯も得たワタル一行の、幻界での活躍が描かれます。

    前半はJPRGらしい展開が続きます。
    ダンジョン探索と巨大なモンスターとのバトル。宝玉集めと勇者の剣の進化。結界に守られた廃病院でのピンチと、大魔法を使うミツルとの邂逅、レッドドラゴンの子供との出会い…。
    どれも道中での雑魚的とのバトル、ボス戦前に流れるムービー、ボス戦のBGMと攻略方法などがなんとなく浮かぶほどのRPGとの相性の良さ。
    もちろん普段ゲームなんかやらないよ、って人も置いていかれるようなことはありません。宮部みゆきの筆力で手に汗を握り、時に笑い、時には憤りつつワタル一行の活躍を応援することが出います。

    一方で、妻子ある身で外に女を作り妊娠させた男、男を誘惑した咎で村を追放され、胎内に子を宿しつつ男を待つ女、というワタルが幻界に足を踏み入れる原因となった構図が幻界でそっくり再現されていて、男は父に、女は父の浮気相手である田中理香子に生き写しという地獄のような展開にワタルは直面させられます。
    男に挑発されたワタルがとった行動こそが、幻界の成り立ちとエンディングに至る大きな伏線なのですが、そこを読んでいるときはただただ嫌悪感を感じるイベントとなっています。
    幻界の裏には常に現実世界が存在し、幻界は現実世界の想像力が生んだもの――というこのストーリーの大前提は、ストーリーが進むにつれ頻度を高めつつ繰り返し語られています。作者にとって大切なモチーフであるのは間違いありません。

    さて、幻界を駆け抜けてきたワタルたち一行でしたが、この巻のラスト近く、「北の凶星」(死兆星ですね…)が輝くようになると雰囲気が大きく変わります。
    エンディングに向け、旅の目的の自問自答、幻界の崩壊、友との相克などが一気に押し寄せてきて、ゲーム的な雰囲気はいったん退き、直面しなければならない現実が戻ってきます。


    中弛みしがちな中巻ですが、かなり重要なイベントが立て続けに起こることもあって先が気になる展開は相変わらずでした。
    この勢いのまま下巻へ。

  • 中学国語 光村 紹介本

    下のデータがない?

    ゆっくり読む時間はないけど
    開いてみたら先が気になって
    一気に流し読み

  • 途中

  • ワタルの幻界での旅の続き。
    自分の与えられた運命がとてつもなく残酷なものかもしれない、それを拭えたとしても幻界の人を恐ろしい運命に導いてしまうかもしれない、、小学生に難しい選択を選ばせようとしているなと思いました。
    それでも悩み、葛藤しながら少しずつ成長していくワタルになら、女神の元に辿り着いた時、正しい答えを出せるのだと期待させてくれるストーリーです。

  • 自分の心に余裕がある時期なら、手に取らなかっただろうと思う。
    まず、思いのほか、おとぎ話の世界ではない、現実の出来事を語る第1部が長かった。上巻はほとんど第1部である。だからといって退屈だというわけではない。現実でうまくいかないことがある。別の世界に導かれ、冒険を続けていくうちに、不思議と現実の厳しさにも相対できる素質が備わっているーおそらく、この物語はそういう話だ。
    そういう枠組み自体、もしかすると珍しいものでもないかもしれない。加えて、両親の離婚という「困難」も、現代ではありふれてさえいるのかもしれない。
    それでも、第1部には、人生には簡単に答えが出せない問いがあって、しかも誰にでもそれに直面することがあるのだということを感じさせる。家を出た父は勝手だと、ワタルと一緒に読者も感じる。けれど、ワタルの父に近い年齢になった今だからそうも思うのかもしれないが、彼にもまた理があるかのようにも感じる。
    中巻に入り、幻界でも、小学生の主人公にはシビアに感じられる試練がある。特に、嘆きの沼の場面は…。おとぎ話の世界にも民族間の争いや宗教上の対立がある。「半身」の理不尽がある。幻界の試練は、選択したり決断したりすることの困難さを、現実界と同じように提示している。私が一番苦手な問題。決断しないといけないということ。。
    ファンタジーにはよくある要素を漏れなく含んでいる王道という気もするが、問題の設定の仕方がある意味、現実らしくていやらしい。愛と勇気だけでは解決できない解決があるということを知る、ということなのだろうか…?

  • 上巻での亘の旅立ち理由がやや現実逃避的でしっくり来てなかったんだけど、やっぱりワンネスとか目醒めの方向に持っていくんだな。
    現世の亘の境遇といい、自分の内側と向き合う幻界の旅といい、小学生にも容赦ないわ宮部さん…。

  • 中巻で一気に物語が進み、亘も大きく成長した。
    トローン、主役ではないけれど好きなキャラクターの一人で苦労人な感じがよい。それに最初の廃教会での戦闘は、RPGをプレイしているようで本当におもしろかった。スリルがたまらない。
    ミツルは相変わらず思い描いたような優等生でワタルよりも二歩も三歩も先を進んでいる。なんだかんだ現世でのお母さんのガス栓事件といい、魔病院といいワタルを助けてくれる。ミツルの装備が好き。
    自然を人間はいいようには変えられない。北の凶星はそれを象徴していて、不穏で、物語を一気に物々しい雰囲気に変えて、これからのワタルとミツルの行く先が気になる。みんなが幸せになる世界があればいいのに、と願わざるおえない。

  • 上巻に比べてすこし退屈した。ファンタジー要素が強く入り込みにくかったか

  • 物語序盤はまだワタルの精神面が幼く、頼りない感じがして読むのが停滞気味だった。

    だが、父親の不倫相手そっくりの人が現れてから様々な謎が出てきて面白くなって一気に読み終えてしまった。

    幻界の仕組みを説明しているシーンを読んでたらFFⅩのナギ節が浮かんだ。

  • ワタルの心の動きがとても丁寧にわかりやすく表現されているので感情移入しやすい。幻界での仲間とのやり取りの中にもストーリーがしっかり作り込んであってのめり込み要素抜群。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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