アルプスでこぼこ合唱団

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  • 本 ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041112199

作品紹介・あらすじ

したたかでアンフレンドリーな、アルプスの小さな山国スイス。在住20年にもかかわらず、いまだここが「居場所」とはいえない――。そんな悶々とした中で出会ったのは、妙に謎めいた、多国籍な仲間たちの合唱団だった。悪戦苦闘の日々、少しずつ謎がとけてゆく仲間たちと、声を合わせて歌いながら「スイスという国」に根を張ってゆく、異文化合唱エッセイ。

(本書「あとがき」より)
 居場所ってなんだろう。歴史のどの時点で、世界のどの地点に生を受けるかなど、偶然の出来事でしかない。たまたま居合わせた場所や状況や歴史的時間の中で、人はどうやって居場所を探し、それを耕していけるのだろう。居心地の良い場所が築きにくい時に、息苦しい時に、仲間に入っていけない時に、どこにどうやって慰めを見つけたらいいのだろう。
 花の種が風に吹かれてどこかの土に着地する。よく知らない両隣の人たちと共に声を合わせて歌いながら、そんなイメージを私は度々思い浮かべていた。小さな種が、着地したその場所でむっくりと芽を出し、固い土の中にじわりじわりと根を張っていく様を想像した。

感想・レビュー・書評

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  • 合唱そのものには 全く関心がありません
    にもかかわらず 
    一気に読み進めてしまいました
    この一冊に登場する人たちが
    まぁ 見事に描かれていくこと
     
    その(合唱団の)お一人お一人が
    初めて逢った時のよそよそしさから
    時間が経つにつれて
    いろいろなエピソードとともに
    どんどんなくてはならない隣人に
    それぞれが なっていく
    その過程が まぁなんと興味深いことでしょう

    読み終わって
    表紙に描かれる 人たちの様子が
    しみじみと思い浮かべられるのも
    また 楽しい

    こころほっかりさせてもらえる
    一冊でありました

  • パリ、米国、英国に暮らし、現在はスイスのチューリッヒに暮らす著者が、地元のアマチュア合唱団で出会った人たちを綴る。チューリッヒはドイツ語圏で、その上スイスのドイツ語は又少し違うらしい。譜面は読めても、なれないドイツ語を音符に乗せることにも苦労する。自分の思いをうまく表現できないので、メンバーと打ち解けて話すことにもためらいが残る。そんな苦労をしながらの4年間、コロナでロックアウトを経験し、ズームのリモート練習も経験する。教会と結びついたスイスの合唱に、日本でのアマチュア合唱団とは違うものがあるのかもしれない。

  • ムジツィーレン
    ユルグさんのキャロットサラダ
    →レモン汁とメープルシロップ+クミン
    ベルリンの壁とハンナと著者

  • 日本を離れ、フランス、アメリカ在住を経て、配偶者の出身国であるスイスに住む日本人が地元の合唱団に参加したことでスイスに根を張る実感に至るというストーリー(実話)。
    美しく、秩序と文化もあるスイスだが、著者にとっては20年近く住んで、その間にお店もやってみたりしたらしいのだが、なぜかよそよそしく感じられたらしい。それが、ふとしたきっかけでチューリッヒのアマチュア合唱団に参加することで、少しずつだが、色々な人との交流ができたりして、そこに居場所を見出してきたらしい。住めば都というが、ただ住むとか暮らすということ以上に、帰属すべき場所というのが大切なのかもしれない。
    なお、(スイスのドイツ語ではない)標準ドイツ語を「ハイジャーマン」と記しているが、なんだか、高い声のドイツ語みたいな感じがして、ここは「ホッホドイッチュ」と書いてほしかった。

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著者プロフィール

1961年、愛知県生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。ファッション誌『25ans(ヴァンサンカン)』の編集を経て`88年渡仏。7年間のパリ滞在中より、フリーのジャーナリスト、エッセイストとして雑誌などに多数、記事を発表。ペンシルヴァニア、ロンドン、チューリッヒ、ジュネーブと移住し、現在はチューリッヒ在住。著書に『パリ妄想食堂』(角川文庫)、『フランス女』『裸足のコスモポリタン』(以上、マガジンハウス)、『世界一ぜいたくな子育て』『「モザイク一家」の国境なき人生』(光文社新書)など。

「2022年 『アルプスでこぼこ合唱団』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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